プラスチック積層板の衝撃貫通特性の評価 指導教員 教授 助手 1. 88038 笠野 英秋 長谷川 脩 崎山 貴文 4.貫通特性の評価法 緒言 プラスチックは、日用品、工業用部品など多くのと ころで使用されている。透明で耐衝撃性があり、また 走行中に巻き上がる小石が衝突してもひび割れないと いう理由で、新幹線の窓の外側にポリカーボネート (PC)を使用している車両もある。一方、ポリメタクリ ル酸メチル(PMMA)は、透明プラスチックの中で最も 傷が付きにくく、透明度が最も高い特徴がある。しか し、ポリカーボネート(PC)のように耐衝撃性には優れ ていない。そこで本研究では、ポリカーボネート(PC) とポリメタクリル酸メチル(PMMA)の両方の長所をい かすために積層板にし、特にその衝撃貫通特性を評価 するとともに、ポリカーボネート(PC)単平板の衝撃貫 通特性と比較することを目的とする。 4.1 解析モデルによる評価 衝撃速度を Vi、残存速度を VR、貫通限界速度を Vb、 鋼球の質量を M、破片の質量をm、α = M とする。 M +m ・ 単平板の場合 エネルギー保存則より 1 1 MVi 2 = ( M + m)VR 2 + EP 2 2 Vi=Vb のとき VR=0となり 1 MVb 2 = EP 2 2.試験片 本研究で使用するポリカーボネート(PC)試験平板 は縦 100×横 100 の正方形で、厚さは 0.5 と 1.0(mm) である。また、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)平板 は縦 100×横 100 の正方形で厚さは 0.5(mm)であり、 これらを単平板あるいは積層板とに使用する。一方、 熱を加えて接着した、縦 100×横 100 の正方形で厚さ 2.0(mm)の積層板についても同様の試験を行う。 3. 実験装置及び試験方法 衝撃試験では、直径 5.0mm、質量 0.51g の鋼球が高 圧窒素ガス式衝撃試験機より発射され、レーザー速度 検出器を通り、試験片に衝突する。また、貫通破壊に おける鋼球と破片の挙動を、超高速度カメラで撮影す る。 レーザー速度検出器 ゆえに (V i VR = α 2 − Vb2 ) ・ 積層板の場合 VR 2 = α 2 Vi 2 2 − Vb 2 2 VR1 = α 1 Vi12 − Vb12 VR1=Vi2 と仮定すると Vb22 V R 2 = α 1α 2 V i1 2 − V b 1 2 + 2 α 1 { VR 3 = α 1α 2α 3 Vi1 − Vb1 + 2 2 Vb 2 2 α 12 Vb3 2 + (α 1α 2 )2 4.2 確率統計的評価 バレル 試験片 チャンバ フラッシュ装置 超高速度カメラ 画像表示モニター 画像処理用コンピューター 操作盤 図 1 高圧窒素ガス式衝撃試験機および 計測システムの概略図 窒素ガス 実験データを用いて、確率統計的に貫通限界速度を 予測することができる。貫通した衝撃速度の中で最も 小さい3つの衝撃速度と、非貫通だった衝撃速度の中 で最も大きい3つの衝撃速度の、合わせて 6 つの衝撃 速度の算術平均 V 50 をとして、次式で計算できる。 1 6 V 50 = ∑ Vi 6 i =1 5.衝撃試験の結果 残存速度(m/s) 300 PC(0.5)/PMMA(0.5) PC(0.5)/PMMA(0.5) (非貫通) PC(0.5) PC(0.5) (非貫通) 200 100 0 100 200 300 衝撃速度(m/s) 図2 残存速度(m/s) PC(1.0)/PMMA(0.5) PC(1.0)/PMMA(0.5) (非貫通) PC(1.0) PC(1.0) (非貫通) 200 100 0 100 200 300 衝撃速度(m/s) 図7 PC(1.0) 衝撃速度 177.2(m/s) 図8 PC(0.5)/PMMA(0.5) 衝撃速度 105.9(m/s) 衝撃速度と残存速度の関係 300 残存速度(m/s) PMMA(0.2)/PC(1.6)/PMMA(0.2) 衝撃速度 299.7(m/s) 衝撃速度と残存速度の関係 300 図3 図6 PMMA(0.2)/PC(1.6)/PMMA(0.2) PMMA(0.2)/PC(1.6)/PMMA(0.2) (非貫通) PC(1.5) PC(1.5) (非貫通) 図5と図6を比較すると、破片の飛散量が明らかに 多くなっている。図8を見ると、PMMA の破片が鋼 球に付着したまま PC に衝突したのが分かる。 200 6.結論 100 0 100 200 300 1.積層板において、解析モデルで予測した貫通限界 速度と、確率統計的に予測した貫通限界速度は一 致しなかった。 衝撃速度(m/s) 図4 衝撃速度と残存速度の関係 図2,3,4ともに、ほとんどの衝撃速度で PC 単 平板よりも、それに PMMA を積層したものの方が、 残存速度が速くなっている。 2.PC 単平板よりも、それに PMMMA を積層した試 験片の方が、貫通限界速度が低下した。その原因 は、最初に破断したPMMAの破片がPCに衝突 し、小さな傷を付けたからからだと考えられる。 3.産アルティアに提供して頂いた試験片は、PC と PMMA を接着する時に、熱を加えたのが原因で 熱分解が進行し、力学的性質が低下したと考えら れる。 謝辞 本研究にあたり多大なご指導を頂きました笠野教授、 長谷川先生に厚く御礼申し上げます。 図5 PC(0.5)/PMMA(0.5) 衝撃速度 298.8(m/s)
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