Title Author(s) Citation Issue Date URL ハワイ諸島南方海域におけるDSLについて 松野, 保久 鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of Fisheries Kagoshima University, 29: 123-128 1980-12-25 http://hdl.handle.net/10232/13183 http://ir.kagoshima-u.ac.jp Mem・Fac・Fish.,KagoshimaUniv・ Vol、29pp、123∼128(1980) ハワイ諸島南方海域におけるDSLについて 松 野 保 久 * OnthcDSLintheSouthernRegionoftheHawaiianlslands YasuhisaMATsuNo Abstract TheobservationswerecarriedoutonboardtheKeiten-maru,FacultyofFisheriesKagoshima U n i v e r s i t y , i n t h e s o u t h e r n r e g i o n o f t h e H a w a i i a n l s l a n d s , i n t h e m i d d l e o f J u n e , 1 9 7 8 . T h e r e c o r d s o f t h e d e e p s c a t t e r i n g l a y e r s w e r e r e c o r d e d b y t w o 2 4 k H z f i s h f i n d e r s , a n d o c e a n i c m i c r o n e k t o n ( s m a l l f i s h e s , E u p h a u s i i d s , A m p h i p o d a , e t c . ) w e r e c a u g h t b y l s a a c s K i d d midwatertrawlnet・ A s a r e s u l t o f t h e d i s c u s s i o n , i t s e e m s t h a t d e e p s c a t t e r i n g l a y e r s c o m p o s e d o f M y c t o p h i d f i s h , GonostomatidfishandEuphausiids. ハワイ諸島周辺海域は重要なマグロ漁場であり,日本船の出漁数も多いよって同海域の 連続した漁場海洋学的な調査の必要性はいうまでもない.今回筆者はハワイ諸島南方マグロ 漁場へ行く機会を得,同海域におけるDSLについて調査したのでここに報告する. 方 法 1978年6月,図1に示した海域において,鹿児島大学水産学部実習般敬天丸(854.55トン) に装備されている海上電機製魚群探知機(MWD−4型,MWD−10型)周波数24kHzを使 用して,DSLの連続記録を得ると同時に,図2に示した水深と時間,アイザック・キッド・ トロールネットを水平曳きすることにより海洋生物の採集を行なった.生物採集はDSLが 下降している昼間と上昇した夜間にわけて行ない,両者を比較した. 曳網を行なった海域1,11,Ⅲの位置は次の通りである. I(1978.6.10):昼間(1)Lat、11.-52.'7N Long・l58o-01・'0W 夜間(2,3)Lat、11o-53.'9N Long、158o-02.'2W 11(1978.6.13):昼間(4)Lat、13.-28.'9N Long、158o-29.'7W *鹿児島大学水産学部漁船航海学講座(ChairofFishingVesselNavigation,FacultyofFisheries, K a g o s h i m a U n i v e r s i t y ) 124 鹿児島大学水産学部紀要第29巻(1980) 22.N 20.N 跡 毒 W § 零 、 1 J 鯵 18・N 16.N 140N 12・N 1600W158oW156.W Fig.1.LocationofhaulingwithIsaacsKiddmidwatertrawlnetandobservedDSL. 夜間(5)Lat、13.-28.'5N Long、158.-23.'6W Ⅲ(1978.6.15):昼間(6)Lat、14c-59.'0N Long・l58o-01・'3W 夜間(7)Lat、14.-58.'9N LOngl57o-58・'3W なお曳網水深はロープ長とロープの伏角から計算により求めた. なお曳網水深はロープ長とロープの伏角から計算により求めた.全採集水深を同一とする ためロープ長・伏角を一定とし,その水深は約67m,ただし6月1 た めロープ長・伏角を一定とし,その水深は約67m,ただし6月10日夜(3)は水深約28m, 曳網時間は同水深において1時間,ただし(3)は30分であった.又曳網速力は約1.5knot であった. 結果及び考察 この海域は北東貿易風帯に位置し,全測定を通じて,風向はENE∼E,風力はビュー フォート階級で5∼6,海面はModeratesea,ウネリはModerateswellでウネリの方向は 80.∼90.であった. 