5 . 酸化ストレス誘発性胆汁うっ滞時における胆汁排泄 輸送体の局在制御機構の解明 千葉大学大学院 薬学研究院 生物薬剤学研究室 関根 秀一、堀江 利治 東京大学 医学部付属病院 薬剤部 伊藤 晃成 【目的】肝細胞の毛細胆管側膜に発現するMRP2( Multidrug resistance associated protein 2)や BSEP( Bile salt export pump)等は、ビリルビン やグルタチオン( GSH)、胆汁酸等の内因性基質を濃縮的に胆汁中に排泄 することで胆汁生成の律速段階を担うため、これらの輸送機能低下は胆 汁うっ滞を誘起する。胆汁うっ滞を併発する原発性胆汁性肝硬変やアル コール性肝炎など慢性肝疾患時においては、MRP 2のmRNA 量の変化を 伴わない、毛細胆管側膜での局在性の低下が見られる。これまでに我々 は、急性の酸化ストレス時においてラット肝臓のMrp2が毛細胆管側膜 からの局在変化(内在化)を受けることを報告している。そこで本研究で は、肝炎症時に見られる Mrp 2 の局在変化機構の解明を目的とし、炎症 モデルとして汎用されている lipopolysaccharide( LPS)を用いてその機 構解明を試みた。 【方法】Wistar 系雄性ラットに LPS( 4 mg/kg B.W.)を尾静脈内投与し、 肝臓のホモジネートおよび膜画分をスクロース密度勾配法により調製し た。膜蛋白質と細胞骨格とのアンカー蛋白であるERM( Ezrin-RadixinMoesin)蛋白質のうち、肝臓に高発現する radixin の発現量とそのリン酸 化状態を western blot 法にて検討した。加えて免疫沈降法および免疫染 色法を用いてこれら相互作用変化について評価した。 【結果・考察】LPS投与後3 時間において、Mrp2の総蛋白発現量に変 化がない一方、膜画分における発現量は低下した。一方で Bsep や Mdr 1 、 CD 26といった胆管側膜蛋白質の発現量に変化は認められなかった。 LPS処置により radixin の総発現量は変化せず、膜画分における発現量が 41%に ま で 減 少 し た。radixinの ア ン カ ー蛋 白 と し て の 機 能 を 持 つ Thr564リン酸化 radixinは、LPSの処置によりその総発現量の68 % の減 少が見られた。免疫沈降法による検討で radixin との結合は Mrp 2 のみで 見られ、それら結合がLPSの処置により65% に減少した。免疫染色法に よる定性的な検討においても、胆管側膜近傍および細胞質内での共局在 の崩壊が認められ、LPS 処置による radixin のリン酸化型の減少が Mrp 2 radixin間の相互作用を減弱させ、膜上での安定性を失ったMrp2の内在 化を誘起することが示された。
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