4月14日

基礎数学 I
基礎数学 I
教科書:山田善靖他
経営情報学のための微分積分
共立出版
第 1 章 論理と証明
1.3 証明
1.1 論理命題
(1) 推論
(1) 命題と真偽値
正しい命題を前提とし、それから他の正しい命
命題:正しいか間違っているかを明確に定めら
題を得ることを推論という。
三段論法
れる主張、事柄。
二つの命題 α、(α → β) を前提とし、命題 β を
例 2 は 10 よりも小さい。
得る。
1 日は 20 時間である。
(2) 定理の形と証明の仕方
最初の命題は正しく、真である (true) といい、
定理の形
➀ すべての x について P(x) が成立する。
第二の命題は間違っており、偽である (false) と
いう。
∀x, P(x)
(2) 論理結合子
(3) 論理式
➁ P(x) となる x が存在する。
(4) 真理値表
1.2 述語論理
∃x such that P(x)
(1) 述語とその表現
述語論理では、
➂ P(x) となる x が唯一存在する。
x1 , x2 , · · · , xn には P という関係がある
という命題を P(x1 , x2 , · · · , xn ) で表す。この P を
∃x such that P(x)
述語、各 xi (i = 1, 2, · · · , n) をその項という。
(2) 全称記号と存在記号
(3) さまざまな証明法
「すべての x について P(x) である」というこ
➀ 直接法
とを
公理もしくは前提となる条件から、推論規則を
∀xP(x)
繰り返し適用することにより、結論を導く。
と表し、
「P(x) となる x が存在する」ということを
➁ 対偶による方法
∃xP(x)
命題 α → β を証明するかわりに、その対偶
∼ β →∼ α を証明するものである。
と表す。
➂ 背理法
例 証明したい命題の否定を仮定したとき、公理や
すべての正の実数 x に対して、 x = y2 となる
前提とする条件と矛盾することを示すもの。
実数 y が存在する。
➃ 数学的帰納法
∀x > 0, ∃y such that x = y2
1) n = 1 について P(n) が成立する。
すべての実数 x, y (x < y) に対して、 x < z < y
2) n = k について P(n) が成立すると仮定する
となる実数 z が存在する。
とき、n = k + 1 についても P(k + 1) が成立する。
∀x, y (x < y), ∃z such that x < z < y
の二つを示すもの。
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実数の構成
第 2 章 実数
と書ける。ここで、IR × IR = {(x, y) : x ∈ IR, y ∈ IR}
2.1 実数
で 2 次元平面 (2 次元ユークリッド空間、直積と
(1) 実数の構成
も呼ぶ) である。
この加算・乗算は実数 a, b, c に対して次の性質
IN:自然数 (natural number) の集まり。
をもつ:
IN = {1, 2, 3, · · · }
(R1) 和の結合則
(a + b) + c = a + (b + c)
(R2) 和の交換則
a+b=b+a
(R3) 0 の存在
∃x ∈ IR such that a + x = a (∀a ∈ IR)
この x を 0 と表す。
(R4) −a の存在
∀a ∈ IR, ∃x ∈ IR such that a + x = 0
この x を −a と表す。
(R5) 積の結合則
(ab)c = a(bc)
(R6) 積の交換則
ab = ba
(R7) 分配則
a(b + c) = ab + ac
(a + b)c = ac + bc
(R8) 1 の存在
∃x ∈ IR such that ax = a (∀a ∈ IR)
(R9) a−1 の存在
∀a ∈ IR (a 0), ∃x ∈ IR such that ax = 1
この x を a−1 で表す。
(R10) 1 0
(ゼロを自然数とすることもあるが、ここではゼ
ロは自然数としない。[1]、[2] ではゼロを含めて
いる)
Z :整数 (integer) の集まり。
Z = {· · · , −3, −2, −1, 0, 1, 2, 3, · · · }
Q:有理数 (rational number) の集まり。
Q = {p/q : p, q ∈ Z , q
0}
小数展開が有限小数か循環小数となるもの。(高
\ を用います
校の教科書では”等しくない”は記号 =
が、通常
を使います。 p ∈ Z は p が Z に含ま
れることを示し、Z
p とも書きます)
無理数 (irrational number):小数展開が循環し
ない無限小数になるもの。
IR:実数 (real number) の集まり (有理数と無
(3) 順序
理数を合わせたもの)。
二つの実数 a, b に対して
(C:複素数 (complex number) については扱わ
ない。[3] 参照)
a が b より小さいか等しい
(2) 四則演算
ことを、a ≤ b または b ≥ a と表す (<
=, >
= でなく、
実数には加算・乗算が定義されている。すなわ
ち、 x ∈ IR, y ∈ IR に対して
x + y ∈ IR,
≤, ≥ を用います)。
この順序は実数 a, b, c に対して次の性質を
x × y ∈ IR
もつ:
関数 (写像) の形で表現すると
(O1) 反射則
a≤a
(O2) 推移則
a ≤ b, b ≤ c ならば a ≤ c。
+ : IR × IR → IR
× : IR × IR → IR
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(O3) 反対称則
a ≤ b, b ≤ a ならば a = b。
(O4) a ≤, b ≤ a の少なくとも一方が必ず成
も無限に存在する。すなわち、有理数は、いたる
ところに存在するといっても、数直線上隙間だら
けなのである。
り立つ。
2.2 実数の連続性
(O5) a ≤ b ならば任意の c について
