土壌物理性・化学性

2.土壌調査(土壌物理性・化学性)
2−1.土壌の物理性
1)土の粒度組成(土性)
土を構成する無機質の固体粒子は数㎜単位のものから 1μm 以下のものまで幅広い粒度を持ってい
ます。また、土壌粒子は単一粒子が結合した凝集体(団粒)を形成しているので、粒度を調べるには適
当な方法で単一粒子に分散させる必要があります。単一状態の粒子を大きいものから礫、砂、シルト、
粘土と呼びます。粒度区分には数種ありますが、日本では国際土壌学会法がよく用いられています。
粒度分析には、土粒子を分散後、一定時間後の沈降距離を測定する沈定法がよく用いられ、その中
でもピペット法と比重計法が一般に採用されています。粒度分析の結果を、砂(粗砂+細砂)、シルト、
粘土に大別して、それらの含量を三角座標軸で分類したものを土性と呼びます。
0.002
粘土
0.02
シルト
粗砂
0.05 0.10 0.25 0.5 1.0
2.0
極
極
細
中
粗
細
粗
砂
砂
砂
砂
砂
シルト
0.01
粘土
2.0
細砂
0.002
粘土
0.2
0.05
シルト
0.25
細砂
礫
国際土壌学会法
礫
米国農務省法
礫
日本農学会法
2.0
粗砂
図 2-1 土壌の粒度区分(mm,対数目盛)
S:砂土
LS:壌質砂土
L:壌土
SiL:シルト質壌土
SCL:砂質埴壌土
CL:埴壌土
SiCL:シルト質埴壌土
LiC:軽埴土
SL:砂壌土
SC:砂質埴土
SiC:シルト質埴土
HC:重埴土
図 2-2 粒度組成(国際土壌学会法)
2)土壌の三相分布
土壌の粒子間の隙間部分を孔隙、土の全体積に対する孔隙体積の比率を孔隙率と呼びます。土壌の
骨格を成す無機粒子と有機物を固相、孔隙の内、水で満たされた部分を液相、空気の入り込んだ部分
を気相と呼び、固相、液相、気相の割合を三相分布といいます。土の孔隙率が約 50-40%以下になると
硬くて透水性が悪くなり、植物が生育しにくくなります。孔隙率が 50%以上あり、その大きさが大小
の変化に富んでいると、水や空気、有機物や微生物などを適度に保持することができるので、その土
は良好な土壌となります。
三相分布は、一定容器の円筒管により土壌を採取し、実容積計を用いて固相率と液相率の合計体積
である実容積を求めて気相率を算出し、炉乾燥後の重量差から液相率を求めます。
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図 2-3 三相組成
表 2-1 固相率と分級
分
級
固相率(vol%)
1 (
優
)
20>(40>)
2 (
良
)
20∼30(40∼50)
良)
30∼40(50∼60)
3 (不
4 (極不良)
40<(60<)
鉱質土壌の場合はカッコ内に表示
3)土壌の保水性(水分特性)
土壌中の水は、非常に複雑な土の間隙構造の中に存在しているため、その存在様式を幾何学的に表
現することは不可能で、土の中の水についての熱力学的平衡条件を求め、土壌水の状態を定義しその
存在様式を特徴づけています。
土壌水の化学ポテンシャルは、水の表面張力や土粒子の吸着力によるマトリックポテンシャル
(matric potential)、イオンなどの溶質を含むことによる低下量の浸透ポテンシャル(osmotic
potential)、それに位置による重力ポテンシャル(gravitational potential)とから構成されていま
す。この内マトリックポテンシャルと土壌の含水量との関係を表したものを土壌の水分特性といいま
す。
含水量もマトリックポテンシャルも、土壌の土粒子組成、間隙径組成、あるいは充填密度などに大
きく影響を受けます。従って、土壌の水分特性は、それぞれの土壌によって異なっています。水分特
性は、土壌中の保水性、水の移動、植物生育などの土壌の水分問題を把握する上での基本データとな
ります。
水分特性を測るために砂柱法、吸引法、加圧板法などの測定法が用いられます。マトリックポテン
シャル(φ)は、0∼−700,000kPa 程 度 ま で の 広 い 範 囲 を と り ま す が 、 こ の 負 の 対 数 を と っ た
pF(=log(-10.2φ))という標記がその簡便さから現在でも使われており、本資料中では両者を併記し
ています。
