②アセチルコリン

1.アセチルコリンの生体内分布
1A. 末梢神経系
( 運動神経
)
( 自律神経節前線維 )
( 副交感神経節後線維)
②アセチルコリン
1B. 中枢神経系
錐体外路系細胞群
前脳内側基底部細胞群
(マイネルト核を含む)
脚橋-被蓋細胞群
-目標アセチルコリン神経の生体内での役割が説明できる
アセチルコリンの神経終末時の挙動について説明できる
アセチルコリン受容体の特徴について説明できる
アセチルコリン神経系に作用する薬物の臨床応用と問題点が
説明できる
1
2.シナプス部分における神経伝達物質の挙動
2A. 生合成経路
コリン + アセチルCoA →
2.シナプス部分における神経伝達物質の挙動
2B. シナプス小胞への取り込み
VAChTによりシナプス小胞へ取り込まれる
アセチルコリン(ACh)
触媒酵素:コリンアセチルトランスフェラーゼ
CH3C
S
コリン
CoA
O
+
HO
2
CH2CH2
アセチルCoA
2C.
CH3
N
+
放出
エキソサイトーシスによる放出
CH3
CH3
コリンアセチルトランスフェラーゼ
アセチルコリン
O
CH3C
O
CH3
CH2CH2
N
+
CH3
CH3
3
4
2.シナプス部分における神経伝達物質の挙動
2.シナプス部分における神経伝達物質の挙動
2D. 代謝
(コリンエステラーゼ(ChE))によって分解
(コリン)と(酢酸)に分解される
2D. 代謝
(コリンエステラーゼ(ChE))によって分解
(コリン)と(酢酸)に分解される
CH3
アセチルコリン
CH3C O
CH2CH2
N
+
CH3
O
OH
酢酸
HO
CH
CH3
O
コリンエステラーゼ
コリン
+
+
ブチリルコリンエステラーゼ(偽性コリンエステラーゼ)
コリンエステラーゼ
CH3C
N
3
アセチルコリンエステラーゼ(真性コリンエステラーゼ)
CH3
O
CH3
アセチルコリン
PQ CH C
O
CH2CH2
3
CH2CH2
CH3
N
+
CH3C
CH3
O
CH3
OH
酢酸
コリン
+
HO
CH2CH2
CH3
N
+
CH3
CH3
5
2.シナプス部分における神経伝達物質の挙動
6
3.受容体の種類
2E. 再取り込み
神経終末に存在する高親和性コリントランスポーターによって、
(コリン)の状態で神経終末に取り込まれる
3A. イオンチャネル内蔵型
神経節 (NN)型・筋 (NM)型・神経型(α -ブンガロトキシン*感受性、非感受性)
3A-1.神経節 (NN)型受容体:(自律神経節)などに存在
内蔵された陽イオンチャネルが開口しシナプス後細胞に
( EPSP)を発生する
→脱分極を引き起こし、シナプス後細胞を興奮させる
3A-2.筋 (NM)型受容体:(骨格筋細胞)に存在
内蔵された陽イオンチャネルが開口しシナプス後細胞に
( EPSP)を発生させる
→後板電位を脱分極させ、その近隣の筋細胞膜に
活動電位を発生させる→筋収縮が起こる
※このときに透過する陽イオンは、(Na+)が主である
7
(他にも K+や Ca2+が透過する)
8
3.受容体の種類
(国家試験問題より)
96問47消化器系に関する記述のうち、正しい記述を2つ選べ。
3B.
Gタンパク質共役型
M1・M2・M3・M4・M5
胃底腺の壁細胞は、アセチルコリンM1受容体をもち、この
受容体を介するホスホリパーゼCの活性化により胃酸分泌が促
進される。
3B-1. M1受容体:・(Gq/11)タンパク質と共役
→PLC-IP3経路を活性化
→細胞質 Ca 2+量の上昇
M1
・中枢神経系、外分泌腺に多く存在している
外分泌腺→分泌液放出を引き起こす
M3
(国家試験問題より)
96問47消化器系に関する記述、、、
壁細胞
胃底腺の壁細胞は、アセチルコリンM1受容体をもち、この
受容体を介するホスホリパーゼCの活性化により胃酸分泌が促
進される。
9
(国家試験問題より)
96問47消化器系に関する記述のうち、正しい記述を2つ選べ。
10
3.受容体の種類
3B.