a+c≤b+c
(O6) 0 ≤ a, 0 ≤ b ならば 0 ≤ ab。
a ≤ b, a b のとき、a < b または b > a
(1) 有界性
➀ 上界と下界
A:IR の部分集合
と表す。
(O7) a ≤ b ⇐⇒ a = b または a < b。
任意の要素 x ∈ A に対して
a > 0 のとき a は正 (positive)、
a < 0 のとき a は負 (negative)、
a ≥ 0 のとき a は非負 (non-negative)、
a ≤ 0 のとき a は非正 (non-positive) という。
x≤α
が成り立つとき、α を A の上界 (ジョウカイ) と
いう。A に上界が存在するとき、A は上に有界と
実数 a について、その絶対値 (absolute value) を
⎧
⎪
⎪
(a ≥ 0 のとき)
⎨a
|a| = ⎪
⎪
⎩−a (a < 0 のとき)
いう。
任意の要素 x ∈ A に対して
β≤x
によって定義する。このとき、絶対値について
が成り立つとき、β を A の下界 (カカイ) という。
|a| = | − a|
A に下界が存在するとき、A は下に有界という。
− |a| ≤ a ≤ |a|
A が上にも下にも有界のとき、単に有界と
|a| ≥ 0
|a| = 0
⇐⇒
いう。
a=0
➁ 最大値と最小値
|ab| = |a||b|
S :IR の部分集合
|a + b| ≤ |a| + |b|
集合 S のある要素 a が存在し、すべての x ∈ S
が成り立つ。
に対し、
ちゅうみつせい
(4) 稠 密 性
x≤a
p, q ∈ Q (p < q) の間には、無限に多くの有理
となるとき、a を S の最大値 (maximum) といい、
数が存在する。実際、r1 = (p + q)/2 とすると、r1
max S と表す。
は有理数で、 p < r1 < q。
∵
集合 S のある要素 b が存在し、すべての x ∈ S
p, q ∈ Q
s1
s2
∃s1 , t1 , s2 , t2 ∈ Z such that p = , q = .
t1
t2
p + q s1 t2 + s2 t1
=
r1 =
2
2t1 t2
s1 t2 + s2 t1 ∈ Z , 2t1 t2 ∈ Z
に対し、
b≤x
となるとき、b を S の最小値 (minimum) といい、
min S と表す。
∴ r1 ∈ Q
とくに、S が有限集合
同様にして、 p < r21 < r1 < r22 < q となる有理
{a1 , a2 , · · · , an }
数 r21 , r22 が存在する。この操作を繰り返すこと
であるとき、
により、 p, q の間には無限に多くの有理数が存在
max S = max(a1 , a2 , · · · , an )
することがわかる。この性質を稠密性という。実
= max{a1 , a2 , · · · , an }
min S = min(a1 , a2 , · · · , an )
数もこの性質を有している。
(5) 連続性
= min{a1 , a2 , · · · , an }
実数の集合 IR は、しばしば一本の直線で表され
る。これを数直線という。有理数の稠密性は、有
と表す。
理数がこの数直線のいたるところに存在すること
➂ 上限と下限
を示している。しかし、この数直線には、無理数
A:IR の部分集合
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S :A の上界の集合、つまり
さらに
∀x ∈ S , (y ≤ x∀y ∈ A)
[a, +∞) = {x ∈ IR | a ≤ x} : 無限閉区間
S が最小値 s をもつとき、s を A の上限 (supre-
(a, +∞) = {x ∈ IR | a < x} : 無限開区間
mum) といい、sup A と表す。
(−∞, b) = {x ∈ IR | x < b} : 無限開区間
A:S の下界の集合、つまり
(−∞, b] = {x ∈ IR | x ≤ b} : 無限閉区間
∀x ∈ A, (x ≤ y∀y ∈ S )
S が最大値 s をもつとき、 s を A の下限 (infi-
この記号を用いると
mum) といい、inf A と表す。
IR = (−∞, ∞)
(2) 連続性の公理
実数の集合 S が上に有界 (下に有界) なら、上
限 (下限) が存在する。
と書ける。
(3) 区間
a, b ∈ IR, a < b とする。
参考文献
[1] Bourbaki, N. Elements of Mathematics: The-
[a, b] = {x ∈ IR | a ≤ x ≤ b} : 有界閉区間
ory of Sets. Paris, France: Hermann, 1968.
(a, b) = {x ∈ IR | a < x < b} : 有界開区間
[2] Halmos, P. R. Naive Set Theory. New York:
[a, b) = {x ∈ IR | a ≤ x < b} : 半開区間
Springer-Verlag, 1974.
(a, b] = {x ∈ IR | a < x ≤ b} : 半開区間
[3] 森 正武, 杉原 正顯 複素関数論, 岩波書店
[email protected]
http://www.biwako.shiga-u.ac.jp/sensei/kumazawa/
ギリシア文字
読み方
大文字
小文字
alpha
A
α
gamma
Γ
epsilon
読み方
大文字
小文字
beta
B
β
γ
delta
∆
δ
E
,ε
zeta
Z
ζ
eta
H
η
theta
Θ
θ, ϑ
iota
I
ι
kappa
K
κ
lambda
Λ
λ
mu
M
µ
nu
N
ν
omicron
O
o
xi
Ξ
ξ
pi
Π
π,
rho
P
ρ,
sigma
Σ
σ, ς
tau
T
τ
upsilon
Υ
υ
phi
Φ
φ, ϕ
psi
Ψ
ψ
chi
X
χ
omega
Ω
ω
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