水 産 の 窓 - 茨城県

水
産
の
窓
20-No.6
平成20年5月7日
茨城県水産試験場
シラス漁の見通し(5~7月)
中間パ タ ー ン
暖水パ タ ー ン
1.海況の見通し(5~6月)
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冷水パ タ ー ン
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(1)海況パターンの推移と予測
茨城県沖(犬吠埼から会瀬沖まで)の海況を,海
洋観測結果から得られた過去32年間の100m深水
温をもとに分類すると,「暖水パターン」,「中間パタ
ーン」,「冷水パターン」の3つに分類できます(図1)。
さらにこれを整理すると1月と2月の海況パターンが
6月頃まで持続する傾向が見いだせます。
今年の実況は1月~3月が暖水パターンで推移し
図1 1~6 月の海況パ タ ー ン (100m深平均水温分布
ています。4月は一部欠測したため分類出来ません
でしたが,海況を見ると親潮系冷水が急激かつ大規模に差込んでいたため(水産
の窓 No.4参照),暖水パターンにはならなかったと推測されます。このことは今
年の海況が過去の多くの例とは異なる変化をしたことを示しており,海況パターン
による予測は出来ません。そこで今回は現況からの予測を試みます。
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例 : 5 月)
(2)現況からの予測
現在,本県沿岸域には親潮系冷水が差込んでおり,低温環境となっています(図
2)。今後,沿岸よりの親潮(親潮第1分枝)の勢力は徐々に弱まると推測されます
が,分離した親潮系冷水の南下により,当面は本県海域は冷水の影響を受けると
考えられます。ただし,黒潮系暖水の波及が見られるようになることも予測されるた
め,徐々に低温環境は解消してゆくと考えられます。
(海洋漁業部 小日向)
2.シラス漁の見通し(5~7月)
30000
(1)カタクチイワシ親魚と卵の分布状況
25000
(2)海洋環境の状況
4月の水深10mの水温平年偏差
中ゴボウ・中セグロ
カタクチイワシ資源量指数
①シラスの親であるカタクチイワシの平成20年冬春期にお
ける資源量指数は1,184となり,平年値9,823(過去10年間の
平均)を大きく下回りました(図3)。
②平成20年4月における本県沖のカタクチイワシ卵分布量
は,1調査点あたり47個と平年値42個(過去10年間の平均)
とほぼ同程度でした。しかし,カタクチイワシ卵の分布域は,
黒潮の影響が強い犬吠埼沖3調査点と暖水が残留していた
大洗沖の沿岸側2調査点に限られました。
図2
ゴボウ・大ゴボウ
20000
15000
10000
5000
0
H9
H10
図3
①沿岸水温の指標となる那珂湊定地水温の平年偏差は,平成20年1~3月
までは+0.9~+1.9℃と高く推移していましたが,4月には親潮系冷水の南下
により-0.7℃と一転して低くなりました。
②今後,沿岸よりの親潮(親潮第1分枝)の勢力は徐々に弱まると推測され
ますが,分離した親潮系冷水の南下により,当面は本県海域は冷水の影響
を受けると考えられます。
③シラス稚魚や卵は,黒潮の流れに乗って西南の海域から茨城県沿岸域
に運ばれてくると考えられています。このため、黒潮が茨城県沖を北上して
沿岸域に流入する年は,シラスの来遊水準が高くなる傾向があり(図4),逆
に黒潮が茨城県沖を北上せずに東沖合へ流去する年は、シラスの来遊水
準が低くなる傾向があります(図5)。今年は,4月頃から親潮系冷水が急激
かつ大規模に差込んだため,当面は比較的冷たい海況となることが予測さ
れ,シラスの来遊水準が低くなるパターン(図5)で推移するものと考えられ
ます。
H11
H12
H13
H14
H15
H16
③黒潮反流・前線渦流
により卵稚仔加入促進
④水温上昇
1400トン 以 上
500~ 1400トン
500トン 未 満
H19
H20
⑤沿岸域に
卵稚仔が
保持され
漁獲増
黒潮
図4
LAT
②卵稚仔
が北部へ
輸送される
①黒潮が
常磐沖を北上
来遊水準が高くなるパターン
③鹿島灘の
分布量低下
②卵稚仔が
沖合へ分散
LAT
④親潮が
差し込み
水温低下
表 1 好 ・中 ・不 漁 の 定 義
好漁
中漁
不漁
H18
カタクチイワシの資源量指数
(3)まとめ
以上の結果から,今年5~7月の春シラス漁は「不漁(500トン未
満)」の水準になると予測されます(表1)。
(沿岸資源部 所)
H17
黒潮
図5
①黒潮が低緯度
で東沖合へ流去
来遊水準が低くなるパターン