コンクリート工学年次論文集 Vol.25 - 日本コンクリート工学協会

コンクリート工学年次論文集,Vol.25,No.2,2003
論文
リブ付コンクリート壁板の構造性能に関する実験研究
河本
孝紀*1・大池
孝治*2・倉本
洋*3・尾崎
純二*4
要旨:限界耐力計算法の対象となる「リブ付中型コンクリートパネル造」に関して、静的非
線形増分解析用のモデル構築に必要な基礎データ取得を目的にリブ付コンクリート壁板の水
平加力実験を実施した。その結果、一定軸力及び変動軸力下におけるアンカーボルト降伏時
の曲げ耐力については既往の式を用いることで概ね評価できること、アンカーボルトの伸び
による回転変形成分の割合が高いこと、アンカーボルトの応力-伸び(目開き)曲線がスリッ
プ型であること、壁板のモーメント-変形曲線を曲げひび割れ及び剛性低下を考慮したトリ
リニア型モデルで概ね評価できることを示した。
キーワード:プレキャスト,耐力壁,限界耐力計算法,リブ付
1.
はじめに
表-1 試験体一覧
2階建ての低層コンクリート系工業化住宅に
No
用いられる量産公営住宅をベースにした「リブ
付中型コンクリートパネル造」 1)は、規格化さ
1
れたリブ付プレキャスト鉄筋コンクリートパネ
2
3
ルをボルト接合で組み立てる壁式構造である。
4
断面(mm)
長さ
シェル
×高
厚
×厚
897x
2700
x120
46
897x
1200
x120
建築基準法の改正により限界耐力計算法の対
アンカー
ボルト
縦リブ
主筋
メッシ
ュ筋
とから静的非線形増分解析用のモデル構築に必
2-D19
2-D13
変動*2
ナット
断スパン比(以下「a/D」)をパラメーターとし
軸力
正載荷
上スタブ
220
メッシュ筋
2.9φ@60
試験体
2700
or
1200
座金
たリブ付コンクリート壁板(以下「リブ付壁板」)
2-D13
の水平加力実験を行い、壁板及びアンカーボル
無収縮
モルタル
下スタブ
試験体一覧を表-1に、試験体形状を図-1
アンカーボルト位置
128.5
128.5
縦リブ
(リブ幅 70mm)
図-1 試験体形状図
(正会員)
*2 豊橋技術科学大学大学院
工学研究科建設工学専攻
*3 豊橋技術科学大学助教授
工学教育国際協力研究センター
営業本部技術部
壁主筋 2-D13
897
=120x 897mm、シェル厚 46mm(平均壁厚は 57.5
(正会員)
-811-
脚部横リブ
(せい 150mm)
シェル(厚 46mm)
120
4体を設定した。試験体断面は壁厚 x 壁長さ
宇部センター
400
60
に示す。試験体は2階建住宅の1階を想定した
*4 ウベハウス㈱
アンカーボルト
D19(SD295A)
アンカー
ボルト
[接合詳細図]
シェル
(厚 46mm)
2-D13
脚部横
リブ
トのモデル化に必要な基礎データを取得した。高強度
*1 ㈱宇部三菱セメント研究所
一定
壁版
着目し、軸力(一定軸力及び変動軸力)とせん
試験体
変動
2.9φ
@60
1.74
負載荷
そこで、本研究では耐力と変形性能について
2.1
一定
3.42
要な基礎データの取得が必要となった。
実験概要
軸力
*1:加力高さ/壁長さ
*2:負載荷時は軸力 29kN 一定とした。
象となったが、実験研究データが充分でないこ
2.
せん断
スパン比*1
a/D
(正会員)
工博
(正会員)
[縦断面図]
表-2 コンクリート材料試験結果
mm)とし、縦リブに主筋として 2-D13(SD295A)、
シェル部補強筋には 2.9Φ@60 メッシュ、アン
No.