Gタンパク質共役型
M1・M2・M3・M4・M5
胃底腺の壁細胞は、アセチルコリンM1受容体をもち、この受容体を介するホスホ
リパーゼCの活性化により胃酸分泌が促進される。
3B-2. M2受容体:・(Gi/o)タンパク質と共役
→AC-cAMP経路を抑制
→PKA活性↓
・(心臓)に多く存在
(PKAの抑制=心機能[心拍数、心収縮力]の抑制
M1
M3
・内向き整流性 K+チャネル (K ir)の活性化により
ペースメーカ電位の発生を抑制
胃酸分泌の主たる役割
ヒスタミン
11
12
3.受容体の種類
4.コリン系受容体作用薬の臨床応用とその原理
3B.
Gタンパク質共役型
M1・M2・M3・M4・M5
4A. アセチルコリンの生体内作用
4A-1.平滑筋
・(収縮)←ムスカリン受容体を介する
・膀胱括約筋→弛緩 (例外的)
3B-3. M3受容体:・(Gq/11)タンパク質と共役
→PLC-IP3経路を活性化
→細胞質 Ca 2+量の上昇
4A-2.外分泌腺
・(分泌亢進)←ムスカリン受容体を介する
・(平滑筋 (腸管や気管支))に存在
→(平滑筋収縮)を引き起こす
4A-3.循環器系
・心臓→(陰性変時作用・房室伝導遅延・心房筋収縮力低下)
↑ムスカリン M2受容体を介する
・(血管内皮細胞)に存在
→(NOの産生)を促進する
・血管→内皮細胞に作用し(NOを遊離)⇒(血管拡張)
↑ムスカリン M3受容体を介する
13
4.コリン系受容体作用薬の臨床応用とその原理
4A.
4.コリン系受容体作用薬の臨床応用とその原理
アセチルコリンの生体内作用
4A-4.感覚器
・眼→瞳孔括約筋の収縮
⇒(縮瞳(ムスカリン受容体を介する) )
毛様体筋の攣縮⇒シュレム管が開く⇒眼房水排泄が上昇
⇒(眼内圧の低下(ムスカリン受容体を介する))
・遠近調節障害が起こる (ムスカリン受容体を介する)
4A-5.骨格筋
・(収縮(ニコチン受容体を介する)
14
)
4B. コリン作用薬 (ムスカリン受容体作動薬)の臨床適用
4B-1.胃腸機能調節
4B-2.弛緩性便秘症
4B-3.尿管・膀胱障害
4B-4.唾液分泌障害
4B-5.緑内障
緑内障にみられる眼房水増加にともなう
眼内圧上昇を改善
4B-6.円形脱毛症
アセチルコリンによるニコチン受容体刺激作用 (機序は不明)
4A-6.中枢神経系
・(不随意運動
)を引き起こす
・(記憶
)の形成に関与 (?)など
15
16
4.コリン系受容体作用薬の臨床応用とその原理
4.コリン系受容体作用薬の臨床応用とその原理
4B. コリン作用薬 (ムスカリン受容体作動薬)の臨床適用
4B-6.円形脱毛症
アセチルコリンによるニコチン受容体刺激作用 (機序は不明)
4C. 抗コリン薬 (ムスカリン受容体拮抗薬)の臨床適用
4C-1.慢性閉塞性肺疾患 (COPD)
4C-2.麻酔補助剤
4C-3.眼底検査薬
4C-4.消化性潰瘍
胃酸分泌を抑制することにより潰瘍の悪化を防ぐ
4C-5.鎮痙
消化管における痙攣性の疼痛・便秘、運動亢進に
よる下痢を抑制する
PQ この理由として
考えられるものは何か17
4.コリン系受容体作用薬の臨床応用とその原理
18
4.コリン系受容体作用薬の臨床応用とその原理
4C. 抗コリン薬 (ムスカリン受容体拮抗薬)の臨床適用
4C-6.胃腸機能調節
4D. コリンエステラーゼ阻害薬の臨床適用
4D-1.認知症
アルツハイマー型認知症の唯一の適用薬剤・シナプス間隙の
アセチルコリン量上昇が治療効果に関与の可能性
4C-7.反射性嘔吐
4C-8.神経性膀胱・膀胱刺激状態による頻尿や尿失禁
4D-2.緑内障
アセチルコリン量の上昇⇒毛様体筋の収縮⇒シュレム管の開口
⇒眼房水排泄促進
⇒眼内圧低下
4C-9.パーキンソン病
線条体に存在するアセチルコリン受容体を
遮断することにより不随意運動を抑える
4D-3.重症筋無力症の診断と治療
4D-4.排尿困難神経因性膀胱による排尿障害
4D-5.クラーレ (抗ニコチン受容体薬)の治療
4C-10.AVブロック (房室伝導ブロック)
19
20
4.コリン系受容体作用薬の臨床応用とその原理
4E.
