CFA NEWSLETTER No29_Jan 2014_final.pdf

CFA NEWSLETTER
グローバル金融アナリストの情報誌
No.029/2014年1月号(隔月刊)
CONTENTS
Topics
■2014年の展望
■東工大初優勝、アジア太平洋地区大会へ~CFAインスティテュート・リサーチ・チャレンジ
■CFA新資格者授与式を開催、金融の将来を担うプロフェッショナルが誕生
CFAJ Update
■コミッティ活動報告
CFA News & Trend
CFA Magazine 1- 2月号より
■金融システムの保護
■ESGファクターを取り入れた投資判断プロセス
■サーキット・ブレーカーの調整
■計量的資産運用手法は個人投資家に普及するか
■先駆者、計量経済学と水晶玉
■MMF改革
CFA People
■プログラム・コミッティ紹介
■今後の主な予定
本ニュースレターでは、世界の公正な投資市場をリードする専門資格CFA®(CFA協会認定証券アナリスト)の認定・推進機関であるCFA協会の
活動から、情報をお届けいたします。取材の参考資料としてご活用いただくことができれば幸いです。
CFA協会ならびに日本CFA協会の詳細はホームページをご参照ください。
■CFA協会/http://www.cfainstitute.org
■一般社団法人日本CFA協会/http://www.cfasociety.org/japan
Topics
2014年の展望
政策面でも、企業統治の強化策を盛
り込んだ会社法改正、日本版スチュ
ワードシップ・コードの策定、公的
資金によるオルタナティブ投資に向
けた準備、NISAの少額投資優遇制
度といった取組みが始まっています。
発表し、企業の取締役は、長期的な
企業の繁栄のために経営者と協働す
ることを責務としており、めまぐる
しく変動する短期的な期待に沿うよ
うな刹那的な戦略には組みするべき
ではないという主張を明確に示しま
した。日本CFA協会では、これらの
寒さ厳しき折、皆様にはますますご
健勝のこととお慶び申し上げます。
このような経済・産業・金融の建て
提言書を翻訳し、日本の機関投資家
直しは、90年代初めの米国や90年代
や監督官庁等に紹介しております。
後半の大陸欧州で起こったことと似
ています。それまで非効率的で競争
昨年は日本経済に漸く回復の兆しが
力を失った経済と見なされ、海外の
現れて参りました。今年も良い方向
投資家からある意味見捨てられてい
での変化が続くものと期待しており
た地域の企業が、政府と協力して打
ます。アベノミクスはカタリスト(触
開策を図った時期でした。日本でも
媒)のようなもので、よりファンダ
漸くそのような取り組みが始まった
メンタルな変化が起こっていると思
ように思えます。
うからです。
第3に、コンプライアンスをどこま
で強化したら良いかについての指針
の提示です。日本CFA協会では、
「ア
セット・マネージャー職業行為規範」
、
「年金制度運営管理機関職員の行動
規範」等の翻訳、配布により、コン
プライアンスと倫理に関するグロー
バルスタンダードを示しています。
こうした変化のなかで、日本CFA協
これらを更に発展させて、将来の投
例えば、財務省の法人企業統計を基
会が果たせる役割は大きいと思いま
資運用業がどうあるべきかを考える
に計算しますと、日本企業の負債比
す。
「フューチャー・オブ・ファイナン
第1に、グローバル人材育成のため
ス」というプロジェクトに、CFA協
の研修です。日本企業が海外に進出
会と協力して取り組んでおります。
し、また外国人株主が増えてくると、
第4に、ウェルスマネジメントフォ
海外の提携先や株主と密接に意思疎
ーラムが中心となり、投資に不慣れ
通して仕事ができる人材が必要にな
な個人投資家向けの投資教育やアド
ってきます。日本CFA協会では、
バイスについての研究会を開催して
CFAプログラム、クラリタスといっ
おります。
率(総負債/純資産)は、1990年時
点の2.8倍から昨年には1.4倍へと半
減しております。また、日本経済新
聞(2013年5月26日)によりますと、
日本企業の手元資金は66兆5600億
円(2013年3月期決算の上場企業)
と過去最高になったそうです。20年
