創刊号No.1 2009 年6 月15日発行 外来化学療法センター・ニュースレター編集委員 外来化学療法センター(ATC)ニュース発刊にあたって 外来化学療法センター長 今村 博司 近年、治験や臨床試験を通じて、新しい抗がん剤、分子標的 薬剤、ホルモン剤などの抗悪性腫瘍薬が次々と開発されていま す。そして、多剤併用療法の開発、副作用に対する支持療法や 緩和ケアの進化も加わり、がん薬物療法の治療成績は確実に向 上しています。当院のATCはこれまでたくさんの治験や臨床試験 の実績を重ね、がん薬物療法の進化に寄与してきたと自負して います。 有効で安全ながん薬物療法が可能になれば、患者さんの多くは 当然入院ではなく日常生活を継続しながらの外来化学療法を希望されます。医療政策 的にも、2007年に施行された「がん対策基本法」に外来化学療法の推進が大きな柱の 一つと位置づけられ、2008年の診療報酬改定で施設基準を満たせば500点の加算が認 められ、今後もこの加算は増えることが予想されています。一方、入院化学療法は、 DPCの場合、一部の例外を除き、高額な抗悪性腫瘍薬が包括されてしまい、病院経営 上不利になってしまいます。このような社会的、政策的、経済的背景から外来化学療 法の実施件数は増加の一途をたどっています。 しかし、有効で安全な外来化学療法を実現するには、有望な抗悪性腫瘍薬の開発 のみならず、それらをマネージメントする医療スタッフの育成と組織作りが重要で す。当院のATCは、さまざまな医職種のパワー集結による「チーム医療」の積極導 入によって、有効で安全な外来化学療法の実現を目指しています。がんの薬物療 法・・・少しとっつきにくいかも知れませんが、この領域における専門医療スタッ フの不足は当院のみならず、日本の社会問題でもあります。この「ATCニュース」 を通じてがん診療の現状に対する興味や問題意識が少しでも高まればと思い創刊 に至りました。今後ともよろしくお願い申し上げます。 MEMO:ATCとは ATCは Ambulatory Treatment Centre (外来化学療法センター)の略です。 海外では、外来化学療法センターをこのように表現します。特に世界で最も患者さん に信頼される病院の1つと評価されている米国の M.D.アンダーソンがんセンターの 外来化学療法センターはこの名称となっています。当院でも、世界水準の治療と患者 さんのサポートが実施できる病院を目指し、外来化学療法センターをATCと呼称して います。 ATCの設備 ATCは広さ80㎡で、2つの専用診察室を設けています。患者さんが治療を受ける 設備はリクライニングベッド15台(マッサージチェア2台)、固定式ベッド2台です。リ クライニングベッドにはテレビ(DVD対応)が備え付けられ、患者さんが治療を受け ながら映画や音楽を楽しんでいただくことが可能です。また、ATCには専任看護師 やがん専門薬剤師が患者さんの相談をお受けできるようなスペースも設けています。 外来化学療法を安全に実施するための医師・看護師・薬剤師の役割 ATCでは、化学療法を安全に実施するために、処方オーダから患者さんに投与さ れるまで、複数職種がダブルチェックを行っています。 外来化学療法室での患者数の推移(平成15年度からの平成20年度までの治療患者数) 当院では外来化学療法室は、平成14年9月に開設されました。以降、外来化学療法室 で治療を受ける患者さんは増加の一途を辿っています。以下は平成15年度から21年度 までの外来化学療法室の患者数の推移です。 5000 4000 4900 3000 2000 4875 4115 2603 3062 2988 1000 0 H15年度 H16年度 H17年度 H18年度 H19年度 H20年度 外来化学療法加算について 診療報酬の中で平成14年から外来化学療法加算が、300点/件(成人)算定できるよう になりました。平成16年の診療報酬改定では300点/件が400点/件(成人)に引き上げら れました。さらに平成20年度の診療報酬改定では、看護師や薬剤師の基準を満たして いる施設については、 【加算1】として500点/件(成人)が加算できるようになりました。 当院では【加算1】を算定しています。 ・平成 14 年診療報酬新設 300 点、 施設基準(財団法人日本医療機能評価機構認定施設のみ算定) ・平成 16 年診療報酬 400 点/日 15 歳未満の患者 700 点/日 施設基準撤廃 ・平成 20 年診療報酬 500 点/日または 350 点/日 15 歳未満 700 点/日 ※平成 20 年度診療報酬改定内容 【外来化学療法加算 1 500 点/日】の算定要件 ・化学療法の経験を 5 年以上有する専任の常勤医師、常勤看護師、常勤薬剤師 が勤務 ・実施される化学療法のレジメン(治療内容)の妥当性を評価し、承認する委員 会を開催 【外来化学療法加算 2 350 点/日】の算定要件 ・化学療法の経験を有する専任の常勤看護師、当該化学療法につき専任の薬剤師 が勤務 メンバー紹介 ATCでは2008年4月から、金曜日朝8時45分から約30分間、毎週朝カンファ(また は朝礼)を行っています。朝礼を開始したきっかけは、外来化学療法を安全に実施す るためのスタッフ情報共有でした。当初、参加人数はわずか数人でした。しかし、1 年間経過した現在は、朝の短い時間にATCに関わる多職種が集まり議論し、ATC で起きる様々な問題を共有し、解決策を検討しています。最近では、より質の高い外 来化学療法実現し、患者さんのQOLを改善するために、チームで関わる臨床研究を 計画しています。外来化学療法に興味のある方はぜひ、ATC朝礼にご参加ください。 ATC朝礼メンバー 【医師】 今村博司(外来化学療法科部長)、池田恢(副院長・放射線治療科・副部長) 神垣俊二(外科・医長)、岸本朋乃(外科)、川端良平(外科) 【看護師】 住田るみ(副師長)・高田奈津子・藤田裕子・野村恵子・松林温美 【薬剤師】 阿南節子(薬剤科部長・がん専門薬剤師)、藤井千賀(がん専門薬剤師) 藤野美佐子(がん薬物療法認定薬剤師)、藤井一美 【事務局】 本井治(病院経営改革室副理事) 古下政義(総務課主幹)
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