2014年4月号(vol.11) - 独立行政法人国立病院機構 呉医療センター中国

Institute for Clinical Research
National Hospital Organization Kure Medical Center/Chugoku Cancer Center
NEWS
独立行政法人 国立病院機構 呉医療センター・中国がんセンター
臨床研究部ニュース
広島県呉市青山町3ー1 TEL 0823ー22ー3111
http://www.kure-nh.go.jp
発行責任者 副院長・臨床研究部長 谷山 清己
第25回ラジャビチ病院学会ポスター発表会場にて
2014.4
vol.11
CONTENTS
第25回ラジャビチ病院学会
参加報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
口演紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
ポスター紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
論文紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
御礼・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
研究紹介/編集後記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
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The 25th Rajavithi Hospital Annual Academic Meeting(ラジャビチ病院学会)参加報告
第25回Rajavithi Annual Academic Meetingに参加して
呉医療センター・中国がんセンター 臨床研究部長 谷山 清己
呉医療センター・中国がんセンターは平成21年に
タイのバンコクにある国立ラジャビチ病院と姉妹縁
組を結びました。以来、両病院では交流を続けてい
ます。その一環として当センター職員のラジャビチ
病院医学会への参加も毎年続けており、本年は私を
始め計7名が学会に参加したので報告します。
今回の訪問では私を団長に、耳鼻咽喉科・平川治
男科長、初期研修医2年・天野孝広先生および松本
拓視先生、薬剤科・亀田慶太くん、臨床検査科・渡
邉美里さん、臨床研究部・岸田直子さんが派遣メン
バーとしてバンコクに向かいました。タイの
政情不安が盛んに報じられていた時期でもあ
り、出発前には現地の情報収集に努めました。
相手側病院から安全に問題ないとの情報を得
て出発しました。
2月18日の午前9時から開会式が執り行わ
れました(写真2)
。会場では病院職員が美し
い民族衣装を纏い、このイベントを華やかに
演出していました。続いてポスター発表の会
場(写真表紙)で当センター職員5名のポス
ターセッションが行われました。各ポスター
の前では闊達な質疑応答が行われました。
その後会場を移して平川科長と私の講演
を行いました。私は当初予定していた学術
的発表内容に加え、当センターの国際学会
(K-INT)についても紹介しました。会場に
は旧知のタイ医師ら友人が多く集まり、和や
かな雰囲気の中両病院の交流の様子を振り返
りつつ発表しました。そして今後の交流が更に盛んになるよう頑張
ろうと思いを新たにしました。
学会の合間にはラジャビチ病院を視察しました。また隣接するク
イーンシリキット子供病院も訪問しました。ここでも今後の更なる
交流の深化を確認し、親睦も深めました(写真3)
。
今回は参加メンバーそれぞれの専門部署での一日仕事体験を企画
しました(写真4)。この企画は密度の濃い貴重な体験ができたと好
評でした。私から見ても、これをきっかけにメンバーの積極性がよ
り引き出されたように感じました。今後も実り多き国際交流を続け
られるよう尽力していく所存です。
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写真 1
写真 2
写真 3
写真 4
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口演紹介
A novel predictive marker for disease
progression of uterine cervical LSIL:
Aberrant DNA methylation of DLX4 and
SIM1 genes
Kiyomi Taniyama, MD., PhD.
