13世紀古記録にもとづく 未発見の東海地震発生時期検討 小山研究室 3071-6021高柳夕芳 研究目的 左の図(2007年小山)に よると、13世紀に南 海、東海地震が起 こったかどうかわ かっていない。しか し、考古学的資料か ら、13世紀に東海 地震が起きたことは 間違いない。そこで、 京都付近で書かれた 古記録の内容を分析 し、その状況証拠を つかむことを目的と する。 研究方法 13世紀には公的機関による歴史記録が残っ ていない。そのため、現存する資料(猪 隈関白記、経俊卿記、勘仲記)をもとに 西暦、和暦、一日ごとの総文字数、天候、 自然災害とその文字数をあらわして、 Excelを用いて、データベース化する。作 成したデータベースからグラフを作り、 ほかの記録との比較をする。 対象資料と解題 史料名 著編者 略説明 記述年代 刊行体 猪隈関 白記 朝廷に関する記述が多い。承久 近衛家実 の乱時代の人物だが、乱の前後 の記録は一部しかない 1197~1246年 大日本古 記録 経俊卿 記 宮中の出来事について記してあ る。経俊は中納言。自筆原本17 吉田経俊 巻が現存するが元は150巻以上 あったと言われる。 1237~1276年 図書寮叢 刊 経俊卿 記 宮中の儀式・礼法から社会的事 件、諸制度、元寇に関する諸出 勘解由小 来事など多方面に渡っている。 路兼仲 紙背文書があり、勘仲記の内容 と関連しているものがある。多 少欠落している。 1274~1300年 増補史料 大成 2006年瀬戸 猪隈関白記(38) ①建久八年正月~正治元年九月(1197~1199) ②正治元年十月~建仁元年三月(1199~1201) ③建仁元年四月~建仁二年十二月(1201~1202) ④建仁三年正月~承元二年六月(1203~1208) ⑤承元二年七月~建暦元年三月(1208~1211) ⑥断簡・補遺(1198~1235) 勘仲記(25) ①建治元年十二月~弘安七年夏(1275~1284) ②弘安七年秋~弘安十一年夏(1284~1287) ③弘安十一年(正應元年)秋~正安二年春(1287~1300) 経俊卿記(39) ①嘉禎三年十二月~建治二年六月(1237~1276) 年数の割に巻数が 多い猪隈関白記は この資料の中で最 も詳しく記載され ている。そのため、 猪隈関白記→勘仲 記→経俊卿記とい う順で優先的にや る。 猪隈関白記(本文) 今までの結果 猪隈関白記(建久八年~嘉禎元年十月 )をデータ ベース化した。 データベースの例 西暦 和暦 一日の総文字 種類 数 1199 建久十年 正月一日 96 建久十年 正月二日 151 建久十年 正月三日 68 自然現象 自然現象の 総文字数 終日降雨/蝕也、申時、 24 雨、日蝕、 不正見、申終雷雨殊甚、 雷、地震 入夜天晴/小地震 2 晴 天晴 2 晴 天晴 地震の発生した年 西暦 和暦 地震の記述 記述文字数 1198建久九年四月五日 1199建久十年正月一日 1199建久十年四月十日 1199建久十年四月二十六日 1199正治元年四月二十七日 1199正治元年六月十五日 1200正治二年三月十四日 1200正治二年三月二十六日 1200正治二年八月十八日 1200正治二年十一月十四日 1201建仁元年二月十七日 1201建仁元年四月二十一日 1202建仁二年九月一日 1202建仁二年十月十九日 1202建仁二年十二月三日 1203建仁三年二月三日 1203建仁三年九月二十七日 1208承元二年十一月一日 午時許地震 小地震 亥時許地震 午時許地震 巳時地震 午時許地震 午時許地震 晚景地震 及深更地震 有地震 亥時許地震 亥時許地震 入夜小地震 此間地震殊甚 去曉有地震事 去夜有地震云々 早朝小地震 未時許地震 5 3 5 5 4 5 5 4 5 3 5 5 5 6 6 7 5 5 1210承元四年五月三日 子時許有大地震事 8 1210承元四年五月四日 巳時許天文博士資元朝臣拝大舎人頭泰忠朝臣持來 去夜地震密奏 28 450 400 安貞二年四月 安貞二年八月 安貞二年十一月 貞永元年五月 嘉禎元年十月 14000 貞應元年正月 貞應元年四月 元仁元年十一月 嘉禄二年四月 嘉禄二年九月 嘉禄二年十二月 建久八年正月 建久八年四月 建久八年閏六月 建久八年九月 建久八年十二月 建久九年三月 建久九年六月 建久十年三月 正治元年六月 正治元年九月 正治元年十二月 正治二年閏二月 正治二年五月 正治二年八月 正治二年十一月 正治三年二月 建仁元年五月 建仁元年八月 建仁元年十一月 建仁二年二月 建仁二年五月 