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ニッセイ基礎研究所
No.14-171
17 Dec. 2014
貿易統計 14 年 11 月~先行きの貿易
赤字は一段と縮小へ
経済研究部
斎藤 太郎
E-mail: [email protected]
経済調査室長
TEL:03-3512-1836
1. 貿易赤字は大幅に縮小
財務省が 12 月 17 日に公表した貿易統計によると、14 年 11 月の貿易収支は▲8,919 億円の赤字
となったが、赤字幅は市場予想(QUICK 集計:▲9,960 億円、当社予想は▲9,313 億円)を下回った。
輸出が前年比 4.9%(10 月:同 9.6%)と増加を維持する一方、輸入が前年比▲1.7%(10 月:同
3.1%)と 3 ヵ月ぶりの減少となったため、貿易収支は前年に比べ 4,092 億円の大幅改善となった。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲1.7%(10 月:同 4.8%)、輸出価格
が前年比 6.7%(10 月:同 4.6%)
、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲6.9%(10 月:同▲1.7%)
、
輸入価格が前年比 5.7%(10 月:同 4.8%)であった。輸出入ともに数量の伸びが前月から大きく
低下したが、今年の 11 月は平日(月~金)の数が昨年よりも 2 日少なく、通関日数が少なかった
ことも影響している可能性があることには留意する必要がある。
貿易収支の推移
(前年比)
30%
貿易収支・前年差(右目盛)
輸出金額
輸入金額
20%
(前年差、10億円)
1,500
1,000
10%
500
0%
0
▲10%
▲500
▲20%
▲1,000
▲30%
▲1,500
1104 1107 1110 1201 1204 1207 1210 1301 1304 1307 1310 1401 1404 1407 1410
(資料)財務省「貿易統計」
(年・月)
輸出金額の要因分解
(前年比)
20%
(10億円)
貿易収支(季節調整値)の推移
(10億円)
1,600
8,000
1,400
7,000
1,200
6,000
1,000
5,000
輸入(右目盛)
800
4,000
輸出(右目盛)
600
3,000
400
2,000
200
1,000
0
0
▲200
-1,000
▲400
-2,000
▲600
-3,000
▲800
-4,000
▲1,000
-5,000
▲1,200
-6,000
▲1,400
-7,000
貿易収支(季節調整値,左目盛)
▲1,600
-8,000
▲1,800
-9,000
1101 1104 1107 1110 1201 1204 1207 1210 1301 1304 1307 1310 1401 1404 1407 1410
(年・月)
(資料)財務省「貿易統計」
輸入金額の要因分解
(前年比)
30%
25%
15%
輸入金額
輸出金額
数量要因
価格要因
20%
10%
15%
5%
10%
0%
5%
▲5%
0%
数量要因
価格要因
▲10%
▲5%
▲10%
▲15%
1104 1107 1110 1201 1204 1207 1210 1301 1304 1307 1310 1401 1404 1407 1410
(資料)財務省「貿易統計」
1|
(年・月)
1104 1107 1110 1201 1204 1207 1210 1301 1304 1307 1310 1401 1404 1407 1410
(資料)財務省「貿易統計」
|経済・金融フラッシュ No.14-171 copyright ©2014 NLI Research Institute
(年・月)
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2. 原油価格の大幅下落で貿易赤字の縮小が続く公算
季節調整済の貿易収支は▲9,250 億円の赤字となり、10 月の▲9,851 億円から赤字幅が縮小した。
輸出が前月比 0.3%(10 月:同 1.6%)と 6 ヵ月連続で増加する一方、輸入が前月比▲0.5%(10
月:同 0.0%)と 3 ヵ月ぶりに減少した。
11 月の貿易赤字(季節調整値)は直近のピークであった 14 年 1 月(▲17,265 億円)からほぼ半
減したが、足もとの原油価格急落は貿易統計にはまだ一部しか反映されていない。足もとの原油価
格は WTI 先物、ドバイ原油ともに 1 バレル=
50 ドル台半ばとなっているが、11 月の通関
(ドル/バレル)
(入着)ベースの原油価格は 1 バレル=87
120
ドル(当研究所による試算値)で、それより
110
