会話文の感情計測アルゴリズム An Algorithm for Measuring Human Feelings A1グループ 松本 和幸 研究の背景と目的 さまざまな業種のコンピュータによる自動化 人間に適している仕事・・・介護など 人間は,相手の言葉や仕草・表情などから 気持ちを細やかに汲み取り,柔軟な対応が可能 感性をもつ福祉ロボットの実現 研究の概要 自然言語による会話文から話者の感情を計測する手法を提 案,そのプロトタイプシステムを構築し、アンケート分析結果を 用いた評価実験を行う。 期待 おはよう。 天気が良いですね。 洗濯物がよく乾きそ うですよ。 ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・ 解析 従来手法 話者が,語の指す対象を好きか 嫌いかを示す値 ( 範囲 [-1,1] ) 語の好感度を計算式に代入すること によって、快/不快の判定を行う 提案手法 従来手法と、感情誘発条件理論(Elliott) を組み合わせたルールにより、10種類 の感情の判定を行う 感情の種類 基本となる12種類の感情 Plutchikの多因子分析論による8つの基本情緒に心理 学の実験データに基づいた35種類の感情のうちの4種 類(楽しみ,憧れ,後悔,不安)を加えた12種類 喜び 楽しみ 期待 受容 憧れ 驚き 悲しみ 嫌悪 怒り 恐れ 後悔 不安 感情計算式 会話文を格フレーム化し,格フレームタイプごとに 用意した感情計算式にそれぞれの格要素の好感 度を代入し値を得る. 彼は私をバットで殴った。 格フレーム化 主体(S) 客体(O) 道具(I) 述語(P) 彼 私 バット 殴る 感情計算式 = fs * f p 計算結果の値が正ならば快、負ならば不快 格フレームタイプと感情計算式 番号 タイプ 感情計算式 V1 V(S) fs * fp V2 V(S,OF) fs * (fot – fof) * fp V3 V(S,OT) fs * (fot – fof) * fp V4 V(S,OM) fs * fom * fp V5 V(S,OS) (fs – fos) * fp V6 V(S,O) (a) fo * fp (b) fs * (fo * fp) 感情強度計算手法 述語の好感度(fp) 客体の好感度(fo) 主体の好感度(fs) (fs, fo, fp) : 述語タイプV6 ( V(S,O)型 )の感情強度 道具格の属性値 例) (1) 「彼は私を素手で殴った。」 (2) 「彼は私をバットで殴った。」 素手 属性:堅さ=0.3 バット 属性:堅さ=0.7 → V(S,O,I)型の事象の感情強度は、客体(O)の 好感度の代わりに、道具格の属性値aiを用いて 計算する。 感情強度 = f a f 2 s 2 i 2 p 感情計測ルール 感情計算式の計算結果(感情値)と、 文末の様相を条件として、10種類の感情のうちの 1つの感情として判定 感情値 文末の様相 快/不快(望ましさ)の判定 感情群の判定 文末の様相 感情群の判定に用いる文末の様相 様相の種類 例 否定 「ない」,「ぬ」 推量 「だろう」,「かもしれない」 様態 「ようだ」,「みたいだ」 予定 「つもりだ」 推定 「らしい」,「ちがいない」 希望 「ほしい」,「たい」 完了 「しまった」 伝聞 「そうだ」 感情計測ルール(感情群:他者の運命) 文中に話者 以外の登場人物(他者) が含まれるか? 格フレーム 話者はその他者 のことを好きか? no no yes 喜び yes 受容 yes 感情値D>0 no 感情値D>0 no 受容 ・・・・ K:話者の感情値 D:他者の感情値 yes 感情値K>0 yes no 文中に他者が含ま れない場合は,文 末の様相があるか どうか調べる 感情値K>0 yes no yes 感情値K>0 yes no 受容 怒り 感情値K>0 no 悲しみ 楽しみ 嫌悪 システム構成 会話文 形態素解析 構文解析 システム 格フレーム化 会話文解析部 感情値計算 格解析部 感情計測 入力 好感度設定部 記憶管理部 感情値計算部 計測感情 気分値計算部 感情計測部 出力 システムの実行例 入力発話文 「お父さん、もう帰ろう!これが私のお父さんとお母さん?これ はきっと夢だから早く覚めてほしい。」 