以上にわたるディレバレッジングの
結果、日本企業のバランス・シート
調整が終了したことを示していると
思います。
こうした財務基盤の強化をベースに、
従来は内需型産業と考えられていた
医薬品、食品、情報通信、広告、金
融といった分野で、日本企業による
大型買収を含む海外投資が増えてい
ます。
た自己研修のための資格試験の普及
に努めていることに加え、内外の一
流講師を招いてのセミナーやコンフ
ァレンスで継続教育の機会を提供し
日本CFA協会は、これらの活動を継
続することにより、日本の産業界の
グローバル化に貢献し、経済再生の
一助となることができると考えてお
ております。
ります。
第2に、機関投資家と企業経営者の
対話をどう進めるかについての指針
の提供です。CFA協会は、2006年に
「短期主義の打破」、2012年に「ビ
ジョナリーボード」という提言書を
1
本年も引き続き皆様のご理解とご協
力をお願い申し上げます。
日本CFA協会会長
瀬尾周一
東京工業大学が初優勝、アジア太平洋地区大会へ
CFAインスティテュート・リサーチ・チャレンジ
今回で第6回目を迎えたCFAインス
ティテュート・リサーチ・チャレン
ジ国内決勝が12月6日、東京金融ビ
レッジにて行われ、東京工業大学が
初 優 勝 し ま した 。 同 校は 4月 に タ
イ・バンコクで開催されるアジア太
平洋地区大会へ日本代表として参加
します。
本大会には関東、中京、関西、九州
地区の著名校から過去最多の13校
が参加し、対象企業の株式会社サン
に向けてプレゼンのブラッシュアッ
リオの分析レポート審査に勝ち残っ
プと英語の特訓中です。過去7回行
た上位4校がこの日の決勝に臨みま
われたCFAインスティテュート・リ
した。決勝は前年から英語によるプ
サーチ・チャレンジのうち、アジア
レゼンと質疑応答となっており、参
太平洋地区の代表校が4回、世界チ
加者は国際金融ビジネスと同様の環
ャンピオンに選ばれました。これま
境で、ビジネス実践の場を経験して
でアジアの強豪大学に力及ばなかっ
います。4校のプレゼンと質疑応答、
た日本の学生の奮起と活躍に期待し
提出レポートの総合審査の結果、審
ます。
査員全員から高い評価を受けた東京
工業大学が初優勝しました。また出
場校のなかからサンリオのライセン
スビジネスに対する的確な視点が評
価され、一橋大学に「サンリオ賞」
が授与されました。
日本代表に選ばれた東京工業大学は
現在、4月のアジア太平洋地区大会
CFA新資格者授与式を開催、金融の将来を担うプロフェッショナル
が誕生
関の試験を突破した満足感と喜びに
事は「金融の信頼を取り戻すため
あふれていました。
我々に託された課題は多い。倫理面
授与式に続いて行われたイヤー・エ
ンド・パーティーにはCFA協会アジ
ア太平洋地区マネジング・ディレク
ター、ポール・スミス氏とCFA協会
ボード・オブ・ガバナーズ理事、べ
去る12月13日、日本CFA協会は
2013年に新たにCFA資格者となら
れた方、ならびに資格要件を待つ資
格者候補の37名が出席し、CFA資格
授与式を開催しました。金融の将来
を担うプロフェッショナルとして第
一歩を踏み出した皆さんの表情は、
長期間にわたる試験勉強に耐え、難
ス・ハミルトン女史他多くのゲスト
が出席し、新資格者へエールを送り
ました。瀬尾周一日本CFA協会会長
は冒頭の挨拶のなかで「CFA資格は
ハードな勉強に値するだけの機会を
与えてくれます。
」と述べ、日本CFA
協会へのボランティア参加を呼びか
けました。またべス・ハミルトン理
32
で妥協することなく、金融業界を導
いてほしい」と新資格者への期待を
述べました。
CFAJ Update
このコーナーでは、メディアおよび会員の皆様に日本CFA協会の各分野での活動状況をお知らせしております。
メンバーシップ
本年6月試験に向けた取り組みとし
て、去る1月22日にCFA受験対策セミ
ナーを実施しました。昨年レベルIII
試験に合格された新資格保有者が9
名参加し、それぞれの観点から勉強方
法など受験準備の進め方を話され、参
加者も熱心にメモを取られていまし
た。6月の受験準備に少しでも役立て
て頂けたら幸いです。
また、1月29日には、受験生向けに
