vol.44 強みである技術力を生かして海外市場を開拓 - みずほ銀行

vol.
44
強みである技術力を生かして海外市場を開拓
株式会社旭工業 代表取締役社長 前田 泉樹氏
1970年に設
に進出、
2003年には同市内に第2拠点を設
立された旭工業
立した。当初は中国の他地域への進出を検
(本 社・富 山 県
討していたが、
南砺市が紹興市と姉妹都市
南 砺 市)は、機
の関係にあり、
進出にあたり紹興市政府から
械・装置の回転
熱心な誘いを受けたことが決め手となった。
部分に欠かせ
現地政府とは進出以来良好な関係を維持し
ない軸受部品
ており、
さまざまな面でサポートを受けている。
タイ工場正面玄関
の旋削加工を
中国事業が軌道に乗った理由として、
「日
さらに2013年にタイへの進出を決定し、
同
手掛けている。
本の管理方式を押し付けるのではなく、
現地
7月よりラヨーン県において工場の操業を開
軸受というと一般的には自動車やオートバ
の考え方を尊重しながら当社の経営手法を
始した。
タイに進出することで、
中国における
イ、
機械、
設備・装置分野などに使用されるイ
現地向けにカスタマイズするなど
『経営の現
一極集中生産のリスクを分散し、新規事業
メージが強い。
しかし、
当社製品は上記分野
地化』
を進めた点があげられる」
と代表取締
の開拓・強化を進める狙いである。
だけでなく、
エアコンや洗濯機用のモーターや
役社長の前田泉樹氏は語る。
また、
タイ進出を契機に日本国内で定着し
コンプレッサーなど家電分野にも多く使用さ
当社は現地出身者を積極的に雇用し、
従
つつある
「旭工業は小型品が得意」
というイ
れている。
業員への教育を重視すると同時に処遇にも
メージを脱却したいとも考えている。
自動車産
当社製品が幅広い分野において利用さ
最大限配慮した。
これらの取り組みにより、
中
業の集積が進み、
多くの顧客が進出している
れているのは、長年にわたり磨き上げてきた
国人従業員は同現地法人を
「我々の企業」
タイに拠点を確立することで、
当社の技術力
量産技術が強みとして生かされているためで
と認識するようになるなど、
モチベーションの
を自動車部品など大型製品向けにも活用す
ある。軸受部品の生産では原材料となる鉄
向上につながっている。
ることで新たな市場・顧客を開拓する方針だ。
片より
「いかに早く
・効率的に」部品素材を切
経営の現地化を推進する姿勢は日本人
当社は海外展開について、中国では
「家
断、加工できるかが重要となる。当社はこの
従業員数にも表れている。現在中国2拠点
電・弱電向けなどの既存事業」
、
タイでは
「自
命題に対し、
30年以上前に専用のプレス機
で合計750名を雇用しているが、
そのうち日
動車など今後強化していきたい分野」
という
械を自社で開発、
今日にいたるまで改良を重
本人はわずか2名であり、
現地人材を積極的
役割分担を行う戦略を掲げている。中国に限
ね、
「材料消費を抑えつつ、
高品質の部品を
に登用している。
らず、
タイにおいても人件費上昇などのリスク
安価に製造する」
ノウハウを確立した。
このよ
また、当社は中国に派遣される日本人従
要因はあるが、
コスト削減のために進出する
うな技術を中心に顧客ニーズに対応可能な
業員に対して現地に
「根付く」
ことを求めてい
のではなく、
顧客のニーズに対応した海外拠
製品を生産することで、
当社は国内の大手ベ
る。1995年の中国現地法人立ち上げに携
点戦略を構築するという。
アリング企業をはじめとする顧客から高い信
わり、
現在は浙江旭日軸承有限公司董事長
「日本国内では、
人口の減少や市場の成
頼を得ている。
を務める鈴木賢氏の駐在年数は、
すでに20
熟など業界を取り巻く環境は厳しさを増してい
当社の強みは技術力だけではない。中国
年を超え、
通訳なしで従業員とのコミュニケー
るものの、
海外展開は国内事業を縮小するこ
への海外
ションを行うなど、現地の従業員との積極的
とではない」
と前田代表取締役は強調する。
展開も競争
な関わりを続けている。鈴木氏は中国での長
日本では技術力の向上をはじめとして引き
優位の源と
年の貢献が評価されて紹興市の名誉市民と
続き事業基盤を強化し、海外では最適な生
なっている。
して表彰されるなど、
現地化への取り組みは
産・供給体制の構築を図ることで、
顧客・市場
1995年に
着実に成果をあげ、
当社の中国拠点は汎用
ニーズに迅速に対応できる体制を整え、
今後
中国浙江
ベアリング関連部品において世界最大級の
省紹興市
生産量を誇るまでに成長した。
前田社長
プレス機
14 mizuho global news | 2013 NOV&DEC vol.70
の成長につなげていく。
