Twinkle:Tokyo Womens Medical University - 東京女子医科大学

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小児期重症感染症の抗生物質療法について
滝田, 誠司
東京女子医科大学雑誌, 44(7):646-647, 1974
http://hdl.handle.net/10470/2413
Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database.
http://ir.twmu.ac.jp/dspace/
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実験の成績はそれぞれ多くの問題を提供しているが,
である,菌のMICと病巣内濃度との関係から投与量が
本講演においては,A群レンサ球菌の変異菌のなかに原
きめられるが,いわゆる適正な量の決め方が問題であ
菌の特徴の多くを失って,細菌学的にはA群としてでは
り,このことはMICとして表現される数値と臨床効果
なくむしろD群に類似の性状を示すものがあること,レ
との関係にもつながってくるわけで,今日なお多くの問
ンサ球菌分類の1指標とされる溶血を起こす機序は多様
題が残されている.大量に投与するとなると静注か,点
であって,上記3種の遺伝学的手段で溶血性の変化する
滴投与になるが,one shotの静注では高い濃度がえられ
こと,そして多分に推測の域を出ないが,これらの現象
るが,有効濃度の持続は短く,点滴投与では,点滴時間
がヒトの疾病の理解にいかなる繋がりがあるであろうか
がその濃度を規定する大きな因子であり,必要な濃度を
保つことが可能である.このような条件で有効性と副作
などについて強調した.
用との関係から,投与問隔,投与法が決められることに
シンポジウム
なる.
「抗生物質使用法の進歩」
2.術前の化学療法
(外科)織畑 秀夫
司会 教授 高目 和夫(内科)
外科における化学療法は化膿性疾患の治療に主眼が置
1。抗生剤の選び方と使い方一特に内科領域から一
かれたのが第1歩であったが,その後,手術創の感染防
(第二病院内科)清水喜八郎
止のために非感染性疾患にも用いられるようになった.
ペニシリンに始まる抗生物質の進歩は,.多数の抗生物
質を,臨床医家の日常診療に用いることを可能にし,ま
はじめは手術後に用いられたのであるが,手術前から
たその効果にみるべぎものがあることも周知のとおりで
大腸内細菌を減らしておいて,大腸切除の際の感染防止
ある.臨床医家は,数多い抗生物質の存在により,とき
に役立たせる方法がとられるようになった.これと同じ
に,その撰択に困難を感ずることも事実であろうし,ま
意味で,肺切除の場合にや,気管支断端の縫合不全を防
た抗生物質の進歩に宿命的な耐性菌の問題も必ずつきま
ぐ意味から,術前4∼5日前から気管支内細菌の発育を
とってくる.したがってその撰択と使い方について,充
押える目的で化学療法が行なわれるようになったのであ
分な配慮が払われなけれぽならない.1)抗生物質撰択
る,
上の問題:抗生物質の撰択は,感受性検査により原因菌
われわれは昭和43年の外科学会において,術後肺合併
に対し抗菌力があり,罹患臓器に移行しやすいもので,
症,とくに新生児と高令者の比較を発表したが,新生児
かっ副作用が少ないものというのが撰択の原則である,
も高二者も共に肺合併症による死亡率が高く,その一因
もちろん,肺炎球菌,溶連菌に対してbenzyl−penicillin,
として肺合併症を起こし易い素因があると同時に,気管
腸チフスにに対しては chloramphenicolのごとく,診
内チューブ挿入による気管,声帯および喉頭蓋の刺激,
断がすぐ薬剤撰択につながる場合と,感受性検査がきわ
および固定に伴う炎症,感染および誤嚥による肺炎など
めて必要な場合がある.第二は,抗生物質が病巣で,菌
の危険のあることが実験的に明らかにされた。そこで,
を制圧するに必要な濃度に存在しなくてはならない.
この肺合併症防止の手段として,気管および喉頭付近の
したがって各抗生物質の体内分布の特性をしり,例えば
菌の発育を抑制しておくことが重要と考え,気管内麻酔
肺にも移行しやすいもの,胆汁に移行しやすいもの,腎
を行なう場合および乳幼児の全身麻酔を行なう例につい
に移行しやすいものなど,その差を知っていることが大
ては,必ず術前2∼3日間化学療法を行なうことにして
切である.第三に,抗生物質の作用機序が殺菌作用か,
いる.
静菌作用かによっての使いわけが必要になってくる.殺
このように術前に化膿ないし肺炎防止のための化学療
菌作用を発揮するpenicillin系, cephalosp・rin系諸剤
法を行なうことになった結果,救急手術を除く,殆どす
は主として重症な感染症に対しては撰択されなくてはな
べての手術例が,術前化学療法を行なうようになり,従
らない,2)投与間隔と投与量の問題:一般に病巣内の
前より術後肺合併症の危険は改善されている.
