用途仕立て可能な省エネ有機薄膜ガスセンサの開発 無機材料を中心としたガスセンサの歴史は長く、多くのセンサも実用化され てきた。しかしながら、これらのセンサの最大の欠点は、被検ガス種の選択性 に著しく乏しいことである。このため、センサ素子の温度走査やネットワークを 利用した信号処理など、いろいろな工夫がなされている。これに対し、有機材 工学研究科 准教授 ■ キーワード 研究の背景と目的 村上 健司 料を利用した場合、ガス分子と有機分子との特異な反応を利用することによ り、電気伝導性の変化などを利用した検知特性に、被検ガス種への選択性を 持たせることが可能となる。併せて、センサデバイスの低消費電力化も期待 できる。また、NO2 ガスセンサの用途としては、自動車等の排ガス測定のよう な高温・高濃度という過酷な条件から、大気汚染モニターのような常温・低濃 度という条件まで広い範囲に渡っている。 そこで、化学的安定性に優れ、有機半導体材料の一つである金属フタロシ ・ ガスセンサ アニンを利用し、薄膜の微構造制御によるガス応答特性の改善および、出発 ・ 有機材料薄膜 有機材料の分子設計によるガス感度ならびにガス選択性の改善を通して、幅 ・ NO2 ガス検知 広い用途をカバーできる実用的な NO2 ガスセンサ素子を、同一材料・同一構 ・ 金属フタロシアニン 造で実現しようとしている。 ・ p 型半導体特性 金属フタロシアニンは比較的大きな分子であり、その中央に金属原子を有 しているため、平面分子が重なることにより分子間に電気伝導が生じる。本研 究は、中央の金属原子をフッ素でつなぎ電気伝導性を高めたフッ化アルミニ 研究の概要 ■ 技術相談に応じられる関連分野 ウムフタロシアニンを利用することにより、非常に薄い薄膜のガスセンサの開 発を可能としている。また、金属フタロシアニンに新たな化学基を付加するこ とにより電気伝導性を制御し、用途に合わせたガス応答特性の実現を目指し ている。 これまでに、フッ化アルミニウムフタロシアニンに、1個、4個および8個の新 ・ デバイス、材料の解析・評価 たな化学基を付加したものを合成し、NO2 ガスに対して異なる応答特性を示す ・ 圧電材料 ことを証明し、実用化に向けた取り組みを展開している。 ・ 機能性薄膜 ・ 雰囲気センサ ・ 太陽電池 ・ 特筆すべき研究ポイント: ①実用センサの用途別に容易に特性を変えられる(用途別仕立て 可能)独創的なセンサ素子の開発。 セールスポイント ②分子層レベルにまで薄膜化する(センサ特性を維持しながら)こと による耐久性の改善。 ・ 新規研究要素: (世界初あるいは日本初など) 上記のアイデアは世界初である。 ・ 従来技術との差別化要素・優位性: ①同一材料・同一構造を利用しているため、多用途化が非常に容 易である。 ②製造コストが廉価で、消費電力が非常に小さい。 イメージ図 R=-O(CH2)5 CH(CO2C2H5)2 R=-C(CH3)3 R=-CH3 AlFPcR AlFPcR4 AlFPcR8 (Mono-Substituted) (Tetra-Substituted) (Octa-Substituted) AlFPc, Io=26 nA 20 AlFPcR, Io=22 nA 16 AlFPcR4, Io=33 nA ΔI (μA) AlFPcR8, Io=49 nA 12 8 4 0 0 40 80 120 160 200 240 Time (min) 金属フタロシアニン分子を利用したガスセンサは、中心金属の置換や新たな化学基の付加などの分子修飾に より、被検知ガス種および検知特性を制御できる可能性がある。この特異性を利用した、多機能ワンチップガス 今後の展望 センサの開発を目指している。 具体的な応用としては、多機能環境モニター、自動車用多機能 NOx センサ、食品鮮度モニターなどが考えられ る。 ■ その他の研究紹介 ・アクチュエータ用無鉛圧電セラミックスに関する研究 ・応力発光材料の開発 ・色素増感太陽電池の実用化 ・スプレー熱分解堆積(SPD)法の大気中薄膜形成への応用 など
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