3 . 還元型グルタチオン( GSH)の肝臓から血液への 排出輸送に関与するトランスポーターの探索 東京大学 大学院薬学系研究科 分子薬物動態学教室 前田 和哉、久保 和也、杉山 雄一 還元型グルタチオン( GSH)は、生体における主要な抗酸化物質の一つ であり、細胞内の酸化還元状態の維持に重要な役割を果たしている。ま た医薬品の第 II 相抱合代謝の基質として、肝毒性を誘起する反応性代謝 物 の 除 去 に も 寄 与 し て い る。肝 臓 で 合 成 さ れ た GSHは、multidrug resistance associated protein 2( MRP 2)により胆汁排泄される以上に血 管側へと排出( sinusoidal efflux)されており、肝臓外臓器への GSH の供 給にも寄与する可能性が考えられている。しかしながらこれまで、GSH の sinusoidal effluxに関与する排出トランスポーターは同定されていな い。そこで本研究では、GSH がアニオン性であることに着目し、血管側 に 発 現 が 知 ら れ て い るMRP・organic anion transporting polypeptide ( OATP)類に特に焦点をあて、GSH の sinusoidal efflux を担うトランス ポーターの同定を試みた。 において、循環血ならびに肝静脈中、および肝臓内 GSH 濃度の 測定を行うことで見かけの排出クリアランス( PSeff,app)を算出し、そ れを指標として輸送機能を評価した。Mrp 1・Mrp 3・Mrp 4・Oatp 1a 4欠 損マウス、ならびにMrp6低発現マウスにおいて PSeff,app を、野生型マ ウスと比較したところ、いずれにおいても有意な差は見られなかった。 次に、正常マウスに対して胆管結紮・絶食・phenobarbital 継続投与とい った、肝臓の種々のトランスポーター発現量に変動を与える処理を施し、 各条件下でのPSeff,appを算出することで、mRNA 発現量変動との関係 が良好な相関を示すトランスポーターを探索したところ、Oatp 1a 4・ Mrp 1・Mrp 3・Mrp 4 の発現量変動パターンは、PSeff,app の変動と明らか に異なっていたことから、これらは候補にはならないことが示唆された。 最 後 に、bromosulfophthalein( BSP) 、dibromosulfophthalein( DBSP)併 用時においては、PSeff,app が有意に低下するのに対して、rifampicin 併 用時においては、PSeff,appが有意に上昇した。Rifampicin は、Oatp 1b 2 の基質であることから、GSH との交換輸送に対してtrans-stimulation を かけている可能性を考え、現在、Oatp 1b 2 を最も有力な候補トランスポ ーターと考え、Oatp1 b 2 ノックアウトマウスを用いた検討や による GSH の排出輸送特性について詳細な検討を進めている。 実験
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