寺尾祐子さん - 13歳のハローワーク

「食のマーケットリサーチャー」として各方面で活躍されている寺尾さんは、
食に関する取材記事を書いたり、外食店向けにマーケットリサーチやメニューの提案
などをされています。しかし、最初から今の仕事に就いていたわけではなく、もと
●
は今とは全く違うお仕事をされていました。そんな寺尾さんに「
「やりたい仕事
やりたい仕事」
仕事」に
就くまでのお話を伺ってきました。
くまで
寺尾祐子さん
●
岐阜県出身。元・加工食品のトレンド雑誌編
業界紙を発行する日本食糧新
集記者。食品業界紙
やりたいことにフタ
昔から本を読むこととおしゃべりが好きな寺尾さんは、中学生の時、少しの言葉で人に
思いを伝えるコピーライターの仕事に憧れを持っていました。しかし、「自分には無理」と
やりたいことに「フタ
フタ」をしてしまいました。そして、いざ就職活動に取り掛かったとき、やり
フタ
聞社に入社し、月刊「食品新製品トレンド」
を担当していたが、現在はフリーとして活
躍。食のマーケットリサーチや外食店取材な
ど、「食のマーケットリサーチャー」として
活躍している。
たいことが見つからず、就職した先は、通勤に便利な大手メーカー。人や条件に恵まれ
た環境ではあったものの、自分がしたい仕事には程遠いものでした。
豆知識1
怒涛の20代
「自分には何かできるはず!」と仕事をする傍ら、お茶・お花・着付け・英語・ゴルフ・
ワイン・料理・パン教室など、様々な習い事に励みました。パン教室では、講師も務め
「作る喜び・食
び・食べる喜
べる喜び・教
び・教える喜
える喜び」を感じ、仕事で満たされない思いを補っていまし
た。仕事をしながらも、パン講師は約 7 年続けました。
業界紙
業界紙
一般向けではなく、ある業界の企業やメーカ
ーに向けられた専門の新聞。その業界の今の流
れはどうなのか、他社ではどのような取り組み
をしているかを知り、自社の活動のヒントを得
るツールとして使用されている。
転機
忙しい20代を過ごした寺尾さんですが、転機が訪れます。結婚を機に名古屋から
東京へ引っ越すことになり、10 年もの間勤めてきた会社や、今までやっていたこと全て
から離れ専業主婦となりました。東京では、新しい友達の輪ができるなど、それなりに
寺尾さんは、食品の新製品に関する雑誌を担当
した。読者は主に、メーカー、香料メーカー、
パッケージメーカー、デザイン会社、広告代理
店、海外(特にアジア)などである。
楽しい生活でしたが、やはり物足りなさを感じ、「自分は何がやりたいか」を深く考えるようになりました。そして、今までやってき
たことを振り返ってみると、『食
食』に関することを多くやってきていたことに気付きました。
食+書く
『食』に関する仕事はないかと、インターネットなどで探すうち、フードコーディネーターという仕事を見つけ、一年間学校に
通って勉強し、フードコーディネーターの資格を取得。ご主人の仕事の都合でいつまた転勤になるかわからないため、「どこ
どこ
でも出来
でも出来る
出来る仕事」
仕事 はないか考えました。そこで中学生の時「フタ」をしてしまった『書くこと』
くこと』も好きであることに気付き、卒業後
も学校の文章ゼミに通いつつ、『食』と『書くこと』を仕事に出来ないかと考えるようになりました。
就職活動
フードコーディネータースクールの紹介や新聞などで、『食』と『書くこと』に関係する求人をさがしていましたが、そのとき3
5歳。都心までの距離もあり、就職活動では試験すら受けられないこともあったそうです。とても落ち込みましたが、その時文
章を教わっていた先生から、「私は 100 社受けるまで頑張った」という話を聞き、「それなら私も100社受けるまであきらめな
い」と覚悟。すると、すぐに『食』に関する業界紙を取り扱う新聞社に就職が決まりました。
業界紙の新聞社でのお仕事
新聞社では、主に加工食品
加工食品の
加工食品の新製品に
新製品に関する雑誌
する雑誌・Web
雑誌 Web サイト・セミナーの
サイト セミナーの企画
セミナーの企画、
企画、運営を担当されていたそうです。
運営
月刊雑誌
月刊雑誌の
雑誌の編集・
編集・記者
誌面の企画・記事化
取材に
取材に行く・・・ヒット商品を作った人を取材。開発の背景や、ヒットになるまでの経緯、立ちはだかった壁などを取材した。
分析をする・
分析をする・・・加工食品のトレンドを新発売される商品から動向を読み説く。
をする・
消費者の
消費者の意見を
意見を聞く・・・よく似た商品を食べ比べてもらい、傾向をまとめる。
注目の
注目の商品を
商品を選ぶ・・・スーパーやコンビニのバイヤーに意見も聞いて、ヒットを予測する。
●
Web サイト
豆知識2
豆知識2
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●
バイヤー
新製品情報やセミナーの告知、各種ランキングなどを掲載するためのサイトを立ち
お店で売る商品を、メーカーから買い付けた
上げて、運営した。
り、メーカーと一緒に作ったりして、価格を
決めて、店頭にどう並べるかを考えて、その
セミナーの企画
セミナーの企画・
企画・運営
段取りを全てやる仕事。
食の商品開発者、マーケッター向けに毎月セミナーを開催。気になる話題について企
(http://retail-buyer.com/2007/07/post_1.ht
画し、その分野に詳しい人を講師として呼び、セミナーを開く。
ml)
例:「デザート
デザート食品
電子レンジ
ブランド
デザート食品のトレンドと
食品のトレンドと開発技術
のトレンドと開発技術」・「電子
開発技術
電子レンジ対応
レンジ対応食品
対応食品を
食品を徹底研究」・「ブランド
徹底研究
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●
戦略成功事例研究」など
戦略成功事例研究
現在のフリーとしてのお仕事
ご主人の大阪への転勤のため、食品業界紙の会社を退職。今はフリーランスで食に特化したエディター・ライターとして活躍
中。マーケットリサーチャーとして、大手飲食店向けに、リサーチとメニュー提案もされています。
仕事の醍醐味
「一番楽しいのは取材をしている時間ですね。例えば、ヒット商品を作った方の取材ならば、その商品を作った背景や立ち
はだかった壁を乗り越えた話など、必ずドラマがあります。そのドラマをたずさわった方から直接聞けるのは、この仕事の醍醐
味といえるでしょう。そして、『
『食』を通して社会
して社会・
社会・時代が
時代が見えるということも醍醐味です。景気が良ければプレミアム商品が増
える
え、不景気になれば、家で食事をする“内食”が増えてきます。また現在は、カロリーゼロや糖類ゼロなどの0系商品や即効性
のあるものが多く見られる一方で、オーガニックなものも流行っています。多様化が進んでいるように思えます。身近な『食』
を見ることで社会や時代が見えてくる、食の世界は深くて広くて面白いです。『食』を『伝える』ことで、人や社会に役立つ存在
でいたいですね。」
記者感想 今回は、取材をお仕事とされている方にインタビューをさせていただいたのですが、
いつの間にか私が取材されている!ということが何度もありました。私に対して興味を持ってくだ
さり、楽しんで質問してくださるので、ついつい私のほうが答える側になっていました。しかし、
取材には「相手に対して興味を持つこと」
「何でも楽しむこと」が大切なのだということを実感しま
した。 (インタビュアー:京都女子大学文学部英文学科 3 回生 山内知子)