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日本貿易学会東部部会研究報告会
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(和文)
転換期にある日本の電機産業
-現状と今後の方向についての一考察-
(フリガナ)
クサノ
ヒデノブ
名前
草野
英信
所属
和光大学
Eメール
(和文報告概要
40 字×30 行
1,200 字程度)
自動車と共に戦後の日本の高度成長と輸出を牽引してきた電機産業が現在大きな転換
期を迎えている。1980 年代まで世界で圧倒的優位を保っていたデジタル家電や半導体は
韓国、さらに台頭する中国勢に苦戦を強いられて久しい。
日本メーカーのデジタル家電分野の業績を分析してみると消費者向け最終製品、即ち
B2C の分野で特に厳しい状況に陥っている事が分かる。これまで圧倒的優位にあった韓
国サムスン電子や、台湾のエイサー、HTC などにも B2C 分野に陰りが見られるようにな
った。これは競争激化による販売価格の低下とマーケットシェアの低下によるもので、こ
の背景には製品のコモデティ化で高度な技術力を持たずとも、部材の調達と組み立てに秀
でていれば安価で性能を満たす製品が容易に出来るようになった事により中国の新興勢
力が急速にシェアを伸ばしているためである。
一方、ハイテク部品やハイテク素材の分野では日本メーカーは海外他社の追随を許さな
い優位を保っている。例えばスマホではアップル、サムスンの二強が依然上位を占めてい
るがその部品の多くは日本製である。即ち B2B 分野では日本勢は圧倒的存在感を示して
いる。この分野はまだコモデティ化の波を受けていない。このような状況から、日本のデ
ジタル家電メーカーは、これまでの B2C 製品の分野から軸足を、高い技術力に裏打ちさ
れた B2B 分野にシフトすべきであろう。
一方、重電機部門を含む総合電機メーカーは近年、安定した業績を保っている。彼らは、
いち早く「選択と集中」を行ない、コモデティ化の進んだ一般消費者向け製品分野の見直
しを行ない、安定した需要が見込めるインフラ分野に重点を置いた経営形態に切り替えて
いる。実際、世界では鉄道、昇降機、原子力発電プラントなどいわゆるインフラ分野(B2G、
B2B)の計画が目白押しであり、2035 年までに新設される発電所投資額は 850 兆円と見
込まれている。原子力発電(原子炉)のトップメーカーは世界に 6 社しかなく、内 3 社
が日本勢である。日本メーカーのビジネスチャンスは大きい。
又、高速鉄道分野でも、2015 年以降の世界の投資額は年に 23.3 兆円と見込まれている。
十年間では 233 兆円である。新幹線に代表されるこの分野で日本の技術はトップ水準に
あり、これを背景にシェア拡大を目指すべきである。
重電機の分野でも競争力強化のため世界で再編が進められている。2006 年には東芝が
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(米)WH(ウエスティングハウス)の原子力部門を買収した。今年、(米)GE は(仏)
アルストムのガスタービン部門を買収した。三菱重工と日立製作所は火力発電部門を統合
させた。各社とも体力強化に努めている。
原子力発電プラントについては、東日本大震災の後、原発運転の停止に加え、原発輸出
についても厳しい目が向けられているが、上記の通り日本メーカーの存在意義は大きい。
高い技術に培われた日本の原子力発電プラントの輸出を通じて世界に貢献すべきであり、
大いに輸出を伸ばすべきである。
また一方、日本国内の原発は震災以来、全基停止に追い込まれており、火力発電でこの
不足分が補われているが、貿易収支、温暖化対策問題、エネルギー上の安全保障問題等を
考えれば、安全対策を確保しつつ一刻も早く再稼働と増設計画を進めるべきである。
更に、将来、日本のエネルギーのベースロードを担う安定した電源を考えると、海外か
らの核燃料輸入に頼らない高速増殖炉の必要性は極めて高い。高速増殖炉の研究開発は現
在中断しているが、これを再開し世界に先駆けて実用化を図るべきである。
以上
過去類似した発表(論文等を含む)がある場合、その研究との関連性および相違点につい
て明記してください。
日本貿易学会 2012 年 12 月部会で日本の電機業界とそれを取り巻く世界の状況につい
て報告しましたが、その後の二年間を経た今日の日本メーカーの状況、韓国メーカーの変
化、中国メーカーの台頭、世界の総合電機メーカーの再編など、状況は大きく変わってい
ます。この状況を踏まえ、日本の電機産業の現状と方向についての一考察を発表させて頂
くものです。
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