も 5 割以上高い。通関ベースの原油価格は
100
12 月以降も大幅な下落が続くだろう。
また、現時点では円安の急進が原油価格の
下落を相殺し輸入価格は高止まりしている
が、ここにきて円安が一段落していることも
原油価格(WTI先物、ドバイ原油と入着ベース)の推移
130
90
80
WTI先物
ドバイ原油
入着ベース
70
60
1104
1107
1110
1201
1204
1207
1210
1301
1304
1307
1310
1401
1404
1407
1410
(注)入着ベースは円/キロリットルをドル/バレルに換算したもの。WTI先物、ドバイ原油の12月は12/1~12/16の平均
あり、先行きは原油価格の下落が輸入価格の
低下、貿易赤字の縮小に直結することが見込
まれる。現時点では貿易赤字(季節調整済)
は 15 年春頃には▲5,000 億円程度まで縮小す
ると予想している。
(資料)財務省「貿易統計」
(ドル/バレル)
140
(年・月)
通関ベースの原油価格と液化天然ガス価格(LNG)
130
(ドル/100万Btu)
20
液化天然ガス価格(右目盛)
18
120
16
110
なお、通関ベースの原油価格はすでに下落
基調が明確となっているが、液化天然ガスの
100
14
90
原油価格
12
80
70
価格は現時点ではまだ高止まりしている。日
本の天然ガスの調達価格が原油価格連動型の
長期契約となっているため、市場価格の反映
10
60
8
50
40
0801 0807 0901 0907 1001 1007 1101 1107 1201 1207 1301 1307 1401 1407
(年・月)
(注)通関ベースの円/キロリットル、円/トンをドル/バレル、ドル/100万Btuに換算
が遅れているためと考えられる。
6
(資料)財務省「貿易統計」
3. 輸出は持ち直し、輸入は低調
11 月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲3.7%(10 月:同▲0.4%)、EU 向け
が前年比▲4.4%(10 月:同 3.2%)
、アジア向けが前年比▲1.3%(10 月:同 4.5%)となった。
季節調整値(当研究所による試算値)では、
(2010年=100)
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移
120
米国向けが前月比▲3.4%(10 月:同 4.2%)、
EU 向けが前月比▲8.3%(10 月:同 9.6%)
、
米国向け
110
アジア向けが前月比▲2.0%(10 月:同 3.2%)、 100
全体では前月比▲1.3%(10 月:同 3.0%)で
アジア向け
全体
90
あった。11 月はいずれの地域向けも減少した
が、10 月が高い伸びとなった反動による部分
も大きい。10、11 月の平均を 7-9 月期と比べ
80
EU向け
70
1101 1104 1107 1110 1201 1204 1207 1210 1301 1304 1307 1310 1401 1404 1407 1410
(年・月)
(資料)財務省「貿易統計」
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|経済・金融フラッシュ No.14-171 copyright ©2014 NLI Research Institute
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ると、米国向けが 2.5%、EU 向けが 0.5%、アジア向けが 3.9%、全体では 2.8%高くなっている。
景気が弱い EU 向けは低調だが、米国向け、アジア向けは底堅い動きとなっており、輸出数量全体
も力強さには欠けるもののようやく上向きつつある。
一方、11 月の輸入数量指数(当研究所による季節調整値)は前月比 0.3%(10 月:同▲2.1%)
となったが、10、11 月の平均は 7-9 月期よりも▲1.1%低い。輸入の弱さは消費増税後の国内需要
の回復の遅れを反映したものと考えられる。
14 年 7-9 月期のGDP統計の外需寄与度は前期比 0.1%とほぼ横這いにとどまったが、輸入の低
迷が続く一方、輸出が持ち直しつつあることから、10-12 月期は外需による成長率の押し上げ幅が
拡大する可能性が高い。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報
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提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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