ニコチン依存尺度とその妥当性および信頼性

ÎÓк ½
川崎医療福祉学会誌 ÆÓº ¾ ¾¼¼ ½ ¿¹¾¼¼
総 説
ニコチン依存尺度とその妥当性および信頼性
三 徳 和 子£½
要 約
喫煙問題に関心の薄かったわが国においてもようやく禁煙支援の方法に関心が高まっている.この
禁煙成功率を予測するにはニコチン依存の程度を測定する必要があるので ,
Ö×ØÖÓÑ ÌÓÐ Ö Ò
ÉÙ ×Ø ÓÒÒ Ö ( ÌÉ ), Ö×ØÖÓÑ Ì ×Ø ÓÖ Æ ÓØ Ò Ô Ò Ò ( ÌÆ ),たばこ»ニコチン依
存スクリーニング法( Ì Ë )および厚生省による ¿ 項目の依存度チェック法の比較を行った .現在の
趨勢ではたばこ依存の尺度として ÌÆ が使われることが多いが ,Ì Ë も優れた計量心理学的特性
を持っていることから ,もっと広く使われることが望まれる.厚生省の調査で使われた ¿ 項目の依存
度チェック法も簡便であり,見捨てがたく,計量心理学的検討が望まれる.と同時に ,これらの尺度
の関係やそれらの得失についての研究にも期待が寄せられる.
思ってもやめられない」,
「 吸わずにはいられない」
はじめに
という喫煙者の心理はニコチンに対する依存の表れ
たばこに依存性のあることは江戸時代中期,貝原益
であり,他の依存性物質にも共通して見られるもの
である µ .
軒の養生訓の時代から知られていたようであるが ,
日本におけるいわゆる「たばこ白書」では ,昭和
年の初版には記載がなく ½µ ,第
¿
地域社会における喫煙問題の大きさを測定すると
¾ 版では簡単な記述
ともに ,禁煙支援の効果を推定するためには ,個々
½ ¿年の第 ¾ 版には詳しい記述がある ¿µ .
があり ¾µ ,
の喫煙者についてニコチン依存の有無およびその程
ニコチンには ,そしてそれを含むたばこには ,依
度を測定し評価する必要がある.
存性があるため ,現在のようなニコチン 代替療法
研究者も臨床家も健康支援で使うことのできる最
が 普及する以前の禁煙指導や禁煙支援の成功率は
良の測定方法を知らなければ ,研究費の無駄づかい
低かった.たとえば ,禁煙意欲の有無にかかわらず
となり,科学的知見の蓄積が遅れ ,最適な支援を行
禁煙指導を行った場合の成功率は ,対照群での成
うための判断材料を失うこととなる.しかしながら,
ヵ月後)であった µ .また ,この割合はが
­½ 測定尺度の信頼性と妥当性が
­¾
開発と修正はゆっくりしており ,使用したいという
人々に浸透されにくいこと ,­
¿ 既存の健康測定方法
ん専門病院での健康危険度評価等を使った指導では
を探すよりも新しい方法を作成して使用することの
( ヵ月後)であったが ,対照群では
で
あった µ .禁煙希望者に対する支援の効果としては,
ほうがしばしばやさしいように思えることなどの問
保健所における支援で
場合には多くの研究時間を要することとなる.
º½±に対し て ,医師が 指導を行っても成功
º ±( ヵ月後)であった µ .また ,保健所に
功率が
測定方法においては
率は
検証されていない場合があること , 健康測定法の
おいては非指導群には禁煙者はなく ,指導群では
º ±(
¾¼º½±
º½±
題があり,適切な健康測定方法を使用しようとする
¿¼º ±
( ヵ月後)という報
告がある µ が ,この場合には対照群は設定されてい
なかった.また ,禁煙希望者に対する
健康測定の
日間禁煙講
½ つであるニコチン依存度を測定する
場合においても ,ニコチン依存度が的確に判断でき
º¿±( ヵ月後)で ,その後
の追跡で ¿ º ±( ½½ß½¾ヵ月)の報告がある µ .
たものを用いることが重要であり,そのためにはす
このように禁煙を希望して禁煙講習会等に参加し
でに利用が可能な測定方法を注意深くレビューした
てもその成功率はかなり低い.これは ,
「やめようと
うえで使用することが求められる.しかし ,ニコチ
習会の成績としては
るように ,尺度としての信頼性と妥当性が確認され
£½ 川崎医療福祉大学 医療福祉学部 保健看護学科 川崎医療福祉大学
( 連絡先)三徳和子 〒 ¼½¹¼½ ¿ 倉敷市松島¾
¹Å Ð Ñ ØÓ Ù ÑÛº Û ×
¹Ñº º Ô
½¿
½
三 徳 和 子
ン依存度測定の方法は種々の社会科学や医学などの
や若い男では学歴が高く,神経症傾向が少なく,若い
学術雑誌に広く分散しており,この分野での研究に
女ではよく眠り,解雇されたことが少なくて,アルコー
遅れずについていくことは難しい.