Study Group を作って、グループで
切磋琢磨しながら受験に取り組んで
定です。
結果、東京工業大学(指導教官:永
田 京子准教授、メンター:三瓶裕喜
エンプロイヤー・アウトリ
ーチ
CFA フィデリティ投信株式会社)が、
エンプロイヤー・アウトリーチ・コ
事優勝を果たしました。また、惜し
ミッティでは、年末年始にかけてス
くも敗れた 3 校のうち一橋大学(指
ポンサー企業を訪問し、活動報告を
導教官:中野 誠教授、メンター:椎
行っています。また引き続き、金融
名則夫 CFA)は、分析対象企業で
業界を中心とする企業の経営者や人
あった株式会社サンリオの山口 英
事研修ご担当者の方に CFA プログ
雄様(執行役員 広報 IR 室長)
より、
ラムの紹介や、出版物、イベントの
同社のビジネスの本質を的確にとら
ご案内等、様々な情報を提供してお
えていたことを評価され、特別賞と
ります。また、コーポレート・スポ
して「サンリオ賞」を受賞しました。
ンサーの募集もしています。
審査員を引き受けてくださいました、
いただくKickoffも行いました。残念
ながら当日参加できなかったけれど
アドボカシー
聞きたいことがあったという方やセ
CFA 協会本部と連携し本年度の重
ミナーで聞き逃したことがあるとい
点プロジェクトである「フューチャ
う方は協会事務局にご連絡下さい。新
ー・オブ・ファイナンス」を開始し
資格保有者をメンターとしてご紹介
ました。よりよい社会に奉仕し、信
致します(受験者会員限定)。なお、
頼の置ける未来志向の金融業界を形
会員や受験者間の交流促進のため、
成することというミッションのもと、
Happy Hour Eventを定期的に開催
CFA 協会本部と連携して「金融の将
しています。1月末にも交流会があり、
来」プロジェクトに関連する諸々の
業界内でのネットワーキングに役立
施策を推進して行きます。
てていただいております。
1 月 30 日には、
「投資分析環境変化
プログラミング
1月28日には日本クラウド証券の大
前代表取締役に「証券会社によるク
ラウドファンディング」についてご
講演いただきました。 2月6日には
と分析手法高度化に関する理解と情
報発信のためのワーキンググループ」
審査員全員からの高い評価を得て見
王子田 賢史 様 (BNY メロン・ア
セットマネジメント・ジャパン株式
会社 日本株式運用部長)
、栗山 史
様 (フロンティア・アセットマネジ
メント株式会社 マネージング・ディ
レクター)ならびに前田 正吾 様
(シュローダー・インベストメン
ト・マネジメント株式会社 取締役
日本株式運用統括)の皆様、ご協賛
いただきました Factset Pacific 社
(松前 俊顕代表)
、そしてメンター、
グレーダー、実行委員を引き受けて
下さった 30 名以上のボランティア
の方々に深く感謝を申し上げます。
の第1回研究会を開催する予定です。
優勝した東京工業大学は、今年 4 月
また、コーポレートガバナンスの分
23、24 日にタイ、バンコクで開催さ
野では、3 月開催の ICGN 東京コン
ファレンスを後援しています。
日興フィナンシャル・インテリジェ
れる予定のアジア太平洋地区大会に
向けて準備中です。6 年目のトライ
となる今回、悲願の予選通過を果た
ンスの宮井専務取締役をお招きし
ユニバーシティ・リエゾン
「ESG投資のリターンとリスクに関
CFA Institute Research Challenge
する定量分析」についてご講演いた
(IRC)は国内著名校 13 校の中から
だく予定です。2月中旬にはCBOE
12 月 6 日の最終審査に一橋大学、東
倫理教育
から講師をお招きし低金利下におけ
京工業大学、筑波大学、横浜国立大
投資家保護や金融市場の信頼性回復
るデリバティブの使用について、3
学の 4 校が進み、当日行われた英語
が引き続き重要であり、フィデュー
月上旬にはアベノミクスと日本の経
でのプレゼンテーションと分析レポ
シアリーとしての投資運用業に携わ
済環境についてのセミナーを開催予
ートの内容に対する厳正なる審査の
る者には最高水準の倫理・行為規範
33
してくれることを皆で祈りましょ
う!
