2.2 緒言 Bayer Yakuhin, Ltd. 2.2 Page 1 of 2 緒言 レゴラフェニブ(一般名:regorafenib[INN]、レゴラフェニブ水和物[JAN])は、Bayer HealthCare 社が開発した経口投与可能な抗悪性腫瘍薬である。レゴラフェニブは血管新生に関 わるキナーゼ(VEGFR1~3、TIE2)、腫瘍微小環境に関わるキナーゼ(PDGFRβ、FGFR)及び腫瘍 形成に関わるキナーゼ(KIT、RET、BRAF)の阻害作用を有し、これにより癌細胞の増殖を抑制す る。複数の腫瘍の異種移植モデルを用いた非臨床薬理試験において、血管新生抑制及び細胞増殖 抑制の両方のメカニズムを介して、抗腫瘍効果が示されている。非臨床試験プログラムから、薬 理学的、薬物動態学的及び毒性学的プロファイルを評価し、レゴラフェニブを結腸・直腸癌を含 む各種がんに対する経口投与可能な抗悪性腫瘍薬として臨床開発することが決定された。本邦に おける死亡原因の第 1 位は悪性新生物であり、その中でも結腸・直腸癌の死亡率及び罹患率は増 加している。独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターの報告*1 によると、2006 年の結腸・直腸癌罹患数推計値は 106,904 人であり、部位別にみた悪性新生物の罹患数では第 2 位であった。厚生労働省の人口動態統計 *2 、 *3 によれば、結腸・直腸癌による死亡数推計値は 2006 年には 41,056 人であったが、2010 年には 44,238 人と年々増加しており、悪性新生物によ る死亡の原因としては、1996 年以降第 3 位である。 結腸・直腸癌に対する治療方針はその臨床病期によって異なる。臨床病期に応じて、外科的切 除、化学療法(術後補助化学療法を含む)、放射線療法が単独又は併用で行われており、本邦と 欧米とでその治療法は同様である。 この十数年間で、外科手術、ハイリスクな限局性疾患に対する補助化学療法、転移性及び進行 性悪性疾患の集学的管理が進歩し、進行性の結腸・直腸癌患者の転帰は改善されてきたものの、 最終的には病勢進行により死に至っている。既存の標準化学療法(フルオロピリミジン、イリノ テカン、オキサリプラチン、ベバシズマブ、KRAS 野生型である場合にはセツキシマブ及びパニ ツムマブを含む)施行後に病勢進行が認められた治癒切除不能、進行・再発の結腸・直腸癌患者 においては、選択できる三次治療以降の治療薬が確立されておらず、通常はベストサポーティブ ケアを受けて癌に起因する症状を緩和しているのが現状である。このような患者集団の予後は極 めて不良であり、依然として新しい治療に対する医療上のニーズが高い。このような状況から、 生存期間の延長など、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌患者の治療に寄与する有効な新 薬の開発が望まれている。また、既存の標準化学療法の多くは点滴投与であり、外来治療でも長 時間病院に拘束されるため患者の負担は大きい。こうしたことから、外来診療での利便性が高い 経口投与の薬剤が望まれている。 本剤の臨床開発は、20 年より開始した。国外第 I 相臨床試験(試験 11650 及び試験 11651) において、試験 11650 では 3 週間投与後、1 週間休薬を1サイクルとする(以下、3 週間投与/1 週間休薬)投与スケジュールで 10~220mg を 1 日 1 回投与、試験 11651 では休薬期間を設けない 連日投与スケジュールで 20~140mg を 1 日 1 回投与にて安全性、忍容性、薬物動態、最大耐用量、 *1 独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター、全国がん罹患モニタリング集計 2006 年罹患数・ 率報告 (2011 年公表)(5.4.4 参照) *2 厚生労働省、平成 11 年人口動態統計、悪性新生物の主な部位別にみた性・年次別死亡数及び率 (2009 年公 表)(5.4.6 参照) *3 厚生労働省、平成 22 年人口動態統計、悪性新生物の主な部位別にみた性・年次別死亡数及び率 表)(5.4.5 参照) (2011 年公 2.2 緒言 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 2 of 2 バイオマーカー及び有効性(抗腫瘍効果)について検討し、第Ⅱ相及び第Ⅲ相臨床試験に推奨さ れる用法・用量を選択した。