ルやコーヒーの飲用が少なく,中年の男では結婚歴が
そこで本稿はわが国において使用されてきた ,い
くつかのニコチン依存度測定方法のうち,質問票か
採点法による主観的判断を用いたニコチン依存度測
多く,よく眠り,生活に満足していることであった.
しかし ,ここにあげられた要因に中には ,年齢 ,
行動,認識など ,必ずしもニコチン依存を反映する
定の尺度開発に焦点を当て ,その開発の歴史をたど
ものだけでない.また ,複数の項目をまとめた尺度
りながら ,ニコチン依存度測定についての現状を理
とすることによって信頼性の高いニコチン依存の尺
論的および方法論的基礎に基づいて整理し ,各々の
度を開発する必要があった .
尺度の意義と信頼性および 妥当性について比較し ,
ニコチン依存尺度の妥当性と信頼性
違いを明らかにするとともに ,今後のニコチン依存
度測定の方向性と課題を提示することを目的とする.
½.
Ö×ØÖÓÑ ÌÓÐ Ö Ò ÉÙ ×Ø ÓÒÒ Ö の開発
½ .½ .ニコチン依存の症状
Ö×ØÖÓÑ ½ µ はニコチン依存を次のようなもの
禁煙成功率の予測因子
まず ,ど ういう人が禁煙プログラムに参加するか
という研究によると ,健康状態が悪く,ライフスタ
イル( 運動や食事性脂肪)が不健康で ,禁煙が自分
の健康状態を改善するという信念を持っている人で
あるという ½¼µ .
そのような人たちの中で ,ど ういう人が禁煙に成
功するかという記述は数多くある.たとえば ,星旦
½
二 ½½µ によれば , 年後の禁煙を予測する要因につ
だと想定した ½ µ .
½
( ) どれくらいの頻度でその薬物を使うか(
¾
½日
あたり紙巻たばこ本数)
( ) 喫煙する銘柄の紙巻たばこの機械喫煙による
¿
ニコチン産量
( ) その薬物の効果的な利用( 深く吸い込むかど
うか )
( ) 起床後どれくらい早期に ,また起床後
½ 時間
¾ 時間以内にどれくらいの強度でその薬物
いて ,多重ロジスティックモデルを用いて分析した
か
ところ, 年後の禁煙を予測する有意な関連要因と
を用いるか(行動自己観察)
.朝の内,血漿中
して ,喫煙本数,間接喫煙効果の認識および禁煙の
ニコチンレベルが低く,ニコチン探索行動に
方法が示された .つまり ,喫煙本数が少ないこと ,
影響するだろう.
½
間接喫煙効果を認めること ,そして禁煙の方法とし
½ 年後の禁煙成功を予測する
有意な要因として示された.また, ¾ 年後の禁煙を予
て節煙方法をとることが
( ) 朝の最初の
½ 本の紙巻たばこ .朝の紙巻たば
こは重要であると報告されているが(行動観
察),これは朝のうちのニコチン退薬症状を
測する有意な関連要因としては,年齢,禁煙教育への
改善する力が大きいからである.
参加,喫煙本数,禁煙経験,禁煙期間および喫煙代替
( ) 外的制御よりも,内的刺激制御.
物の配布が示された.つまり,年齢が低く,禁煙教育
に参加せず,喫煙本数が少なく,禁煙経験があり,禁
¾
煙期間が長く,喫煙代替物を配布されたことが, 年
後の禁煙成功を予測する有意な要因として示された.
½
簑輪眞澄ら ½¾µ によれば , 日あたり喫煙本数が少
ないこと(
Ô ¼º¼
),禁煙は簡単と考えていること
Ö×ØÖÓÑ は身体的依存の尺度で
ある ÌÓÐ Ö Ò ÉÙ ×Ø ÓÒÒ Ö を作った ½ µ .これが
今日,
Ö×ØÖÓÑ ÌÓÐ Ö Ò ÉÙ ×Ø ÓÒÒ Ö( ÌÉ )
と呼ばれているものである(表 ½ ).
これに基づいて
½ .¾ . ÌÉ の妥当性
Ö×ØÖÓÑ ½ µ は ÌÉ について ¿ つの実験を行
った;
( ½ )退薬に伴う体温の変化,
( ¾ )心拍を指標と
する常習的喫煙者における喫煙の耐性,および( ¿ )
Ô ¼º½ ),喫煙は大変有害であると考えていること
Ô ¼º¼ ),健康状態が良好でないこと( Ô ¼º½ ),
自覚症状があること( Ô ¼º¼½ )および既往症があ
ること( Ô ¼º¼½ )を指摘している.
また,ÄÙÒ
Ö ら ½¿µ によれば ,禁煙成功者は上
級の給与所得者で ,学歴が高く,喫煙本数が ½¼本未
の関連が検討された.その結果,
満であるという.逆に ,こどもを抱えた離婚者では
上昇程度は負の相関を示した.すなわち,身体依存
(
(
Æ Ö
喫煙再発率が高いという.
ら ½ µ は ,禁煙
成功と正の関連を示す要因として ,年齢,学歴,社
会経済状態,
ÅÁ および喫煙に関連した症状や疾患
à ÔÖ Ó Â ら ½ µ は禁煙者は ,女
があげられている.
