草地における粗砕石灰の酸性改良効果 - 東北農業試験研究協議会

東北農業研究
(Tohoku Agric Res)45, 147-148(1992)
草 地 に お け る粗 砕 石 灰 の 酸 性 改 良 効 果
基・ 広 田 千 秋・ 村 田 憲 昭
蛸 島
(青 森県畜産試験場)
Effects of Applied Coarse Lime for lmprovement of Acidic Soil in Grassland Estabilishment
ヽ10tOi
TAK∝ IMA, Chiaki HIR∝ A and N6riaki MuRATA
(AOmOri Prefectural Experiment Station of Animal Husbandry)
1
は
じ め
14)試 験圃 の造成及び施肥量 :試験圃 は原野化 した放牧
に
地を1987年 8月 31日 に耕起 し,オ ーチ ャー ドグラス (キ タ
ミドリ)単 播草地 とした。造成時 の基肥量 はN― P206-
草地土壌 は経年的に酸性化が進行するため ,造 成後 3年
K,0‐ 5-5-5 kg/10aと
目毎 に石灰 の追肥が必要 となる。 しか し,生 産現場で は必
ず しも石灰 の追肥が実施 されてお らず ,草 地生産力 の低下
N―
び最終刈 を除 く各番草毎 に分施 した (年 4回 刈 り)。
を招 く原因 とな ってい る。 これに対処するためには,炭 カ
ル よ りも石灰成分 の溶解 が遅 いと考 え られ る,粗 砕石灰 の
3
施用 が有効 と思われる。 そ こで ,草 地 における粗砕石灰 の
土壌酸性改良効果及び施用法を,炭 カルとの比較 で検討 し
試験結果及び考察
は)土 壌pH及 び置換性 CaO含 量に及ぼす影響
1)利 用 1年 目と4年 目における土壌 pHを 図 1に 示
たのでその結果 を報告す る。
2試
し,ま た,利 用年 の追肥量 は
P,06-K20‐ 20-13-13kg/10aで ,こ れを早春及
験
方
した。粗砕石灰単用系列 (以 下 ,単 用系列)で は石灰 の増
法
(1)試 験前土壌 の性質 :土 壌 は腐植質火山灰土壌 で,そ
施 に伴 いpHが 上昇 し,利 用 1年 目にお いて 目標 pH6 5を
達成 したのは,粗 砕石灰 4倍 区 のみであ った。 一方粗砕石
の化学性 は表 1に 示す とお りである。
12)試 験区の構成及 び石灰質資材施用量 :表 2の とおり。
灰・ 炭 カル混用系列 (以 下 ,混 用系列 )で は,単 用系列同
様石灰施用量 が多 いほ どpHが 高 く,粗 砕石灰 2倍 または
(31 粗砕石灰 の特性 :石 灰岩を粗粉砕 したもので ,ア ル
カ リ分 は炭 カルと同 じ53%で あ り,粒 度別構成割合 は , 2
mm以 上44%.2∼ 0
表
1
5mll%,0 5mm以 下45%で ある。
試験前土壌 の化学性
pH(HЮ )
CECtteス ∞g)
(深 度
]X― C厠 (lυ 100じ
0∼ 15m)
石灰飽m度 (%)
区 名
粗幅 灰
2
2,316
7
炭 カ ル
2倍 +1/2
用
10
炭カル単用
基 準
1,158
2,316
″ 多夕 lll口 憫
朝
1
利用 4年 目
‐
│
――――― 混用系タリ
・ー
炭 カル
67
2
2,316
図
5η
注
注 1)炭 カル基準量は,緩 衝曲線法により改良深度15omで pH65を 目標
に算出した也
ン醐酎罰オは 全区とも20%よ うりんを1001g/10a施 用。
2)リ
締
,
ー
”
混
9
1,158
改良効果 の持続性 が大 きいことが認 め られた。
)v
∞
+ 1/3
4倍 +1/2
″ + 1/3
″
8
fth
”
6
5
579
1158
標 準 +標 準
″ + 1/2
粗砕石灰
″ + 1/3
4
糧砕石灰
9 ∞ ” ∞
7
用
2倍
4倍
カルと混用 した方 が明 らかに酸性改良効果が高 くなる こと
また ,利 用 1年 目と 4年 目のpHを 比較 す ると,粗 砕石
灰を施用 した場合 4年 目>1年 目 とな り,粗 砕石灰 の酸性
掏咽量/kg/10a)
9
η ” 7
単
3
炭カル
(M2)と 粗砕
石灰標準 +炭 カル基準区 (Na 4)を 比較す ると,利 用 1年
目ではM2区 のpH60に 対 し,M4区 が pH66と 高 く,炭
一
一
一
粗砕石灰 標 準
1
炭カル
は ,利
が示 された。
試験区 の構成
系列名
(m7,8,9,10)で
石灰施用量が同 じである粗砕石灰 2倍 区
2108
表2
4倍 に炭 カルを混用 した区
用 4年 目において もpH65以 上 の値 にあった。
1
0∼ 15c
3
4
5
6
7
3
9
10 11
利用 1年 目と 4年 目の上壌 pH
lの 部位 か ら 5 cm毎 に採取 した平 均値
2)置 換性CaO含 量 と石灰飽和度 を表 3に 示 した。
単用系列及 び混用系列 ともpHと 同様 ,石 灰 の施用量 が 多
147-―
東 北 農 業 研 究
表3
45号 (1992)