また、試験 11650 では拡大コホートとして、結腸・直腸癌の追加登 録を行い、安全性とともに抗腫瘍効果のデータ集積を行なった。本臨床試験の結果より、新規抗 悪性腫瘍薬としての有用性が期待できると考え、160mg 1 日 1 回、3 週間投与/1 週間休薬の投 与スケジュールを第Ⅱ・Ⅲ相臨床試験の推奨用法・用量として選定した。 本邦においては、20 年 月より日本人の進行性固形がん患者を対象に安全性、忍容性及び 薬物動態を検討する第Ⅰ相臨床試験(試験 13172)を実施し、外国人患者を対象とした試験 11650 から設定した推奨用法・用量を日本人患者にも適用可能であることを確認した。 本邦が参加した国際共同第Ⅲ相臨床試験(試験 14387)で、レゴラフェニブの臨床的有効性及 び安全性を確認した。フルオロピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカン、ベバシズマブ、 KRAS 野生型である場合にはセツキシマブ、パニツムマブを含む標準化学療法施行後に病勢進行 が認められた転移性結腸・直腸癌患者に対し、レゴラフェニブはプラセボと比較して統計学的に 有意に全生存期間[ハザード比:0.774(95%CI:0.636~0.942)、p=0.005178(片側)、中央 値:レゴラフェニブ群 196 日 vs. プラセボ群 151 日]及び無増悪生存期間[ハザード比:0.494 (95%CI:0.419~0.582)、p<0.000001(片側)、中央値:レゴラフェニブ群 59 日 vs. プラ セボ群 52 日]を延長し、病勢コントロール率を増加させた。レゴラフェニブ投与による副作用 は、管理できるものであり、許容可能であった。 レゴラフェニブは、標準化学療法施行後に病勢進行が認められた転移性結腸・直腸癌患者集団 において単剤で全生存期間を延長し得た、初の経口投与可能なキナーゼ阻害薬である。このよう に標準治療の選択肢がない、生命予後の短い患者集団において、全生存期間の有意な延長が確認 された薬剤は医療上極めて重要である。レゴラフェニブ 160mg を 1 日 1 回、3 週間投与/1 週間 休薬する投与スケジュールにおいて、有効性及び管理可能な安全性プロファイルが示されており、 良好なベネフィット・リスクバランスが確認できた。また、レゴラフェニブは経口投与による外 来診療の可能性を有している。以上より、レゴラフェニブは、治癒切除不能、進行・再発の結 腸・直腸癌患者集団における医療上のニーズに応え、新たな医療の選択肢を提供できるものと考 える。 2012 年 4 月に米国、20 年 月に EU(中央認可方式)での承認申請を行っており、これらに 引き続き、国際的に各国への承認申請を予定している。本邦においても、本申請資料に含まれる 非臨床試験成績及び臨床試験成績を踏まえ、以下に示す内容でレゴラフェニブの医薬品製造販売 承認申請を行うこととした。 申請区分 医療用医薬品、新有効成分含有医薬品 販売名 スチバーガ錠 40mg 一般名 regorafenib(INN)、レゴラフェニブ水和物(JAN) 剤形 フィルムコーティング錠 成分及び分量 1錠中にレゴラフェニブ 40mg(レゴラフェニブ水和物として 41.49mg)を含有 する。 効能又は効果 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌 用法及び用量 通常、成人にはレゴラフェニブとして 1 日1回 160mg を 3 週間連日経口投与 し、その後 1 週間休薬する。これを 1 サイクルとして投与を繰り返す。なお、 患者の状態により適宜減量する。
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