建仁二年八月 建仁二年閏十月 建仁三年正月 建仁三年四月 建仁三年七月 建仁四年二月 建永元年六月 建永元年十二月 承元元年九月 承元二年三月 承元二年五月 承元二年八月 承元二年十一月 承元三年五月 承元三年八月 承元四年五月 承元四年十一月 建暦元年壬正月 健保元年十二月 健保五年八月 承久元年四月 承久元年七月 承久元年十月 貞應元年正月 貞應元年四月 元仁元年十一月 嘉禄二年四月 嘉禄二年九月 嘉禄二年十二月 安貞二年四月 安貞二年八月 安貞二年十一月 貞永元年五月 嘉禎元年十月 16000 建仁二年閏十月 建仁三年正月 建仁三年四月 建仁三年七月 建仁四年二月 建永元年六月 建永元年十二月 承元元年九月 承元二年三月 承元二年五月 承元二年八月 承元二年十一月 承元三年五月 承元三年八月 承元四年五月 承元四年十一月 建暦元年壬正月 健保元年十二月 健保五年八月 承久元年四月 承久元年七月 承久元年十月 正治二年閏二月 正治二年五月 正治二年八月 正治二年十一月 正治三年二月 建仁元年五月 建仁元年八月 建仁元年十一月 建仁二年二月 建仁二年五月 建仁二年八月 建久八年閏六月 建久八年九月 建久八年十二月 建久九年三月 建久九年六月 建久十年三月 正治元年六月 正治元年九月 正治元年十二月 建久八年正月 建久八年四月 18000 ひと月の総文字数 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0 500 自然現象の文字数 350 300 250 200 150 100 50 0 1197 1198 1199 1200 1201 1202 1203 1204 1205 1206 1207 1208 1209 1210 1211 1212 1213 1214 1215 1216 1217 1218 1219 1220 1221 1222 1223 1224 1225 1226 1227 1228 1229 1230 1231 1232 1233 1234 1235 年別文字数 90000 80000 自然現象 70000 自然現象以外 60000 文 字 数 40000 50000 月単位で欠落 一年間欠落 30000 20000 10000 0 西暦 1197 1198 1199 1200 1201 1202 1203 1204 1205 1206 1207 1208 1209 1210 1211 1212 1213 1214 1215 1216 1217 1218 1219 1220 1221 1222 1223 1224 1225 1226 1227 1228 1229 1230 1231 1232 1233 1234 1235 年別件数 800 地震の件数 700 600 地震以外の自然現象 の件数 500 月単位で欠落 一年間欠落 件 400 数 300 200 100 0 西暦 自然現象の分類 その他, 320 雨, 1048 曇り, 586 その他の天候, 2631 雪, 100 雷, 111 その他 の天文 現象, 501 風, 70 暑・寒気, 音, 15 3 月, 178 地震, 火事, 98 雹, 3 20 月・日蝕, 28 雲, 56 雨 曇り 雪 雷 風 暑・寒気 月 音 火事 月・日蝕 地震 雲 雹 その他の天文現象 その他の天候 その他 自然現象は全部で5768件起きている。しかし、天候のも のが多く、地震は20件しか発生していない。 注意点 具注歴:猪隈関白記は自筆本全23巻からな り、19巻目にてそれまでに入らな かったものや、記事が多い場合、 紙を継ぎいれて記している。 ※建久十年四月からは具注歴の文字数も含む。 その他の天候に晴を含める。 その他の天文現象に日出、日入り、夜明けを含める。 その他に24節気、増水、渇水、下食を含める。 グラフからわかること 総文字数は1202年、1208年をピークに減少傾向 にある。それに伴い、自然現象の記述も増減し ている。 改元や宮中行事があったときに、月の総文字数 が増えている。 全体の地震回数は20件だが、そのうち、1199年 に5回、1200年に4回も起きている。 他の地震は、小地震、地震という記述に対し、 1210年には大地震との記述あり。 今後の予定 ・勘仲記および経俊卿記の分析を行う。 ・3つの資料の分析が終了次第、3つの資料の 地震の記録について比較する。 ・過去の先輩方の研究の地震記録と比較する。
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