誤嚥 性 肺炎について

城北歯科ニュース
第 19 号
2009年 5 月号
発行 :石川勤労者医療協会
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ご え ん せい
誤嚥性肺炎について
城北歯科 歯科医師
井上 義郎
誤嚥性肺炎とはどんな病気か
口腔内には多種多様の細菌がすんでいます。病気や加齢などにより飲み込む機
能や咳をする力が弱くなると、口腔の細菌や逆流した胃液が誤って気管に入り
やすくなります。その結果、発症するのが誤嚥性肺炎です。寝ている間に発症
することも多く、高齢者では命にかかわるケースも少なくない病気です。
誤嚥性肺炎のメカニズム
① 正常の状態では、呼吸によって吸った空気は、気管を
通って肺に至ります。
② また、食べたものは、食道を通り、胃へと送り込まれ
ます。
しかし、病気や加齢によって飲み込む機能が弱くなると、
食塊や液体などが気管に入る「誤嚥」が発生し、同時に
口腔の細菌が、気管に入ることとなります。
その、口腔内の細菌が、肺炎をおこします。それが、誤
嚥性肺炎です。
予防のポイントは「清掃」と「機能回復」
誤嚥性肺炎予防の 2 大ポイントは、「口腔の清掃」と「機能回復」です。歯磨きなどにより
口の中を清潔にして、細菌を減らします。そして、食べたり飲み込んだりする摂食・嚥下機
能を回復させることも大切です。口腔の細菌除去と機能回復がケアの両輪となり、誤嚥性肺
炎を予防します。
口から食べて栄養状態を良くする
また、高齢者や病気の方は全身の状態が低下しています。健康な人であれば多少の誤嚥があ
っても発症しませんが、からだの抵抗力が落ちていると発症しやすくなってしまいます。口
から食事をとり栄養状態を良好にすることも、誤嚥性肺炎を予防するうえで大切になります。
「口腔の清掃」
口腔の清掃は、いわゆる「歯磨き」の事です。
「歯磨き」は、単に虫歯にならないためにする
のでは、なく。お口の中の細菌の数を減らすためにするのです。
この細菌が、歯に穴をあけ(虫歯)、隙間に入り込み(歯周病)、
気管に入り(誤嚥性肺炎)体内に侵入してきます。
この細菌を叩くには、実は物理的に除去するのが一番効果的。歯
ブラシで、シャカシャカと落としてあげて下さい。また、歯だけ
でなく、歯肉、上あご、舌にも、歯ブラシを当てるのが大切です。
その結果、虫歯や、歯周病、誤嚥性肺炎をも、予防出来ます。
「機能回復」
飲み込む機能は、様々な要因で低下します。代表的なものは、脳梗塞や脳出血による後遺症
になりますが、これらはリハビリによる回復が主になります。
もちろん、専門家によるリハビリも大事ですが、最も大事な事は自分の顎を使っての咀嚼が
重要です。自分の筋肉を使い、物を噛み神経を刺激す
ることが、機能を回復させるための近道です。
歯がない状態では、噛むことも出来ません。失った場
所は、義歯などで補い、食事を楽しんで下さい。
食事を楽しむこと、栄養状態を良くする事が、体の免
疫力を高めます。免疫力を高めることによって、誤嚥
性肺炎を予防しましょう。それが、その他の病気を予
防する事にもつながります。
誤嚥性肺炎予防のための 3 つの因子
1. 口腔清掃(口腔ケア)により口腔内細菌を減少させる
2. 口腔リハビリにより捕食、食塊形成および移送、嚥下機能の回復を図る
3. 経口摂取により、体の免疫力を高める
口腔ケアは、誤嚥性肺炎のリスクを非常に減らします。介護の現場では、特に重要視されて
います。しかし、医療者側の提供も限界にきている時代も近付いています。口腔ケアの重要
性と方法を、医療者→患者様だけでなく、患者様→患者様、患者様→家族へと伝え、誤嚥性
肺炎の予防、しいては疾患の予防と、繋いでいきましょう。