学校図書館研究部 - 板橋区教育ネットワーク

学校図書館研究部
1.はじめに
親しむ
広げる
深める
学校図書館の創造
ーアニマシオンの手法を取り入れてー
今、都内の読書活動の研究会で「アニマシオン」を実践するとたくさんの人が集まります。
そのくらい注目されている「アニマシオン」ですが、その主旨も含め正確に伝わっていない
ところがあります。
「アニマシオン」は子どもの潜在能力を開発して「本を読みたいという心」
を引き出し「読む力」を育てることをねらいとしています。1970 年代にスペインのサルトと
いう人が開発しました。1990 年代から日本に導入され、75個の作戦が紹介されました。「ア
ニマシオン」は「活性化」「躍動」という意味があるそうです。「アニマシオン」の活動で注
目したいのは
◎子どもがある回答をした時、その根拠を発表し合い、意見交換をすることを
大切にしていること
◎そして、その根拠を文章の中から見つけ出すということです。書かれ
ていないことや思いつきは認められません。ですから、文章をよく読むようになります。ここ
で求めている力は「ピサ型の読解力」そのものであり、「アニマシオン」が今注目されている
理由がここにあります。「アニマシオン」の手法を取り入れた学習を意図的・計画的に進めて
いくことが「ピサ型の読解力」を身に付けることに繋がっていくと考えています。
2、本年度の活動
4 月 25 日(水)会場(蓮根二小)
①一斉B部会
「読書の楽しみを深める」-アニマシオンの手法を使ってー
「グリーンノウのお客さま」を使って
ワークショップ
講師
アニマシオンを体験しよう「まさかりどんがさあたいへん」
アニマシオン勉強会主宰
蓮根第二小学校
6年
「本となかよし」
授業者
舟渡小学校
1年
③感想文審査会
10月 15 日(月)
④一斉B部会
1 月 25 日(金)会場(板橋第五小学校)
「詩と遊ぼう」
板橋第五小学校
ワークショップ
講師
山口
佳子
滝沢
真理
塚田
正宏先生
あべこべさん
講師
授業者
秀子先生
9 月 12 日(水)会場(舟渡小学校)
②一斉B部会
国語科
黒木
会場(蓮根第二小学校)
-アニマシオンの手法を取り入れてー
3年
藤井
「おじいちゃんがおばけになったわけ」
アニマシオン勉強会主宰
⑤おすすめ本選定会
宏美
2 月 21 日(木)
黒木
会場
秀子先生
氷川図書館
※低中高の各学年 50 冊ずつ、公立図書館児童書担当の方と選定
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3.一斉B部会の実践
平成19年度は、「親しむ
広げる
深める
学校図書館の創造ーアニマシオンの手法を取り入
れてー」という主題の元に、年3回のB部会を実践した。読書に親しみ、アニマシオンにふれるこ
とが、児童の思考力や表現力につながると考え、ワークショップも取り入れて、講師からアニマシ
オンについて学んだり、実際にアニマシオンの授業を行った。
<第1回>4月25日(水)
「読書の楽しみを深める」ーアニマシオンの手法を使ってー
・黒木秀子先生によるアニマシオン
(読書教育研究家
蓮根第二小
6年
(山口佳子学級)
アニマシオン勉強会主宰・読書と作文の教室パウルーム主催)
「グリーンノウのお客さま」L.M.ボストン(評論社)
作戦12番『前かな、後ろかな?』
バラバラの文を話し合いながら順番に並び替える。
○最初に黒木先生による読み聞かせで、本に出会い、児童の読んだ一文を話し合いながら順番に並
び替えていった。注意深く読んで印象的な場面や人物を心に刻むことが、作品を深く味わうこと
につながっていった。
・「まさかりどんがさあたいへん」かこさとし(小峰書店)を使ったワークショップ
○ワークショップでは黒木先生の読み聞かせを聞いた後、さまざまな質問に答える作戦29
番『物
語を語りましょう』を参加者が実際に体験した。出てくる物や様子を正確に思い出すのは難しく、
わかったときの喜びが大きいことが実感され、また、作戦によって適切な本を選ぶことが、アニ
マシオンを成功させる上で重要であることもわかった。
<第2回>9月12日(水)
「本となかよし」
舟渡小
1年
滝沢真理教諭
・「アベコベさん」フランセスカ・サイモン作(文化出版局)
作戦53番『よく見る見える』2枚の絵の変わったところを見つけて発表する。
・講師
元国語部長
塚田正宏先生
○4月の黒木先生の指導を受け授業者自身がアノマドールになり、2枚の絵を比べる授業を実践し
た。絵も魅力的で児童はとても一生懸命に違いを探して発表することができた。また、この「ア
ベコベさん」の本は、特別予算より学校図書館研究部で5冊購入して頂いたので、今後も各学校