Director, Institute for Clinical Research, National
Hospital Organization Kure Medical Center and
Chugoku Cancer Center, Kure, Japan
発表光景
子宮頸部軽度異型重層扁平上皮性病変(LSIL)の進行予測新規マーカー:
DLX4 遺伝子とSIM1 遺伝子の異常メチル化検出
呉医療センター・中国がんセンター 臨床研究部長
谷山清己
HPV感染によって引き起こされる子宮頸部腫瘍性病変は、わが国では若年者の罹患率が近年
増加している。世界的にも婦人科がんの中で占める比率が高い。その発見には細胞診によるス
クリーニングとHPV検出の併用あるいはどちらか一方の施行が有用とされているが、LSILの
多くは進行せずに消退し、HPV感染も多くが陰性化する。我々は進行予想新規マーカーの検出
を多数の子宮頸部病巣を用いて検討した結果、DLX4 遺伝子とSIM1 遺伝子の異常メチル化検出
がHPV陽性LSILの進行予測マーカーとして有用であることを見出し(図1)
、報告した。また、
学会を主催するラジャビチ病院と当センターのMOU締結(図2)から現在に至るまでの親密
な交流内容も提示した。
図1
図2
2
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A new therapeutic strategy for advanced
squamous cell carcinomas of the maxillary
sinus and the upper gingiva
Haruo Hirakawa 1 , Yasuyuki Nishi 1 , Taisuke
Watanabe 1 , Makoto Tada 1 , Kiyomi Taniyama 2 ,
Takashi Sugita3, Wataru Kamiike4
1Department of Otorhinolaryngology, Head and
Neck Surgery, 2Institute for Clinical Research, 3Vice
President, 4President
Kure Medical Center and Chugoku Cancer Center,
発表光景
Kure, Japan
上顎洞・上歯肉進行扁平上皮癌に対する新しい治療戦略
呉医療センター・中国がんセンター 1耳鼻咽喉科、2臨床研究部、3副院長、4院長
平川治男1、西 康行1、渡部泰輔1、多田 誠1、谷山清己2、杉田 孝3、上池 渉4
最近まで30年近く日本では、上顎洞・上歯肉進行扁平上皮癌に対し動注、放射線治療、外
科治療の三者併用療法(Combined Therapy、CTx)が標準的治療として行われてきた。三者
併用療法は、それぞれの単独治療に比べ生存率を著明に改善したが、形態的な問題が残され
た。治療後に癌が治癒しても、長期生存すればするほど、容貌の変化や構音・咀嚼・視覚障害
により苦しむことになった。咽頭や喉頭の進行癌では化学放射線同時併用療法は、生存率を犠
牲にしないで発声や嚥下などの機能を維持できるため、標準的治療になっている。超選択的動
注化学放射線同時併用療法(concurrent superselective Intra-Arterial ChemoRadioTherapy、
IACRT)は、機能や形態を維持できるだけでなく治癒率をも改善できる可能性がある上顎洞・
上歯肉進行扁平上皮癌に対する新しい治療戦略である。われわれは、
2008年よりこの治療を行っ
ている。われわれの病院におけるこの治療の成績を従来の三者併用療法と比較し、この治療法
が有望な治療法であることを口演した。
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ポスター紹介
バルーン内視鏡用オーバーチューブを用いた吸引にて軽快した
食餌性イレウスの1例
天野 孝広(臨床研修部)
食餌性イレウスは全イレウスの中で1%未満と稀な疾患であるが、治療として多く
の場合は外科的治療を要するとされている。今回我々は、バルーン内視鏡用オーバー
チューブを用いて、保存的に加療することに成功した1例を経験したので報告した。
4
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びまん性に膵腫大を来たした胃癌膵転移の1例
松本 拓視(臨床研修部)
胃癌の転移先としてリンパ節、肝臓、腹膜などが一般的である。
膵臓は胃癌転移としては珍しく、またその転移形式としてびまん性
腫大を来たすものは非常にまれである。今回、びまん性に膵腫大を
来たした胃癌膵転移の1例を経験したので報告する。
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乳癌患者に対するホスアプレピタント及びエピルビシン塩酸塩
投与による血管痛に対するデキサメタゾンの効果
亀田 慶太(薬剤科)
ホスアプレピタント+FEC療法におけるエピルビシン投与中に発症し
た静脈炎を伴う血管痛に対して①投与休止②デキサメタゾン投与③ルート
を取り直し、という手順により除痛効果を得ることができたので報告した。
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血液製剤の適正使用―廃棄血削減への取り組み 渡邉 美里(臨床検査科)
当センターにおける廃棄血削減の取り組みを報告した。適正な在庫
数、出庫後の製剤使用状況の確認により、RCC廃棄理由で有効期限切れ
