基礎数学 I 基礎数学 I 教科書:山田善靖他 経営情報学のための微分積分 共立出版 第 1 章 論理と証明 1.3 証明 1.1 論理命題 (1) 推論 (1) 命題と真偽値 正しい命題を前提とし、それから他の正しい命 命題:正しいか間違っているかを明確に定めら 題を得ることを推論という。 三段論法 れる主張、事柄。 二つの命題 α、(α → β) を前提とし、命題 β を 例 2 は 10 よりも小さい。 得る。 1 日は 20 時間である。 (2) 定理の形と証明の仕方 最初の命題は正しく、真である (true) といい、 定理の形 ➀ すべての x について P(x) が成立する。 第二の命題は間違っており、偽である (false) と いう。 ∀x, P(x) (2) 論理結合子 (3) 論理式 ➁ P(x) となる x が存在する。 (4) 真理値表 1.2 述語論理 ∃x such that P(x) (1) 述語とその表現 述語論理では、 ➂ P(x) となる x が唯一存在する。 x1 , x2 , · · · , xn には P という関係がある という命題を P(x1 , x2 , · · · , xn ) で表す。この P を ∃x such that P(x) 述語、各 xi (i = 1, 2, · · · , n) をその項という。 (2) 全称記号と存在記号 (3) さまざまな証明法 「すべての x について P(x) である」というこ ➀ 直接法 とを 公理もしくは前提となる条件から、推論規則を ∀xP(x) 繰り返し適用することにより、結論を導く。 と表し、 「P(x) となる x が存在する」ということを ➁ 対偶による方法 ∃xP(x) 命題 α → β を証明するかわりに、その対偶 ∼ β →∼ α を証明するものである。 と表す。 ➂ 背理法 例 証明したい命題の否定を仮定したとき、公理や すべての正の実数 x に対して、 x = y2 となる 前提とする条件と矛盾することを示すもの。 実数 y が存在する。 ➃ 数学的帰納法 ∀x > 0, ∃y such that x = y2 1) n = 1 について P(n) が成立する。 すべての実数 x, y (x < y) に対して、 x < z < y 2) n = k について P(n) が成立すると仮定する となる実数 z が存在する。 とき、n = k + 1 についても P(k + 1) が成立する。 ∀x, y (x < y), ∃z such that x < z < y の二つを示すもの。 1/4 基礎数学 I 実数の構成 第 2 章 実数 と書ける。ここで、IR × IR = {(x, y) : x ∈ IR, y ∈ IR} 2.1 実数 で 2 次元平面 (2 次元ユークリッド空間、直積と (1) 実数の構成 も呼ぶ) である。 この加算・乗算は実数 a, b, c に対して次の性質 IN:自然数 (natural number) の集まり。 をもつ: IN = {1, 2, 3, · · · } (R1) 和の結合則 (a + b) + c = a + (b + c) (R2) 和の交換則 a+b=b+a (R3) 0 の存在 ∃x ∈ IR such that a + x = a (∀a ∈ IR) この x を 0 と表す。 (R4) −a の存在 ∀a ∈ IR, ∃x ∈ IR such that a + x = 0 この x を −a と表す。 (R5) 積の結合則 (ab)c = a(bc) (R6) 積の交換則 ab = ba (R7) 分配則 a(b + c) = ab + ac (a + b)c = ac + bc (R8) 1 の存在 ∃x ∈ IR such that ax = a (∀a ∈ IR) (R9) a−1 の存在 ∀a ∈ IR (a 0), ∃x ∈ IR such that ax = 1 この x を a−1 で表す。 (R10) 1 0 (ゼロを自然数とすることもあるが、ここではゼ ロは自然数としない。[1]、[2] ではゼロを含めて いる) Z :整数 (integer) の集まり。 Z = {· · · , −3, −2, −1, 0, 1, 2, 3, · · · } Q:有理数 (rational number) の集まり。 Q = {p/q : p, q ∈ Z , q 0} 小数展開が有限小数か循環小数となるもの。(高 \ を用います 校の教科書では”等しくない”は記号 = が、通常 を使います。 p ∈ Z は p が Z に含ま れることを示し、Z p とも書きます) 無理数 (irrational number):小数展開が循環し ない無限小数になるもの。 IR:実数 (real number) の集まり (有理数と無 (3) 順序 理数を合わせたもの)。 二つの実数 a, b に対して (C:複素数 (complex number) については扱わ ない。[3] 参照) a が b より小さいか等しい (2) 四則演算 ことを、a ≤ b または b ≥ a と表す (< =, > = でなく、 実数には加算・乗算が定義されている。すなわ ち、 x ∈ IR, y ∈ IR に対して x + y ∈ IR, ≤, ≥ を用います)。 この順序は実数 a, b, c に対して次の性質を x × y ∈ IR もつ: 関数 (写像) の形で表現すると (O1) 反射則 a≤a (O2) 推移則 a ≤ b, b ≤ c ならば a ≤ c。 + : IR × IR → IR × : IR × IR → IR 2/4 基礎数学 I (O3) 反対称則 a ≤ b, b ≤ a ならば a = b。 (O4) a ≤, b ≤ a の少なくとも一方が必ず成 も無限に存在する。すなわち、有理数は、いたる ところに存在するといっても、数直線上隙間だら けなのである。 り立つ。 2.2 実数の連続性 (O5) a ≤ b ならば任意の c について a+c≤b+c (O6) 0 ≤ a, 0 ≤ b ならば 0 ≤ ab。 