4.コリン系受容体作用薬の臨床応用とその原理
神経節に作用する薬物の臨床適用
薬物
小話
4E-1.ニコチン依存状態を一時的に補い
最終的に禁煙に導く禁煙補助薬(ニコチン)
バレニクリン
(商品名『チャンピックス』)
保険適用の条件(一部抜粋)
・禁煙の意思
・ニコチン依存症の診断
・ブリンクマン指数が200以上
・文書での同意
ブリンクマン指数 :(1日の喫煙本数×喫煙年数)
21
4.コリン系受容体作用薬の臨床応用とその原理
22
4.コリン系受容体作用薬の臨床応用とその原理
4F. 神経筋接合部に作用する薬物の臨床適用
4F-1.重症筋無力症の治療・診断
〔ネオスチグミン(治療)〕〔アンベノニウム(治療)〕
〔エドロホニウム(診断)〕
4F.
神経筋接合部に作用する薬物の臨床適用
4F-1.重症筋無力症の治療・診断
〔ネオスチグミン(治療)〕〔アンベノニウム(治療)〕
〔エドロホニウム(診断)〕
重症筋無力症の検査と診断
エドロホニウム(テンシロン)試験
4F-2.外科手術時の麻酔の補助
〔スキサメトニウム〕〔パンクロニウム〕
重症筋無力症の筋力低下を
改善する薬(エドロホニウム塩化物)を注射
4F-3.整形外科手術〔スキサメトニウム〕
→この薬によって筋力が一時的に著明に改善された場合
→重症筋無力症の可能性あり
4F-4.麻酔時・気管内挿管時の筋弛緩〔ベクロニウム〕
〔ロクロニウム〕
4F-5.悪性症候群〔ダントロレン〕
筋小胞体からのCa2+遊離を抑制
http://neoral.jp/mg/04/index.html より抜粋
23
24
5.コリン作用薬適用の際の問題点 (副作用)
5A.
5.コリン作用薬適用の際の問題点 (副作用)
コリン作用薬 (ムスカリン受容体作動薬)の禁忌疾病
5B.
抗コリン薬の禁忌疾病
5A-1.気管支喘息
5B-1.下部尿路閉塞性疾患 (前立腺肥大症)
5A-2.パーキンソン病
5B-2.緑内障
5A-3.甲状腺機能亢進症
5B-3.麻痺性イレウス(腸管麻痺)
5A-4.急性胃炎(胃酸過多を伴う)
5B-4.重篤な心疾患(心機能を亢進してしまうため)
5A-5.消化性潰瘍
5B-5.重症筋無力症
5A-6.重篤な心疾患(心機能を抑制してしまうため)
5A-7.冠状血管閉塞
5A-8.消化管・尿路機能的閉塞
25
5.コリン作用薬適用の際の問題点 (副作用)
5C.
