2015 年 6 月 1 日 医療関係者各位 ロンサーフ適正使用アドバイザリー・ボード ロンサーフ配合錠 適正使用の御願い 抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ配合錠 T15、同 T20」 (一般名:トリフルリジン・チピラ シル塩酸塩配合錠)は、2014 年 3 月に「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌(標 準的な治療が困難な場合に限る) 」の製造販売承認を取得し、2015 年 3 月に国際共同第 Ⅲ相試験の結果、 「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」の一部変更承認を取得 いたしました。 本剤は新規作用機序を有したヌクレオシド系抗悪性腫瘍剤であり、本邦において初め て製造販売承認されたことから、本剤の適正使用および患者さんの安全性の確保のため に、製造販売会社である大鵬薬品工業株式会社より、以下のような安全対策への協力を 求められており、医療関係者各位におきましては、下記の事項ご留意頂けますよう宜し く御願い致します。 記 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対するロンサーフ配合錠投与時の留意事項 1. 本剤を使用できる施設として、使用患者への適正使用の協力などの 4 つの施設要件 が設定されていること(別添①参照) 2. 症例の選択を慎重に行い、 「投与開始の目安」を参考に慎重に投与すること(別添② 参照) 3. 本剤投与前及び投与中は、頻回に臨床検査(特に骨髄機能)を行い、患者の状態を 十分に把握すること(別添③参照) 4. 患者に対し、骨髄抑制及び感染症の症状について説明し、本剤による副作用の予防 および早期発見を促すこと(別添④参照) 5. 副作用治療専門医との連携 6. 患者又はその家族に本剤の有効性及び危険性や、大腸癌治療法等についての十分説 明し、同意を得てから投与すること ご不明な点等につきましては、製造販売会社である大鵬薬品工業株式会社の医薬情報担 当者にお問い合わせください。 以上 1 別添①:治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対するロンサーフ配合錠の使用に おける施設要件 1. 以下の項目を満たす、使用患者への適正使用の協力が得られる施設又は使用成績調 査の契約が可能な施設。 • 適正使用の協力が得られる。 • 担当MRの定期的面談が可能である。 2. 緊急時に対応可能な体制が整っている施設で以下の項目を含む。 • 定期的な検査の実施が可能であり、実施した臨床検査結果を確認し、それに基 づいた適切な処置を行える。 3. 重篤な有害事象に診断や対応が院内の関連診療科との連携に基づいて適切に行う ことができる。 4. 厚労省指定がん診療連携拠点病院及びがん診療連携拠点病院に準ずる診療機能や 診療体制等を有する都道府県指定の病院(がん診療連携推進病院等)、もしくは以 下のいずれかの資格を有する医師が常勤している施設。 ① 日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医・暫定指導医 ② 日本消化器外科学会指導医・消化器外科専門医 ③ 日本がん治療認定医機構によるがん治療認定医・暫定教育医 ④ 大腸癌研究会 在籍医師 2 別添②:ロンサーフ配合錠の症例の選択と投与開始の目安 本剤の投与に際しては症例の選択を慎重に行い、投与前には必ず臨床検査を実施し、可 能な限り、以下の投与開始の目安を満たしていることを確認して下さい。 投与開始の目安に該当しない場合には回復するまで投与の延期を考慮して下さい。なお、 投与を必要とする場合には、頻回の臨床検査を実施するとともに、患者の状態を十分観 察しながら慎重に投与してください。 ☐ 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌である患者 ☐ 単剤投与 ☐ 患者又はその家族に本剤の有効性及び危険性を十分説明し、同意を得る ☐ 本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のない患者(禁忌) ☐ 妊婦又は妊娠している可能性のない婦人/授乳中ではない婦人(禁忌) ☐ 誤投与防止のため医師又は薬剤師による服薬補助資材活用による服薬指導の実施 ☐ 以下の投与開始の目安を満たしていることを確認 投与開始の目安 * 項目 投与開始の目安 Performance Status (PS) 骨髄 機能 好中球数 ≧1,500 /㎣ 血小板数 ≧75,000 /㎣ ヘモグロビン数 ≧8.0 g/dL 肝機能 AST、ALT 腎機能 PS 0、1 ≦100 IU/L ** (肝転移症例では≦200 IU/L) 総ビリルビン ≦1.5 mg/dL クレアチニン ≦1.5 mg/dL 感染症 活動性の感染症が疑われない 末梢神経障害 ≦Grade2 下痢 ≦Grade1 その他の非血液学的毒性 *** ≦Grade1 * 国内二重盲検無作為化第Ⅱ相試験における投与患者の投与開始基準を参考に設定 ** 添付文書には≦ULN×2.5 倍(肝転移では≦ULN×5 倍)と記載、ULN:施設基準値 *** 脱毛、味覚異常、色素沈着、原疾患に伴う症状は除く (Grade は CTCAE v3.0 に基づく) 3 別添③:ロンサーフ配合錠の検査・観察スケジュール 各コース開始前は必ず臨床検査を実施し、投与開始の目安を参考に投与可否の判断を行 ってください。特に投与 1 コース目は頻回に血液検査を行うなど患者の状態を十分に観 察してください。投与開始 3 週目~4 週目で最も骨髄抑制がおこる可能性があることか ら、1 コース目は Day22 前後の臨床検査を実施し(下図の赤枠部分)、骨髄抑制に起因す る感染症に注意をしてください。 1 コース 観察項目 1 コース Day8 2 コース以降 Day15 Day22 投与前 臨床症状 * 体重 Performance Status(PS) バイタルサイン 次コース Day8 Day15 Day22 開始前 ○ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ ○ △ △ 骨髄機能 ○ △ △ 肝機能 ○ △ △ 腎機能 ○ △ △ /身体所見 :必ず実施、○:可能な限り実施、△:異常所見がある場合に実施。 * 10%以上の体重減少を認めたら、投与量の見直しを考慮する。 4 別添④:患者自身による副作用の予防および早期発見について 骨髄抑制および感染症の併発 本剤の投与開始前に、患者およびその家族に対し、副作用として骨髄抑制、および易感 染状態となり感染症を併発する可能性があることを予め説明し、倦怠感、発熱、かぜ様 症状が発現した場合は、直ちに医療機関あるいは主治医に連絡するよう、十分説明を行 ってください。 下痢、悪心、嘔吐等の消化器症状 本剤の投与開始前に、患者およびその家族に対し、副作用として下痢、悪心、嘔吐等の 消化器症状があらわれ、脱水及び電解質異常等に至る可能性があることを予め説明し、 症状が発現した場合は、直ちに医療機関あるいは主治医に連絡するよう、十分説明を行 ってください。 5 有害事象共通用語規準 v3.0(CTCAE v3.0)日本語訳 JCOG/JSCO 版 抜粋 有害事象 Grade Short Name 1 2 3 4 5 消化管 GASTROINTESTINAL 下痢 Diarrhea 下痢 Diarrhea ベ ースライ ンと 比 べて<4 回/日の排 便 回数増加 ; ベ ー ス ラインと 比べ て 人 工肛門か らの 排 泄量が軽度に増加 ベースラインと比 べて 4-6 回/日の排 便回数増加; <24 時間の静脈内輸液 を要する; ベース ラインと比べて人 工肛門からの排泄 量が中等度増加; 日常生活に支障が ない ベースラインと比 べて≧7 回/日の排 便回数増加; 便失 禁; ≧24 時間の静 脈内輸液を要する; 入院を要する; ベ ースラインと比べ て人工肛門からの 排泄量が高度に増 加; 日常生活に支 障あり 生命を脅かす (例:循環動態の虚 脱) 死亡 生命を脅かす 死亡 注: 下痢には,小腸または結腸に原因がある下痢と人工肛門に伴う下痢の両者が含まれる. 関連 AE: 脱水[消化管 GASTROINTESTINAL-Dehydration] ; 低血圧[心臓全般 CARDIAC-Hypotension] 悪心 Nausea 悪心 Nausea 摂食習慣に影響の ない食欲低下 顕著な体重減少, 脱水または栄養失 調を伴わない経口 摂取量の減少; <24 時間の静脈内 輸液を要する カロリーや水分の 経口摂取が不十分; ≧24 時間の静脈内 輸液/経管栄養/TPN を要する 関連 AE: 食欲不振[消化管 GASTROINTESTINAL-Anorexia] ; 嘔吐[消化管 GASTROINTESTINAL-Vomiting] 嘔吐 Vomiting 嘔吐 Vomiting 24 時間に 1 エピソ ードの嘔吐 24 時間に 2-5 エピ ソードの嘔吐; <24 時間の静脈内 輸液を要する 24 時間に≧6 エピ ソードの嘔吐; ≧24 時間の静脈内 輸液または TPN を 要する 生命を脅かす 死亡 顕著な体重減少や 栄養失調を伴わな い摂食量の変化; 経口栄養剤による 補充を要する 顕著な体重減少ま たは栄養失調を伴 う(例: カロリーや 水分の経口摂取が 不十分); 静脈内輸 液/経管栄養/TPN を要する 生命を脅かす 死亡 高度の疲労, 日常 生活に支障あり 活動不能/動作不能 ― 日常生活に支障が ある知覚変化また は知覚異常 活動不能/動作不能 死亡 関連 AE: 脱水[消化管 GASTROINTESTINAL-Dehydration] 食欲不振 Anorexia 食欲不振 Anorexia 食習慣の変化を伴 わない食欲低下 関連AE: 体重減少[全身症状 CONSTITUTIONAL-Weight] 全身症状 CONSTITUTIONAL SYMPTOMS 疲労(無力、嗜眠、 疲労 Fatigue 倦怠感) Fatigue (asthenia, ベースラインに比 して軽度の疲労の 増強 中等度の疲労, ま たは日常生活の一 部に困難を生じる lethargy, malaise) 神経 NEUROLOGY 神経障害:感覚性 Neuropathy: sensory 神経障害:感覚性 Neuropathysensory 症状がない; 深部 腱反射消失または 知覚異常(疼きを含 む)があるが機能障 害はない 知覚変化または知 覚異常(疼きを含 む)による機能障害 はあるが, 日常生 活には支障がない 注: 感覚性脳神経障害(Cranial nerve sensory neuropathy)は,神経障害 : 脳神経-選択[神経 NEUROLOGY-Neuropathy: cranial]にgradingする. 肺/上気道 PULMONARY/UPPER RESPIRATORY 肺臓炎/肺浸潤 Pneumonitis/ 肺臓炎 Pneumonitis 症状がなく, 画像 所見のみ 症状あり, 日常生 活に支障がない pulmonary 症状があり, 日常 生活に支障あり; 酸素吸入を要する 生命を脅かす; 人工呼吸を要する 死亡 infiltrates 関連AE: 成人呼吸促迫症候群(ARDS)[肺 PULMONARY-ARDS] ; 咳[肺 PULMONARY-Cough] ; 呼吸困難(息切れ)[肺PULMONARY-Dyspnea] ; 低酸素血症[肺 PULMONARY-Hypoxia] ; Grade 3-4の好中球減少を伴う感染(臨床的または微生物学的に確認)-選択[感染 INFECTION-Infection] ; 好中球数が正常またはGrade 1-2の好中球減少を伴う感染-選択[感染 INFECTION-Infection] ; 好中球数が不明な感染-選択[感染 INFECTION-Infection] ; 肺線維症(画像上の変化)[肺 PULMONARY-Pulmonary] 引用:日本癌治療学会誌(International Journal of Clinical Oncology Vol.9 SuppIII:1-82,2004)、JCOG ホームページ URL http://www.jcog.jp/ 6 ロンサーフ適正使用アドバイザリー・ボード 〈委員長〉 国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 消化管内科 吉野 孝之 〈委員〉 東京医科歯科大学大学院 総合外科学分野 植竹 宏之 愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部 室 圭 7
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