図2に6月10日,6月13日,6月15日の垂直移動を行なったDSLを魚群探知機の記録紙 から模式的に写しとった.DSLは2層あるいは3層記録され,日出前最初に下降を始め昼 125 松野:ハワイ諸島海域のDSL L M . T I 978.6.10 画 ロ 。 SWU昌Ct sunrla z堂 6 0 2 ▼ ▼ U ▼ ,F『20 6 0 8 ■ U ロ U U ▽ 5 U 。 ▼ U 。 Z ■ U ▼ ザ ロ ▼ 0 ■ (3)仲 (1)惇 弓 . . ( 2 )愚 舞群燃驚..§.: 認 蕊 溌灘 : 2 . : . . ? B ・ 2 . : L ・ 4 . . % 1 8 ■ロム 00 撫鯉: ■ U ● ● ● ● e ■ 鱗 蕊夢 # ; 塁壁壁 雲 識 グ ノ 灘 i I l鍵 I ○ 01 ①O 6P U■。 ● 申 ●● ●巳◆ 巳■。◆旬距 I■14■■● oqQD餌■へ函● 応へ絢馴焼ん町営吋切yr 瞳鼠 、! 00 Ba則⑧り ゆpUB●即0 p 00 。①□ &■。 ,1 00 ■ 泌勇慰営 FE︶。□ 、 悪 : 1 . ' . : . 強 § ●#b・り・・・・・。■◆・ 擢識灘; 00 : : 。 8 . 3 . . . . b ・ ‘ ? : 9 群 : . . . I V : 溺 ツ 978.6.13 SunSG nris 里 当 世 0 2 ■ U 。 6 ■ り ▼ 0 ▼ U q ロ ▼ U ▽ 2 1F 6 U ワ U ▼ U 。 霊 篭 《 M 1 ' 00 500 錘斐溺,〆 迩騒 978.6.15 5unSGQ Sun『幅 = 6 ロ ロ ・ ▽ U ▼ U ▼ ロ・汚噌。略岨。o口・・。。。 識鱒 灘 蕊灘 夢 鴬: 00 ■■' 。。”ず。。’。・・・晶此 灘 瀞蟻蕊 狩母⑱0牝.。。︽”。。口和貼捗︽叫謁 ・ ・ ・ 溌 寸 ‘ ・謡・〃 ・和,屯。・・・。。。。。。。。恥、 . : : 4 . 3 : 職溌 00 b●■ ■● ● Q p e P 、 鰐惣鶏貰唾 蕊 鱗駕癖避蕊 U●◆。。◆ 蕊障函鼠路︾醗釦感 ︵戸偉︶戸夢尽の口 ■p●や。 e●■● ︾︾軒一一母一一一︾︾︾︾一︾︾一 ● 旬ゆ ● ■ 。 ● ◆。●●■ロ 目嘩 ? . γ 念 : 『 . . . : ‘ . 。 : : ・・・ロロ・口・・・81 ・・JOO卸■0...3.。・・・3.J:牙.0 :・紐: 4 U D U ( 5 ) (4)岸 1 00 0 2 W ▽ 1f訂2o 6 8 ロ ロ F ■ U U ロ 4 ZZ 、 ■ 1 ロ ▼ U p ( 7 )胃 (6)ー4 OO 00 500 ■●●。q 300 灘 灘 一1噸l傷fr 糟 霞; 』 = 。 . 』 ■● !; 熱 蔦鑓 ; i i i oG菌fq .・・:白白 ■巳p●●■ 。・ず︾函、 ・ ・ ・ ・ . 、 ヶ ・ d i 溌雪 瀞撫 蝋 9●●●Fダa ◆P●.設。。●● bP− ゅC gag ■軌■ ?I Z : ; : 細 ; , . r ・ : 。 、 恥。甲押ゲロや諏・ら歩● 。︲。’。︲胡■●■’晶 識識認識 ︵︷上︶二一QQp 00 』 k1 、 、 蝿 騒 : 瀞 ii F i g . 2 . S c h e m a t i c r e p r e s e n t a t i o n o f d i u r n a l c h a n g e o f t h e u l t r a s o n i c s c a t t e r i n g l a y e r a t t h e locationl,IIandlII. 間最も深く位置する第1層は水深約550m,続いて下降する第2層は水深約450∼500m,最 一一一一 も浅く位置する第3層は水深約400m付近にその中心があるものと推定される.……これ(ま北 西部太平洋水域におけるDSL1)より深い位置にある.6月10日朝方のDSL下降時には3層 はっきり記録されたが,夕方の上昇時には第2層がほとんど記録されなかった."6月13日夕 方のDSL上昇時,第2層は明確でなかったが6月10日に比較すれば,わずかに明瞭であっ 126 鹿児島大学水産学部紀要第29巻(1980) Table1.Compositionofthetrawlcatchwithlsaacskiddmidwatcrtrawlnetatthe locationl,IIandlll・ Numbersofindividuals S p e c i e s l:lOth 11:l3th l皿:l5th Lα”α砂c畝ssp・ D i “ A " S S P . Lα"ゆα此"asP. A伽s”β伽sP. M)'""伽、"雌血伽 B 8 " ‘ ん o s e m a s P . 』加妙ル”'sP、 Myctophidlarva 4 67 1 6 amj0Jc妙e伽sp. 514 Myctophidac 74 1 2 3 4 5 6 7 2 111 2 11 11 33 11 Gonostomatidae 。 