材齢
(日)
28
34
43
39
カーボルトには D19(SD295A)を用い、コンクリ
1
2
3
4
ートの設計基準強度を 30N/mm2、接合部に充填
される高強度無収縮モルタルの設計基準強度
を 60N/mm2 とした。変動要因は軸力(一定、変
コンクリート
圧縮強度σB
(N/mm2)
46.47
50.25
50.72
46.47
表-3 鉄筋の材料試験結果
動)及び a/D(3.42、1.74)とした。尚、a/D=3.42
部位
は平面プランの出隅部耐力壁の応力状態を、
仕様
a/D=1.74 は中通りと外通りが直角に交わる部
応力 (N/mm2)
降伏歪 (μ)
引張強度 (N/mm2)
伸び率 (%)
ヤング係数 ×105(N/mm2)
降伏点
分の耐力壁の応力状態を想定しており、a/D=
高強度無収縮モルタル
材齢
圧縮強度
(日)
(N/mm2)
5
82.17
6
85.21
7
78.60
5
83.10
3.42 の試験体は壁板高さを 2700mm、a/D=
1.74 の試験体は壁高さを 1200mmとした。
表-2にコンクリート、表-3に鉄筋の材料
アンカーボルト 壁主筋 壁短辺主筋
D19
D13
D10
(SD295A) (SD295A) (SD295A)
395
367
357
1890
2198
1861
578
508
501
24.0
23.2
19.7
2.16
1.85
1.83
350kN ジャッキ
試験結果を示す。
2.2
載荷方法
500kN アクチュエーター
図-2に載荷装置を図-3に加力スケジュー
ルを示す。
a/D=3.42:a=3077mm
試験体
試験体は反力フレーム内にPC鋼棒で固定さ
a/D=1.74:a=1567mm
れたプレキャストの下スタブ上に設置され、ア
ンカーボルトにより接合した。尚、アンカーボ
400mm
ルト廻りの隙間には高強度無収縮モルタルを充
填した。上スタブは縦縫いボルトで試験体と接
図-2 載荷装置図
合され加力治具とボルト接合した。
1/30
載荷は水平方向に取りつけた押し引き両用の
500kN アクチュエーターにより正負交番繰り返
1/50
(+)押
し載荷を行った。加力点高さは 3077mm 及び
1567mm とした。同時に鉛直方向に、350kN 油
圧ジャッキで 2 階建の1階壁に作用する長期軸
力を想定した 29kN(軸応力度 0.56N/mm2)の
一 定 軸 力 又 は 0 ~ 150 k N ( 軸 応 力 度 0 ~
2.90N/mm2)の変動軸力(N=29+1.2・Q
(-)引
1/67
1/100
1/200
1/400
-1/400
-1/200
-1/100
-1/67
-1/50
-1/30
kN、Q:
図-3 加力スケジュール
200
水平力)を載荷した。
測定方法
変位計
500
2.3
測定は図-4に示すように頂部の水平及び鉛
不動梁
直変位、脚部の目開き及びすべり変位、壁側面
の伸び変位をそれぞれの位置に設置した変位計
ゲージ
壁板
で、壁板主筋、メッシュ筋及びアンカーボルト
アンカー
圧力変換器で測定した。
下スタブ
200
た。尚、水平力は 500kN ロードセル、軸力は
500
ボルト
のひずみをワイヤーストレインゲージで測定し
下スタブ
図-4 測定方法
-812-
単位(mm)
3.
3.1
実験結果及び考察
ひび割れ及び破壊性状
各試験体の最終破壊状況を図-5に示す。
a/D=3.42 の No1,2 及び a/D=1.74 で軸力一定の
No3 においては、引張側の壁主筋定着部のかぶ
りコンクリートの剥落により耐力低下が生じる
No3
No4
側方割裂破壊の様相を示し、反曲点ありで変動
No1,No2,No3 は引張側壁主
軸力の No4 では圧縮側の縦リブの圧縮破壊によ
筋定着部の側方割裂破壊
り耐力低下が生じる曲げ圧縮破壊の様相を示し
No4 は圧縮側縦リブの圧縮
No1
た。
破壊
No2
次にひび割れ状況について見ると a/D=3.42
図-5 最終破壊状況
の No1,2 では壁脚部に曲げひび割れが生じた後、
50
アンカーボルト降伏
(Q=30.58kN)
-1/50
-1/100 -1/400
-1/42
-1/67
-1/200
40
アンカーボルトに沿う付着ひび割れ、曲げひび
主筋降伏
(Q=33.12kN)
アンカーボルト降伏
(計算値:30.6kN)
30
割れ発生領域の拡大及び曲げせん断ひび割れへ
20
の進展が生じた後、引張側アンカーボルト壁内
荷重(kN)
10
定着部及び引張側壁主筋定着部でひび割れの拡
0
大及びかぶりコンクリートの剥落が生じ荷重が
Q(+)
-20
-30
低下した。a/D=1.74 の No3(軸応力度 0.56N/
アンカーボルト降伏
(計算値:30.6kN)
-40
2
mm )では曲げせん断ひび割れに続いてせん断
-50
-100
アンカーボルト降伏 1/400
1/100
1/50
(Q=31.26kN)
1/200
1/67
-50
0
ひびわれが生じた他は、No1,2 と同様なひび割
1/30
50
変位(mm)
