第29回燃焼と火事 - NPO, Neurocreative Laboratory

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<「はてな心」を育てる科学歳時記-○
燃
焼
と
火
事
物が燃えるのは
火をおこすことのできるのは人間だけである。最初は、雷や山火事など自然に発生した火を
利用していたが、いつ頃どのようにして知ったのか明らかでないが、そのうちに、きりもみ式
といって、板にあけた穴に錐のような棒を立ててこする火おこし器を発明した。また、火打石
も発明され、人間は、必要なときに火をおこすことが出来るようになり、料理、暖房、
照明、ときには、獣から身を守るために火を利用してきた。おかげで、厳しい自然の
中で生き延び、今日まで栄えることができたともいえる。
火が人間にとっていかに大切なものであるかは、火にまつわる神話や伝説が数多く
残されていることでもわかる。いまでこそ、火はマッチやライターで簡単に手に入れ
ることができるが、かつてはそれがどんなに大変なことであったか、それを伝える物
語も多い。
ところで、きりもり器や火打石でどうして火がつくのか。
それを理解するには、ものが燃えるというのはどういうことかを知る必要がある。火の利用の歴史は長いが
燃焼のメカニズムがわかったのは、今から200年ほど前のことに過ぎない。その100年前には、燃えやす
いものの中に「燃素」というものが含まれていて、これが逃げ出すのが燃焼だと信じられていたのである。1
8世紀の後半、ラヴォアジェという人たちの努力によって、燃焼とは、燃料と酸素が発火温度以上で反応する
ことだということがわかった。燃料・酸素・温度の三要素がそろえば燃焼が起こるし、逆に、どの一つが欠け
ても燃焼は止まってしまうというわけである。きりもみ器は木と木をこすることで生じる摩擦熱を、また、火
打石も石をこすることで生じる摩擦熱を利用して、そばにある燃えやすいものに火をつけているのである。マ
ッチやライターもこの原理を利用したものである。
しかし、便利な火も、取り扱いを誤ると大変である。
火事で尊い命が失われているというニュースが相変わらず多い。平成20年度の消防白書によると、住宅の
火災は、過去5年にわたって、毎年17,000件近く発生し、犠牲者の数も、毎年、12,000人に達し
ている。
「勝手知ったるわが家で、なぜ、火災による死者が多いのか」
かって、『大阪消防』誌(昭和61年2月
号)で、新田勝通さんは、木造住宅はセルロースを主成分とする材質でつくられていて、これが熱で分解され
てメタン、水素、一酸化炭素など可燃性ガスになる。これが天井付近にたまって、数分で一気に燃え出すと分
析していた。実に、木造住宅は燃焼の三要素がそろったたきぎにも等しい。この事情は現在でもあま
り代わらないが、耐火建築といえども、内装材から出る一酸化炭素による中毒は致命的である。
最近では、むしろ、この方が怖い。
火災発生のメカニズムも明らかにされ、消防技術が格段と進歩することも期待できるとは
いえ、やはり、基本は、一人ひとりの「火の用心」。ちなみに、3月7日は消防記念日であっ
た。
(良)
c NPO 法人
○
ニューロクリアティブ研究会