で活用していきたい。
○塚田正宏先生からは、国語科における読書の領域や音声表現としての発言についてお話を伺った。
作品から根拠を示して話す大切さや、読み聞かせやアニマシオンによって子ども達につけること
のできる力について、幅広い視野に立ったご指導を頂いた。
<第3回>1月25日(金)「誌と遊ぼう」 板橋第五小
3年
藤井宏美教諭
・作戦42『わたしの言葉、どこにある?』作戦69『言葉がとんでいった』を組み合わせて
「くだもの」(谷川俊太郎)の詩から抜け出た言葉を考える授業を実践した。一人一人が当てはま
るくだものを書きその根拠を発表し合い自分なりのオリジナルの詩を書いた後、谷川氏の詩にふ
れた。
○講師の黒木秀子先生には、アニマシオンについての概論を指導していただいた。読書という行為
の中でのアニマシオンは、注意深く記憶・理解しながら読む、まとめる読み方であり、それが想
像・思索・批判・創造・表現を伴う、広げる読み方につながる。
・「おじいちゃんがおばけになったわけ」キム・フォップスオーカソン(あすなろ書房)を使って、
作戦6『本 と 私 』 の ア ニ マ シ オ ン の ワ ー ク シ ョ ッ プ
・高学年向きの本 の 内 容 や 評 価 に つ な が る 問 い の ア ニ マ シ オ ン を 行 っ た 。
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4
読書感想文の審査会
10月15日(月)
於
蓮根第二小学校
子どもが本に親しむ機会を作り、読書の楽しさ、すばらしさを体験させ、読書の習慣化を図
ること。また、読書の感動を文章に表現することを通して、豊かな人間性や考える力を育み、
更に、自分の考えを正しい日本語で表現する力を養うために本年度も開催された。板橋区の全
小学校から618点の参加があり、区内図書館部の先生方に出席いただき、審査を行った。
今年度は、課題図書や話題となっている本、さらにノンフィクションや科学読み物、昔から
読まれている本など、選書の幅に広がりが見られた。
低学年では、手紙文のように感想を書いてある作品もあり、子どもらしい感想が書けていた。
ただ、規定の字数に達していない作品があり、もう少し長く書けるように指導が必要と感じた。
中学年では、自分の体験とうまく重ね合わせ、深く読んでいる作品が見られた。逆に、あら
すじが多く、感想の少ない作品、「かわいそう」「すごい」のように簡単な言葉で感想をまと
めてしまっている作品もあった。
高学年では、平和や環境、障がい、命、生き方等について真剣に考え、文章につづっている
様子がうかがえた。読み手の心を打つ作品が、更に出てくることを期待している。
本をきっかけに視野が広がったり、自分の生活を振り返って考えを深められたりした様子が、
どの作品からも見えてきた。学校図書館部では、より多くの子どもたちが本に親しめるように
今後も研究を進めていきたい。
特選、入選に選出された作品については、「読書感想文集」を作成し、各校に配布した。各
校で、今後の読書指導や感想文集の参考として活用していただきたい。
《特選》
おきゃくさまは
志村第三小
一年
伊藤
ありす
志村第一小
二年
筑井
卓真
おじいちゃんのごくらくごくらく
大谷口小
二年
渡邉
真澄
もったいないことを教しえてくれた
志村第一小
二年
山上
快晟
『植村直己地球冒険62万キロ』を読んで
緑小
三年
飯田
慎太郎
「いのちのいろえんぴつ」を読んで
板橋第五小
三年
中村
紗也香
いのちのはなしを読んで
志村第五小
三年
田中
みなみ
「ハッピーバースデー」を読んで
常盤台小
四年
山上
佳那子
「いのちのおはなし」を読んで
板橋第一小
四年
渡辺
悠菜
ぼくらのサイテーの夏を読んで
富士見台小
四年
白石
彩夏
「あきらめないこと、それが冒険だ」を読んで
志村第一小
五年
芭蕉宮
悠成
「五体不満足」を読んで
蓮根第二小
五年
橋爪
鞠実
「ハッピーバースデー」を読んで
常盤台小
五年
堤
祐輝
「いのちは見えるよ」を読んで
志村第六小
五年
山本
涼太朗
「佐賀のがばいばあちゃん」を読んで
加賀小
六年
黒崎
芽衣
「あきらめないこと、それが冒険だ」を読んで
舟渡小
六年
久保
美由貴
「一リットルの涙」を読んで
弥生小
六年
島崎
真澄
「五体不満足」を読んで
常盤台小
六年
岡井
大翔
がんばりやの
ひいばあちゃん
こうすけくんへ
もったいないばあさんへ
特選児童は、平成19年12月1日(土)に常盤台地域センターにて表彰された。
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