1/20
100
150
図-6 Q-δ曲線(No1)
れ状況を示した。a/D=1.74 で変動軸力の No4(最
50
大軸応力度 2.88N/mm2)ではせん断ひび割れま
-1/37
40
で No3 と同様なひび割れを示したが引張側の壁
-1/100 -1/400 アンカーボルト降伏
-1/50
(Q=35.57kN)
-1/67
-1/200
主筋降伏
(Q=39.59kN)
アンカーボルト降伏
(計算値:35.65kN)
N=70.3(kN)
30
20
荷重Q(kN)
主筋定着部のかぶりコンクリートが剥落する前
に圧縮側の縦リブが圧縮破壊した。尚、すべて
の試験体においてせん断破壊は生じなかった。
3.2
δ
N
-10
10
0
-10
-20
変形性状
-30
図-6~図-9に実験より得られた荷重(Q)
アンカーボルト降伏
(計算値:27.26kN)
アンカーボルト降伏
(Q=27.54kN)
-40
-変位(δ)曲線を示す。すべての試験体にお
-50
-100
-50
1/50
1/400 1/100
1/200
1/67
0
いて履歴がスリップ型を示した。
1/33
50
変位(mm)
1/20
100
150
図-7 Q-δ曲線(No2)
詳しく見ると図-6及び図-7より、a/D=
100
-1/30
80
ルで曲げひび割れが生じ、R=1/400~1/200 の
60
サイクルでアンカーボルトの付着ひび割れを生
40
じながらR=1/100 のサイクルでアンカーボル
荷重((kN)
3.42 の No1,2 では部材角(R)1/400 のサイク
主筋降伏
(Q=70.3kN)
アンカーボルト降伏
(計算値: 60.48kN)
0
トが引張降伏、その後R=1/50 のサイクルまで
は急激な耐力低下は見られず履歴を重ね、R=
-40
除々に低下した。尚、No1 と比較し正載荷で軸
アンカーボルト降伏
(Q=52.92kN)
20
-20
1/30 のサイクルで壁主筋が引張降伏し耐力が
-1/50 -1/100 -1/400
-1/67
-1/200
アンカーボルト降伏
(計算値: 60.48kN)
-60
-80
-60
応力度が高く、負載荷で軸応力度が低くなる変
-813-
1/400 1/100 1/50
1/200 1/67
アンカーボルト降伏
(Q=59kN)
-40
-20
0
変位(mm)
20
1/30
1/20
40
60
図-8 Q-δ曲線(No3)
80
動軸力の No2 は正載荷で耐力が高く、負載荷で
120
-1/30
100
耐力が低くなる傾向を示し、軸力が耐力へ影響
アンカーボルト降伏
(Q=88.89kN)
-1/50 -1/100 -1/400
-1/67 -1/200
圧縮側縦リブ圧縮破壊
(Q=101.5kN)
80
アンカーボルト降伏
(計算値:84.38kN)
N=143.7kN
60
図-8より、a/D=1.74 で一定軸力の No3 では
R=1/400 のサイクルでアンカーボルトの付着
荷重 Q(kN)
を与えることがわかった。
40
20
0
-20
ひび割れを生じ、R=1/200 のサイクルで曲げひ
び割れ、R=1/100 のサイクルでアンカーボル
トが引張降伏、その後R=1/50 のサイクルまで
-40
アンカーボルト降伏
(計算値:60.59kN)
-60
1/400 1/100 1/50
1/200 1/67
アンカーボルト降伏
(Q=63.5kN)
-80
-60
-40
-20
1/30
0 変位 (mm) 20
40
60
80
図-9 Q-δ曲線(No4)
表-4 実験結果と計算値の比較
急激な耐力低下は見られず、R=1/30 のサイク
ルで壁主筋が引張降伏、R=1/20 のサイクルで引
No
方向
張側の壁主筋定着部が破壊し耐力が低下した。
1
図-9より、a/D=1.74 で変動軸力の No4 では
2
+
+
+
+
-
R=1/400 のサイクルで曲げひび割れ及びアン
3
カーボルトの付着ひび割れを生じ、負載荷の
4
R=1/100 のサイクル、正載荷のR=1/67 のサイ
クルでアンカーボルトが引張降伏、R=1/50 の
曲げ降伏耐力の比較
実験値 eMy(kN・m)
略算式 cMy(kN・m)
94.09
94.77
96.19
94.15
109.45
109.71
84.74
83.89
82.93
94.19
92.45
94.12
139.29
132.22
98.74
94.95
eMy/cMy
0.99
1.02
1.00
1.01
0.88
0.98
1.05
1.04
2500
N(kN)
サイクルまで耐力低下のない履歴を重ねた後、
2000
R=1/30 のサイクルで圧縮側の壁縦リブが圧縮
精算
1500
破壊し荷重が急激に低下した。
3.3
1000
曲げ降伏耐力
No3
表-4にアンカーボルト降伏時の実験結果と
500
計算値との比較を、図-10に本実験の精算(平
0
面保持を仮定した曲げ解析)
2),3)
No4
実験値
■:正加力
◆:負加力
略算式
0
及び略算式
100
-500
No2
