Regorafenib は肝細胞癌二次治療の“新たなゴールドスタンダード” Regorafenib 'New Gold Standard' for Second-Line in Liver Cancer 18th World Congress on Gastrointestinal Cancer (WCGC). Abstract LBA-03. Presented 30 June 2016 (ケアネットコンテンツから引用) 経口マルチキナーゼ阻害薬 regorafenib(スチバーガ)は、治療歴 のある肝肝細胞癌(HCC)患者に対して有意な生存ベネフィットを 示し、第一線の専門医らがこの薬は sorafenib(ネクサバール)治療 後の 2 次治療のゴールドスタンダードになるはずだと提案している。 regorafenib は、すでに大腸がんおよび消化管間質腫瘍に対する 承認を取得しているが、肝細胞癌が次の適応となる可能性がある。 第 III 相臨床試験 RESORCE 試験の新たな結果は、ここ第 18 回 世界消化器がん学会(WCGC)で発表された。今回の結果は、Liver Unit Hospital Clinic(スペイン)の BCLC グループ長、バルセロナ 大 学 、 Network for Biomedical Research for Hepatic and Digestive Diseases の科学ディレクターの Jordi Bruix 氏が発表し た。 regorafenib は対照群と比較して全生存期間をほぼ 3 ヵ月改善し、 無増悪生存期間および無増悪期間(TTP)も注目に値する改善を示 した。安全性と忍容性プロファイルも期待通りであった。 血管新生、腫瘍形成および腫瘍微小環境に関わるプロテインキナ ーゼ活性を阻害する regorafenib は、2008 年に sorafenib の第 III 相試験データが発表されて以降、局所療法不能の HCC 患者の全生 存期間を有意に改善した初めての薬である。 Bruix 氏は「regorafenib は有効で、安全であり,本物の死亡リス クに関連する強力な効果を示した」と述べた。さらに「このほか、高 い奏効率が認められ、病勢コントロール率は 2 倍であった。忍容性 は妥当で有害事象は管理可能であり、regorafenib の既知の安全性 プロファイルと一致していた」と続けた。 Institut Paoli-Calmettes(フランス、マルセイユ)の Jean-Luc Raoul 氏 は 、 発 表 後 の デ ィ ス カ ッ シ ョ ン で 、 今 回 の 結 果 は 「regorafenib は現在、sorafenib に忍容性がある患者に対する sorafenib 治療後の 2 次治療のゴールドスタンダードである」こと を示唆するものだとコメントした。同氏は、この薬剤が「全生存期間、 TTP、客観的奏効率の面で真に有意義なベネフィット」をもたらし、 「安全性に関して大きな問題がなかった」ことを付け加えたうえで、 「われわれは計画した 2 次治療の試験デザインを、確実に再設計し なければならない」と指摘した。 しかしながら、Raoul 氏はまた、regorafenib と免疫療法との比 較がいまや“義務”となったと述べ、その理由として、regorafenib が数ヵ月の生存期間をもたらす“fits all”な薬剤であるのに対し、免 疫療法は“fits some”、一部の症例でのみ生存期間の大幅な延長を 示すことを挙げた。また regorafenib 奏効の“予測因子の探索”も 必要になるだろうと述べた。しかし Raoul 氏は、regorafenib の無 作為化を sorafenib 治療終了後 10 週時点までに実施したことが結 果に影響を与えた可能性があることも指摘した。その間に進行した 可能性があるためである。同氏は最後に、今回の regorafenib の結 果を sorafenib の同 Stage での結果と比較した。sorafenib の第 III 相試験結果が掲載された 2008 年の New England Journal of Medicine 誌を引用し、 「進行肝肝細胞癌の患者のうち、sorafenib 治 療群の生存期間中央値および放射線画像診断上の無増悪期間がプラ セボ群と比較して 3 ヵ月近く長かった」と述べた。 【試験の詳細】 この第 III 相試験は、 21 ヵ国で 20 日間以上の sorafenib (400mg 以上/日)による治療後、放射線画像診断で増悪を確認した HCC 患 者 573 例を対象に実施した。患者を regorafenib(160mg)群と プラセボ群に 2 対 1 の割合で無作為に割り付け、1 日 1 回を 3 週 間服用した後 1 週間休薬するという 4 週間を 1 サイクルとして投 与した。 BCLC Stage B または C の HCC 患者を対象として、地理的地域 (アジアまたはその他の地域) 、微小血管浸潤および肝外疾患の有無、 ECOG performance status(PS)スコア(0 または 1)、α-フェ トプロテイン値(400ng/mL 未満または 400ng/mL 以上)によ り層別化した。 ベースラインの治療群とプラセボ群の特徴はバランスが取れてい た。患者全体の年齢中央値は 63 歳、88%が男性、87%が BCLC Stage C であった。 治療期間中央値は、regorafenib 群が 3.6 ヵ月、プラセボ群が 1.9 ヵ月であった。 全生存期間中央値は regorafenib 群が 10.6 ヵ月、プラセボ群が 7.8 ヵ月であり、死亡リスクの有意な低下が認められた(ハザード比 [HR]:0.62) 。 研究者らは、regorafenib 群の無増悪生存期間の中央値が 3.1 ヵ 月であるのに対し、プラセボ群は 1.5 ヵ月であり、regorafenib 群 で有意に長かったことを認めた(HR:0.46、p<0.001) 。 同様の結果が TTP でも認められ、regorafenib 群の中央値が 3.2 ヵ月であるのに対し、プラセボ群では 1.5 ヵ月だった(HR:0.44、 p<0.001)。重要なのは、サブグループ解析では、全生存、無増悪 生存期間および TTP の改善が全グループに確認されたことである。 regorafenib 群の病勢コントロール率はプラセボ群と比較して有 意に高く(65.2% vs. 36.1%、p<0.001)、完全奏効+部分奏効 率は regorafenib 群が 10.6%、プラセボ群が 4.1%だった(p= 0.01)。 Grade 3 以上の有害事象は regorafenib 群の 79.7%、プラセボ 群の 58.5%に発現した。最も多く認められた Grade 3 以上の有害 事象は、高血圧(15.2% vs. 4.7%) 、手足の皮膚障害(12.8% vs. 0.5%) 、疲労(9.1% vs. 4.7%) 、下痢(3.2% vs. 0.0%)だった。 regorafenib 群の 68.2%、プラセボ群の 31.1%が、有害事象によ り用量を変更した。 試験薬の最終投与から 30 日以内の死亡は、プラセボ群のほうが regorafenib 群より多かった(19.7% vs. 13.4%)。 Bruix 氏は、 「今回、この非常に難治性のがんに対する効果的な 2 次治療薬を手にしたことは、患者にとってはもちろん、この分野にと っても良い知らせであり、今後の開発への関心が刺激されるだろう」 と会見で述べた。 regorafenib の製造元の Bayer 社は、2016 年に今回の試験デー タを根拠とし、米国および世界各国の市場で、切除不能な HCC の治 療薬として regorafenib の販売承認申請を行う予定である。
© Copyright 2024 ExpyDoc