計測感情 || 不安 アンケート調査の概要(1/2) アンケートに関するデータ 表A 調査データ(405×46) 会話文 12種類の物語から選んだ405文 アンケート回答者 46人 表B 12種類の物語のタイトルと文の数 「クモのおしゃべり」 29 「妹のかんびょう」 25 「三味線」 42 「エルマーの大冒険」 31 「医者」 38 「千と千尋の神隠し」 52 「スターガール」 46 「白い犬とワルツを」 51 「十二番目の天使」 46 「約束」 48 「若者のすべて」 30 「The Straight Story」 42 アンケート調査の概要(2/2) アンケート集計結果の一部(物語「クモのおしゃべり」) 喜 楽 期 受 憧 驚 し 悲 嫌 怒 恐 後 不 し び み 待 容 れ き み 悪 り れ 悔 安 1 58% 4% 5% 2% 0% 1% 0% 0% 0% 5% 0% 25% 2 20% 9% 3% 0% 1% 67% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 3 4% 1% 17% 4% 20% 2% 17% 12% 8% 0% 0% 16% 4 21% 1% 0% 2% 0% 0% 13% 31% 13% 7% 3% 9% 5 2% 0% 10% 22% 0% 2% 15% 4% 2% 1% 0% 42% 6 48% 3% 16% 11% 0% 0% 2% 0% 0% 1% 0% 19% 各発話において,選択率が第1位と第2位の感情を, 人間の一般的な感情理解とする. 実験方法 ① ② ③ ④ ⑤ 会話文中の語の好感度値を設定する 会話文を格フレーム化可能な形に変形する 会話文を形態素解析,構文解析する 構文解析結果をシステムに入力 システム出力結果をアンケート調査結果と比較する 評価記号 ◎・・・アンケート結果第1位と一致 ○・・・アンケート結果第2位と一致 △・・・アンケート結果第3位以下と一致 ×・・・アンケート結果と全く一致しない システムが「喜び」と 計測した全33文中,8 文が,アンケート調査 結果の第1位,第2位 感情と一致した. 実験結果 感情の一致率 ◎ ○ △ × 一致率 喜び 5 3 12 13 24% 楽しみ 18 14 35 15 38% 期待 4 1 6 3 36% 受容 0 2 1 1 50% 悲しみ 0 0 6 3 0% 5 5 5 7 45% 3 2 8 10 22% 恐れ 0 0 0 3 0% 後悔 0 0 0 0 0% 不安 1 6 8 8 32% 一致率は高いが, 嫌悪 計測された数が 怒り 少ない感情 一致率の 高い感情 成功例 「私は後で銃を持ってきてもらいたい.」 アンケート結果第1位感情: 「期待」 アンケート結果第2位感情: 「不安」 文末の様相 = 「希望」 感情値K = 正 計測感情 期待(第1位感情と一致) 文末の様相が「希望」のとき,会話文が表している事象は,話者にとっ て未確認の事象である.話者にとって「未確認」で,かつ,「快」の事象 のとき,感情計測ルールでは「期待」と判定. 文末の様相は人間の感情理解において考慮されている 文末の様相は感情計測において有効な条件 失敗例 「あの子は偽者よ.あの子の行動の全てが芝居なのよ.あ の子は私たちをだますつもりなんだわ.」 アンケート結果第1位感情: 「楽しみ」 アンケート結果第2位感情: 「期待」 文末の様相 = 「予定」 文中の他者の好感度 = 負 感情値K = 負 感情値D = 負 計測感情 嫌悪(アンケート結果と は一致しない) 人間はこの発話のみを見た場合「不快」な感情と理解 システムは1文のみからの計測を行っている 文脈情報の考慮が必要 対話履歴保存による文脈情報の考慮 物語中の会話文を順に計測していき、その結果を対話履 歴として保存することにより、文脈情報を考慮する。 A-1:「今日は雨が降っています。」 B-1:「私は傘を忘れました。」 A-2:「あら、まぁ。」 