テレビ CM から時代を読み解く - 社会情報学科

平成 19 年度 卒業研究発表要旨集
テレビ CM から時代を読み解く
~キャッチフレーズの歴史~
木村邦彦
真
鍋
瑞
ゼミ
貴(I04V070)
1 はじめに
1953 年に日本第 1 号のテレビ CM が放送されてから半世紀が経過した。いつの時代も、CM に
感動し、心を動かされた経験は誰にもあるだろう。そこには少なからず世相が関係しているとい
える。CM はその後の時代にどのように影響を及ぼし、溶け込んでいったのだろうか。キャッチ
フレーズをメインにテレビ CM の歴史と今後の動向を考察してみた。
2 テレビ CM と世相
世相と深い関連を持ったキャッチフレーズとして、富士ゼロックスの「モーレツからビューテ
ィフルへ」がある。背景には高度成長の鈍化によるモーレツ時代から新しい時代への転換があっ
た。富士写真フィルムの CM で話題になった「それなりに」のフレーズは、当時の世相を端的に
表した言葉としてヒットし、様々な場面で用いられ流行語にもなった。CM は、放送技術や価値
観の変化、放送当時の出来事、流行したもの、話題になったタレントの起用などで世相を反映し
ているようだ。例に挙げた 2 つの CM が当時の人々の考えや生活の中に変化をもたらしたように、
発信後も世相を形作っている作品は数多い。
3 広告の現状とテレビ CM の今後
日本の広告は今、インターネットの出現で大きく変化しようとしている。インターネット広告
費は 04 年にはラジオ広告費を超え、06 年現在の統計では雑誌広告費も抜く勢いである。近い将
来、長年メディアのトップに存在しているテレビ広告費にとって代わる可能性も十分に出てきた。
また最近の傾向として、
「・・・で検索」などの表現を入れて視聴者に web 検索を促す「ネット連
動型 CM」の増加がある。そんな中、テレビは地上デジタル放送をきっかけに、リモコンのボタ
ンを押すだけで商品を購入することが可能になるなど、変革の時代に入ろうとしている。
4 まとめ
CM は時代を捉え、また、時代を創っていっている。消費者がその時々で何に注意を向け、興
味を持っているのかを察知し、
「今」を CM に表現させることで、流行などの社会的な影響を作り
上げているのだろう。インターネットが急成長を遂げる中、キャッチフレーズで心に響かせると
いうよりも、情報環境全体を考えた作品を提供する時代になってきているように思う。この機会
を、視聴者をテレビ CM に向けさせる絶好のチャンスとして捉えるべきではないだろうか。