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10. 研究活動
光学ポリマーの
光学ポリマーの屈折率予測
ポリマーの屈折率予測システム
屈折率予測システム
Refractive Index Prediction System of Optical Polymers
谷尾宣久(Norihisa TANIO)
Tel & Fax: 0123-27-6075 E-mail: [email protected]
URL: http://www.chitose.ac.jp/~n-tanio/
The system which predicts refractive index of optical polymer only from the chemical structure of
repeat unit is reported. This prediction system is useful for molecular design of optical polymer.
光学ポリマーには非晶性のポリマーが用いられている。我々はポリマーの本質的な光学
特性と非晶構造との定量的な関係を明らかにし、ポリマーの光物性値を繰り返し単位の化
学構造のみから定量的に予測するシステムの構築を目指している。ここでは、ポリマーを
構成する原子の種類とその数を入力するのみで、屈折率が計算できる屈折率予測システム
について報告する。この屈折率予測システムは、光学ポリマーの屈折率制御・分子設計に
有用であり、本システムを用いることにより、光学ポリマーの効率的な材料開発を行うこ
とが可能となる。
フラットパネルディスプレイ用光学フィル
ム等の種々の光学材料には、低分子含有ポリ
マーや共重合体などの多成分系ポリマーが用
いられる。今回はこれら多成分系ポリマーの
屈折率を予測するシステムを作成した。これ
らのポリマーの屈折率予測は、分子屈折[R]
と分子体積Vの比[R]/Vの加成性を仮定するこ
とにより行っている。例えば、2成分系ポリマ
ーの場合、成分1の[R]/Vをφ1、成分2の[R]/V
をφ2、そして成分1のモル分率をα1、成分2
のモル分率をα2とすると、このポリマーの屈
折率は(1)式のように表される。
n = (2φ m + 1) /(1 − φ m )
Fig.1 Refractive index prediction system of
(1)
optical polymers.
φ m = α 1φ1 + α 2φ 2
Fig.1に高屈折率なジフェニルスルフィド(DPS)をドープしたポリメタクリル酸メチル
(PMMA)を例に、有機低分子含有ポリマーの屈折率予測システム出力画面を示す。それ
ぞれのポリマーおよびドーパントの化学構造およびドーパント含有量を入力することによ
り屈折率が計算される。このシステムではドーパントのパッキング状態はマトリックスポ
リマーのパッキング状態と同じであると仮定して屈折率を計算している。DPS含有PMMA
について、屈折率の実測値はシステムからの計算値と良く一致した。
【文献】
1)谷尾宣久,「光機能性高分子材料の新たな潮流―最新技術とその展望―」, 第Ⅱ編第 6 章
“光学ポリマーの屈折率予測システム”, p.144~158, シーエムシー出版(2008)
2)N.Tanio, “Refractive Index Prediction System of Optical Polymers”, Kobunshi (High Polymers,
Japan), 56(11), 882 (2007)
3)谷尾宣久, 細井敬太, 高分子学会予稿集, 56, 1372 (2007)
4)谷尾宣久, 細井敬太, 桃野裕介, 田村圭, 高分子学会予稿集, 56, 4670 (2007)
5)桃野裕介, 大倉雅史, 新谷和也, 谷尾宣久, 第 42 回高分子学会北海道支部研究発表会講
演要旨集, p.18 (2008)
【謝辞】本研究は、財団法人池谷科学技術振興財団の研究助成(研究課題:「光学ポリマー
の屈折率予測システムの構築」、
研究期間:平成 19 年 4 月~平成 20 年 3 月)
を受けて行った。
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10. 研究活動
非晶構造制御による
非晶構造制御による光学
による光学ポリマーの
光学ポリマーの高透明化
ポリマーの高透明化
Improvement of Transparency of Optical Polymer by Amorphous Structure Control
谷尾宣久(Norihisa TANIO)
Tel & Fax: 0123-27-6075 E-mail: [email protected]
URL: http://www.chitose.ac.jp/~n-tanio/
Light scattering of transparent polymer glasses was studied to investigate the amorphous structure.
Improvement of transparency of optical polymer by amorphous structure control is reported.
V V / 10
-5
cm
-1
H V / 10
-6
cm
-1
非晶性の透明ポリマー固体に数十ナノメートルのオーダーの屈折率の不均一構造が存在
する場合、この不均一構造により光が散乱される。フラットパネルディスプレイ(FPD)用
光学フィルムなど高透明性が要求される光学材料に非晶性ポリマーを応用する場合、この
ような屈折率不均一構造は大きな問題となる。散乱の面からポリマーを高透明化するため
には、不均一構造の大きさと屈折率差を小さくさせる構造制御が必要である。FPD 用光学
フィルム等の種々の光学材料には、低分子含有ポリマーや共重合体などの多成分系ポリマ
ーが用いられる。ここでは、高純度なメタクリル酸メチル(MMA)-スチレン(St)コポ
リマー固体を種々の条件で作製し、光散乱法による構造解析と透明性の評価を行った。
代表的非晶性光学ポリマーであるポリメタク
4
リル酸メチル(PMMA)固体中には過剰散乱を
2
招く数十 nm の屈折率不均一構造が存在するこ
0
とが認められており、不均一構造の発生と散乱
0
20
40
60
80
100
120
損失値は重合条件、熱処理条件に依存する。ガ
Angle / deg
ラス転移温度 Tg 以下の温度で重合すると、
8
PMMA 固体内には数十 nm の大きさで、10-4 オーダ
6
ーの屈折率差を持つ不均一構造が存在し、過剰散
4
乱が生じる。一方、Tg 以上の温度で重合または熱
処理すると散乱強度は角度依存性を示さなくなり、
2
内部に不均一構造を持たない低損失 PMMA 固体を
0
0
20
40
60
80
100
120
作製することができる。過剰散乱を引き起こす不
Angle / de g
均一構造については、PMMA 以外の種々のメタク
リル酸エステル系ポリマー固体についても観測さ Fig.1 VV and HV scattering at 633nm for
れている。しかし、PS 固体についてのみ、このよ MMA-St copolymer (MMA/St=50/50)
うな屈折率不均一構造は観測されていない。
glasses polymerized at 70℃(○), 130℃
Fig.1 に MMA-St コポリマー固体(組成比: (□) for 96h.
50/50)の波長 633nm における光散乱強度の角度依
存性を示す。Tg 以下で重合すると等方性の VV 散乱に角度依存性が生じ、固体内部に数十 nm
の屈折率不均一構造が存在した。一方 Tg 以上の温度で重合すれば、PMMA が約 1.49、PS
が約 1.59 と大きく屈折率値の異なる 2 種のポリマーの共重合体であっても、過剰散乱を招
く屈折率不均一構造は存在しないことが明らかとなった。
【文献】
1)谷尾宣久,「光学用透明樹脂における材料設計と応用技術」, 第 1 章“透明性樹脂の分子
設計・高透明化”, p.1~p.42, 技術情報協会(2007)
2)谷尾宣久,「各種光学部材における透明樹脂の設計と製造技術」, 第 1 章第 2 節第 1 項
“高透明化”, p.16~37, 情報機構(2007)
3)谷尾宣久, 岡田亜弥子, 田中元気, 高分子学会予稿集, 56, 724 (2007)
4)谷尾宣久, 岡田亜弥子, 田中元気, 小幡はるな, 高分子学会予稿集, 56, 4672 (2007)
5)小幡はるな, 谷尾宣久, 第 42 回高分子学会北海道支部研究発表会講演要旨集, p.41 (2008)
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