⑰オピオイド受容体

オピオイドとオピオイド受容体
オピオイド:オピオイド受容体と結合し作用する物質群の総称。
オピオイド受容体に結合することでオピオイドの作用は発揮される
⑰オピオイド受容体
鎮痛
鎮咳
胃腸運動抑制
オピオイド
オピオイド
受容体 (すべて Gi タンパク質共役)
オピオイド
受容体
-目標オピオイド受容体の種類および内因性リガンドを列挙できる
オピオイド受容体の特徴について説明できる
オピオイド神経系による痛覚伝達の抑制機構を説明できる
内因性リガンド
μ
エンドモルフィン
β-エンドルフィン
κ
ダイノルフィンA
δ
メチオニンエンケファリン
ロイシンエンケファリン
1
2A.
μ受容体
2
2B.
δ受容体(マウス輸精管(vas deferens)に由来)
(モルヒネの頭文字(Morphine)のギリシャ文字から命名)
エンドモルフィンやβ-エンドルフィンが作用する受容体
メチオニンエンケファリン、ロイシンンエンケファリンが
作用する受容体
臨床的に使用されている麻薬性鎮痛薬の作用する受容体
(鎮痛)作用(最も強い)
(鎮咳)作用
モルヒネ
鎮痛作用
胃腸運動抑制作用
μ受容体刺激
μ受容体
末梢作用もあるが、多くの作用は中枢神経系の受容体刺激による
受容体刺激
鎮痛作用は有するが、その強度はμ受容体刺激よりも
はるかに弱い
<注意>
多幸感や(身体依存・精神依存)を引き起こす
◎主にμ受容体に作用する薬物
モルヒネ
フェンタニル
オキシコドン
ペチジン
>>δ
本受容体に作用する薬物で臨床的に適応されているものは現在
(2009年夏)のところ存在しない
3
4
3.
2C.κ受容体(ketocyclazocineに由来)
ダイノルフィンA が作用する受容体
①痛覚を伝達するシナプスにおける神経伝達物質の遊離抑制と
シナプス後細胞の過分極による興奮性の低下
鎮痛、鎮咳作用
μ受容体刺激
>
μ受容体作動薬による鎮痛作用発現の機序
主として①、②の機序により鎮痛効果発現機序は説明される。
δ受容体刺激
②二つの経路(下行性抑制経路)の活性化
中脳水道周囲灰白質→大縫線核・傍巨大細胞網様核 →脊髄
青斑核 →脊髄
鎮痛作用は有するが、その強度はμ受容体刺激よりも
強くはない
モルヒネによる縮瞳作用に関連していると考えられている
嫌悪感を引き起こすことが知られている(μ受容体と逆)
→末期がん患者においてモルヒネの依存性が弱くなる原因と言われている
◎κ受容体に作用する薬物
ペンタゾシン(κ受容体への刺激作用
μ受容体への弱い拮抗作用)
5
3.
μ受容体作動薬による鎮痛作用発現の機序
①上行性経路の抑制
6
3B.
モルヒネの長期連用による耐性発現機序
慢性的な適用により、同じ効果を得るために、その薬物の使用量を増加しなくては
ならない状況(生体にホメオスタシスがあるからできる)
②下行性経路の活性化
①
②
③
細胞内
環境の変化
鎮痛作用
7
通常量では十分な鎮痛
作用が発揮されない
①と同じ鎮痛作用を示
すためには増量が必要
となる
8
3D.モルヒネの長期適用による精神依存性の形成機序
3C.
モルヒネの長期連用による身体依存性に伴う退薬症候の発現機序
モルヒネ等のオピオイドの長期連用の後に突然連用を中止すると退薬症候がおこる。
①
②
③
④
モルヒネは、中脳に存在する腹側被蓋野 A10に細胞体がある脳内報酬系と呼ばれる中脳-辺
縁ドパミン神経系に対して抑制をしている GABA 神経系を抑制し、 A10神経を活性化す
るために多幸感が得られる。この多幸感を得るために、繰り返し薬物を摂取するので、精神
依存性が形成される。
GABA神経
抑
抑
細胞内
環境の変化
A10
ドパミン神経
通常量では十分な鎮痛作用が
発揮されない
①と同じ鎮痛作用を示すた
めには増量が必要となる
変化した細胞内環境の状態
で薬物投与を中止すると
様々な影響が出る
退薬症候:初期症状としては、不安、焦燥、筋痛、疼痛に対する感受性の亢進が
みられ、進行すると嘔気、嘔吐、不快感、鳥肌、鼻汁、散瞳、発汗、腹痛、下痢、
あくび、不眠、発熱等が引き起こされる(モルヒネの作用とは逆の作用が出る)
脳内報酬系
“嬉しいっ!”
