高気圧アルゴンガス中にエキシマレーザを 集光照射してできたプラズマの成長の様子 指導教員 山田 津田 諄 紀生 教授 講師 992054 992064 加藤 智大 日下部 清志 【はじめに】物質は温度が上昇すると固体、液体、気体へと変化して行き、さらに温度が上昇すると Transmittance (%) 電離する。一般に電離によって生じた荷電粒子を含む気体のことをプラズマと呼ぶ。物質はプラズマに なることにより電磁界中などで新しい物性を示すようになる。昨年度まで行っていた実験から,紫外線 レーザを高圧アルゴンガス中に集光照射すると、プラズマは焦点後方のみならず、焦点前方へ高速に成 長することが分かっている。よって、本年度はレーザの媒質を XeCl から ArF に交換して、レーザの波 長を短くし、紫外線領域で発振する ArF エキシマレーザを高圧アルゴンガス中に集光照射し、プラズマ を生成し、そのプラズマの成長の様子について研究をおこなった。 【実験方法】実験装置を図 1 に示す。本実験で用いたレ Photodiode Ar Compressor ーザ光は、最大パワー20MW、半値幅 15ns、波長 192nm の紫 Vacuum Pump 外線領域で発振するエキシマレーザを使用し、レーザパワ ーはレーザの光軸上に置いた光学フィルターにより変化さ Splitter せた。実験で使用したエキシマレーザは最大 50Hz の繰り ArF Excimer Laser 返し周波数で発振可能であるが、今回は単発でパルス発振 させ実験を行った。チャンバー内にはアルゴンガスを封入 Filter し、チャンバー内の圧力を 10atm∼130atm まで変化させ Controller チャンバー内に生成したプラズマの成長の様子をストリー CCD Streak Camera Camera クカメラで撮影し、その像を CCD カメラと画像処理装置を 用い、ある光強度でしきい値を定めてプラズマの境界線を 図 1 実験装置 求めプロッタで表示した。 【実験結果】XeCl レーザより ArF レーザの方が波長が短い為、 光子一個あたりのエネルギーが大きく XeCl レーザより ArF レーザ を用いた方が大きなプラズマが生成されると考えられる。そこで Ar ガス中に ArF レーザを集光し、プラズマを生成した。ArF レー ザで生成したプラズマストリーク像を図 2 に示す。この図は、圧 力 50atm、レーザパワー15MW の時のストリーク像である。図は、 上から下に向かって時間掃引されており、縦軸が時間、横軸は、 プラズマの大きさを表している。図より、プラズマは最初集光レ ンズの焦点で生成され、その後、ほぼ左右対称に成長しているこ とが分かる。また、ArF エキシマレーザは、XeCl エキシマレーザ 図 2 ストリーク像 100 よりレーザパワーが高いにもかかわらず、プラズマの大きさは小 さかった。そこで、集光レンズやチャンバーの窓などのガラスの 透過率を測定したところ、集光されるレーザパワーは、約 64%に 減衰することが分かった。窓材には、最も紫外線領域の光を透過 80 する合成石英の材質を用いているが、ArF レーザ光の波長が短く このような結果になったと考えられる。 プラズマ生成時の ArF レーザ光の透過率を図 3 に示す。この図 は、レーザ光の入射前のパルス波形と、チャンバー入射後のパル ス波形から求めた透過率の図である。図より、プラズマが生成さ 60 Wavelength 192 nm れているにもかかわらず、レーザ光は約 80%透過していることが Laser Power 15 MW 分かった。これは、レーザを集光することにより高気圧アルゴン 0 100 ガス中に生成されるプラズマの周波数よりレーザ光の周波数が高 Pressure (atm) いため、レーザ光がプラズマ中を透過し、プラズマの生成に使わ れていないことが分かった。 図 3 ArF レーザ光のプラズマ透過率
© Copyright 2024 ExpyDoc