の占める割合は低下した。また、血液製剤取り扱いに関する研修会を行い、
情報発信と臨床からの要望を聞くことができた。
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呉医療センター・中国がんセンターが行う国際交流活動の紹介
岸田 直子(臨床研究部)
当センターと付属看護学校の国際交流活動に対するサポート体制を紹介し
た。呉国際医療フォーラム、日韓細胞診会議事務局、海外医療機関との姉妹
縁組、職員・看護学生のエクスターン/インターンシップ等の起案、調整、
広報など幅広く活動し、国際感覚を持つ人材の育成に貢献している。
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論文紹介
Predictive Value of Adiponectin in Patients with Multivessel
Coronar y Atherosclerosis Detected on Computed
Tomography Angiography
平成25年度
院内年間最優秀論文賞を
受賞しました
Matsuda M, Tamura R, Kishida N, Segawa T, Kanno K, Nishimoto O,
Nakamoto K, Nishiyama H, Kawamoto T
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis, 20(10):767-776, 2013
冠動脈疾患を早期に発見し積極的に治療介入を行うことは心血管死を予防するために重要である。冠動脈疾患
を疑い心臓CTを撮影した患者を対象に多枝冠動脈プラークと関連する臨床因子について検討した。年齢、性
別、糖尿病、高血圧に加え、血中アディポネクチン濃度が、多枝冠動脈プラークと密接に関連することが分かっ
た。さらに、これら5因子の組み合わせは効率よく多枝冠動脈プラークを予測できる可能性が示唆された。
Coadministration of 5% glucose solution and dexamethasone
and oxaliplation-related vascular pain grade: a case study
Okada Y, Kajiume S, Taniguchi T, Kimoto S, Ogawa Y, Kiba T.
Clinical Journal of Oncology Nursing, 17(5): 554-555, 2013
平成25年度
院内年間優秀論文賞を
受賞しました
オキサリプラチンはFOLFOX療法などでなじみが深いようにCVポートから投与されることが多いが、XELOX療
法の際には末梢血管から投与されることもある。最近オキサリプラチンを溶解したブドウ糖溶液自体にデキサメ
タゾンを直接混注することにより、血管痛が軽減されるとの報告がある。今回本邦で広く行われている手技を用
いても血管痛が改善されない症例を経験したために、当院独自の手法を開発し、改善が見られたので報告した。
Diagnostic Capability of Gadoxetate Disodium-enhanced
Liver MRI for Diagnosis of Hepatocellular Carcinoma:
Comparison with Multi-detector CT
平成25年度
院内年間優秀論文賞を
受賞しました
Toyota N, Nakamura Y*, Hieda M, Akiyama N, Terada H, Matsuura N,
Nishiki M, Kono H, Kohno H, Irei T, Yoshikawa Y, Kuraoka K, Taniyama K, Awai K*
Hiroshima Journal of Medical Sciences, 62(3): 55-61, 2013
2008年3月から2011年6月までに外科切除された肝細胞がん57例を対象として、Gadoxetate isodiumを用いた
MRI (Gd-EOB-MRI)の診断能力をMultidector CT(MDCT)と比較した。その結果、Gd-EOB-MRIはMDCTより
も肝細胞がんを診断できる感度が高い傾向が認められた。
Prospects for using a hemoconcentrator as an alternative hemodialysis method
in cardiopulmonary bypass surgeries
Tagaya M, Matsuda M, Yakehiro M, Izutani H.
Perfusion, 2013, E-Pub
人工心肺中、速やかな電解質補正を必要とするシーンに対応するため、回路に簡単な改良を加えて、従来の希
釈血液濾過だけでなく拡散効果による電解質補正も可能なシステムを構築し、その実用性と臨床応用について
考察した。
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A case of hemothorax following seat-belt injury with a bulla in the apex of the
lung: a subtype of spontaneous hemopneumothorax
Kinoshita H, Akiyama N, Murao M, Yamauchi Y, Nakamura T, Sekiya N, Toyota N, Miyagatani Y.
