ニッセイ基礎研究所 No.14-176 26 Dec. 2014 鉱工業生産 14 年 11 月 ~在庫調整が足踏み 経済研究部 斎藤 太郎 E-mail: [email protected] 経済調査室長 TEL:03-3512-1836 1.在庫指数が 3 ヵ月ぶりの上昇 経済産業省が 12 月 26 日に公表した鉱工業指数によると、14 年 11 月の鉱工業生産指数は前月比 ▲0.6%と 3 ヵ月ぶりに低下した。先月時点の予測指数の伸び(前月比 2.3%)、事前の市場予想 (QUICK 集計:前月比 0.8%、当社予想は同 0.9%)をともに大きく下回る結果となった。 出荷指数は前月比▲1.4%と生産以上に落ち込んだ。この結果、在庫指数が前月比 1.0%と 3 ヵ月 ぶりに上昇し、在庫調整が足踏みする形となった。 11 月の生産を業種別に見ると、新型スマ ートフォンやタブレット端末向けの部品 の増加などから電子部品・デバイスが前月 比 2.3%と 5 ヵ月連続で増加し、駆け込み 鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 (2010年=100) 115 生産 出荷 在庫 110 105 需要の反動減に伴う在庫調整が続く輸送 機械が前月比 0.5%と持ち直したが、これ 100 まで比較的堅調だったはん用・生産用・業 95 務用機械が前月比▲3.5%と落ち込んだ。 90 1201 速報段階で公表される 15 業種中、8 業種が 前月比で低下、7 業種が上昇した。 1204 1207 1210 1301 1304 1307 1310 1401 1404 1407 (注)生産の14年12月、15年1月は製造工業生産予測指数で延長 (資料)経済産業省「鉱工業指数」 1410 1501 (年・月) 財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械) は 14 年 7-9 月期の前期比 0.1%の後、10 月が前月比 6.2%、11 月が同▲2.9%とな った。また、建設投資の一致指標である 建設財出荷は 14 年 7-9 月期の前期比▲ 2.6%の後、10 月が前月比▲1.0%、11 月 が同▲3.1%となった。10,11 月の平均を 財別の出荷動向 (2010年=100) 125 資本財(除く輸送機械) 建設財 耐久消費財 非耐久消費財 120 115 110 105 100 95 7-9 月期と比較すると、建設財は▲0.8% 低い水準となっているが、資本財(除く 輸送機械)は 3.7%高くなっている。 GDP統計の設備投資は 14 年 1-3 月期 1| 90 85 80 75 1201 1204 1207 1210 1301 1304 1307 1310 (資料)経済産業省「鉱工業指数」 |経済・金融フラッシュ No.14-176|Copyright ©2014 NLI Research Institute 1401 1404 1407 1410 (年・月) All rights reserved に前期比 6.2%の高い伸びとなった反動もあり、4-6 月期に同▲4.7%の大幅減少となった後、7-9 月期も同▲0.4%と小幅ながら減少した。ただし、7-9 月期の設備投資の水準は駆け込み需要発生前 の 13 年 10-12 月期の水準を上回っており、企業収益の大幅改善を背景とした設備投資の回復基調 は崩れていないと考えられる。GDP統計の設備投資は 14 年 10-12 月期には増加に転じる可能性 が高い。 消費財出荷指数は 14 年 7-9 月期の前期比▲3.2%の後、10 月が前月比▲0.9%、11 月が同▲2.9% となった。非耐久消費財は 10 月が前月比 1.6%、11 月が同 0.2%と持ち直しているが、耐久消費財 (10 月:前月比▲3.3%、11 月:同▲5.7%)の落ち込みに歯止めがかからない。需要側(家計調 査)の統計からは個人消費が持ち直しつつあることが窺えるが、供給側の統計は個人消費の回復の 遅れを示すものとなっている。 2.3 四半期ぶりの増産も、力強い回復は期待できず 製造工業生産予測指数は、14 年 12 月が前月比 3.2%、15 年 1 月が同 5.7%となった。生産計画の 修正状況を示す実現率(11 月) 、予測修正率(12 月)はそれぞれ▲2.8%、▲0.1%となり、生産計 画が下方修正される傾向が続いている。 予測指数を業種別に見ると、はん用・生産用・業務用機械(12 月:前月比 6.6%、1 月:同 13.7%)、 情報通信機械(12 月:前月比 11.8%、1 月:同 10.0%)が牽引役となっているが、両業種ともに このところ実現率のマイナス幅が大きくなっているため、実績値は大きく下振れる可能性が高い。 一方、生産調整を続けてきた輸送機械が 11 月に前月比 0.5%と小幅な増加となった後、12 月(前 月比 0.3%)、1 月(同 8.9%)も増産計画となっていることは明るい材料だ。輸送機械は生産計画 と実績の乖離が比較的小さい業種であること、水準は依然として高いものの在庫調整が徐々に進捗 していることから、持ち直しの動きが続くことが見込まれる。 最近の実現率、予測修正率の推移 (2010年=100) 4% 輸送機械の生産、在庫動向 130 実現率 予測修正率 3% 2% 120 生産 110 1% 100 0% 90 ▲1% 80 ▲2% 70 ▲3% 60 在庫 50 ▲4% 40 ▲5% 1204 1206 1208 1210 1212 1302 1304 1306 1308 1310 1312 1402 1404 1406 1408 1410 1412 (資料)経済産業省「製造工業生産予測指数」 (年・月) 1101 1104 1107 1110 1201 1204 1207 1210 1301 1304 1307 1310 1401 1404 1407 1410 1501 (注)生産の14年12、15年1月は予測指数で延長 (資料)経済産業省「鉱工業指数」 (年・月) 14 年 11 月の生産指数を 12 月の予測指数で先延ばしすると、14 年 10-12 月期は前期比 2.4%とな る。生産計画が大幅に下方修正される傾向があることを考慮すれば実際には 2%弱の伸びにとどま る可能性が高いが、3 四半期ぶりの増産は確実となった。ただし、依然として在庫調整圧力の強い 状態が続いているため、力強い回復は当面期待できないだろう。 (お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が 目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。 2| |経済・金融フラッシュ No.14-176|Copyright ©2014 NLI Research Institute All rights reserved
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