肋 c i g “ r r z a s P . Synodontidae 1 Scopelarchidae Scorpaenidac 1 Euphausiids 12266 B 2 3 8 C 1 3 D 1 5 1 11 3 3 4 1 1 33 I 1 3 1 11 11 Pteropoda 32 o抄”んα加加""“ B、"s"加伽伽 伽吻加‘、6伽eひ雌j Phm"加e〃eん"gaja Qz伽”ん〃2α城伽 Pb"""伽α此maja 5 1 9 Rルa6dbJOma伽ひ加測血如"z Copepods 1 7 64 62 ●1 ワ﹄︽b 9 63 11 Amphipods Phm"伽'α‘加α 7 4 683 1 2 4 46 51 A 45 54 9 503 C e n t r o l o p h i d a e Qzzノ0J”α脚"cj"αja Lz‘c錐γ卯蛎 S a l p i d a e S a g i t t i d a e Siphonophora Errantia 3 9 9 8 9 4 2 4 5 9025086120140378 I 松野:ハワイ諸島海域のDSL 127 ︾ R溝 目 痴睡郷堀 A 灘 迄 隠賞、…線 :”零$ k 1 ; 藤 C 玲鐸頃 : 掬 重 § : 、iii蕊鍵鐘 目 l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l I │ │ │ │ │ │ Ⅱ l │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ l l l l l l l l l l │ 川 │ ’ i l 1.0cm、 1.0cm Fig.3.Fish馬amplcstakenbyIsaacsKiddFi9.4.Euphausiidssamplestakcnbylsaacs midwatertraw]net.Kiddmidwatertrawlnct. A:耐"c増I‘erriasp.B:α'・aZosc叩ejussp. C:Lα”αノリc虹ssp.D:Dii幼加ssp. E:Lαノ叩α庇"αsp・ た.又第3層の上限をはっきりつかむことができなかった.6月15日は2層のみしか記録さ れず,前2日と対比すれば,第2層(中間層)が消え第1層及び第3層のみが記録されたも のと推察され,かなりはっきりした違いを示している. 各層の下降・上昇速度は,ともに日出没前後が最も速かった.次にそれらの速度を示す. 下降最大速度(m/min.)上昇最大速度(m/min.) 6 月 1 0 日 第 1 層 5 . 1 5 . 8 第2層4.5 第 3 層 2 . 3 2 . 8 6 月 1 3 F 1 第 1 層 5 . 6 5 . 8 第 2 層 1 . 9 3 . 0 第 3 層 2 . 2 3 . 4 6 月 1 5 日 第 1 層 5 . 7 7 . 0 第 2 層 3 . 5 2 . 0 下降。上昇最大速度の平均は第1層5.8m/min.,第2層3.1m/min.,第3層2.7m/min・で あった.特に第1層の垂直移動速度は,鹿児島湾2),東シナ海,北西部太平洋水域')のどれ よりも速く,この層を構成している生物は漁泳能力が非常に大きいものと推定する. 表1にはアイザック。キッド。トロールネットにより採集された海洋生物の種類と個体数 128 鹿児島大学水産学部紀要第29巻(1980) を示した.そして図3には魚,図4にはオキアミ類の写真を示した.数多く採集されたのは ハダカイワシ科の魚,オキアミ類,端脚類,矢虫類,管水母類であった. ハダカイワシ科及びヨコエソ科の魚は夜間のみしか採捕されず,W.G.PEARcY3)は, Lα”a7zycZ"sγ伽γjは昼間水深400∼600mに,夜間はほとんど200m以浅に垂直移動を 行なっていると報告している.オキアミ類4)も夜間に採捕されたのは99.97%に達し,昼 間採捕されたのは非常に小型のものであった.しかし端脚類は昼間採捕されたものは約79% で夜間よりも多くなっている.又矢虫類,管水母類の採捕数に昼夜の差はほとんど見られな かった. これらのことより図2に示した日周運動を行なうDSLは,ハダカイワシ科,ヨコエソ科 の魚類及びオキアミ類によって構成されているものと推察する.ただ今回の採集のみでは, DSL各層の構成の違いを明確にすることは困難であった.又6月15日のDSLは2層のみし か記録されず,明らかに6月10日および6月13日とは異なったものであった.この起因に直 接関連づけられるか疑問であるが,6月15日のオキアミ類の採捕数が前2日に比べて極端に 少なかった.この問題も含めて今後更に観測を行ないたい. 要 約 1978年6月ハワイ諸島南方マグロ漁場海域において鹿児島大学水産学部実習船敬天丸 (854.55トン)に装備されている海上電機製魚群探知機によりDSLの記録を得ると同時にア イザック・キッド・トロールネットにより,DSLが下降している昼間と上昇した夜間にお いて,それぞれ水深約67mの層を1時間水平曳きをし,海洋生物の採集を行ない次のよう な知見を得た. 1)DSLは2層および3層記録され,第1層,第2層,第3層の昼間の水深は550,, 450∼550,,400mであり,下降・上昇最大速度の平均はそれぞれ5.8m/min.,31m/min., 2.7m/min・であった. 2)DSLはハダカイワシ科,ヨコエソ科の魚類及びオキアミ類によって構成されている ものと推察されるが,各層の構成の違いを明確にすることはできなかった. 参 考 文 献 ) 1 鈴木・伊藤(1967):日水誌,33,325-337 ) 2 松野(1974):本誌,23,1-8. ) 3 W.G.PEARcY,E、E・KRYGIER,RMEsEcARandF・RAMsEY(1977):Deep-SeaResearch,24, 223-245. ) 4 根本(1965):日本プランクトン研究連絡会報,12,2436.
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