仙石原ススキ草原の生き物たち - 一般財団法人 自然公園財団

箱根ビジターセンター機関紙
第 35号
2013 年11月号
キノコの季節もそろそろおしまい・・・
仙石原ススキ草原の生き物たち
記:スダッチ
11月いっぱいまで多くの人で賑わう仙石原のススキ草原。銀色の穂が風にたなびく様子を見てい
るとその美しさに心癒されます。でも実はこのススキ草原が大好きなのは人間だけではないんです。
多くの野生生物たちが生息し、神奈川県ではここでしか出会えない生物もたくさんいるんです!
ホオアカ(春~夏)
県絶滅危惧Ⅰ類
ヒメビロウドカミキリ(夏)
県絶滅危惧Ⅰ類
ノジコ(春~夏)
県希少種
アサカミキリ(夏)
県絶滅危惧Ⅰ類
オオナンバンギセル(夏)
オオルリハムシ(夏)
県希少種
キクザキイチゲ(春)
ハコネアシナガコガネ(夏)
県注目種
あまり知られていませんが、この仙石原のススキ草原と湿原は「特別保護地区」に指定されてい
ます。優れた景観、生態系を維持するために許可なく生物の採集等をしてはいけないゾーンなので
す。「日本を代表する自然」ということですね。
毎年植物や昆虫の調査が行われ、新たな知見がどんどん出てくる興味深いフィールドです。
たなびく銀の穂を見ながら、今は姿を潜めている野生生物たちに少しだけ想いを寄せてみてはい
かがでしょうか。
その七
記:わみすけ
今秋は草木の実りが豊かで、ビジターセンター周辺でも色々な実が見ら
れました。植物はその実(タネ)をできるだけ遠くへ運ぼうと工夫してい
ます。動物に食べられたり、くっついたり、風に乗ったり、自分で弾けた
り・・・そんな植物たちの知恵比べを見てみるのも楽しいですね。
湖尻の大ケヤキ
今回紹介するケヤキも独特の方法でタネを運んでいます。大きなケヤキ
を見つけたら辺りを探してみてください。赤ちゃんケヤキがスクスク育っ
ていませんか。
ケヤキ(欅)Zelkova
serrata
ニレ科 落葉高木
日本の代表的な樹木の一つ。紅葉が美しく街路樹にされる。
材は強く木目が美しいので家具に用いられる。和名は尊く秀でたと
いう意味の「けやけき」に由来。古名はツキ(槻)。
本州、四国、九州のシイ・カシ帯からブナ帯下部に多く、芦ノ湖畔
色とりどりの葉っぱと実の付いた小枝
には大木が見られる
ケヤキの実(痩果)がつく小枝は、葉の基部ではなく枝の基部に離
層が作られる。晩秋、熟した実は枝ごと空に飛び立ち、葉を翼代わり
に飛んでいく。
ケヤキの大木にはよくヤドリギが寄生する。白百合台園地のケヤキ
にも見られ、その甘い実に美しいレンジャクが訪れて、粘り気のある
タネを次のケヤキへと運んでいく。
レンジャーだより
Vol.6
ケヤキと仲良しのヤドリギ
「箱根ミニ紅葉情報」
記:AR 井下原
さて、1 日 1 日が徐々に寒くなり、秋らしくなってきました。富士箱根伊豆国立公園も秋の装いが進
み、色とりどりの木の実やふわふわとしたススキが目につきます。様々な植物が目を楽しませてくれま
すが、秋といえば紅葉狩りですね。
ここ、箱根ビジターセンター周辺の紅葉はというと・・・こちらも良い感じに染まってきています。オオ
モミジやウリハダカエデ、チドリノキが美しいです。もうすぐ散ってしまいそうですが、樹全体が赤褐
色に見えるほど紅葉したケヤキが特に目を引きます。
オオモミジ
チドリノキ
ケヤキ
植物の葉っぱは、葉が緑色に見える色素(クロロフィルなど)を持っています。気温が下がり、それ
が分解されると黄色の色素(カロテンなど)が目立ち、黄色くなります。これが「黄葉」です。一方、
葉が赤く見えるのは、緑色の色素が分解された後、葉に蓄えられた栄養分が日光の影響を受け、赤色の
色素(アントシアニンなど)を作るためです。これが「紅葉」です。
これから時期が進むにつれ、標高の低い場所へ紅葉も移動していきます。箱根の紅葉は 12 月まで楽し
めそうです。
各地の国立公園について、アクティブレンジャー日記もどうぞ!→http://kanto.env.go.jp/blog/
最近の自然情報 9 月 16 日~10 月 15 日
9.16
台風 18 号上陸
10.2~10.4
9.17
ヤマボウシの実食べごろ(VC周辺)
9.18
ホオジロ 2 羽VC前トイレに入り出られ
タヌキ連日交通事故死
(乙女峠・仙石原)
10.3
ドロハマキチョッキリがサンカクヅルの
なくなり、大救出作戦!
