小学校・算数 「平成25年度全国学力・学習状況調査」及び「平成25年度山梨県学力把握調査」 の「授業改善プラン」について 山梨大学大学院教育学研究科 清野辰彦 准教授 「全国学力・学習状況調査」及び「山梨県学力把握調査」の結果は,一人ひとりの児童の学習 状況や,何に困難性や課題があるのかについての資料を提供してくれる。一方,児童の困難性や 課題を解消していくために,どのような学習指導を行っていけばよいのかを再考する機会を与え てくれるという役割を持っている。また,何を重視し,どのような学習指導を行っていけばよい のかを考える際,具体的な指針を提示している「授業改善プラン」は,極めて有効な資料である。 「授業改善プラン」を熟読していただき,明日の授業改善に役立てていただきたい。 「全国学力・学習状況調査」から見出された山梨県の課題の 1 つは,答えを見積もるという行 動,答えを確かめるという行動が,十分に行えていない点である。例えば,A問題1(3)にあた る「9.3×0.8」の問題の本県の正答率は,77.2%(全国(公立)の正答率は 83.7%)であった。こ の問題における誤答を見てみると,12.7%の児童が小数点の位置を間違い, 「74.4」と解答してい た。この誤答の根本的な原因は,答えを見積もるという行動の欠如である。この問題を見たとき, 「9.3×0.8」は, 「9.3×1=9.3」よりも小さい値になるという見積もりを行う態度を身につけさせ たいものである。また,B問題4(3)にあたる「サッカーにおける勝ち点を求める問題」の本県 の正答率は,45.4%(全国(公立)の正答率は 50.6%)であった。この問題における誤答を見てみ ると,勝ち点を求める式として, 「3×3+1×0」を立式しているにも関わらず,25.7%の児童が, 勝ち点の合計を 10 と解答していた。つまり,1×0=1 と計算しているのである。この誤答の根本 的な原因は,答えを確かめる行動の欠如である。答えを求めた後,答えを確認する態度や他の方 法によって,答えを求めてみる態度を育成する必要がある。この態度を身につけさせることがで きれば,他の問題の正答率も上昇すると考えられる。 「山梨県学力把握調査」では, 「全国学力・学習状況調査」の対象とはなっていない小学校3年 生,並びに5年生の実態が明らかにされている。小学校3年生が抱える主たる困難性は, 「1.問 題文が表している状況を的確に把握すること」,「2.具体と数学的知識との関連付け」,「3.説 明すべき内容を判断し,理由と結論を述べること」として特徴づけられる。一方,5年生が抱え る主たる困難性は,上記の他に, 「4.数学的表現(例えば,数直線や式など)を読み取ること」, 「5.概測すること」として特徴づけられる。 上記の困難性を改善するための手立てや授業案が, 「授業改善プラン」の「指導改善のポイント」 や「授業アイディア例」に丁寧に記述されている。例えば, 「1」を改善していくためには,問題 状況を絵や図を描きながら理解する活動が重要となるが,それを授業化した際の展開例が,記述 されている。また, 「2」を改善していくためには,数学的知識が具体とどのように関連している のかを実感させることが重要となる。授業アイディア例では,見取り図から箱の形を的確に読み 取る問題場面において,箱の形の面を紙に写し取る活動や切り取った面をつないで箱を組み立て たりする活動を通して,見取り図と実際の立体との対応を確認する授業が提案されている。活動 を伴う授業は,時間がかかり効率的ではないと捉えられがちであるが,授業計画がよく練られて いれば,実感を伴った理解につながったり,逆に,総時間数が短縮されたりするという利点が生 まれる。子どもにとって本当に重要になるものは何かを明確にし,思考を刺激する活動を重視し た授業を行いたいものである。 授業アイディア例を参考にしながらも,先生方の独自の「スパイス」を加え, 「算数は楽しい」 , 「算数が好きである」と考える児童がたくさんいる県になることを強く願っている。
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