の採用およびその実践が求められて
ュースレターの発行、CFAブログの
り上げられました。1月中旬に
います。新年度も、CFA プログラム
翻訳・ウェブ掲載を行なっています。
Financial Analyst Journal の論文
パートナー校での倫理講座、会員向
本協会の広報活動も徐々に実を結び
の翻訳・抄訳を中心としたCFAジャ
け及び一般向けの倫理セミナー等の
始め、IRC(CFAインスティトュー
ーナル第3号の発行を行い、次号の
企画、準備を進めてまいります。
ト・リサーチチャレンジ)やGMSS
発行準備に入りました。今後のニュ
(グローバル・マーケット・センチメ
ースレターでは、各コミッティの協
広報・出版
ント・サーベイ)
、インタビューやブ
力を得ながら、活動内容をより積極
引き続き、プレスリリースおよびニ
ログ翻訳内容等が各種メディアに取
的にご紹介してまいります。
CFA News & Trend
このコーナーでは、 CFA Institute会員に配布される隔月刊の会員誌 CFA Magazineの最新号から 6本の記事を日本語
で要約しています。原文は以下の URLをご参照ください。
http://www.cfapubs.org/toc/cfm/2014/25/1
金融システムの保護
Safeguarding the System
ジョン・ロジャーズ、CFA
私たち資産運用業界に携わる者は、
検討し、政策当局にも提言を行って
識ではイスタンブールで金融教育講
市場に混乱をきたすほどシステミッ
います。その目的はボルカー・ルー
座を企画、規制と執行では証券市場
ク・リスクが増大していないか、規
ルの実施、より効果的かつ包括的な
の自主規制に関する報告書を発表し、
制当局は兆候を正しく見極めている
デリバティブ規制、金融システム安
退職後の保障ではオンラインフォー
かを、日々監視しています。5年前
定化に向けた世界的な協調であり、
ラムで退職金積み立ての義務化につ
に経験したようなシステミック・リ
バーゼル委員会による銀行の自己資
いて議論しました。透明性と公平性
スクの顕在化は、管理不能の影響を
本規制強化を支持しています。
については、財務報告に関するレポ
リターンに及ぼし、投資家の自信を
損ない、金融業界に対する信頼を失
墜させます。多くの株式市場が最高
値をつけていますが、信頼感はまだ
回復していません。
また、CFA協会が推進する「金融の
将来(Future of Finance)
」イニシ
アチブは、6つの分野(投資家の最
優先、金融知識、規制と執行、退職
ートや「運用報告書の原則」を公表
しました。金融システム保護では
SRCを通じて数々の提言を行って
います。
後の保障、透明性と公平性、金融シ
詳細は、CFA協会のウェブサイト
そのためCFA協会は、ピュー慈善財
ステムの保護)で、様々な方策・提
(www.cfainstitute.org/futurefinance)
団と共同でシステミック・リスク評
言をまとめています。投資家の最優
を参照してください。
議会(SRC)を創設しました。当SRC
先では、エージェンシー・コストに
は、米国市場におけるシステミッ
関する文献レビューや倫理上のジレ
ク・リスクを特定し軽減する方法を
ンマについての研究を行い、金融知
(要約翻訳:獅々見和秀、CFA)
ESGファクターを取り入れた投資判断プロセス
Integrating ESG Factors in the Investment Process
ジェローン・ボス、CFA
責任投資(RI)の概念は、その重要
ターを取り入れることは、ポートフ
ると考えられていました。しかし、
性を増し、投資運用業界で主流とな
ォリオのリスク調整後リターンの最