“気持ちいいっ!”
9
アヘンアルカロイドの構造‐活性相関
モルヒネ
1
アヘンアルカロイドの構造‐活性相関
CH3
17
モルヒネ
7
HO
6
H
N
3位のメトキシ化(-OCH3)
1
8
依存性・鎮痛・呼吸抑制作用減弱
H
→コデイン
7
8
O
CH3
17
N
H
3
10
H
HO
OH
新薬理学テキスト(第3版)P123 4.4.4 B
11
3
6
O
H
H
OH
新薬理学テキスト(第3版)P123 4.4.4 B
12
アヘンアルカロイドの構造‐活性相関
アヘンアルカロイドの構造‐活性相関
CH
3
モルヒネ 6位のケトン化(=O)
CH3
モルヒネ
17
鎮痛・呼吸抑制作用増強
N
→ オキシコドン
1
17
1
8
H
N
8
H
7
HO
3
6
O
H
7
H
7-8位二重結合の水素化
3
O
HO
鎮痛作用増強
OH
新薬理学テキスト(第3版)P123 4.4.4 B
13
アヘンアルカロイドの構造‐活性相関
モルヒネ
N
HO
H
14
CH3
2つの水酸基をアセチル化
鎮痛作用・陶酔感増強 →
6
O
OH
新薬理学テキスト(第3版)P123 4.4.4 B
モルヒネ
1
8
H
N-メチル基をアリル基に置換
抗モルヒネ作用
7
→ナロキソン レバロルファン
3
H
H
アヘンアルカロイドの構造‐活性相関
CH3
17
6
1
3位のグルクロン酸抱合→
6位のグルクロン酸抱合→
17
N
ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)
8
H鎮痛活性消失(M3G)
鎮痛活性モルヒネ以上(M6G)
7
H
HO
OH
新薬理学テキスト(第3版)P123 4.4.4 B
15
3
6
O
H
H
OH
新薬理学テキスト(第3版)P123 4.4.4 B
16
アヘンアルカロイドの構造‐活性相関
コデイン
CH3
CH3
モルヒネ
N
N
H
O
HO
H
H
オキシコドン CH3
O
CH3O
H OH
N
-目標麻薬性鎮痛薬の使用例を列挙できる
麻薬性鎮痛薬の問題点を列挙できる
麻薬性鎮痛薬による疼痛緩和の概要を説明できる
HO
HO
O
⑱麻薬性鎮痛薬
ナロキソン CH2CH=CH2
N
CH3O
H
H OH
H
O
HO
O
H
O
18
17
痛みの客観的評価法(一部)
2.麻薬性鎮痛薬の臨床薬理学
①Visual analog scale (VAS) :
痛みの評価
痛みの治療は、痛みの強さや原因の評価を注意深く行うことから開始される。
100mmの直線上でまったく痛みのな
い状態を0mm、想像しうる最大の痛みを100mmとして現在の痛みの程度を直線上に表す。患者本人
に、現在の痛みがスケール上のどこにあるかを示してもらうことで、痛みを評価する方法。
<痛みの評価>
・個人差が大きい(我慢強い人、敏感な人)
・痛みは主観的な感覚
客観的評価の必要性
痛みの客観的評価法(一部)
①Visual analog scale (VAS) :
100mmの直線上でまったく痛みのな
い状態を0mm、想像しうる最大の痛みを100mmとして現在の痛みの程度を直線上に表す。患者本人
に、現在の痛みがスケール上のどこにあるかを示してもらうことで、痛みを評価する方法。
②フェイススケール:笑い顔、不快な顔、泣き顔などさまざまな表情の絵のなかから
、患者自身の現在の気分に相当するもの選んでもらい、痛みを評価するという方法。小児や高齢者な
ど、自己表現が困難な患者に最適な評価方法とされている
19
オピオイドローテーション
痛みの客観的評価法(一部)
鎮痛薬を変更することで鎮痛作用を持続させつつ副作用を回避する投与方法
②フェイススケール:笑い顔、不快な顔、泣き顔などさまざまな表情の絵のなかから
、患者自身の現在の気分に相当するもの選んでもらい、痛みを評価するという方法。小児や高齢者な
ど、自己表現が困難な患者に最適な評価方法とされている
単剤による疼痛緩和
疼痛
オピオイドローテーション
による疼痛緩和
疼痛
単剤による
疼痛緩和
単剤による
疼痛緩和
耐性の発現
耐性の発現
別の鎮痛薬へ
スイッチ
増量
副作用
副作用の回避
鎮痛作用の継続
オピオイドローテーションに用いられる薬物(日本)