3.小児期重症感染症の抗生物質療法について
薬剤濃度が菌のMIC以上にたもたれていれば,その薬
(小児科)滝田 誠司
剤の効果が期待できるわけであるが,生体内ではその
ような状態をつくることは,特殊な場合をのぞいては難
小児の急性細菌性感染症の治療は,抗生物質療法の高
しい,薬剤は一定間隔で投与され,その濃度は変化して
度に発達した今日においてさえ,常に,必ずしも容易で
ゆく.重症軽症の場合での投与間隔について配慮が必要
はない.特に新生児,乳児における感染症は,個体の防
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次に黄色ブ菌による乳幼児疾患で今時注目をあびてい
禦機構の未熟性および,臨床症状の非定型性による早期
診断,早期治療の困難さのために,極めて急速に重症化
るstaphylococcal scalded skin syndrome(Ritter皮膚炎)
し,あるいは生命を脅かし,あるいは重大な後遺症を残
につぎ述べた.本症は眼や口の周囲の発赤,結痂,亀裂
す傾向を有している.
に始まり,広範囲の慶燗と狸紅熱様紅斑を呈し,扁桃腫
今回は,このいわゆる重症感染症の中で,髄膜炎,敗
大,発熱を伴うものである.
血症,心内膜炎,膿胸,膿皮症にっき,1967年以後現
その患者から分離したブ菌につき,都立衛生研究所微
在までの7年間に,当小児科に入院した症例を中心とし
生物部善養寺博士らとの共同研究で,多くの場合コアグ
ラーゼ1型に属する事が判かつた.これはファージ型分
て,これら疾患における抗生物質療法について検討を加
類では皿群に相当し,従来本邦の病原性ブ菌としては少
た.
経験した化膿性髄膜炎症例は22例で,新生児10例,以
なかったものである.同菌から新生マウスの皮膚剥脱を
後の乳幼児,学童例は12例である.起因菌としては,新
来たす毒素exfoliatinを分離精製し,それが分子量約
生児では,E・coli,以後の小児では, Hemophilus inHue−
22,000のタン白である事を証明した.膿痂疹の原因菌は
nzaeが多かった.新生児では, aminobenzy1−penicillinと
コアグラーゼ5型(ファージ型皿群)に属するものが大
kanamycin又は, gentamycinにて治療を開始したが,
部分であるが,最近は1型菌もぼっぼっ見られるように
半数は死亡,生存者の60%は中枢神経系後遺症を残すと
なっている.
5.各種感染症の起炎菌とその薬剤感性度について
いう結果で,本症の重篤なることを示している.2ヵ月
(真盛・細菌部)長田 富盛
以後の小児では,aminobenzyl−penicillinにて治療を行
なっているが,死亡は,12例中2例で,新生児に比べ遙
1935年ドマークのスルホンアミド剤発見に端を発した
かに低かった.
化学療法は,1940年越ローリーによるペニシリンの実用
敗血症,心内膜炎,膿胸,膿皮症についても,本教室
化による抗生物質療法へと進展し,以来30年,今日まで
の症例を提示しながら,最近における抗生物質療法につ
に報告された抗生物質は約1,000種を数え,その中で臨
いて簡単に触れた.
床的に応用されている抗生物質は約50種類に及ぶも,な
お感染症の起炎菌と抗生物質との戦は依然として連綿と
4.最近の抗生物質外用療法
つづけられている,
(皮膚科)肥田野 信
われわれは当病院の中畑において,各科から依頼され
抗生物質の外用療法が重要な理由は,1) 全身的作用
なしに,2)局所に充分量の薬剤を作用させうる点にあ
る感染症の各種検体から原因菌を検索し,その薬剤感受
る.3)経皮感作を起こさず,後日同じ薬を内服又は注
性度をしらべることを主な業務としている関係上,最近
射した時ショック等副作用を来たさぬようにする事も重
3年間における感染症の起炎菌とその薬剤感受性度の展
要で,この点からペニシリン外用は不可である.
望をのべ,更に比較的最近登場した抗生物質,また今後
登場予定の新抗生物質の抗菌スペクトラムなどについて
今日用いられる外用剤のうち,外用専門剤にはフラジ
オマイシン,ミカマイシン,グラミシジン,パシトラシ
のべる.
また菌交代現象と抗生物質療法についての管見をのべ
ン,フラジンがあり,全身的投与もされるが外用にも
用いられるものに,エリスロマイシン,オキシテトラサ
る.
検討する項目は下記の如くである.
イクリン,テトラサイクリン,デメチルテトラサイクリ
1)昭和47年,48年,49年の各4月∼6月における各
ン,クロラムフェニコール,ロイコマイシン,ゲンタマ
イシン,ストレプトマイシン竿がある.外用専門剤は仮
種感染症の検体別起炎菌の分布.
に経皮感作を起こしても全身的に用いる事がないため,
2)
起炎菌の検体別薬剤感受性度.
ショック等の危険を伴わぬ点有利だが,大量に用いて吸
3)
起炎菌別薬剤感受性度の推移.
収されうる場合,全身作用の点で問題があろう.全身的
4)
各種感染症における抗生物質療法の第1撰択剤.
にも用いられる抗生剤では,エリスロマイシン,テトラ
5)
新抗生物質の抗菌スペクトラム.
サイクリン系が依然として好まれている.
6)
菌交代現象と抗生物質療法.
各種皮膚疾患におけるそれらの適応を解説した.
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