責任投資は、投資対象を除外するこ
りつつあります。その流れは不可避
適化に必要不可欠なのです。
とだけではなく、持続可能なビジネ
であり、特にBP社による原油流出事
故やオリンパスの粉飾会計、また進
行しているグローバルな環境問題な
ど最近の事例は、環境・社会・ガバ
ナンス(ESG)ファクターが企業の
株価パフォーマンス、すなわちポー
トフォリオに著しい影響を与えるこ
とを示しています。それゆえ、投資
判断プロセスの中核にESGファク
近年まで責任投資の考え方が受け入
れられてこなかったのは、責任投資
が道義的観点から一定の投資対象を
除外することで投資ユニバースを狭
め、運用パフォーマンスへマイナス
の影響を及ぼすという誤解があった
ためです。それは運用利回りを最大
化するべきとの受託者責任に抵触す
スモデルを選ぶことであり、それが
優れた投資リターンへと繋がるため、
受託者責任を守ることと一致してい
るのです。実際、多くの実証研究は
ESG評価と株価パフォーマンスと
の間にプラスの相関があることを示
しています。また、社会や環境に貢
献する投資対象を選ぶことは、資産
運用会社のレピュテーションリスク
を軽減し、また受託資産の増加にも
ESGファクターを真の意味で投資
技術を磨き、新たな投資対象の分析
繋がります。
判断プロセスに統合するには、主流
方法に適応する必要があります。
反対に、ESGファクターを投資判断
プロセスに含めないことは、むしろ
不完全な評価方法であると言えます。
のアナリストによる投資分析の一部
(要約翻訳:木村貴明)
としてESG評価を組み入れること
です。そのためには、アナリストお
よびファンドマネジャーが投資運用
サーキット・ブレーカーの調整
The Well-Tempered Circuit Breaker
デニス・ディック、CFA
2010年5月6日に米株式市場が瞬間
を満たす猶予を与えるためです。
停止されるという問題があります。
的に急落した「フラッシュ・クラッ
S&P500指数構成銘柄など流動性が
これは制限値幅が狭すぎるからです。
シュ」のような事態を回避するため、
高くティア1 に分類され、3ドル以
一方、LULDは、ニューヨーク証券
米証券取引委員会(SEC)が新たに
上で取引される銘柄の制限値幅は
取引所(NYSE)が2006年から採用
導入したサーキット・ブレーカー制
5%です。その他のティア2 に分類
していた独自のサーキット・ブレー
度(LULD:Limit Up Limit Down)
され3ドル以上で取引される銘柄で
カー(LRP:Liquidity Replenish
は、既に過半数の米国上場株式に適
は10%、3ドル以下で取引されてい
ment Point)より制限値幅が広すぎ
用されています。
る銘柄ではそれより若干広く設定さ
るため、価格変動を助長するとの議
れています。
論もあります。
価(参照株価)を基準に決められた
理論的には誤発注やアルゴリズム取
新LULD制度は個別銘柄ごとの流動
一定の値幅を越えた取引を制限しま
引エラーによる影響を軽減する妥当
性特性を捉えきれていないなど問題
す。気配値が制限値幅の上限・下限に
な解決策ですが、流動性が低くビッ
も残ります。米国証券市場の進化と
達した状態が15秒間続くと取引が5
ド・アスク・スプレッドの大きい銘柄
共にLULDの調整も続くでしょう。
分間一時停止されます。これは新た
では、スプレッドの縮小や不測の事
な流動性が生じて過剰な流動性需要
態が発生した場合等に取引が頻繁に
当制度は、直近5分間の算術平均株
(要約翻訳:井上佐知子)
計量的資産運用手法は個人投資家に普及するか
Do Algorithms Dream of Electric Clients?