モルヒネ
フェンタニル
オキシコドン
22
4B.WHO方式がん疼痛治療法の基本5原則
経口的に投与は開始する
時刻を決めて規則正しく使用する
除痛ラダーにしたがってその効力の順に薬物を選択する
患者ごとに個別的な用量にて薬物の用量を決める
その上で細かい配慮を行う
⑲薬物依存
WHO式除痛ラダー
③〔モルヒネ〕
(強オピオイド)
②〔コデイン〕
〔ペンタゾシン〕(弱オピオイド)
-目標精神依存と身体依存の違いについて説明できる
依存症を形成する各薬物が、どのような依存性を形成するか分類できる
①〔アスピリン〕〔アセトアミノフェン〕
〔イブプロフェン〕〔インドメタシン〕
(NSAIDs)とアセトアミノフェン
23
24
依存性薬物の長期適応によりみられる状態
依存性薬物の分類
WHOによる依存性薬物の分類
精神依存
薬物摂取によって得られる快感や、精神的不安、悩みの解消および軽減によ
る快感を求めるために薬物に対する欲求が高まった状態を指す。
身体依存
(退薬症候)
精神依存
耐性
+++
+++
++
アルコール
アンフェタミン
-
+++
++
アンフェタミン
メタンフェタミン
バルビツレート
+++
++
++
バルビツール酸誘導体
ベンゾジアゼンピン誘導体
大麻
コカイン
-
++
+++
-
幻覚薬
-
+++
++
LSD
メスカリン
シロシビン
カート*
-
+++
++
カート
+++
+++
-
+
タイプ
乱用薬物は多幸感を生じるが、この多幸感は、強烈に心地よい感情という特徴的な情動的状態である。この多幸感を得るために、多くの薬物
を求め、摂取しようとするのは、報酬として多幸感を認識しているからである。この報酬は、時に繰り返し薬物を摂取しようとする動機を与
える快反応を生み出す薬物の能力により生じるもので、薬物の強化効果とも表現されることがある。この薬物による強化効果により薬物の渇
望が出現し、この薬物に対する渇望は、精神的な依存性が顕在化であり、断薬時に最も強烈に認められる。この精神依存は、環境とも結びつ
き、以前薬物を使用した場所や匂い、状況などによって再び惹起され、長期間持続する。
アルコール
身体依存
薬物の反復投与により、自身が薬物の存在なしでは正常な機能を発揮できなくなる
状態を指す。薬物の持続的存在に抗して正常機能を可能にするために身体の恒常性メカニズムがリセットされることにより形成される、
生体の適応的状態の一つである。つまり、身体的依存状態にある場合は、薬物の摂取が突然たたれると、離脱症状が出現する。この離脱症
状は、薬物の急性適用時にみられる反応と逆の症状であることが多い。
耐性
薬物の反復適応により薬物の反応性に対する減弱
であり、薬物動態学的ならびに薬力学的耐性の二つの原因
が考えられている。薬物動態学的耐性は、薬物代謝酵素の増加などにより薬物の急速な代謝により引き起こされると考えられている。また薬
力学的耐性は、薬物の適応により細胞内シグナルや遺伝子発現による薬物により誘発される細胞内の変化によるものであると考えられている
。
オピオイド
有機溶媒
25
依存性薬物の分類
法律規制による依存性薬物の分類
タイプ
日本における規制法律
アルコール
未成年者飲酒禁止法
アンフェタミン
覚せい剤取締法
バルビツレート
麻薬および向精神薬取締法
大麻
コカイン
大麻取締法
麻薬および向精神薬取締法
幻覚薬
麻薬および向精神薬取締法
カート
オピオイド
有機溶媒
麻薬および向精神薬取締法
(一部)
麻薬および向精神薬取締法、
あへん法
毒物および劇物取締法
例
アルコール
アンフェタミン
メタンフェタミン
バルビツール酸誘導体
ベンゾジアゼンピン誘導体
マリファナ(ハシシ)
コカイン
LSD
メスカリン
シロシビン
カート
モルヒネ、ヘロイン、コデイン、
ペチジン、フェンタニルなど
トルエン、シンナー、アセトン、
エーテル、クロロホルムなど
*薬物各論も確認しておくこと
特に3A(麻薬性鎮痛薬)、
3E(睡眠薬・抗不安薬)
27
例
マリファナ(ハシシ)
コカイン
モルヒネ、ヘロイン、コデイン、
+++ ペチジン、フェンタニルなど
*カート:アフリカに生育する植物の成分の総称
?
トルエン、シンナー、アセトン、
エーテル、クロロホルムなど
26