a ≤ b, a b のとき、a < b または b > a (1) 有界性 ➀ 上界と下界 A:IR の部分集合 と表す。 (O7) a ≤ b ⇐⇒ a = b または a < b。 任意の要素 x ∈ A に対して a > 0 のとき a は正 (positive)、 a < 0 のとき a は負 (negative)、 a ≥ 0 のとき a は非負 (non-negative)、 a ≤ 0 のとき a は非正 (non-positive) という。 x≤α が成り立つとき、α を A の上界 (ジョウカイ) と いう。A に上界が存在するとき、A は上に有界と 実数 a について、その絶対値 (absolute value) を ⎧ ⎪ ⎪ (a ≥ 0 のとき) ⎨a |a| = ⎪ ⎪ ⎩−a (a < 0 のとき) いう。 任意の要素 x ∈ A に対して β≤x によって定義する。このとき、絶対値について が成り立つとき、β を A の下界 (カカイ) という。 |a| = | − a| A に下界が存在するとき、A は下に有界という。 − |a| ≤ a ≤ |a| A が上にも下にも有界のとき、単に有界と |a| ≥ 0 |a| = 0 ⇐⇒ いう。 a=0 ➁ 最大値と最小値 |ab| = |a||b| S :IR の部分集合 |a + b| ≤ |a| + |b| 集合 S のある要素 a が存在し、すべての x ∈ S が成り立つ。 に対し、 ちゅうみつせい (4) 稠 密 性 x≤a p, q ∈ Q (p < q) の間には、無限に多くの有理 となるとき、a を S の最大値 (maximum) といい、 数が存在する。実際、r1 = (p + q)/2 とすると、r1 max S と表す。 は有理数で、 p < r1 < q。 ∵ 集合 S のある要素 b が存在し、すべての x ∈ S p, q ∈ Q s1 s2 ∃s1 , t1 , s2 , t2 ∈ Z such that p = , q = . t1 t2 p + q s1 t2 + s2 t1 = r1 = 2 2t1 t2 s1 t2 + s2 t1 ∈ Z , 2t1 t2 ∈ Z に対し、 b≤x となるとき、b を S の最小値 (minimum) といい、 min S と表す。 ∴ r1 ∈ Q とくに、S が有限集合 同様にして、 p < r21 < r1 < r22 < q となる有理 {a1 , a2 , · · · , an } 数 r21 , r22 が存在する。この操作を繰り返すこと であるとき、 により、 p, q の間には無限に多くの有理数が存在 max S = max(a1 , a2 , · · · , an ) することがわかる。この性質を稠密性という。実 = max{a1 , a2 , · · · , an } min S = min(a1 , a2 , · · · , an ) 数もこの性質を有している。 (5) 連続性 = min{a1 , a2 , · · · , an } 実数の集合 IR は、しばしば一本の直線で表され る。これを数直線という。有理数の稠密性は、有 と表す。 理数がこの数直線のいたるところに存在すること ➂ 上限と下限 を示している。しかし、この数直線には、無理数 A:IR の部分集合 3/4 基礎数学 I S :A の上界の集合、つまり さらに ∀x ∈ S , (y ≤ x∀y ∈ A) [a, +∞) = {x ∈ IR | a ≤ x} : 無限閉区間 S が最小値 s をもつとき、s を A の上限 (supre- (a, +∞) = {x ∈ IR | a < x} : 無限開区間 mum) といい、sup A と表す。 (−∞, b) = {x ∈ IR | x < b} : 無限開区間 A:S の下界の集合、つまり (−∞, b] = {x ∈ IR | x ≤ b} : 無限閉区間 ∀x ∈ A, (x ≤ y∀y ∈ S ) S が最大値 s をもつとき、 s を A の下限 (infi- この記号を用いると mum) といい、inf A と表す。 IR = (−∞, ∞) (2) 連続性の公理 実数の集合 S が上に有界 (下に有界) なら、上 限 (下限) が存在する。 と書ける。 (3) 区間 a, b ∈ IR, a < b とする。 参考文献 [1] Bourbaki, N. Elements of Mathematics: The- [a, b] = {x ∈ IR | a ≤ x ≤ b} : 有界閉区間 ory of Sets. Paris, France: Hermann, 1968. (a, b) = {x ∈ IR | a < x < b} : 有界開区間 [2] Halmos, P. R. Naive Set Theory. New York: [a, b) = {x ∈ IR | a ≤ x < b} : 半開区間 Springer-Verlag, 1974. (a, b] = {x ∈ IR | a < x ≤ b} : 半開区間 [3] 森 正武, 杉原 正顯 複素関数論, 岩波書店 [email protected] http://www.biwako.shiga-u.ac.jp/sensei/kumazawa/ ギリシア文字 読み方 大文字 小文字 alpha A α gamma Γ epsilon 読み方 大文字 小文字 beta B β γ delta ∆ δ E ,ε zeta Z ζ eta H η theta Θ θ, ϑ iota I ι kappa K κ lambda Λ λ mu M µ nu N ν omicron O o xi Ξ ξ pi Π π, rho P ρ, sigma Σ σ, ς tau T τ upsilon Υ υ phi Φ φ, ϕ psi Ψ ψ chi X χ omega Ω ω 4/4
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