エド・マッカーシー
これまで機関投資家が用いてきた計
ンシャルアドバイザーに相談するこ
に抵抗はなく、むしろ計量的手法の
量的な資産運用手法は、個人投資家
とが多かったようです。そのため、
なかでの優劣に関心をはらっている
の間にも広がっていくのでしょうか。
計量的手法の普及に懐疑的な見方が
という見方もあります。
これまでアルゴリズムトレードは何
あります。
結局のところ、各投資家の嗜好に拠
度も市場を不安定にさせてきました
その一方で、計量的な分析ツールに
るのでしょう。優秀なマネジャーを
が、そのような出来事が起きるたび
対する個人投資家の興味が高まって
雇いアルゴリズムを活用することに
に、個人投資家は自らの資産運用に
いるという意見もあります。例えば
対して共感する投資家もいれば、そ
人間による投資判断を取り入れよう
個人投資家やそのアドバイザーは、
のようなアプローチに対してとても
としてきたことが報告されています。
計量的手法を用いて投資判断やリス
不快に思う投資家も存在するのです。
特に経済状況が悪化し市場が下落局
ク管理の客観性を高める努力をして
面にあるときには、個人投資家は自
いるとの指摘があります。また個人
分たちの資産を守るためにファイナ
投資家は計量的な資産運用手法自体
(要約翻訳:金子豊和、CFA)
先駆者、計量経済学と水晶玉
Visionaries, Econometrics, and Crystal Balls
ネイサン・ジェイ、CFA
1907年の金融恐慌以前には存在し
済予測が、景気や金融市場の過度な
経済予測は、人々の経済に対する考
なかった経済予測が、いかにして世
変動を抑制し、安定を図ろうとする
え方を変え、新たなツールをもたら
界的な産業にまで発展したのでしょ
政府の取り組みに繋がったからです。
しました。経済予測は経済の概念を
うか。ハーバード・ビジネス・スク
ールの講師で商業史研究者であるウ
ォルター・フリードマン(Walter
Friedman)氏は、最近の著書の中
で世界恐慌に至るまでの期間に経済
や財務の予測が誕生した歴史的背景
についてまとめています。
初期の経済予測は気象学の進歩に負
うところが大きく、天候と同じよう
に経済も周期的に変動すると考えら
れました。景気が循環するならば、
どの局面にあるかを予測することが
可能です。また、気象学から周期は
計測可能であるという考え方が生ま
フリードマン氏は本誌インタビュー
れ、経済の変化を追う統計が発達し
で、経済・財務予測の進歩は今日の
ました。さらに、20世紀初頭には景
投資家や政策担当者にとって大きな
気変動をコントロールできるという
意味があると述べました。それは経
考え方が広まりました。
確立し、経済を理解する方法を生み
出し、人々の意思決定の拠り所とな
りました。予測自体は純然たる科学
ではありません。分析の要素ばかり
ではなく、勘や推測の要素もありま
す。経済・財務予測の貢献は、予測
の精度ではなく、それがもたらした
ツールにあると考えられます。
(要約翻訳:森由紀、CFA)
MMF改革
Money Market Fund Reforms Long Overdue
カート・シャハト、JD、CFA
投資信託業界と規制機関はMMFに
当面はSECが提案する(1)機関投
改革が必要であるかどうか、長い論
資家部門では変動NAVを用いること
争を繰り広げています。
と、(2) リテール部門と政府部門で
CFA協会のメンバーの間でも、MMF
改革の必要性を巡って様々な意見が
は安定的NAVを使用し続けることを
支持しています。
ます。
欧州と米国の規制当局の提案は、重
点が異なるものの、短期金融商品へ
の投資はリスクがないとする投資家
の誤解には一致して懸念を抱いてお
あります。2012年10月に欧州および
一方、当協会が米国規制当局の動き
り、結局、そのような誤解を払拭す
米国のメンバーを対象として行った
を監視するために設立したシステミ
るためにも、適正で明確な開示が求
調査では、MMFがシステミック・リ
ック・リスク評議会は、全面的な変
められているのです。2008年に発生
スクの要因であるかという質問に対
動NAVの採用を求めてきました。ま
したMMFの破たんが金融市場に連
して賛否が拮抗しており、MMF規制
た、EUに対する提言の中でも、時価
鎖反応を引き起こしてから既に5年、
の改革が必要であるとの回答は、半
評価に対する強い支持を表明してい
今でもこの問題は依然としてホット
数を若干上回る程度でした。
ます。その後、欧州当局は、MMFに
な話題です。いずれの改革提案も論
伴う潜在的なシステミック・リスク