事象= [今日、雨が降っている] + [Bが傘を忘れる] (AのBに対する好感度>0) → AはBに対して「気の毒」という感情を持っている まとめ 文末の様相と事象の望ましさに着目した10種類 の感情を計測するルールの提案 感情計測ルールに基づく感情計測のプロトタイプ システムの構築 アンケート調査による人間の一般的な感情理解 の分析 プロトタイプシステムの評価実験 今後の課題 推論規則による感情推定部の追加 好感度学習・自動更新機能の追加 アンケート分析結果から感情の距離の調査 資料1 Elliottの感情型 群 規定 幸 福 ある状況をある事象とし て評価 喜び: ある事象について喜ぶ 苦しみ: ある事象について不快 ある状況を,他者に影 響を与える事象として価 値を推定 嬉しい: 他者にとって望ましい事象について喜ぶ ほくそえむ: 他者にとって望ましくない事象について喜ぶ 憤慨: 他者にとって望ましい事象について不快 気の毒な: 他者にとって望ましくない事象について不快 将 来 的 ある状況を,ある将来 的事象として評価 望み: 将来の望ましい事象について喜ぶ 恐れ: 将来の望ましくない事象について不快 確 認 ある状況を,期待を確 認するもの,またはしな いものとして評価 満足: 確認された望ましい事象について喜ぶ 安堵:確認されなかった望ましくない事象について喜ぶ 恐れていた通りの: 確認された望ましくない事象について不快 失望: 確認されなかった望ましい事象について不快 帰 属 ある状況を,ある行為 者が責任を持つ行為と して評価 誇り: 自分自身の行為を承認 賞賛: 他者の行為を承認 羞恥: 自分自身の行為を非難 叱責: 他者の行為を非難 他 者 の 運 命 名称と感情型 資料2 Plutchik の基本情緒と中間情緒 8つの基本情緒と,隣接する情緒間 に生じる中間情緒(複合感情) 服従 愛 畏敬 恐れ 受容 驚き 喜び 楽観 失望 悲しみ 期待 嫌悪 怒り 攻撃 後悔 侮辱 感情値の計算方法 話者の感情値K = 感情計算式の計算結果 他者の感情値D = 感情計算式の計算結果 1発話が複数の文で構成されている場合,1文ずつ感情計測し, 気分値を計算してその値を現在の感情値とする. n 0のとき 気分値k n : これまでに計測された感情値の数 in1 (1 0.1 * i ) * 感情値 i 感情値K = 気分値k n 最新の感情値 アンケート調査の概要(方法) 会話文を用いたアンケート調査 アンケートの回答には,会話文を発話したときの話者の 感情を12種類の感情の中から選択してもらった. アンケートの集計は,第1感情と第2感情にそれぞれ重 みをつけて行った. 文脈情報 16 K:ホット・シートの次回ゲストは・・・・スターガールです! 17 B:決まり! 18 H:あの子は偽者よ。全部芝居なのよ。私たちをだますつもりなんだわ。 19 B:だますって、一体誰が? 20 H:学校よ。他に考えられる? 21 B:なんのために? 22 H:生活に活を入れようとしているのよ。スターガールはスパイよ。 23 K:なあ、おまえはどう思う?スターガールは学校の回し者なのかな。 24 B:自分でもわかってるだろ。 25 K:何を? 26 B:ここは、ただのハイスクールなんだぞ。CIAじゃなくてさ。 27 K:それはわかってるさ。でも、ヒラリーの説もおもしろいと思うんだよな。 28 B:何が面白いんだよ。もし、あの子が偽者だとしたら、番組で取り上げれない。 「あの子」についての噂話で盛り上がっている 人間は「楽しみ」,「期待」と理解 文末の様相を持つ場合の処理 会話文の構文解析結果 「彼は私をバットで殴るつもりだ.」 # S-ID:1 * 3D <文頭><ハ><助詞><体言><係:未格><提題><区切:3-5> 彼 かれ 彼 名詞 6 普通名詞 1 * 0 * 0 NIL <文頭><漢字><自立> は は は 助詞 9 副助詞 2 * 0 * 0 NIL <付属> * 3D <ヲ><助詞><体言><係:ヲ格><区切:0-0> 私 わたし 私 名詞 6 普通名詞 1 * 0 * 0 NIL <漢字><自立> を を を 助詞 9 格助詞 1 * 0 * 0 NIL <付属> * 3D <デ><助詞><体言><係:デ格><区切:0-0> バット バット バット 名詞 6 サ変名詞 2 * 0 * 0 NIL <品曖-カタカナ><記英数カ><サ変><自立> で で で 助詞 9 格助詞 1 * 0 * 0 NIL <付属> * -1D <文末><句点><用言:強:動><レベル:C><区切:5-5><ID:(文末)><提題受:15> 殴る なぐる 殴る 動詞 2 * 0 子音動詞ラ行 10 基本形 2 NIL <自立> つもりだ つもりだ つもりだ 助動詞 5 * 0 判定詞 25 基本形 2 NIL <付属> 。 。 。 特殊 1 句点 1 * 0 * 0 NIL <文末><付属> EOS
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