General Thoracic Cardiovascular Surgery, 2013, E-Pub
特発性血気胸は希な疾患であり、一般的には先行する気胸によって機械的な血管断裂が生じ血胸をきたす病態
であると言われている。今回我々はシートベルト外傷によって生じた特発性血気胸の一亜型と考えられる症例
を経験した。bullaを認め、増悪する血胸が認められた場合、先行する気胸が認められなくても特発性血気胸を
疑い、インターベンションによる止血ではなく開胸手術を考慮すべきであると考察した。
Role of α-gal epitope/anti-Gal antibody reaction in immunotherapy and its clinical
application in pancreatic cancer.
Tanemura M, Miyoshi E, Nagano H, Eguchi H, Taniyama K, Kamiike W, Mori M, Doki Y.
Cancer Science, 104(3): 282-290, 2013, E-pub, 2013
α-gal epitopeはブタ細胞表面のタンパク、脂質に付加する糖鎖末端構造で、ヒトに存在する自然抗体anti-Gal
抗体と反応し強い免疫反応を惹起する異種糖鎖抗原である。われわれのグループでは、ヒト膵癌細胞にα-gal
epitopeを発現させ、ヒトと同じ免疫状態のマウスにワクチンとして投与することで、膵癌に対する強い抗腫
瘍効果を誘導する事を見いだした(Cancer Research, 2010)。われわれは、この糖鎖リモデリング膵癌ワクチ
ンをヒト膵癌に対する新しい免疫療法として臨床応用すべく研究を行っており、本論文では、最近の研究成果
を含め総説した。
Sequential mediastinal lymphadenectomy of an unknown primary tumor.
Harada H, Yamashita Y, Kuraoka K, Taniyama K.
Annals of thoracic surgery, 95(2):687-689, 2013
原発不明癌からの縦隔リンパ節転移が疑われた患者に対して、リンパ節切除を行った。15カ月後に、前回のリ
ンパ節転移部と4cmほど離れた別部位の縦隔リンパ節に再度腫大を認め、これも切除した。その後、21か月
にわたり原発巣・転移巣とも検出されることなく経過した。原発不明癌の縦隔リンパ節転移に対して、繰り返
しの切除により良好な長期予後を得ることができた稀な症例であった。
Multidisciplinary team-based approach for comprehensive preoperative pulmonary
rehabilitation including intensive nutritional support for lung cancer.
Harada H, Yamashita Y, Misumi K, Tsubokawa N, Nakao J, Matsutani J, Yamasaki M, Ohkawachi
T, Taniyama K
PLoS ONE, 8(3): e59566, 2013, online
肺切除術患者における術後合併症発生率の軽減を目的に、術前の待機期間を有効活用する多職種チーム体制に
よる術前呼吸リハビリテーションプログラムの開発・評価を行った。通常の運動療法に加え、分岐鎖脂肪酸と
漢方薬投与による強化栄養療法を併施する包括的呼吸リハビリテーション法を導入したところ、とくにハイリ
スク患者(全身状態に問題ある患者)において術後の合併症発生率が低下した。
Changes of the expressions of immune-related genes after ventromedial
hypothalamic lesioning. Systematic review of the literature
Kiba T, Yagyu K.
