土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度) Ⅵ-081 軟弱地盤における高規格堤防の施工とJR構造物への影響 ○ 東鉄工業㈱東京土木支店 正会員 丸田 正博 東日本旅客鉄道(株) 東京土木技術センター 平山 信夫 東日本旅客鉄道(株) 東京土木技術センター 中垣 宏隆 1.はじめに 本工事は、荒川左岸の高規格堤防盛土工事であり、 JR東北線赤羽・川口間の荒川橋梁(東北線・東北貨物線 盛土 10m ・京浜東北線)に近接した、N値4以下を含む軟弱地盤上 盛土 Yuc Yus1 Yus2 での施工である。橋梁の上・下流側及び桁下部に Ylc1 Ylc2 おいて、盛土約65,000㎥、最大盛土10mをH21年11月~ Nac Nas2 H23年3月に施工した。軟弱地盤での鉄道営業線近接施 Tos 工となるため、列車の安全・安定輸送に影響を与えない 図-1 断面図 ように施工することが課題であった。 本稿は、課題解消のために実施した施工管理と計測 3.JR構造物の計測管理 JR 構 造 物 へ の 監 視 対 策 と し て 、 P11 ~ P13 橋 脚 、 A2 管理について報告する。 橋台上の軌道にリンク型軌道変位計を設置した。 また、盛土の動態観測として構造物傾斜計・層別沈下計 2.JR構造物への対策工 盛土による鉄道影響対策として、事前に荒川橋梁の ・地中傾斜計を施工前に設置し、施工中はトータルステー P12・P13橋脚及びA2橋台に対し、盛土との縁切のため、 ションを用いて構造物変位を計測した。設置箇所・計測 鋼管矢板φ1000~φ1500 L=40mの防護工(井筒型)が 表-1、図-2に示す。 施工されている。しかし、平成16年度に600㎜/日の施 計測種別 工速度にて盛土を行った際、P13橋脚上流側において リンク型軌道変位計 3線×4箇所=12箇所 10分ピッチ 構造物傾斜計の値に増加傾向が見られたた 構造物傾斜計 3線×4橋脚=12箇所 1回/1時間 め、工事を中断し原因解明及び対応策が検討された。 層別沈下計 7箇所 1回/1週 こ れ を 受 け て 追 加 の 対 策 工 と し て 各 P13 橋 脚 間 地中傾斜計 10箇所 1回/1週 に 間 詰 コ ン の 設 置 、 A2 橋 台 背 面 土 工 部 の 深 層 構造物変位 18箇所 1回/1週 混合処理工、盛土範囲には圧密沈下促進工法として 計測箇所数 計測頻度 表-1 動態観測設置数及び計測頻度 バーチカルドレーン、サンドマット工法を行った。 ☆ 今 回 H21 年 度 以 降 の 施 工 で は 、 こ れ ら の 対 策 工 に 上流側 ☆ 加えて鉄道施設の計測管理を行いながら施工を行った。 貨物線 P11橋脚 白枠内 盛土箇所 赤羽方 JR荒川橋りょう P13橋脚 A2橋台 東北線 荒川 京浜東北線 P11 P11 P11 P12 P12 P12 P13 P13 P13 下流側 P12橋脚 A2 上流側 A2 赤羽方 下流側 A2 東北線 京浜東北線 貨物線 ☆ 川口方 凡例 川口方 ☆ 構造物傾斜計 層別沈下計 地中傾斜・ 層別沈下併用 地中傾斜 構造物変位 (ターゲット) 軌道変位計 図-2 動態観測箇所平面図 写真-1 施工箇所平面図 キーワード 盛土 軟弱地盤 緩速施工 計測管理 連絡先 〒170-0003 東京都豊島区駒込1-8-11(トーコー駒込ビル)東京土木支店 ℡ 03-5978-2813 -161- 土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度) Ⅵ-081 松尾・川村法の安定評価より、盛土の状態確認をして施工 4.施工管理・工程管理 今回の盛土施工に際しては、前記した平成16年度の事 を実施した結果、計測管理値に目立った変位は見られな 象を踏まえて30~50mm/日の緩速盛土施工と橋脚・橋台の かった。H23年3月度の計測結果は、京浜東北線P13橋脚 上・下流側を均等に盛土することが提示された。実施工とし 下流側測点において、鉛直変位S:-282mm、水平変位δ: て 1 層 の 仕 上 り 厚 さ を 30 ㎜ に す る こ と は 困 難 な た め 、 -95mmを示したが、松尾・川村法δ/S-Sの管理図に当ては 施工速度30㎜/日を遵守する方法として、盛土1層の仕上 めてみると管理線はq/qf=0.8未満のため、盛土は安定した り厚さを300㎜として10日に1回の割合で同一箇所に戻って 状態と判断できる。 施工することにより、300㎜/10日⇒30㎜/日と換算し施工を 計画した。盛土施工フローを図-3、施工サイクルを図-4に 示す。 δ/S-S の関係 2.0 ① 施 工 割 付 ・ 工 程 検 討 ② 施 工 土 量 作 成 ④ 盛 土 緩 速 施 工 ③ 現 場 区 割 明 示 ⑤ 施 工 実 績 の 記 録 1.8 q/qf=1.0 0.9 1.6 0.8 1.4 1.2 S(m) 1.0 0.7 0.8 0.6 図-3 盛土施工フロー 0.4 0.2 断面図 21日目 11日目 1日目 22日目 12日目 2日目 A工区 B工区 23日目 13日目 3日目 C工区 0.6 ×☆■ 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 3層目 30cm δ/S 2層目 30cm 1層目 30cm 凡例 H23.3月 × H23.2月 施工割付 H23.1月 ■ H22.12月 ☆ H22.11月 H21.11月~H22.10月までは、プロット外 図-4 施工サイクル模式図 図-5 δ/S-S 関係図 本工事は鉄道営業線近接施工であり、盛土の偏土圧が 5.まとめ JR構造物へ多大な影響を及ぼす可能性がある。今回の 本工事において、過去の対策工事及び今回実施した緩速 軟弱地盤で想定される事象は、盛土上載荷重によりAP-5.0 施工と上・下流側への均等な盛土により、軌道及びJR構造 m~-22.0 m付近の軟弱層が側方流動することによるJR 物に対し有害な変位を発生させることなく盛土工事を完了 構造物の変位である。よって、計測管理値に異常が現れる することが出来た。 前に変位の予兆を把握する必要があった。 現場では、今後も残された工期の中で軌道計測及び盛土 盛土変位の予兆をつかむため、施工中は、層別沈下計 1) の動態観測を実施し、盛土の安定状態を継続監視して施 と地中傾斜計のデータをもとに 松尾・川村法にて週1回 工を進める計画である。これまでの事例をもとに安全な工事 盛土の安定評価を実施した。松尾・川村法では、盛土の水 を推進し、引き続き安全・安定輸送の確保に努める所存で 平変位と鉛直変位を基に破壊規準線を指標として管理 ある。 する。鉛直変位をS、水平変位をδとして盛土の状態が <参考文献> q/qf=0.8~0.9の範囲に至ったときに、破壊の前兆となる 1)松尾・川村法:土質基礎工学ライブラリー38 地盤の側方流動 クラックが経験的に発生するといわれている。 土質工学会編 土質工学会 P26-27 -162-
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