土壌が水で完全に飽和した状態(φ=0kPa, pF=0)の水分保持量を最大容水量といいますが、この状
態から 24 時間内で重力によって排水される水を重力水(gravitational water)といい、このときでき
る空気でみたされた孔隙を粗孔隙(macropore)といいます。この時の水分保持量を圃場容水量(field
capacity)といいφ=−6kPa (pF=1.8)に相当します。この圃場容水量(φ=−6kPa,pF=1.8)からφ=−
1,500kPa (pF=4.2,永久しおれ点)までの水が植物に利用可能な水とされており、この範囲の水分量
を有効水分量(単位:L/m3)として土壌の保水性を判断する指標となっています。この有効水分量の中で
も、毛管連絡切断含水量(φ=−100kPa,pF=3.0)までの土壌水を易有効水といい植物の生育に利用さ
れる水として土壌調査で保水性を判断する際の基準値が設けられています。
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φ(kPa)
0
-3
-6
-50
-100
-600
-1,500
-2,700
-30,000
-300,000
-700,000
pF
1.5
1.8
2.7
3.0
表 2-2 マトリックポテンシャルφと水分恒数
水分恒数
水の状態
最大容水量
重力水
圃場容水量
易有効水
毛管連絡切断含水量
毛管水
3.8
4.2
初期しおれ点
永久しおれ点
吸湿係数
風乾土水分
単分子層吸着量
絶乾土
5.5
6.5
孔隙
粗孔隙
毛管孔
隙
難有効水
吸湿水
表 2-3 有効水分量と分級
分
有効水分量(易有効水;L/m3)
級
1 (
優
)
120<
2 (
良
)
80∼120
良)
40∼80
3 (不
4 (極不良)
40>
4)水の移動(透水性)
土壌の透水性が不良だと降水後に土壌中の孔隙が水で満たされたままで空気が入らずに、根は酸素
欠乏状態で呼吸が阻害され、また、嫌気性微生物の活動により植物の生育を阻害する有害物質が土壌
中に発生し根腐れをおこします。
土壌の透水性を判断する指標としては透水係数(hydraulic conductivity)があり、通常、土壌の孔
隙が水で飽和した状態(水飽和)での透水係数が求められるのでこれを飽和透水係数といいます。飽和
透水係数の測定法には、土壌が充填された円筒管を水飽和し、円筒上部に一定水位を与え、下部から
流出する水量と流出時間を測定して飽和透水係数を求める定水位法、円筒上部の水位の低下量と時間
から求める変水位法があります。
表 2-4 飽和透水係数(定水位法)と分級
分
1 (
級
2 (
優
)
良
3 (不
飽和透水係数(m/s)
)
良)
4 (極不良)
-5
>10-3
>10
-5
(旧単位 cm/s)
10 ∼10
-6
10-3∼10-4
10-6∼10-7
10-4∼10-5
10-7>
10-5>
図 2-4 定水位法による測定
8
5)土壌硬度
硬く固結した土壌では、植物は根を土壌中に伸長させることができずに生育不良となります。畑作
物の場合では、土壌硬度が 0.5MPa(山中式硬度計で 18mm)で根の伸長が抑制され、1.2MPa(山中式 24mm)
で全く伸長できないと言われています。
表 2-5 基盤の硬度と植物の生育(山寺 1980 より抜粋)
基盤の硬度(山中式)
植物の生育状態
乾燥のため発芽、活着不良になることが多い
10mm 未満
定着した植物の生育は良好
粘性土 10∼23mm
地上部、地下部とも生育は良好である
砂質土 10∼25mm
樹木の植栽が可能である
粘性土 23∼30mm
根系の土壌への伸長が妨げられる
砂質土 25∼30mm
樹木植栽には不適である
30mm 以上
根系の伸長が不可能である
根系の伸長が困難である
軟岩・硬岩
岩に節理がある場合には木本類の根系の伸長
は可能である
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2−2.土壌の化学性
1)土壌の酸性とアルカリ性
水蒸気が雲を経て降雨となるまでに大気中のCO2 で飽和されるので、自然状態でも雨水のpHは約5.6
