ダイヤモンドモールド室温ナノインプリント法によるダイヤモンド薄膜のナノ

ダイヤモンドモールド室温ナノインプリント法によるダイヤモンド薄膜のナノ加工
原
彰 良 (6345)
指導教員:清原 修次 准教授
1 緒論
ナノインプリントリソグラフィ(Nano Imprint Lithography:
NIL)技術は,光露光や電子ビーム露光など大型でかつ高価格の
装置を必要とする微細加工技術に比べ,低コストでナノサイズパ
ターンの一括転写を実現することができる有望なナノテクノロ
ジーの一つである。 1 ) 一般に NIL 技術は転写材料に PMMA
(Polymethyl methacrylate)を用いる熱サイクル NIL が使
われるが,加熱・冷却の温度変化による転写パターンの精度の低
下,モールドの損傷,加熱温度の影響で密着力が増すことによる
剥離性の悪化,加熱・冷却のためのプロセスが長いなどの問題が
ある。2)そこで,本研究では室温で高粘性であるポリシロキサン
を転写材料として,室温(Room Temperature:RT)-NIL 技術によ
るダイヤモンド薄膜のナノ加工を行うことを目的とする。
ビーム装置(EIS-200ER,(株)エリオニクス)で最適加工条件
のイオンエネルギー400eV で 30 分間加工を行い,加工後の表面
を 3 次元粗さ解析装置(ERA-8900FE,(株)エリオニクス)を
用いて観察した。
3 次元粗さ解析装置による SEM 写真と断面プロファイルを
図 3 に示す。矢印 1,2 で示す点の差を加工深さ(d=1-2)とし,
それぞれ d=0.4µm,180nm となった。
(a)
3 次元ダイヤモンドモールド
転写マスクパターンの
(b)
金属顕微鏡写真
3µm
3µm
(ⅰ)
マイクロパターン
2 実験方法
熱サイクル NIL の問題点を解決するために,転写材料にポリ
シロキサン[ R2SiO ]n を用いた RT-NIL を提案した。室温で硬化
し高粘性なポリシロキサンは,加熱・冷却のプロセスを必要とし
ないため熱サイクル NIL と比べて大幅な工程時間の短縮,コス
トダウンを図ることが可能である。またポリシロキサンは酸化シ
リコンを主成分とし,酸素イオンビームに対してエッチング耐性
があると考えられるので,そのままマスクとしてダイヤモンド薄
膜のナノパターンを形成することが可能である。
600nm
(ⅱ)
図2
ナノパターン
RT-NIL によるポリシロキサンの転写パターン
(a)ECR 酸素イオンビーム加工後の SEM 写真
(b)断面プロファイル
d=0.41µm
1
2
(ⅰ) マイクロパターン
1
d=180nm
2
(ⅱ) ナノパターン
図 3 ECR 酸素イオンビーム加工後のダイヤモンドパターン
4 結論
図 1 本研究で開発した RT-NIL による
ダイヤモンド薄膜のナノ加工プロセス
本研究で作製した 3 次元ダイヤモンドモールドで RT-NIL を行
った。図 1 で示すように,ポリシロキサン(HSG-R7-13,日立
化成工業(株))をダイヤモンド薄膜(10mm×10mm×3.2mm,
膜厚 12µm,表面粗さ Ra=約 1.5nm,(株)アライドマテリアル)
上に回転数 3000rpm,時間 10 秒でスピンコートし,ダイヤモン
ド薄膜上に膜厚 0.5µm のポリシロキサン膜を形成した。次に駆
動源としてエンコーダ付 DC コアレスモータを用いたコンパク
トナノインプリント装置にダイヤモンドモールド(円錐ドット
(図 2(a):φ3µm,φ600nm))をセットした。
3 実験結果
実験結果および
結果および考察
および考察
円錐ドットパターン(φ3µm)の 3 次元凸型ダイヤモンドモール
ド(図 2(ⅰ))を用いて RT-NIL を行い,最適加工条件で ECR
酸素イオンビーム加工後,3 次元凹型ダイヤモンドパターン(図
3(ⅰ))が形成できた。
5 新規性・
新規性・特許性
常温で硬化し,粘性のあるポリシロキサンを用いることで室温
でのナノインプリントを実現しさらなる高スループット化を実
現することに新規性がある。
転写材料として用いたポリシロキサンをそのままマスクとし
て用いダイヤモンド薄膜のナノ加工を行うことに特許性がある。
参考文献
ダイヤモンド薄膜上にポリシロキサン膜が塗布された試料に
1)S. Chou, P. Kraus,and P. Renstrom, Appl. Phys. Lett., 67 (1995) 3114.
最適インプリント圧力 0.5MPa,インプリント時間 10 分で
2)S. Matui, Y. Igaku, H. Ishigai, J. Fujita, M. Ishida, Y. Ochiai,
RT-NIL を行い,転写マスクパターンを形成した(図 2(b))。
M. Komuro, H. Hiroshima, J. Vac. Sci. Technol., B19 (2001) 2081.
マイクロパターンの場合(図 2(ⅰ)),ダイヤモンドモールド
の円錐ドットパターンが,ダイヤモンド薄膜まで精度よく転写さ
謝辞
れた。ナノパターンの場合(図 2(ⅱ))
,ダイヤモンド薄膜まで
本研究は,平成 20 年度 豊橋技術科学大学高専連携教育研究
転写されなかった。この原因としてマイクロパターンと比べてモ プロジュクトに参画して得られたものである。
ールド高さが低いためである。これらの試料を ECR 酸素イオン
また,(財)金型技術振興財団の研究助成によるものである。