特定非営利活動法人有明海再生機構 有明海環境Q&A Q11.河川を通じた陸域からの土砂供給 Q11-1.筑後川の河床材料の構成はどのように変化していますか? Q11-2.筑後川の河口域が泥化している要因は何ですか? Q11-3.筑後川からの流水量は有明海へ流入する河川の約何パーセントを占めていますか? Q11:河川を通じた陸域からの土砂供給 Q11-1:筑後川の河床材料の構成はどのように変化していますか? A11-1:昭和 35 年 (1960 年 ) から昭和 50 年 (1975 年 ) までの河床からの砂利採取により、下流部で河床低下が 起こり、有明海から泥が遡上・堆積し、砂底質から泥底質に変化しました。 昭和 35 年 (1960 年 ) から昭和 50 年 (1975 年 ) までのほぼ 15 年間、 河床から大量の砂利採取が行われ、 低くなっ た河床部に満潮時に有明海から泥が遡上 ( 流れをさかのぼる ) して堆積し、河床材料の構成を大きく変化させまし た。河床低下の内訳は、砂利採取による低下が全体のおよそ 7 割を占め、 ついで河川改修、 ダム堆砂、 干拓利用となっ 6 3 掘削土量(×10 掘削土量等(×106m m3)) ています。 ダム堆砂 260万m3(7.7%) 30 砂利採取 2,490万m3(72.9%) S28~S42の 砂利採取量は推定値 20 10 河川改修 500万m3(14.7%) 0 S30 S40 S50 S60 H7 干拓 160万m3(4.7%) 図 11-1.1 筑後川からの土砂持ち出し 昭和 31 年 (1956 年 ) から平成 6 年 (1994 年 ) を比べると、下流ではシルト粘土の増加と細砂、粗砂の減少、上 流部では、礫分の増加がみられます。 100% 昭和31年 構成比率 80% シルト・粘土 細砂 粗砂 礫 60% 40% 20% ※昭和31年のシルト・粘土と細 砂の区分は0.1mm 0% 0~10km 12~22km 24~36km 38~52km 54~64km 100% 河川区間 昭和36年 80% 構成比率 粒径区分 シルト・粘土 0.075mm未満 細砂 0.075~0.42mm 粗砂 0.42~2.0mm 礫 2.0mm以上 シルト・粘土 細砂 粗砂 礫 60% 40% 20% 昭和30年代の河床材 料は下流ほど細砂・粗 砂が多く、上流ほど礫 が多く分布していた 0% 0~10km 12~22km 24~36km 38~52km 54~64km 100% 河川区間 平成6年 構成比率 80% シルト・粘土 細砂 粗砂 礫 60% 40% 20% 0% 0~10km 12~22km 24~36km 38~52km 54~64km 平成に入ると、 下流でシルト・粘土が 増加し、細砂・粗砂が 減少した 河川区間 図 11-1.2 筑後川の河床材料の変化 出典:環境省有明海・八代海総合調査評価委員会報告書 (2006) 40 河口付近には導流堤がある 川幅が狭く、水深が深い 大石堰 -m) 30 5K 000地点 8K0 00地点 Q11-2:筑後川の河口域が泥化している要因は何ですか? A11-2:感潮域の河川水中の懸濁物質 (SS) の影響です。 有明海の湾奥部 ( 佐賀、福岡海域と諫早湾含む ) には、背後に筑後平野、佐賀平野、白石平野が広がっており、 その中を流れる各河川には、有明海の潮汐が及ぶ区間 ( 感潮域 ) が発達しています。筑後川においては河口から 23 km の区間が感潮域であり、広い範囲で河床材料がシルト・粘土となっています。最近の研究によると、この 筑後川の感潮域の河床の底泥は洪水時に浸食され、河川水中に懸濁物質 (SS) が供給されることがわかってきました。 平成 18 年 (2006 年 ) 時の洪水時期については、急峻かつ降雨量の多い最上流部で SS 生産量が卓越していること、 また治水ダムに流入した SS の 55%が放流されること、感潮河道では底泥が浸食されることで、多量の SS が水中 に供給され、上流生産量の約 4 倍の SS が移動していることが明らかになっています。このように、SS 濃度の高い 河川からの流入水が、河口域の泥化に影響しているようです。 参考:佐賀大学有明海総合研究プロジェクト報告書 (2008) 恒星社厚生閣「有明海の生態系再生をめざして」(2007) 懸濁物質 Q7-2 泥化 Q7-3 参照 Q11-3:筑後川からの流水量は有明海へ流入する河川の約何パーセントを占めていますか? A11-3:流域面積で約 35%、流出量で 40%を占めています。 筑後川は、有明海へ流入する河川の流域面積の約 35%で、流出量は約 40%を占めています。筑後川その他の河 川からの栄養豊富な河川水と土砂の流入が有明海の豊かな生態系を産み出していると言うことができます。 有明海・八代海 流域の概況(2) 種 別 筑 後 緑 一 級 流域面積 (㎞2) 名 称 等 有明海流入 8河川 池 矢 部 白 河 川 八代海流入 2,860 1,100 996 620 480 368 341 87 1,880 川 川 菊 川 川 川 嘉 瀬 川 六 角 川 本 明 川 球 磨 川 6% 種 別 5% 8% 4% 福 岡 県(4河川) 二 有明海流入 104河川 級 佐 賀 県(28河川) 1,303.91 長 崎 県(48河川) 熊 本 県(24河川) 河 八代海流入 46河川 川 熊 本 県(42河川) 有 明 海 112河川 八 代 海 47河川 合 1,091.08 鹿児島県(4河川) 計 8,155.91 2,971.08 11,126.99 159河川 有明海流入河川 流域面積構成比 二級河川 1% 流域面積 (㎞2) 名 称 等 12% 27% 13% 34% 16% 筑後川 29% 35% 10% 筑後川 緑 川 菊池川 矢部川 白 川 嘉瀬川 六角川 本明川 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 図 11-3.1 有明海流入河川の領域面積 有明海・八代海 一級河川の流況(1) 全体流域面積 年 総 流 出 量 河 川 名 地 点 名 2 (㎞ ) 3 (億m ) 50 筑 後 川 瀬 ノ 下 2,860.0 45.04 矢 部 川 船 小 屋 620.0 9.29 368.0 7.32 40 341.0 4.96 35 996.0 15.61 480.0 8.15 六 角 川 菊 池 川 川 上 妙 見 橋 分 田 30 白 川 緑 川 城 南 1,100.0 18.64 本 明 川 裏 山 87.0 1.63 6,765.0 110.64 15 1,880.0 38.68 10 15,497.0 149.32 5 小 球 磨 川 合 代 継 橋 年総流出量 (億m3 ) 嘉 瀬 川 45 計 横 計 石 20 球磨川 川 本明川 川 出典:環境省有明海八代海総合調査評価委員会報告書 (2006) 緑 図 11-3.2 有明流入一級河川の流域面積と流出量 白 六角川 菊池川 嘉瀬川 矢部川 0 筑後川 ※年総流出量は、観測開始から平成13年の平均値 ※年総流出量は、観測地点流出量を流域面積比で 流域全体相当に引き延ばしている。 25
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