26
5.コリン作用薬適用の際の問題点 (副作用)
コリンエステラーゼ阻害薬の禁忌疾病
5D.コリンエステラーゼ阻害薬の中毒症状
5D-1.コリン性クリーゼ
5C-1.消化管・尿路の器質的閉塞
5C-2.脱分極性筋弛緩薬 (スキサメトニウムなど)投与中
5D-2.有機リン中毒
5C-3.迷走神経緊張症
27
28
6.アセチルコリン系に作用する薬物と臨床応用
6.アセチルコリン系に作用する薬物と臨床応用
6A. アセチルコリン受容体作動薬
6A-1.慢性胃炎(消化管機能低下に伴うもの)
〔アクラトニウム〕〔カルニチン〕
6B. ムスカリン受容体拮抗薬
6B-1.パーキンソン病治療薬
〔トリヘキシフェニジル〕〔ビペリデン〕
〔プロフェナミン〕〔ピロヘプチン〕〔メチキセン〕
〔マザチコール〕
6A-2.消化管運動促進薬
〔アセチルコリン〕〔ベタネコール〕
6B-2.気管支拡張薬
6A-3.縮瞳薬、緑内障治療薬
〔ピロカルピン(点眼)〕
(気管支喘息、慢性気管支炎,慢性閉塞性肺疾患 (COPD),抗コリン薬)
〔イプラトロピウム〕〔オキシトロピウム〕
〔チオトロピウム〕
6A-4.唾液分泌促進
〔セビメリン〕 〔ピロカルピン(内服)〕
6B-3.気道分泌物抑制(麻酔前投薬・急性鼻炎の対処療法)
〔スコポラミン(鎮静作用もある)〕
29
6.アセチルコリン系に作用する薬物と臨床応用
30
6.アセチルコリン系に作用する薬物と臨床応用
6B. ムスカリン受容体拮抗薬
6B-4.消化性潰瘍治療薬(胃潰瘍)
〔ピレンゼピン〕(選択的M1受容体拮抗薬)
〔ピペリドレート〕(三級アミン)
〔ブチルスコポラミン〕〔ブトロピウム〕〔チメピジウム〕
〔プロパンテリン〕〔メチルスコポラミン〕
〔プリフィニウム〕〔チエモニウム〕〔オキサピウム〕
(四級アミン)
6B. ムスカリン受容体拮抗薬
6B-5.鎮痙薬(消化管の痙攣性の痛み)
〔ピペリドレート〕(三級アミン合成抗コリン薬)
〔ブチルスコポラミン〕〔チメピジウム〕
〔プロパンテリン〕〔メチルスコポラミン〕
〔チエモニウム〕〔オキサピウム〕
(四級アミン合成抗コリン薬)
〔アトロピン〕〔ロートエキス〕
(ベラドンナアルカロイド)
6B-6.止寫薬(消化管の運動亢進による下痢の抑制)
〔スコポラミン〕〔メペンゾラート(過敏性腸症候群)〕
31
32
6.アセチルコリン系に作用する薬物と臨床応用
6.アセチルコリン系に作用する薬物と臨床応用
6B. ムスカリン受容体拮抗薬
6B-7.制吐薬
〔スコポラミン〕〔アトロピン〕
〔ブチルスコポラミン〕〔ブトロピウム〕
6C. コリンエステラーゼ阻害薬
6C-1.アルツハイマー型認知症
〔ドネペジル〕〔ガランタミン〕〔リバスチグミン〕
6C-2.緑内障治療薬
〔ジスチグミン(点眼)〕
6B-8.麻酔前投薬(気道分泌抑制・鎮静作用)
〔アトロピン〕
6C-3.重症筋無力症の診断と治療
〔ネオスチグミン〕〔ジスチグミン〕
〔ピリドスチグミン〕〔エドロホニウム〕
〔アンベノニウム〕
6B-9.頻尿・尿失禁・過活動膀胱治療薬
〔プロピベリン〕〔オキシブチニン〕
〔ソリフェナシン〕← M3受容体に選択性が高い
〔イミダフェナシン〕← M1、M3受容体に選択性が高い
6C-4.排尿困難治療薬
〔ネオスチグミン〕
33
おまけ
AChの構造から考えられること
ACh
CH3C
O
PQ
おまけ
CH2CH2
N
+
AChの構造から考えられること
ACh
CH3
O
34
CH3
CH3
経口摂取しても効き目はほとんどない なぜか
アセチル基
*4級アミン化合物でも錠剤や散剤として
用いられる薬物はあります
PQ
静脈内投与しても効果持続時間が短い なぜか
H2N
ベタネコール
35
36