Journal of Neuroimmunology, 257(1): 1-6, 2013
過去20年間に渡って、中枢神経系と免疫系との関係は議論の的であった。私達はこれまで視床下部と各種免疫
関連の研究成果の発表を多数行ってきた。本論文では、私達の研究成果に最近の国内外の研究者の研究成果を
交えて、T細胞系、B細胞系、NK細胞系、各種サイトカイン、細胞表面にある受容体蛋白、細胞内での二次的
に産生される情報伝達物質などの変化を中心に、最近の中枢神経系と免疫系との関係を解説した。
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High-quality RNA extraction from rat pancreatic islet
Kiba T,Tanemura M, Yagyu K
Cell Biology International Reports, 19: 190-2, 2013
近年のヒトに膵島移植の増加に伴い、実験動物での研究面でのcDNAマイクロアレイ研究によるmRNAの解析
の必要性から実験動物の膵島からの効率的なmRNAの抽出法開発の需要が高まっている。本論文では、ラット
におけるcDNAマイクロアレイ研究に耐えうる純度の高いmRNAの抽出法を開発し、その成果を発表した。
Roles of adiponectin and oxidative stress in obesity-associated metabolic and
cardiovascular diseases
Matsuda M, Shimomura I
Review in Endocrine and Metabolic Disorders, 15(1): 1-10, 2013, 2014, E-Pub
アディポネクチンは抗糖尿病作用さらに抗動脈硬化作用を有しており、肥満に伴う血中濃度の減少は糖尿病や
動脈硬化症の病態と密接に関わる。アディポネクチンの減少には、肥満に伴い増加する酸化ストレスが関与す
る。一方、アディポネクチンは酸化ストレスによる心血管障害を防ぐ作用も認められる。本総説論文では、肥
満におけるアディポネクチンと酸化ストレスの相互の関わりについて概説した。
Increased oxidative stress in obesity: Implications for metabolic syndrome,
diabetes, hypertension, dyslipidemia, atherosclerosis, and cancer
Matsuda M, Shimomura I
Obesity Research & Clinical Practice, 7(5): e330-341, 2013
肥満は、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、脂質異常症、動脈硬化症の誘因となること、さらに各
種癌のリスク因子でもあることが知られている。しかし、肥満が、なぜこのような多様な疾患を引き起こすの
か不明である。近年、肥満に伴い脂肪組織から過剰に酸化ストレスが産生されることが明らかとなった。本総
説論文では、このような肥満と関連する各種疾患と酸化ストレスの関与について概説した。
A case of a young, healthy woman with spontaneous coronary artery dissection
associated with oral contraceptive use: Long-term residual dissection of the
coronary artery
Nakamoto K, Matsuda M, Kanno K, Segawa T, Nishimoto O, Nishiyama H, Tamura R,
Kawamoto T
Journal of Cardiology Cases, 8(6): 179-182, 2013
冠動脈自然解離は、健康な若年女性で突然急性心筋梗塞を引き起こす極めて稀な疾患である。本疾患は重篤で
発症早期に亡くなる患者が多いため、その病態ならびに予後は不明な点が多い。私達は冠動脈自然解離により
急性心筋梗塞を発症した症例を経験した。本症例では急性期に冠動脈ステント留置術を行い救命し、さらに慢
性期の冠動脈解離の状態を冠動脈血管内超音波(IVUS)と冠動脈CTを用いて詳細に観察した。
Beating heart mitral valve repair for a patient with previous coronary bypass: a
case report and review of the literature
Nakamura T, Izutani H*, Sekiya N, Nakazato T, Sawa Y*
Journal of Cardiothoracic Surgery , 8: 187, 2013
冠動脈バイパス術の2年後に腱索断裂による僧帽弁逆流を発症した1例を経験した。右開胸、大腿動脈送血、上
大静脈・下大静脈脱血にて体外循環を行い、心拍動下に左房へアプローチした。通常通り僧帽弁形成術を行い
手術を終了し、患者は術後合併症なく退院した。この方法は従来の胸骨正中切開に比べて癒着剝離による出血
やグラフト損傷のリスクが少なく僧帽弁再手術において極めて有用であると考えられた。
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Preoperative estimated glomerular filtration rate is an independent predictor of
late cardiovascular morbidity after mitral valve surgery
Nakazato T,Nakamura T, Izutani H, Sekiya N, Sawa Y*
Annals of Thoracic and Cardiovascular Surgery, 2013, E-pub ahead of print