No1
200
300
400
M(kN・m)
500
図-10 M-N相関
(1)による曲げモーメント(M)-軸力(N)
600
相関関係を示す。すべての試験体において実験
No2
400
応力(N/mm2)
値がほぼ計算曲線上に載っており概ね良好な対
応を示した。本実験の軸力の範囲では、式(1)
で曲げ降伏耐力を概ね評価できるものと思われ
200
0
-5
0
る。
5
10
15
-200
cMy= at・σy・j+ 0.5・N・j
(1)
20
25
Q(+)
-400
目開き
2
ここで、at :アンカーボルトの断面積(mm )
応力
-600
図-11 アンカーボルト応力-目開き
2
σy:アンカーボルトの降伏点(N/mm )
j :応力中心間距離
0.74(m)
1/200
1/400
100
N :一定又は変動軸力(N)
A4
1/100
1/50
1/67
アンカーボルトの応力-伸び関係
図-11にアンカーボルトの応力と壁脚部の
目開き関係の例を示す。荷重-変形曲線と同様に
スリップ型の履歴を示しており、荷重-変位曲
線がスリップ型履歴となる1要因としてアンカ
ーボルトの挙動が影響していると考えられる。
-814-
位置(mm)
3.4
30
変動軸力
目開き(mm)
0
A3 0
5000
10000
15000
20000
25000
A4
A3
アンカーボルト
-100
A2
A2
基礎
A1
-200
30000
壁板
ひずみゲージ
降伏歪(材料実験値)
A1
歪ゲージ貼付位置
歪(μ)
図-12 アンカーボルトの歪分布
100
100
100
図-13にアンカーボルトの挙動を観察した図
水平力
を示す。壁と座金を介してナット締め定着され
上がる
るアンカーボルトにおいては、アンカーボルト
が降伏して伸びた状態になると、壁が回転して
降伏して伸びた
アンカーボルト
座金及びナットと壁脚部リブ面とが接触してか
接触して効き始める
水平力
らアンカーボルトが引張に対して効き始めた
(Q-δ曲線がスリップ状態から立ち上がり始
下がる
下がる
めた)。また、付着が劣化した状態では除荷時に
アンカーボルトの抜け出しが生じ圧縮力をあま
り負担しない(Q-δ曲線でスリップが始まる)
図-13 アンカーボルトの挙動
現象が見られた。尚、図-12にはアンカーボ
150
ルトの歪分布例を示した。壁脚部横リブ内に定
図-14にM-壁板の曲げ変形量の例を示す。
0
変動 N
ップは見られなかった。また、曲げひび割れ計
-150
主筋降伏実験値 M=-86.07kN・m
-15
-10
-5
算値 、式(2)による剛性低下率αy 及び壁
No2
M=Q・a'
0
5
壁の曲げ変形(mm)
2)
10
15
図-14 M-壁の曲げ変形量
の曲げ耐力計算式 1)による曲げ降伏耐力を用い
60
荷重(kN)
て求めたトリリニアのモデルを図に併せて示す。
文献2)の評価方法で壁の曲げ変形を概ね評価
120
No2
40
20
できると考えられる。
+0.325・η0)(d/D)2
Q(+)
a'
図-14より壁板の履歴においては顕著なスリ
(2)
ここで、Pt= at/(be・d)
-2
-20
No4
80
40
0
0
-4
αy=(0.043+1.635・nr・Pt+0.043・a'/D
δM
-50
-100
2)
点線:計算値
荷重(kN)
壁の曲げ変形
50
M(kN・m)
3.5
主筋降伏実験値 M=117.87kN・m
[計算値:正加力時]
Mcr=47.83kNm,δcr=0.69mm
K0=47.83/0.69=69.76kN・m/mm
αy=0.237
Mwu=116.42kNm,δwu=7.05mm
100
着されたアンカーボルトの歪は部材角 1/100 ま
で三角形分布を示し、以降長方形分布を示した。
抜け出して圧縮力
を負担しない
徐荷
0
4 -4
2
-2
0
2
4
-40
-80
すべり量(mm)
-40
すべり量(mm)
図-15 Q-水平すべり量
at: 主筋断面積(mm2)
部材角 1/100
be: 置換長方形断面厚,d=D-30(mm)
a'/D= (a-100)/D (mm), D: 壁長さ(mm)
No1
η0= N/(be・D・σB)
No2
N: 主筋降伏時の軸力(実験値)(N)
No4
σB: コンクリートの材料強度(N/mm2)
3.6
No3
壁の水平すべり変形
図-15に荷重-水平すべり量の例を示す。
δM
δr
δs
δshear
図より変動軸力による軸応力度の大きな正載荷
No1
と軸応力度の小さな負載荷において顕著なすべ
No2
り量の差は見られず、また、a/D の比較からも
No3
顕著な差は見られない。従って、本実験の範囲
No4
では軸力及び a/D による水平すべり量への顕著
な影響は確認できなかった。
0%
20%
40%
60%
割合
100%
部材角 1/50
0%
20%
40%
60%
図-16 変形成分割合
-815-
80%
80%
割合
100%
δshear:
δ:全変形
δs:すべり変形
δr:回転変形
δM:曲げ変形
4.