(作成・執筆)
みずほ銀行 直投支援部 調査役 横塚 仁士
神戸発子ども服が切り開く未来と世界
株式会社F・O・インターナショナル 代表取締役 小野 行由氏
アメカジテ
ムは、
当時1,900円とそれまでにない低価格
立した。
イストのロゴや
で、
子ども服に必要な着脱のしやすい機能性
2013年3月には、中国で3番目の現地法
キャラクターが
と、
細部にこだわった高いデザイン性の両方
人となる愛好(上海)商貿有限公司を設立
躍るTシャツ、
を兼ね備えた商品として爆発的にヒッ
トし、
看
し、
直営店「H.a.o」
を上海、
南京のショッピン
ユーズド感 の
板商品となった。小野社長は
「『お母さんの
グモールへと相次いで出店。米国ではニュー
あるデニム素
財布から気軽に出せる価格で、
お母さんの感
ヨーク郊外で最大級のモール
「Roosevelt
材 のボトムパ
性を満足させる子ども服』
をコンセプトに、低
Field」に直営店「BIT’
Z KIDS」
を出すなど、
ンツ。ベビー・
価格、
かつ値段以上に付加価値のある商品
海外でもショッピングモールへの出店を強化
子ども服の企
で差別化を図ったことが、
売り上げ拡大につ
している。
画、
製造販売を手がける株式会社F・O・イン
ながった」
と分析する。
近時、円安による原価高騰や2014年の
ターナショナル
(本社・兵庫県神戸市)
の直
2003年
消費税率引き上げなどによる価格上昇傾向
営店は、
元気いっぱいの楽しさとトレンド感が
には、
神戸市
で、
アパレル業界全体が厳しい現状にある。
ミックスされた洋服にあふれている。
「JUNK
三宮のショッ
地方のショッピングモールではH&MやOld
STORE」
や
「Seraph」
など11の自社ブランド
ピング セン
Navyなど海外のSPAが出店し、店頭の様
は、
流行に敏感な若いファミリー層に支持さ
ターに直 営
れ、同社商品を着た親子連れが多く来店す
店
「BREEZE」
を初出店。卸売りに加え、
自社
う。小野社長は
「その安さは市場を根底から
る。手頃な価格で、
凝ったデザインのおしゃれ
で企画・製造・販売まで一貫して行うSPA事
変化させる勢い。
そうした中で我々が今後成
な子ども服が買えることが人気の理由だ。
業へと領域を広げた。従来買い物の場所と
長するにはどうすべきか、
商品構成や店舗の
1998年、
F
・O・インターナショナルは当時
して主流であった百貨店に代わり、
台頭する
見せ方をどうするかなど社内で議論を重ねて
49歳だった代表取締役の小野行由氏
(O)
郊外の巨大ショッピングセンターに着目し、
そ
いる」
と話す。2013年秋からは、
女の子向け
と福﨑氏
(F)
により設立された。資本金300
の新規開店に並行するように年間20~30
の新ブランド
「ALGY」
を投入するなど次なる
万円でスタートし、当初は3枚1,000円の肌
店舗の直営店を出店していった。車で郊外
一手を緩めない。
着のパンツとかスタイ
(よだれかけ)
といった雑
のショッピングセンターに出かけて1日を過ご
創業から15期連続の売上増加で成長を
貨類が中心だったが、
トレンドの図案や多彩
す若いファミリー層のニーズをいち早く捉え、
続け、今期は260億円を見込む。今後につ
な色展開、
ウエストのゴム使いなどが人気と
ファッション性の高い商品展開と価格戦略で
いては国内、海外それぞれの成長戦略を構
なり3Pパンツの売り上げに火が点いた。
そこ
右肩上がりに売り上げが増加、
会社設立から
築し、連結ベースでの管理体制を確立、収
から発展して企画された総ゴムウエストのボト
10年目の2008年には100億円を超えるに
益拡大に取
至った。現 在、
「BREEZE」や
「apre s les
り 組 む。
「社
cours」等の直営店は232店舗
(2013年8
内 体 制を整
月時点)
で、売り上げ比率は7割を占め主柱
備して上場を
事業となっている。
目 標 に 取り
海外では2006年中国、
2008年米国に
組み、
次の世
進出。中国で百貨店内を中心に84店舗、
代へと継承し
米国ではニューヨークに直営店3店舗を有
ていきたい」
と
し、
現地の趣向やトレンドに合わせた商品展
し、一段の高
開で海外市場開拓に取り組んでいる。
また
みを目指す。
2010年にはタイ・バンコクに生産拠点を設
(取材・作成)
みずほ銀行 直投支援部 大橋 綾
子が一変するほどに勢力が拡大しているとい
直営店「BREEZE」
'
小野代表取締役
ヨーロッパをイメージしたブランド
「Sunny Landscape」
新ブランド
「ALGY」
mizuho global news | 2013 NOV&DEC vol.70 1 5