腎機能が僧帽弁手術後の遠隔成績に及ぼす影響を検討した。当院で施行した僧帽弁手術症例210例の遠隔成績
を術前のeGFR値により3群(A:≧60, B: 59-30, C:<30)に分けレトロスペクティブに解析した。遠隔期の心血管
イベント(MACE)はC群で有意に多く、また多変量解析にてeGFR<60はMACEの独立した危険因子であった。
Prevalence and risk factors of bone metastasis and skeletal related events in
patients with primary breast cancer of Japan
Yamashiro H, Takada M*, Nakatani E*, Imai S*, Yamauchi A*, Tsuyuki S*, Matsutani Y*, Sakata
S*, Wada Y*, Okamura R*, Harada T*, Tanaka F*, Moriguchi Y*, Kato H*, Higashide S*, Kan N*,
Yoshibayashi H*, Suwa H*, Okino T*, Nakayama I*, Ichinose Y*, Yamagami K*, Hashimoto T*,
Inamoto T*, Toi M*
International Journal of Clinical Oncology, 2013, E-pub ahead of print
乳癌の骨転移はSRE(骨関連事象)を引き起こし患者のQOLを低下させる。2003年から2005年に比較的再発リ
スクの高い浸潤性乳管癌と診断された1779例を対象に骨転移、骨関連事象の発生とそのリスク因子を検討した。
平均観察期間5.7年間に骨転移は193例(11.3%)に発生していた。骨転移やSREの発生は病期やリンパ節転移の
個数、乳がんのサブタイプと関連していた。
Attenuation of Portal Hypertension by Continuous Portal Infusion of PGE1 and
Immunologic Impact in Adult-to-Adult Living-Donor Liver Transplantation.
Onoe T, Tanaka Y, Ide K, Ishiyama K, Oshita A, Kobayashi T, Amano H, Tashiro H, Ohdan H.
Transplantation, 95(12): 1521-1527, 2013
生体部分肝移植において過小グラフトは、血流不均衡による門脈圧亢進・過小グラフト症候群を引き起こし致
死的となりうる。そこで過小グラフト例に対して門脈減圧を目的にPGE1門脈持続投与を行いその有効性を検
討した。対象は過小グラフト症例12例、うち5例がPGE1門脈注入群、8例が非投与群であった。PGE1投与群
では有意な門脈減圧及び術後早期の肝機能改善を認め、さらにOSでも有意な改善を認めた。興味深いことに、
非投与群では拒絶関連死を3例に認め、有意な抗ドナー反応亢進を認めた。これらの結果より、過小グラフト
に対するPGE1の術後持続門脈投与は過小グラフト症候群並びに術後に惹起されうる拒絶反応の予防的治療と
して有効と考えられた。
Electroconvulsive seizure induces thrombospondin-1 in the adult rat hippocampus.
Okada-Tsuchioka M, Segawa M, Kajitani N, Hisaoka-Nakashima K, Shibasaki C, Morinobu S,
Takebayashi M.
Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry 48: 236-44, 2013 E-pub ahead
of print
抗うつ薬治療抵抗性のうつ病に有効性を示す電気けいれん療法の作用機序を明らかにするため、電気けいれん
刺激(ECS)をラットに施行し、海馬内の遺伝子発現変化を検討した。その結果、ECSによりアストロサイト
分泌性のシナプス新生促進因子であるTSP-1が、アストロサイトの活性化を一部介して誘導されることが判明
した。従って、TSP-1がECSのシナプス新生作用に関与し、抗うつ効果に寄与する可能性が示唆された。
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Methylation of breast cancer susceptibility gene 1(BRCA!) predicts recurrence
in patients with curatively resected stage 1 non-small cell lung cancer
Harada H, Miyamoto K, Yamashita Y, Nakano K, Taniyama K, Miyata Y*, Ohdan H*, Okada M*
Cancer, 119(4): 792-798, 2013, E-pub 2013
病理病期1期非小細胞肺がんの手術例において家族性乳癌の原因遺伝子であるBRCA1のメチル化異常を検索
し、その有無が予後と関連する分子生物学的マーカーとなる事を証明した。BRCA1の発現量は、肺癌化学療
法のKey Drugであるシスプラチンの薬剤感受性と関連があることも報告されており、肺癌術後補助化学療法
における個別化治療法の開発にも繋がる可能性がある。
Post-thoracotomy pain and long-term survival associated with video-assisted
thoracic surgery lobectomy methods for clinical T1NO lung cancer. A patientoriented, prospective cohort study.