せん断変形
まとめ
軸力及びせん断スパン比をパラメーターとし
たリブ付壁板の水平加力実験より、以下の知見
h’
θ
=
+
h
θ
⊿δM
+
が得られた。
+
(1) リブ付壁板が実験の範囲では部材角 1/50 程
ρ
L
⊿δr
δM=h’/ρ・⊿δM
度までの変形に耐えることを確認した。
δr=h/L・⊿δr
(2) アンカーボルトの曲げ降伏耐力に関しては
図-17各変形算出方法
略算式(1)で実験の範囲では概ね良好な対
20%
Q(kN)
応を示すことが確認された。
60
(δp,Qp)
W
等価粘性減衰定数(%)
20
15%
(3) 荷重-変位曲線の履歴はスリップ型であり
40
アンカーボルトの抜け出しがスリップを生
0
-1 0
-5
0
5
-2 0
10
δ(mm)
じる一要因であることを確認した。アンカー
-4 0
(δm,Qm)
10%
ボルトの詳細なモデル化にあたっては、アン
カーボルトの抜け出し量を定量的に把握し
No1
No2
No3
No4
5%
ていく必要があると考える。
(4) 壁板のM-曲げ変形量のモデル化は文献
0%
0
5
10
15
20
2)の剛性低下を用いた評価で概ね良好な対
25
部材角(Rx10-3rad)
応を示すことが確認された。
等価粘性減衰定数(heq)の算定
heq= W/(4・π・⊿W)
⊿W= {(δp+δm)/2}・{(Qp+Qm)/2}/2
(5) 変形成分の割合は、全試験体に共通して回
転変形が全変形の70%程度を占めること、
水平すべり変形が3%程度と比較的小さい
図-18 等価粘性減衰定数
ことを確認した。
3.7
(6) 全試験体において等価粘性減衰定数は6%
変形成分割合
程度であることを確認した。
図-16に変形成分割合を示す。それぞれの変
形算出方法は図-4に示す変位計の測定値を用
いて、図-17に示すように幾何学的条件より
【謝辞】
算出した。図-16より全変形の70%程度を
本実験は社団法人プレハブ建築協会の低層コ
アンカーボルトの伸び等による回転変形が占め
ンクリート系住宅限界耐力計算法検討WGⅢの
ており、部材角が大きくなるにつれてその割
一環として行われたものである。実験にあたり
合が大きくなることがわかった。また、水平す
ご指導いただきました奥薗敏文氏、園部泰壽先
べり変形は全変形の3%程度と比較的小さいこ
生、平石久廣先生に厚く御礼申し上げます。
とがわかった。
【参考文献】
3.8
1)
等価粘性減衰定数
平井
正由,他8名:壁式プレキャストコ
履歴曲線から得られた等価粘性減衰定数と部
ンクリートパネル造住宅の静的非線形増分
材角の関係を図-18に示す。尚、履歴曲線は
解析に関する研究(その1~3)、日本建築
各部材角の2サイクル目を採用した。
学会大会学術講演梗概集、pp951-956、2002
全試験体において部材角 1/100 以降6%程度
2)
規準・同解説、1991
のほぼ一定な値を示しており、本壁板の等価粘
性減衰定数は部材角、軸力及び a/D にかかわら
日本建築学会:鉄筋コンクリート構造計算
3) 日本建築学会:鉄筋コンクリート造建物の
終局強度型耐震設計指針・同解説
ず6%程度であることがわかった。
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