Twinkle:Tokyo Womens Medical University - 東京女子医科大学

Title
Author(s)
Journal
URL
遺伝子操作の基礎と臨床
神田, 尚俊
東京女子医科大学雑誌, 58(1):164-166, 1988
http://hdl.handle.net/10470/6491
Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database.
http://ir.twmu.ac.jp/dspace/
164
嗜蠕薦66第麟63血染〕
学
会
東京女子医科大学学会 第272回例会抄録
シンポジウム 遺伝子操作の基礎と臨床
日時
昭和62年11.月12日(木)午後4時より
場所
東京女子医科大学 第1臨床講堂
司会
橋本葉子教授(第1生理)
神田尚俊講師(第2解剖)
1.遺伝子増幅と染色体異常
N一層6の増幅は肺小細胞癌でも観察され,悪性
(第2解剖)神田 尚俊
癌遺伝子は正常な個体発生や細胞の増殖分化に
度との関係が示唆されている.また癌遺伝子
6γろB2の増幅は腺癌で観察され,特に乳癌の悪性
不可欠の遺伝子であるが,細胞腫二化に伴い,し
ぼしぼ変化する.その1つが遺伝子増幅で,遺伝
化因子として注目されている.
子が増加し,結果として遺伝子発現が増大する現
明らかではない,今後,正常細胞における癌遺伝
象である.類似の現象は制癌剤メソトレキセート
子の機能解明が重要な研究課題とな:るであろう.
癌遺伝子の増幅がなぜ腫瘍を悪性化させるのか
耐性細胞にも見られ,遺伝子増幅に伴って,染色
体均質染色領域(HSR, homogeneously staining
2.ヒト心筋ミオシン重鎖(MHC)遺伝子の構
造と染色体上の位置決定
region)や,微小染色体(DM,, double minute
(循環器小児科)松岡瑠美子
chromosomes)の出現が知られている.ヒト神経
先天性または後天性の心疾患の発現機序におけ
芽細胞腫ではHSRやDM,の出現がしぼしば報
る筋収縮機構,すなわち:(1)発達における筋収
告されており,遺伝子増幅の可能性が示唆されて
縮機構の仕組み,(2)発達,ホルモン,機械的刺
きた.
激もしくは薬物により引き起こされた筋収縮と心
一連の研究から,神経芽細胞腫より,レトロウ
筋アイソザイムの変化,の重要性にも関わらず,
イルスの癌遺伝子v一〃z夕6やその細胞性癌遺伝子
その分子細胞レベルでの役割はほとんど知られて
。一吻yoと部分的に塩基配例の相補性を持った癌遺
いない.そこで,特に筋収縮の仕組みにおいて大
伝子N・〃z夕6(N:neuroblastoma)が分離された.
きな役割を果たしている心筋MHC遺伝子に着
N・彫夕。遺伝子の増幅はJII期, IV期に至った神経芽
目してみた.発達段階,組織特異性ならびに病理
細胞腫の40%で見られ,N一辮翼増幅型腫瘍が非増
学的因子が,心筋MHC遺伝子よりアイソザイム
幅型と比較して悪性であることが明らかにされ
た.神経芽細胞腫の培養細胞株やヌードマウス移
への転写の過程に及ぼす影響について解析するた
植株では80%を超える頻度でN一儲鐸増幅が観察
の遺伝子の染色体上の位置を決定した.すでにヒ
され,N・規y6増幅型腫瘍細胞が異種環境において
ト骨格筋MHC遺伝子は染色体17番に存在する
ことが確認されており,ヒト骨格筋MHC遺伝子
と同様にヒト心筋MHC此伝子も同じ染色体17
め,ヒト心筋genomic MHC遺伝子の単離と,こ
も優位の増殖力を維持していることを示してい
る.N一〃z夕6の増幅は, HSRやDM、等の異常染色
体の中で起こっており,これらの染色体異常が
N一窺yo遺伝子を含む,約1000∼3000Kbの巨大な
番にあると考えられてきたが,実際は17番染色体
DNA断片の増幅によって生じたものであること
た.この事実は従来の,すべてのMHC遺伝子は
がわかった.
同じ染色体上にまとまって存在するといった考え
上ではなく,14番染色体上にあることが確認され
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