Title 血漿カテコラミン濃度の動態(第2報) : 正常血圧者 における運動負荷前後の血漿カテコラミン濃度について Author(s) 谷口, 晶子; 堀江, 俊伸; 根津, 真知子; 雨宮, 邦子; 赤 松, 順子; 山口, いづみ; 山田, 辰一; 渋谷, 実 Journal URL 東京女子医科大学雑誌, 51(5):527-528, 1981 http://hdl.handle.net/10470/4329 Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database. http://ir.twmu.ac.jp/dspace/ 71 す.過去2回腹部手術を受け2回目の手術時に偶然右腎 手に対する根深い復讐心と怨根の自覚,「自己卑下の表示 が骨盤腎であることを発見され本科に紹介された.入院 が医師に対しておこなわれた. 時の隠避では腹部を圧迫するとR・vsing’s sign陽性で この症例は,深く傷ついた自意識が,しばしば見られ あるが,他に特記すべきことない.腎機能も正常であっ る如き自殺への直接動因とならず,屈折した形での自営 た.レントゲン所見で左回は正常であり,右骨盤i腎は第 主張として,反応性エゴイズム(復讐心,怨根)の形を 5腰椎より骨盤にかけてあり,腎動脈は腹部大動脈,内 とったものである.しかし当初はこの自己主張までも強 腸骨動脈より2本出ていた.保存的療法に限界があり, い各誉田のために阻まれ,自己欺隔的態度を生み,更に 自家腎移植術が適応と考え手術を行なった.手術所見は はヒステリー症状(本例では愚依症状,離人症状として 過去2回腹部手術のため癒着がひどく腎臓を剥離する まとめられた)を形成した.このように自我の存在主張 のに困難を極め,腎血管のspasmも強く, WITも約 の視点から見ることによって,反応性エゴイズム,自己 40分を経過した.腎を摘出後,albumin solutionを用い 欺獣的態度,ヒステリー症状が相互に連関した一連の症 Gambro−PF 3B腎保存装置で潅流保存を75分間行ない. 状として理解されることを1例によって示した. 全阻血時間3時間後に右腸骨窩に腎臓を移植した.術 7,血漿力デコラミン濃度の動態〈第2報) 後,移植腎は急性尿細壊死による急性腎不全におちいっ 一正常血圧者における運動負荷前後の血漿カテコラミ たが,術後4週目に機能を回復し,患者は術後37日目に ン濃度について一 退院し,経過良好セある. (成人医学センター) ○谷口 晶子・堀江 俊伸・根津真知子・ 考察 従来,自家腎移植術では保存時間が短かいので腎の保 雨宮.邦子・赤松 順子.・山口いつみ・ 山田 辰一・渋谷 実 存法として単純保存が適切と考えられていたが,最近で 近年,動脈硬化症の発生,進展にとくに重要な影響を はこの術式の適応の拡大につれてかなり高度の手術手技 が要求されるようになってきている.すなわちWITの 与えるものとしていくつかのrisk factorがあげられて 長い例や腎血管のspasmの強い例では腎実質の障害が いるが,カテコラミンがvasoactive・substanceとして血 ある程度進行していることが推定され,このような症例 中に放出される以上,これらがrisk factorにいろいろ に対しては腎機能の温存という立場から潅流保存が単純 な影響を与えることが考えられる.むしろ動脈硬化を発 保存より適切と考えられている.そこで本症例にこれを 生,進展せしめるrisk factorのmechanismの鍵とし 適成し満足すべき成績を得たので報告した. てカテコラミンが主役を占めていると考えられる場合す 6・ヒステリーの1例 らある.われわれは正常血圧老におげる安静時血漿ノル (神経精神科)吉増 克實・○平沢 伸一 アドレナリン濃度において,60歳台は20歳台と比較し, 来院時32歳の女性.元来自発性エゴイズムとしての名 有意に高値を示したことを報告したが,今回,正常血圧 誉成情に聡くまた強靱な意志力をもつ自負心の強い意志 老において』Master two−step testをこよる運動負荷をおこ 人的性格.22歳時,創業期の某会社に入社した直後,妻 ない.その前後における血漿カテコラミンの変動を検討 帯している社長に肉体関係を強要され,数年間内縁関 し,若年者に比し高齢者において血漿ノルアドレナリン 係.その間に二児をもうける.しかし先妻の自殺後の三 濃度の増加率が大きかったので報告した. 族の非難,内縁関係故の家族からの蔑視,相手の社長の 質問 別の女性との再婚などで社会的にも行き詰ってしまう. 1)心拍数から運動強度が軽度なので一考を要す. このような状況の中で27歳の3月頃から慧依症状(幻 (何を目的としているのか判明しない). 