増税時代の資産防衛対策その1(生前贈与) - 税理士法人 武蔵経営

武蔵経営からのお知らせ(№190)
平成 23 年 9 月 16 日発行
増税時代の資産防衛対策その1(生前贈与)
~安全で確実な贈与の必要性高まる~
税理士法人 武蔵経営(熊谷 048-522-0064・大宮 048-631-2271)
1.資産課税の増税は確実?
財政再建論者の野田首相が誕生しました。ただでさ
え深刻な財政赤字を抱える日本ですが、膨大な東日
本大震災の復興財源もあり、「増税の時代」が到来し
そうです。
前回のお知らせで報告したとおり、尐子高齢化によ
って従来の社会保障システムがこのままの姿で持続
できないことは明らかです。その現実に対して、社会
保障と税を一体として改革しようというのが「社会保
障・税一体改革」なのですが、今のところ「2010年代
半ばまでに消費税率を10%に引き上げる」という方
針を示しただけで、何の展望も示せていません。消
費税の税率を10%に引き上げても、膨れ上がる社会
保障費の一部しか賄えないことを明らかにしただけで
す。
この消費税を巡る増税は、財務省の消費税を創設
したころからの宿願ですが、消費税の大衆課税の性
格からいって簡単ではありません。そこで財務省が狙
っているのが、「資産課税の強化」です。尐子高齢化
の進展に伴い、構造的に生産や消費に多くの期待が
できない中で、家計が所有する金融資産を効率的に
捕捉し、多くの税収を上げたいのです。
相続が開始する件数は、2010 年の年間 119 万人か
ら 2040 年には 166 万人にまで、増加し続けると予想さ
れます。このタイミングで、
①相続税の基礎控除を引き下げること
②社会保障・税共通番号制度を導入して金融資産の
捕捉割合を高めること
が実現できれば、広範な人から相続税を徴収するこ
とができるわけですから、今年の税制改正では見送
られたものの、「相続税の増税」は確実になされるも
のと覚悟しないわけにはいきません。
2.増税時代は資産の分散が大切
資産課税が強化される時代の対応策として、最も重
要なことはなるべく「若い世代に財産を早く移転する」
ということです。私たちは、毎年払わなければならな
い所得税、法人税、固定資産税については、その負
担感について毎年実感するのですが、将来かかるで
あろう相続税については、普段あまり気にしていない
ことが多いものです。
「高い所得税や固定資産税を払いながら、相続税
の対象財産を増やしている」という人が多いことも事
実です。資産課税の強化時代を賢く生き抜くために
は相続税まで視野に入れたタックスマネジメントが必
要です。若い世代に財産を移転する方法の代表的手
法が「生前贈与」であり、時間をかけて着実に実行す
ることにより安全で確実な資産防衛策となります。
相続税の基礎控除が引き下げられ、税率もアップさ
れる時代は贈与の効果は高まります。実際に尐額の
贈与であれば下表のとおり、相続税の最低税率であ
る 10%未満で贈与できるのです。
贈与額(年間)
贈与税額
実効税率
110 万円
0
0
150 万円
4 万円
2.7%
200 万円
9 万円
4.5%
300 万円
19 万円
6.3%
400 万円
33.5 万円
8.4%
500 万円
53 万円
10.6%
3.超円高は財産分散のチャンス?
たいへんな超円高が続いていますが、このような時
代に財産を守るには、財産のポートフォリオがとても重
要です。最高の信用力を誇ったアメリカ国債の格付け
の引下げに端を発したデフォルト不安は、金融の暴走
に警告を発しているような気がします。
リーマンショック以降、世界中で積極的な財政出動
が行われましたが、本当の価値を生み出さない限り、
金融政策だけでは景気は良くなりません。財政をジャ
ブジャブ使った責任を金融だけに負わせようとしても、
本当の価値を生み出す事業が育たなければ、本当の
経済発展はなしえないからです。
そういう意味では、尐子高齢化、深刻な財政問題、
進行する産業の空洞化等の諸問題を抱えた日本の円
が異常に高いというのもおかしなことです。週刊東洋
経済の今週号では、長期的には円安を予測している
経済評論家が多いようです。
<2016 年末の予想為替相場>
SMBC 日興証券チーフエコノミスト 牧野氏 100 円
明治安田生命チーフエコノミスト 小玉氏 100 円
野村証券チーフ為替ストラテジスト 池田氏 82.5 円
ブラウン・ブラザース・ハリマン・インベストメント 村田氏 85 円
JP モルガン・チェース銀行チーフ FX ストラジスト棚瀬氏 90 円
メリルリンチ日本証券 FX ストラジスト 藤井氏 100 円
資産課税の強化に対して、超円高を利用して一部
の資金を外貨やモノに変えることは検討してもいいの
かもしれません。ただし、火傷の可能性もありますので
熟考ください。
(文責 龍前 篤司 )