RNA 干渉を調節する2本鎖 RNA 結合タンパク質 - 技術シーズ検索

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平成18年度シーズ発掘試験採択課題05-063の研究成果
ライフサイエンス
RNA 干渉を調節する2本鎖 RNA 結合タンパク質
―2本鎖RNA結合タンパク質がダイサーの活性を調節する―
キーワード
RNA干渉、2本鎖RNA結合タンパク質、DRB、ダイサー、2本鎖RNA
研 究 概 要
RNA 干渉は、真核生物全般に広く保存された生体防御機構で、遺伝子発現解析技術や医
療分野への応用が期待されている。RNA 干渉は、長い2本鎖 RNA によって誘導され、長い2
本鎖RNAがダイサー(DCL)と2本鎖RNA結合タンパク質(DRB)複合体によって 21-24 塩基
の低分子RNA(miRNA, siRNA)に切断される過程が最も重要である(図1)。
本研究において、モデル植物シロイヌナズナ由来の5種類の2本鎖RNAタンパク質
(DRB1-5)の遺伝子を単離し、組換えタンパク質として大腸菌で産生・精製することに成功した。
この2本鎖RNA結合タンパク質の2本鎖RNA結合活性、ダイサーと相互作用する活性、ダイ
サー活性を調節する活性を見出した。
長鎖2本鎖RNA
DCL1
DRB1
DCL4
DRB4
切断
21-24 塩基対
低分子RNA
(miRNA, siRNA)
DCL2
DRB2
DCL3
DRB3
DRB5
RISC
ターゲットmRNA
図1 RNA干渉の模式図
植物の4種類のダイサー(DCL1-4)と5種類の2本鎖RNA結合タンパク質(DRB1-5)は、長鎖の2本鎖R
NAが切断され低分子RNA(miRNA, siRNA)が産生される反応にはたらく。
H18 課題番号:05-063
JSTイノベーションサテライト茨城
セールスポイント
シロイヌナズナ由来の5種類の2本鎖RNAタンパク質(DRB1-5)の遺伝子を単離、GST 融
合タンパク質として大腸菌で効率よく生産し簡便にアフィニティークロマトグラフィーで精製す
ることに成功した。同様に、シロイヌナズナ由来の4種類のダイサー(DCL1-4)のC末端側の
活性ドメインや2本鎖RNA切断タンパク質(RNase III, RTL2)についても、組換えタンパク質とし
て大腸菌から効率よく精製することに成功した。
これらの組換えタンパク質や植物からの精製したタンパク質をもちいて、2本鎖RNA結合タ
ンパク質(DRB1-5)の2本鎖RNA結合活性、ダイサーと相互作用する活性、ダイサー活性を
調節する活性を見出した(図2)。
A SDS-PAGE
B dsRNA
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
94
67
43
30
kD
Lane 1 DCL1
Lane 2 DCL2
Lane 3 DCL3
Lane 4 DCL4
Lane 5 DRB1
Lane 6 DRB5
Lane 7 DRB2
Lane 8 DRB4
Lane 9 OsDRB1
Lane 10 GST
図2 ダイサー(DCL)と2本鎖RNA結合タンパク質(DRB)の精製と2本鎖RNA結合活性
A.シロイヌナズナのダイサー(DCL1-4)および2本鎖RNA結合タンパク質(DRB1,2,4,5)、イネの2本
鎖RNA結合タンパク質(OsDRB1)を精製し SDS-PAGE で確認した。
B.それらのタンパク質の2本鎖RNA結合活性をノースウエスタン法で確認した。レーン1、5-9の
タンパク質に2本鎖RNA結合活性が認められた。
将来の展望や応用・用途
2本鎖RNA結合タンパク質 DRB は、2本鎖RNA特異的結合活性を有することから、細胞
内の微量な2本鎖RNAを単離・生成するタンパク質(ツール)として有望である。
2本鎖RNA結合タンパク質DRBは、ダイサーと特異的に結合することから、生体内からダ
イサーを単離・生成するタンパク質(ツール)として有望である。
RNA干渉は、ウイルス等に対する生体防御機構として知られていることから、植物体内で
も RNA 干渉を調節する活性がある2本鎖RNA結合タンパク質DRBは、ウイルス防除資材と
して有望である。
研
究
者
研究テーマ
東京農工大学
福原
敏行
内在性2本鎖RNAレプリコン(Endornavirus)の研究
植物のストレス応答機構の研究