争を生んでいるように、危険の度合
を踏まえ、2013年10月、市場逼迫時
いは高く、我々が正しい判断をしな
の払い戻しを円滑にするため、安定
ければ深刻な結果を招く可能性があ
的NAVに3%の”キャピタル・バッフ
ります。
CFA協会は、米国SECに対し、短期
及び長期的なアプローチによって業
界を改革し、潜在的なシステミッ
ク・リスクを取り除くことを推奨す
る書簡を提出しました。そのなかで、
ァー”を設定することを提案してい
37
(要約翻訳:吉野
雅法)
CFA People
プログラム・コミッティ紹介
も多く、メンバーはLinkedInやメー
打ち合わせを行い、セミナーの当日
ルを通じて頻繁にコミュニケーショ
にはスムーズな運営に向け様々な仕
ンをとっております。
事を行っています。日本CFA協会員
セミナーのトピックは会員そして業
界にとりタイムリーであり有益であ
るよう、会員の皆様のフィードバッ
クやアンケートを反映させるよう心
日本CFA協会のプログラム・コミッ
掛けております。また、国際色豊か
ティでは、会員の皆様に継続教育の
なメンバーを抱えているCFA協会
機会として、また、業界のキープレ
ならではの強みを生かし、講師の
ーヤーでいらっしゃる皆様の情報交
方々も国内外からお招きしており、
換の場として、年間20回を超えるセ
プレゼンテーションの言語も日本語、
ミナーやカンファレンスを企画し開
英語と同程度での開催をしておりま
催しています。
す。講師の方々には基本的にボラン
当コミッティでは、職種や年齢、バ
ックグラウンドの異なる10数名の
メンバーが和気あいあいと活動を行
っております。2ヶ月に1度ほどの頻
度でコミッティ・ミーティングを開
催し、セミナーのアイディアを出し
合って議論し、具体的な開催に向け
ティアでのご講演をいただいており
の皆様にもぜひ積極的にボランティ
アとして参加していただきたいと考
えております。ボランティアのメン
バーからは、
「普段なかなかお会いす
ることができない専門外の分野のプ
ロフェッショナルである講師の方々
と交流できるのが魅力的である」と
いったご意見や、
「魅力的なセミナー
の考案から開催までこぎつけられた
ときに素晴らしい達成感が得られる
のが嬉しい」といったお声をいただ
いております。
ますので、海外からいらっしゃる講
また、特定分野の専門家でもいらっ
師の方には、出張で来日する機会な
しゃる会員の皆様の中で当協会のセ
どにあわせ、ご講演をお願いしてい
ミナーでご講演いただける方がいら
ます。こういった点もグローバルで
っしゃいましたら、ぜひご連絡をい
活動を行っているCFA協会ならで
ただきたく、お願い申し上げます。
はと言えるのではないでしょうか。
ての活動を行っています。隔月のミ
コミッティ・メンバーはセミナーの
ーティングでは議論しきれないこと
準備過程では講師の方々との交渉や
(プログラム・コミッティ・チェア
田中由美、CFA)
2月以降、日本CFA協会が主催する主なセミナー等の予定は以下の
とおりです
●1月 31日(金)
会場:東京金融ビレッジルーム1,2
会場:東京金融ビレッジルーム1,2
Happy Hour Event
時間:19:00-
時間:19:00-
カサカ)
●2月 18日(火)
●3月 4日(火)
時間:19:00-
セミナー「Options for Enhanced
セミナー「An Awkward Case:
Yield and Risk-adjusted Returns in
Japan’s Slump and the dangers of
●2月 6日(木)
Times of Low Interest Rates」
Economic Orthodoxy」
セミナー「ESG投資のリターンとリ
講師:Mr. Matthew Moran (Vice
講師:Mr. Alexander Kinmont
スクに関する定量分析」
president of business development,
(Representative Director and CEO,
講師:宮井 博氏(日興フィナンシャ
Chicago Board Options Exchange
Milestone Asset Management)
ル・インテリジェンス専務取締役)
(CBOE))
会場:東京金融ビレッジルーム1,2
会場:Vous+akasaka(ヌープラスア
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広報事務局
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