Yamashita Y, Mukaida H*, Harada H, Tsubokawa N
European Journal of Cardio-Thoracic Surgery, 44(1): e71-76, 2013
原発性肺がんcStageIAに対する根治的肺葉切除術において、完全鏡視下と小開胸手術のアプローチによる手術
侵襲の差を患者選択により前向きに比較検討した。完全鏡視下78例と小開胸手術26例が登録された。術後合併
症、予後に差はなく、完全鏡視下手術で在院期間と術後ドレーンの排液量が低値であった。術式のみが有意に
鎮痛剤使用に関わり、併せて完全鏡視下手術で胸壁への低侵襲性が示された。
Impact of dyslipidemic components of metabolic syndrome adiponectin levels,
andanti-diabetes medications on malondialdehyde-modified low-density
lopoprotein levesl in statin-treated diabetes patients with coronary artery disease.
Matsuda M, Tamura R, Kanno K, Segawa T, Kinoshita H, Nishimoto O, Nishiyama H, Kawamoto T
Diabetology & Metabolic Syndrome, 5(1):77, 2013
冠動脈疾患を有する糖尿病患者は心血管イベントのハイリスク者である。本患者を対象とし、動脈硬化を促す
超悪玉リポ蛋白である酸化LDLの血中レベルに影響する臨床因子を検討した。血清トリグリセリド、HDLコレ
ステロール、アディポネクチンが酸化LDLレベルに関連することが分かった。さらに糖尿病治療薬であるメト
ホルミンやαグルコシダーゼ阻害薬の使用により酸化LDLレベルが低下する可能性が示唆された。
Identification of rodent common biliary tract
Kiba T, Yagyu K, Nakashima T
The Turkish Journal of Gastroenterology, 24(5), 461-462, 2013.
実験動物において、膵臓からランゲルハンス島を抽出するには、最初に総胆管の同定が必要である。しかし、
総胆管は豊富な脂肪組織に覆われており、その同定が困難なことがある。本論文では、実験動物における効率
的な総胆管の同定法を開発し、その成果を発表した。
Systolic anterior motion of the mitral valve masked by general anesthesia
Nakamura T, Sekiya N, Nakazato T, Sawa Y*
Asian Cardiovascular and Thoracic Annals , 2013, Epub ahead of print
僧帽弁前尖の収縮期異常前方運動(SAM)は閉塞性肥大型心筋症に合併することがある病態で、左室流出路
閉塞から心不全をきたす。通常はβブロッカー投与が有効なことがあるが、今回われわれは閉塞性肥大型心筋
症を伴わないSAMの稀な1例を経験した。本症例ではβブロッカー投与にてSAMが改善しなかったにも関わら
ず、術前の全身麻酔によりSAMが消失した。全身麻酔薬がSAMに与える影響を文献的に考察した。
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御 礼
(平成25年度臨床研究部への寄付金)
企業名
課題名
日本イーライリリー㈱
グリアにおける向精神薬に関する薬理学的研究
ダコ・ジャパン㈱
癌の分子病理学の発展に関する研究
エドワーズライフサイエンス㈱ 心臓弁膜症治療の研究
セント・ジュード・メディカル
心臓弁膜症を有する患者様に対しての人工弁置換術による
治療研究
日本ライフライン㈱
心臓血管外科領域に於ける医用工学的研究のため
塩野義製薬㈱
精神疾患の生物学的研究に対する研究助成
㈱ヤクルト本社