と言われています。さらに、人間活動に伴って発生する SOX、NOX が雨水に解けて H2SO4、HNO3 となり pH5
以下の酸性雨となります。このような酸性雨に対して土壌は強い緩衝能を持ち、その中和作用は主に
土壌中の炭酸塩、重炭酸塩によりますが、日本のように湿潤気候下の土壌では炭酸塩がほとんど含ま
れていないため、石灰等の施用による矯正が必要となります。炭酸塩などが存在しない場合には、交
換性塩基の放出、陰イオン吸着反応、土壌鉱物の溶解が緩衝作用としてはたらきます。こうした過程
で土壌溶液中のアルミニウムイオン濃度が高まり植物や土壌微生物の生育に影響を及ぼします。また、
土壌溶液中のリン酸イオンと反応して難溶性のリン酸塩を生成しリン酸欠乏を引き起こします。
表 2-5 土壌 pH の低下による影響
土壌中の交換性塩基の減少
水素イオンが塩基性陽イオンと交換
して、溶出した塩基は溶脱される。
アルミニウムの可溶化
pH 4.5 以下で土壌溶液中の Al 濃度
が急激に高まり、粘土鉱物中の Al
も溶出する。
重金属の可動化
Pb、Zn、Cd などが溶出、可動化する。
透水性の低下
低 pH 下で、土壌の分散性が高まり、
土壌の目詰まり、排水不良を招く。
土壌のアルカリ性は、溶脱が少ない条件下で、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含んでいるケイ
酸塩鉱物が炭酸により溶解することによって生じます。石灰岩や蛇紋岩などの塩基性岩を母材とする
暗赤色土などで微アルカリ性を呈するものが見られます。
土壌 pH(H2O)は、土壌の懸濁液の pH をガラス電極 pH 計で測定しますが、土壌に対する水の比率は
1:2.5 が採用されています。また、水の変わりに 1M 塩化カリウム溶液を加える pH(KCl)の測定も行わ
れていますが、本法は pH(H2O)よりも施肥等による土壌中水溶性塩類の影響を受け難くくなります。
表 2-6 土壌 pH と分級
分
級
1 (
優
)
5.6∼6.8
2 (
良
)
4.5∼5.6
6.8∼8.0
良)
3.5∼4.5
8.0∼9.5
3 (不
pH(H2O)
3.5>
9.5<
4 (極不良)
2)土壌の保肥性(陽イオン交換容量)
土壌中にカリウム塩を添加した場合、土壌溶液中の K+濃度は添加量に見合って上昇することはなく、
Ca や Mg2+の濃度上昇する現象が多く見られます。これは土壌に吸着されていた Ca2+、Mg2+が K+に置き
換わる現象であり、これを陽イオン交換反応といいます。陽イオンが保持される部位を陽イオン交換
基と呼び、粘土鉱物の酸素原子団や腐植質上のカルボキシレート基などがそれにあたります。土壌の
交換性陽イオンの保持量を陽イオン交換容量(cation exchange capacity ; CEC)といい、土壌の保肥
性を表わす指標として用いられています。
2+
10
CEC を測定する方法として最も採用されているのはショーレンベルガー法で、カラム中の風乾細土
を酢酸アンモニウム溶液(1.0mol/L,pH 7)で浸透させ、粒子間隙の同溶液を水−エタノール液で洗浄
した後、陽イオン交換基に保持された NH4+イオンを塩化カリウム溶液などで交換抽出し、その量を測
定します。
表 2-7 陽イオン交換容量と分級
分
級
1 (
優
)
20 以上
2 (
良
)
6∼20
良)
6 未満
3 (不
CEC(cmol(+)/kg)
4 (極不良)
−
3)塩類障害
水溶性塩類の集積による生育障害は、特殊な有害成分が含まれている場合を除き、土壌溶液の浸透
圧の上昇による根の吸水阻害が直接の原因と考えられ、土壌中水溶性塩類の総量の指標として、土壌
溶液または土壌の水浸出液の電気伝導度(EC,単位:dS/m)が測定されています。
EC の測定は、土壌溶液または土壌の水浸出液を用いますが、水浸出液の測定の場合には土壌と水
の比は 1:5 が採用されています。
表 2-8 電気伝導度と分級
分
級
EC(dS/m)
1 (
優
)
0.1∼0.2
2 (
良
)
0.2∼0.5
良)
0.5∼1.5
3 (不
4 (極不良)
1.5 以上
0.1 未満(肥料成分不足)
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