11. メタボローム解析によるABCトランスポーター MRP2の一塩基多型

11. メタ ボ ロ ーム 解 析 に よるABCトランス ポーター
MRP 2の一塩基多型
( rs12762549)
と関連する血漿中
化合物の探索
東京大学大学院 薬学系研究科
楠原 洋之、杉山 雄一
大正製薬株式会社 薬物動態研究室
加藤 幸司
【目的】アニオン性化合物を基質とするABC トランスポーター MRP 2
の3'-非翻訳領域にある SNP( rs 12762549 、C> G)は、ドセタキセル誘
発性好中球減少の発生率と関連していることが報告されている( Kiyotani
K, et al Cancer Sci. 99 : 967 - 72 , 2008)
。本研究では、健常人被験者にお
いて、メタボローム解析によりrs12762549 と関連した血漿中 MRP 2 基
質を探索した。
【方法】本研究は東京大学、九州大学と臨床試験センター、北里大学東
病院の薬学系研究科の倫理審査委員会によって承認され、被験者には書
面によるインフォームドコンセントを得た。rs 12762549 で層別化した健
常人ボランティアから採取した血漿サンプルに対して、LC/MS( LTQ
Orbitrap)を用いてメタボノミクス解析を実施した。コントロールおよび
ヒト MRP2 発現膜ベシクルを、ラット胆汁(1%)およびATP あるいは
ATPγS存在下でインキュベートし、胆汁中に含まれる抱合代謝物のベ
シクル内への取り込みを評価した。
【結果】イソフラボノイドの第II相抱合代謝物は、G/ G 遺伝子型患者に
比べて、C/ C遺伝子型の被験者でより高い血漿中濃度を示した。ヘテロ
型では中間の値を示した。bilirubin glucuronide については、多型の影響
は見られなかった。hMRP 2 発現膜ベシクルでは、ATP 存在下で抱合体
の取り込みを検出することができた。
【結論】イソフラボノイドの抱合代謝物はMRP 2基質であり、健常人被
験 者 に お い て rs 12762549 と 関 連 し て そ の 血 漿 中 濃 度 が 変 動 し た。
rs12762549 が MRP 2 の 発 現 量 に 影 響 を 与 え、そ の 結 果 in vivo で の
MRP2活性の変動を生じるものと考えている。