消化器癌に対する手術・化学療法に関する検討
㈱ヤクルト本社
アロマターゼ阻害剤投与患者における容認性についての調査
㈱ヤクルト本社
ラット膵臓組織におけるin situ hybridyzation法の確立に関
する研究
エーザイ㈱
膵臓ランゲルハンス島への新規遺伝子の導入法開発に関する
研究助成
エーザイ㈱
乳癌における術前化学療法の便益評価に関する研究助成
一般財団法人
化学及血清療法研究所
心臓血管外科手術におけるフィブリノゲン製剤の有効性に
ついての研究
塩野義製薬㈱
循環器疾患の生物学的研究
大塚製薬㈱
精神疾患の病態解明に対する研究
田辺三菱製薬㈱
内分泌糖尿病疾患に関する研究
科研製薬㈱
癒着防止剤の腹膜への貼布法
呉市医師会
呉医療センターの臨床研究の発展のため
呉市医師会
呉医療センターの臨床研究の発展のため
広島市医師会
がん分子病理研究に関する助成のため
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研究紹介
精神疾患におけるECT治療後の再発予防に関する検討、および血液バイオマーカーの研究
精神神経科学研究室/精神科 医師 柴崎 千代
電気刺激療法(ECT)とは、頭部を電気的に刺激することによって、てんかんと同様の電気活動を
脳内に短時間誘発する治療法です。ECTの歴史は古く1940年代から世界中で広く行われていますが、
麻酔方法や治療器の改良が行われ、より安全に治療を受けることができます。
当院では麻酔科医の協力のもと年間500件前後のECTを行っています。気分障害、統合失調症、パー
キンソン病などの疾患で、症状が強い方、薬物療法が効きにくいまたは副作用が出やすい方などが適
応となります。急性期としての効果は高く、高い改善率を示しますが、ECT後に症状の再燃を防ぐた
めに継続的な治療(薬物またはECT)も必要になります。当院でECT治療後の統合失調症において再
発因子を後方視的に調査したところ、薬物の併用(抗精神病薬+気分安定薬)により再発率が低下する
可能性が示唆されました。今後も臨床にフィードバックできる調査検討を行いたいと思います。
また、精神科医療において診断や症状評価は問診によるところが多く(主観的)、客観的な指標とな
るバイオマーカーが確立されていないことが問題点の一つとして挙げられます。そこで、ECT前後で
の血液中のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)注)を測定し、臨床評価との相関を検討しました。
うつ病患者において健常者と比較し、ECT前のMMP-2が有意に低下していました(図1a)。ECT治療
によりMMP-2が増加、MMP-9が低下し(図1a, b)、この変化はうつ症状スコアの改善度と相関してい
ました。統合失調症ではMMP-2は有意な変化なく(図1a)、ECT治療によりMMP-9が有意に低下しま
した(図1b)が、症状との相関はありませんでした。以上より、うつ病においてMMPがバイオマーカー
となり得る可能性が示唆されました。今後は再発予測マーカーとしての有効性を検討していきたいと
考えています。
臨床研究部には4年間在籍させて頂き、この4月から三原の精神科病院へ勤務となります。今後は当
センター臨床研究部の院外研究員として、微力ながら研究業務も継続していく予定です。臨床と研究
の両方の視点を持ちながら、精神科医療に貢献できるようより一層努めたいと思っています。今後と
もよろしくお願い致します。
注)用語解説
マトリックスメタロプロテアーゼ
(MMP)
:細胞外マトリックスの分
解、各種サイトカインや栄養因子の
修飾に関与する酵素の一群である。
中でも、MMP-2およびMMP-9は神
経の可塑性やグリア細胞の機能発現
への関与が報告されており、精神疾
患との関連が示唆されている。
図1 血液中MMPの比較
編集後記
今号も国際交流と論文紹介を柱に充実した内容のニュースを編集することが出来ました。忙
しい日々の診療と研究活動の合間に原稿を寄稿して下さった先生方に心より謝意を表します。
(NK)
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