日本原子力学会予稿原稿 1999 年 3 月 22-24 日 広島大学 鉄窒化物ナノコンポジットの磁気エントロピー変化 Magnetic entropy change of nanocompoistes containing iron nitrides 阪大工 ○塩見和弘、田中正人、山本孝夫、中川貴、桂正弘 Shiomi Kazuhiro, Tanaka Masato, Yamamoto Takao, Nakagawa Takashi, Katsura Masahiro 【要約】十数 n m の鉄窒化物粒子(強磁性)を銀の中に分散させたナノコンポジットを作り、その磁気エン トロピー変化を、磁化測定の結果から計算し解析式との比較を行い、ナノ構造によるエントロピー変化の増 進と、窒化物の優位性を検討した。 【キ−ワ−ド】鉄窒化物、磁気エントロピー、ナノコンポジット 【はじめに】強磁性ナノ粒子を非磁性の物質中に巧妙に分散した磁気的ナノコンポジット(以下 NC と略記) は、磁気熱量効果を飛躍的に増進し、極低温や強磁界でしか作動していない磁気冷凍サイクルを、永久磁石 級の磁場、或いは、液体窒素温度やより高温でも作動させる可能性を持つ。磁気熱量効果とは、物質の磁気 スピンを外部磁界 H で制御し、スピンエントロピーS を熱量変化∆ Q に、∆ Q=T∆S の関係で変換するものであ る。鉄窒化物γ’-Fe4 N とε-Fe3 N の、金属鉄に匹敵する大きな磁気モーメントとナノ相での化学的安定性に着目 し、これらの FexN/Ag を含む NC を我々は既に合成した。γ’-Fe4 N を含む NC(以下γ ’-NC と略記)∆S の評価 については既に報告したが [1]、本研究では、これより少し複雑な挙動を示すε-Fe3 N を含む NC( ε-NC)につい て∆S の評価を行った結果を報告する。 【実験】全く同じ焼鈍温度と時間 (350℃ ,4 時間 )で窒化活量だけを変えアンモニア窒化法で FeOx/Ag-NC を ε-NC とγ’-NC に転換した。窒化物相はX線回折とX線吸収スペクトル法で確認した。両者の 5T での各温度 における磁化を 7.5K での値に対する相対値として図 1 に示す。ε-NC のキュリー点がγ’-NC のそれより低く (各々 398K,761K)、両曲線はこの温度領域内で、磁性の要素である粒子の磁気モーメントの温度依存性の差 異を反映している。図2に示すようにγ’-NC は超常磁性的な挙動を示したが、ε-NC ではこの依存性に起因す る複雑な挙動を示した。しかし、磁気熱量効果の指標である磁気エントロピー変化 (∂S/∂ H)T は、 (∂ M/∂T)H に 等しいので、このε-NC の方がγ’-NC より( ∂S/∂H)T の絶対値が大きくなる可能性がある。本研究では既に得た ε-NC の磁化データから計算される∆S と、磁気的に独立だが磁気モーメントの温度依存性を伴うモデル (Langevin 常磁性モデルの延長から解析的に表現できる)に対する解析式との比較と検討を行った。 【計算】磁化 M は、温度 T、磁界 H、磁気モーメントµの時、 Langevin モデルで次式のように書ける。L(a) は Langevin 関数、N は粒子数である。 M = NµL (a), L (a ) = coth a − 1 / a, a = µH / kT しかし、ε-NC の磁気モーメントに温度依存があり、µの温度依存を含む解析式を使った。 ∂L ( a) ∂ µ(T ) ∂M + NL(a) = Nµ (T ) ∂ ∂ ∂T T T H 第二項が通常の Langevin 常磁性モデルに付け加わる項である。この式を用い磁化データから得られる (∂M/∂T)H と比較した。この詳細は当日報告する。 文献][1] 山本、塩見、原辺、西牧、桂:日本原子力学会「1998 年秋の大会」、福井工大、I67。 謝辞]本研究は、泉科学技術振興材団、文部省科研費の助成を受けた。磁化測定には松原・舟橋 両博士(大阪工業技術研 究所)、ナノ鉄粉末の合成には新原教授(阪大産研)の協力を得た。ここに謝意を表する。 1.2 γ '-Fe4 N-NC Magnetization at 5T (normarized to value at 7.5K) 1 0.8 ε -Fe3 N-NC 0.6 0.4 0.2 0 0 Magnetization(emu/g) 80 70 γ '-Fe4 N/Ag-NC 60 50 300K 250K 200K 150K 40 30 20 50 100 150 200 250 300 350 Temperature(K) 図1 7.5Kでの磁化で規格化した5Tでの磁化の温度依存性。 10 -10 0 10 20 30 40 H/T(Oe/K) 50 60 70 図2 様々な温度で測定された磁化のH/Tプロット。
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