葉を食べる(標本園)
9.20
キンモクセイ香る(仙石原)
ニトベハラボソツリアブ飛翔(VC周辺)
9.21
マツムシソウ見頃(海ノ平)
テンニンソウの花にアサギマダラ多数
ノビタキ目視(海ノ平)
(VC周辺)
9.22
タマゴタケ数本確認(旧街道西坂)
10.7
アオバトの声が聞こえる(VC周辺)
9.23
越冬場へ移動中のアズマヒキガエル
10.8
リンドウ開花(VC周辺)
交通事故死(各地)
9.24
コサメビタキ目視(畑引山)
10.10 サシバ 800 羽南下渡りのピーク
(矢倉岳)
シカのラッティングコールが聞こえる(各地)
10.11 リュウノウギク開花(VC周辺)
9.25
ニホンリス目視(湯本)
10.13 ススキ草原見頃(仙石原)
10.2
ウラムラサキシメジ大量発生!(大平台)
10.15 台風 26 号上陸
ジョウビタキの声
1
今季初認(VC周辺)
VC=ビジターセンター
ラッティングコール=秋の繁殖期にオスが自分
の存在をアピールする声。
箱根のお魚
part4
ウグイ(鯎) Tribolodon hakonensis コイ目 コイ科
記:イカロス
記
私はウグイです。皆様にはけっこう馴染みのある魚ではないか
な?別名がたくさんあるのも頷ける気がする・・・。
我々のように図鑑に載っている(私たちからすれば勝手に載せ
られている)生き物には、全世界共通の名前(学名っていうんだ)
が各自に付けられるんだ。私ウグイの場合は「Tribolodon
hakonensis(トリボロドン ハコネシス)」という学名。
名前の中に「ハコネ」と入ってるんだ。なんでも、明治時代に
箱根に来たギュンターという外国の方が、芦ノ湖産の私の標本を発表した際に付けた学名なんだそう
だよ。おかげでどこで見ても、私の名前にはハコネと付くようになったわけだ。
今では芦ノ湖周辺ではそんなに数は採れないけれど、1964 年ごろまでは大量に、それもバケツで
掬えるくらい捕獲されていたんだ。漁獲シーズンには学校も休校になり、男は漁に、女は魚を焼く
作業にあたったそうだよ。焼いて干しウグイとなった私たちは、保
存食にされたり、宿の食事に出されたり、村内で生産できない米と
交換されたりと、非常に重要な資源だったんだ。丸のまま醤油や砂
糖・酒で味付けして煮びたしにして食べたそうだ。骨まで柔らかく
丸ごと食べられるようだよ。
繁殖期には鮮やかな独特の色彩の婚姻色に変身するぞ!この時
季になるとウグイが多い河川では、独特の朱色の筋が川底に見える
位になるんだ。みんなの身近にも地味なようで変貌する日本の淡水
魚が結構いるんだよ。探してみてね。
婚姻色のウグイ
ビジターセンター特別展示のご案内
箱根ビジターセンター館内も秋
の装い・・・ということで湖尻
第5回目にあたる24年度の募集作品を展示します。
園地が最も紅葉で美しくなる期
期間:11月21日~12月24日
間限定で紅葉の展示を開催!
期間:~11月17日
主催:
(一財)自然公園財団
イベントのご案内
自然に親しむ運動 「芦ノ湖西岸から観る箱根中央火口丘と秋の植物」
箱根港 → 箱根やすらぎの森 → 芦ノ湖西岸 →
桃源台 →(観光船)→ 箱根港
開催日:平成 25 年 11 月22日(金) 定員30 名
集 合:箱根港 9:30
解 散:箱根港 16:00 予定
費 用:1,000円
(保険代・観光船代)
締 切:平成 25 年11月11日(月)[当日必着]
芦ノ湖畔の紅葉と植物観察を満喫。さらに箱根火山成り立ちの秘密にも迫ります。
※参加希望の方は、参加希望のイベント名、参加者全員の氏名(ふりがな)、性別、年齢、住所、電話番
号を記載の上、下記方法にてお申し込み下さい。
1 往復はがき:〒250-0522 神奈川県足柄下郡箱根町元箱根 164「箱根ビジターセンター」宛て
2 メ
ー
ル:[email protected]
【編集後記】
今月から編集長になりました。表紙の「仙石原の生き物たち」では昆虫を中心に紹介しましたが、来年には哺
乳類や両生爬虫類も紹介したいと思います。わみすけがきっと上手に書いてくれるでしょう。
(スダッチ)
編集・発行・・・箱根自然解説活動連絡協議会
〒250-0522 神奈川県足柄下郡箱根町元箱根 164 箱根ビジターセンター内(TEL)0460-84-9981
(HP)http://www.mmjp.or.jp/HakoneVisitorCenter
(e-mail)[email protected]
箱根ビジターセンター
管理・運営:一般財団法人自然公園財団箱根支部