第
佗)牧 草収 量及びCa含 有率 に対す る粗砕石灰施用効果
1)4か 年 の牧草風乾収量 を表 4に 示 した。粗砕石灰
置換性 CaO含 量及 び石灰飽和度
施用区 の合計風乾収量 は,単 用系列 の標準区 (NQ l)と 混
用系列 の 4倍 区 (NQ 9,10)が やや低収であるものの ,全
般的 には炭 カル区 とほぼ同等 の値 を示 した。石灰施用によ
る増収効果 は,土 壌表層部 の置換性 Cao含 量が 167mg/
1)。
1008以 下 の場合 に発現す るとされて いる
本試験 で は
,
各区 とも 0∼ 5 ct部 位 の置換性 Cao含 量 が 4年 間 を とお
し270mg以 上 の水準 にあったため ,収 量 に大 きな差が出な
か った ものと推察 される。なお,Ml区 及びNo 9,10区 で
やや低収 とな ったのは,Nα l区 では利用 1年 目か ら 4年 目
にかけてpH及 び石灰飽和度 が炭 カル区 に比 べ 低 か った こ
と,ま た血 9,10区 では,石 灰飽和度 が 100%以 上 を越 え
て いたことが影響 したためと思われる。
2)牧 草中のCa含 有率 は,粗 砕石灰 の増施 に伴 い高
注 各年次 とも秋季 に 0∼ 15clの 部位 か ら採取
まる傾向にあ つたが ,単 用系列 と混用系列間にお いて は
,
いはど置換性Cao含 量が 高 くな った。 また,石 灰施用量 が
同 じNo 2区 とNo 4区 を比較す ると,混 用 したNo 4区 が 利用
判然 とした差が認 め られなか った。 また,炭 カル区 と比 べ
て も大 きな差 はな く,石 灰成分 の吸収 において炭 カル と遜
1年 目か ら818mg/100gと 高 い値を示 して いた。
色な いことが示 された。
表4
,
(M3)の みであ つた。一方混用系列では,粗 砕石
灰標準 +炭 カル基準区 (NQ 4)と 粗砕石灰 2倍 ,4倍 区
4倍 区
(NQ 9,10)で は,土 壌表層部位 0∼
単用系列
5 cmに おいて ,石 灰
飽和度 が100%を 越 えてお り過剰 な状態 にあ った。
以上 ,土 壌 の酸性改良効果及 び肥料経済 の面 か ら判断す
(kg/10a)
NQ 1年 目 2年 目 3年 目 4年 目 4か 年合計
1
977
2
l lX15
1,057
1,110
4,190 ( 96)
1,123
1,117
4,422 (102)
1,136
1,143
4408(101)
1,104
1,206
3
1.004
4
983
1,208
5
967
1,181
1,078
1,131
1,051
1,136
1,062
1,158
6
0 1
“ 0
0
(No 7,8,9,10)に おいて,利 用 1年 目か ら4年 目にか
け概ね60%以 上 の値 にあ った。 しか し,粗 砕石灰 4倍 区
系列名
牧草 の風乾収量
72
5
鰯7
︲︲
次 に,石 灰飽和度をみると,単 用系列 の利用 1年 目 にお
いて ,本 県 の土壌改良 目標値 とされる60%り を越えたのは
1,015
1,238
1,165
4,546(105)
ると,混 用系列 の粗砕石灰 2倍 +炭 カル1/3区 (NQ 8)が
8
983
1,162
1.164
1 157
4.466 (103)
最 も適当であ った。
9
1,130
1,051
1,148
4,244(9D
1.079
1,046
1,074
4,188(96)
1,172
1,064
1062
(lllll)
3)粗 砕石灰 を単用 した場合 の置換性 CaO含 量 の 4
か年平均値 を図 2に 示 した。 炭 カル基準 区 の 置換性 Ca0
含量 は488mg/100gで あ り,こ の含量 に相 当す る粗砕石
10
炭 カ ル 11
注
1,047
( )内 は炭 カル基準区を100と
灰施用量 を推定すると,炭 カルの約 3倍 量必要な ことが判
4
明 した。
∞ 含
炭 カル基準区 の CaO合 量
3∞
と め
)
引
0
標準
図2
ま
した指数。
草地 の酸性化 を長期 に抑制す ることが可能 と考 え られる
粗砕石灰 の酸性改良効果及 び施用法 について検討 した。
その結果 ,粗 砕石灰 を単用 した場合 の上壌酸性矯正力及
び石灰成分 の供給効果 は,草 地造成時及び利用年 いずれ も
炭 カル施用効果 の1/3程 度 であると考え られた。 また,粗
砕石灰 は,単 用す るよりも炭 カルと混用 した方 が酸性改良
効果 が大 きく,適 正施用量 は,肥 料経済 の面 か らみて粗砕
石灰 2倍 +炭 カル1/3と 判断 された。
量
(nν 100θ
︲ %
9
混用系列 7
1,128
2倍
e倍
4借
1)野 村
用 文 献
忠弘 1990牧 草 の収量向上 と無機組成改善 の
ための施肥管理方式 に関す る研究 青森畜試報 16:
粗砕石灰単用系列 における施用量 と土壌
CaO含 量 (4カ 年平均)の 関係
注 0∼ 15colの 部位 か ら 5m毎 に採取 した平均値
1-108
-148-