心拍を指標とする禁煙者における喫煙の耐性 ½ µ .退
薬に伴う体温の変化の観察においては ,禁煙前と禁
ÌÉ と
ÌÉ と口腔体温の
煙後に口腔体温が測定され ,体温の変化と
の強いもの(つまり
ÌÉ の値の大きいもの)では禁
煙によって体温が上昇し ,身体依存の弱いものでは
禁煙によって体温が低下した.常習的喫煙者におけ
る喫煙の耐性との関連を証明するためには ,安静時
½
ニコチン依存尺度の発展
表½
Ö×ØÖÓÑ による「たばこ依存度評価表( ÌÉ )」
ÌÉ との関
連が検討された .その結果,心拍上昇と ÌÉ の相
関係数は ¼º であった .すなわち,身体的依存の
ニコチンを投与されても心拍数の増加が少ないこと
Æ ½ ¼ )の対象者について信頼性の検討
をし , ÖÓÒ
のアルファがそれぞれの群で ¼º
および ¼º ½であり,内的整合性の確認をした .これ
らの ÖÓÒ
のアルファは十分大きいとは言えな
いものの, ÌÉ の 項目の質問に著しく方向の違っ
を示している.禁煙者における喫煙の耐性の検討に
た項目は含まれていないこと( 内的整合信頼性)を
おいては ,常習的喫煙者における喫煙の耐性の検討
示している.
と同じ手順の観察が禁煙者(
½ . .禁煙支援研究での応用
心拍数と喫煙時の心拍数の差を測定し ,
程度が弱いものに比べて,身体依存の強いものでは ,
¿ ヶ月ないし ½½年)に
¼º ¼であ
り,喫煙者におけるよりも小さかった.
Ö×ØÖÓÑ
対して行われた .その結果,相関係数は
(
Æ ½
,
ÌÉ は ,各種の禁煙支援研究において,ニコチン
依存度に関する研究対象者の背景因子として ,ある
は ,この相関係数が先天的に決まった本来の耐性を
いは介入群と対照群に偏りがないか否かを検証する
示していると考え ,禁煙によって本来の耐性に戻っ
ための指標として用いられている ½
Ö×ØÖÓÑ は
ÌÉ がニコチン依存の尺度として妥当であると判
たと考えた .これらの実験を通じて
断した(基準関連妥当性の確認).
Ä Ø Ò×Ø Ò Ò Å ÖÑ Ð×Ø Ò
究対象者の ÌÉ の主成分分析を行い ,第 ½ 主成分
が朝すぐにたばこを吸うか否かと , ½ 日あたり喫煙
本数であり,第 ¾ 主成分が朝の喫煙が多いかど うか
また ,
½ µ 禁煙研
であった.この成績も,この尺度が妥当であること,
すなわち,構成概念妥当性を示すものと考えられた.
½ .¿ . ÌÉ の信頼性
Ä Ø Ò×Ø Ò Ò Å ÖÑ Ð×Ø Ò
½ µ はまた ,
¾群
中には
¾
µ .これらの
ÌÉ 別の禁煙成功率に言及しているものも
ÌÉ の高い群では成功率が低かっ
あり ,いずれも
た ½ ¾½ ¾ ¾ µ .このことは予測的妥当性を示すもの
と考えられる.
これらを背景として,中村正和ら ¿¼µ ,小川浩ら ¿½µ ,
斉藤麗子 ¿¾µ ,簔輪眞澄 ¿¿ ¿ µ らによって
煙支援のツールの
¾ . ÌÉ の改訂(
Ô Ò Ò へ)
½ つとして勧められた.
ÌÉ は禁
Ö×ØÖÓÑ Ì ×Ø ÓÖ Æ ÓØ Ò
¹
À Ø ÖØÓÒ ら ¿ µ は , ÌÉ は計量心理学的検討
が十分には行われていないことに注目し ,各項目の
½
三 徳 和 子
重要性を評価した.その結果,好みの銘柄のニコチ
ン産生量と深く吸い込むか否かは ,ニコチン依存と
¾項
Ö×ØÖÓÑ Ì ×Ø ÓÖ Æ ÓØ Ò
Ô Ò Ò ( ÌÆ )と名づけて提唱した(表 ¾ ).
ÖÓÒ のアルファは¼º で ÌÉ の原法とほと
関係していないと判断した .そのためこれらの
目を削除した尺度を
んど 変わらない上に ,また通常項目数を減らせば
ÖÓÒ
のアルファは小さくなるにもかかわらず ,
¾ 項目削除されたことは意義が大きいと述べている
(内的整合信頼性).
最近はこの
ÌÆ
が人口に膾炙しており ,近年
はこちらの方が禁煙支援のツールの
勧められている ¿
¿
µ.
½ つとして広く
ÈÖÓ Ð Ñ× ,½¼Ø Ê Ú × ÓÒ(いわゆる Á ß½¼ ), ¹
ÒÓ×Ø Ò ËØ Ø ×Ø Ð Å ÒÙ Ð Ó Å ÒØ Ð ×ÓÖ Ö×
第 ¿ 版改定(いわゆる ËÅßÁÁÁßