SmTr2Al20(Tr = Ti, V, Cr and Ta)の極低温領域の特異な物性 ~ Ti 系における近藤効果 ~ 磁気低温物理学研究室 古山竜壮 立方晶化合物 SmTi2Al20 はΓ8 四重項が結晶場基底状態であり,6.5 K において「磁場に鈍 感な反強磁性秩序」が生じることが報告された 1),2) 。また,室温以下の電気抵抗率には,いくつ かの Sm 化合物に見られる近藤効果的な対数温度依存を示す異常が観測される。我々は,近 藤効果に起因した振る舞いが鮮明な異常として観測される熱電能 S に注目して,SmTi2Al20 の 熱電特性を調べ,その結果をこれまで報告してきた 3)。その後,4f 電子の寄与を減少させてい く Sm サイトの La 希釈系の単相多結晶試料を作成し,室温以下 0.2 K に至る S を中心に測定 を行った。(Sm1-xLax)Ti2Al20 の多結晶試料は母材をアーク溶解法でボタン状に作成した後,真 空中 Al の融点直下で一週間アニールをして得た。 (Sm1-xLax)Ti2Al20(x = 0)の解析したΔS と電気抵抗率Δρ ,x = 0, 0.9, 0.97 の S の結果を Fig.1, Fig.2 に示す。Fig.1 で見られるようなΔS とΔρ の良い対応が x = 0.9 でも見られることから,x = 0 と x = 0.9 に見られる特徴的な S の負のピークは,近藤効果と 4f 電子間相互作用の競合がそ の起源と考えられる。ピーク温度は,希釈系ではより低い温度にシフトし,絶対値が際立って大 きい。一方,dilute-limit に達しているとみられる x = 0.97 で観測される負のピークは,近藤効果 が強く関与していると考えられる。他の希釈濃度の試料の結果も含め,詳細を発表する。 1) R. Higashinaka et al.: J. Phys.Soc. Jpn. 80 (2011) 093703. 2) A. Sakai and S. Nakatsuji: Phys. Rev. B 84 (2011) 201106(R). 3) T. Kuwai et al.: JPS Conf. Proc. 3 (2014) 011040. 80 10 -10 70 5 60 0 -6 50 -4 40 -2 30 0 Δ ρ (µΩcm) ΔS( µV/K ) -8 S ( µV/K ) -12 (Sm La )Ti Al 1-x x 2 20 -5 -10 x=0 -15 x = 0.9 2 20 SmTi2Al20 4 1 10 100 T(K) 10 300 -20 -25 0.1 x = 0.97 1 10 100 300 T(K) Fig1.SmTi2Al20 のΔS とΔρの温度依存性 Fig2.(Sm1-xLax)Ti2Al20 の熱電能 S の温度依存性
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