聴,所作が自分のものでない,何かが自分の中に入って 正常血圧者だけでは不充分と思われる. に家族に対する怨みの爆発,自殺企図が見られたが,前 応答 者には内容の健忘があり,後者には狂言色彩が認められ 入院後の態度には症状に対する逆説的無関心が認めら (第一衛生〉坂木佳寿美「 2)被検者のバックグラウンドを調査すべきである. 来る)離人症状などを訴えるようになった.それと同時 た. 1 (成人医学センター)谷口 晶子 1)われわれは各年齢層に適した運動量としてマスタ ー2段階試験の運動量をえらび,それに対する血中カテ コラミン濃度の反応様式を調べました. れたが,数週間でこれらの症状はすべて消退,代って相 2)血圧に関しては正常である群を対象として,マス 一527一 72 (16∼20mm}lg)によることが従来判明していたが,イ ター2段階試験の陽性者も含まれています. 8・化膿性脊椎炎の3例 ンドメサシンやアスピリンなどPG生成阻剤により胎児 (仔)のPG生成を止めると胎内で動脈管が閉鎖するこ (第二病院整形外科) とが判明した.私達も妊娠した親ラットにインドメサシ ○中村 省司・菅原 幸子・大野 博:子・ 上田,禮子・石上宮子・若林 伸之 ンを投与することにより胎仔ラットの動脈管が完全に閉 化膿性脊椎炎は,抗生物質の普及に伴い,予後良好な 鎖することを証明した,また私達はステロイドホルモン 疾患となってきた.一方不適当な治療による慢性化など にも胎生期動脈管収縮作用のあることを世界で初めて証 が臨床像を複雑にしている. 症例1:32歳男性 発熱 腰痛にて発症した亜急性例 で,腰椎X線では第4,5腰推にSchmorl結節様の湾 明した.これらの作用は少量用いれぽ未熟児動脈管開な 症予防になり,大量用いれば胎生期動脈管閉鎖による心 不全や出生後の胎児循環持続症を生じることになる. 各種のPGに動脈管拡張作用があり,その強さは 入像を認めた.保存的治療を行なうが,再然し病巣掻爬 術および第3,4腰椎固定術を行なった. 症例皿=56歳男性 発熱 腰痛にて発症した急性例 PGE1=PGE2>PGE,。〉アラキドソ酸の1頂である.私達 はPGEの経口投与でも動脈等拡張作用が発現すること で,腰椎X線では,第2腰椎骨破壊縁,第3,4腰椎骨 を動物実験で世界で初めて証明し,臨床応用への道を開 破壊および椎間腔狭小を認めた.現在,保存的治療中で いた. 臨床上はPGE、の血管内持続注入(o・1μ9/kg/分)が ある. 症例皿:53歳男性 発熱 腰痛にて発症した亜急性例 で,腰椎X線では,第3,4腰椎椎間腔狭小および骨破 最も広く用いられている.先天性心疾患新生児が動脈管 収縮により状態悪化を生じた場合がPG治療の適応とな 壊像を認めた.現在,保存的治療中である. われわれが今回経験した症例は,いずれも男性成人例 り,次の3つの場合がある.第一には純型肺動脈閉鎖, ファロー四二二極型,肺動脈閉鎖をともなう大血管転位 である.起炎菌の証明ができたのは1例.組織学的に ・両大血管右室起始・単心室などにおける低酸素血症で は,3例とも,非特異的炎症所見を認め,確定診断は得 あり,第二には大動脈弓閉鎖症などの心不全であり,第 られなかった.治療は」原則的にはギプス床装用,抗生 三にはバルーンカテーテルによる心房中隔切開術によっ 剤投与を行ない,1例に外科的療法を行なった. ても低酸素血症の改善しない大血管転位症である.それ われわれは,治療法として早期離床可能な保存的療法 ぞれの症例を呈示した. を最:良の治療と考えており,また,適確なX線続影と臨 質問 床像を大切にした早期発見早期治療が重要と考える。 動脈管が呼吸を開始すると収縮する機序はどうなって 9.〔旧説〕 』 座長(微生物)吉岡 守正 いますか, 動脈管とプロスタグランディン 応答 (循環器小児科)門間 和夫 動脈管の出生にともなう収縮は,中を流れる血液の (循環器小児科)門間 和夫 胎生期動脈管の生理的開存にプロスタグランディン Po,の増加による.動脈管壁の平滑筋がなぜ・Po,上昇 (PG)が関与していることが明らかになり,未熟児動脈 に反応して収縮するかは未解明である. 管開存症の治療にPG生成阻害剤が用いられ,ある種 10ド〔症例検討会〕 のチアノーゼ性先天性に疾患新生児の低酸素血症治療に 中年発症・緩徐進行性の筋萎縮・筋力低下および易疲 PGが用いられるようになった.ここでは私達が数年学 労性を示した1症例 行なってきた,動脈管とPGに関する基礎的研究と臨床 (司会)丸山 勝一教授 的研究の成績について述べる. 追って全文を本誌に掲載する. 胎生期動脈管の開存は動脈管内血液pO,の低いこと 一528一
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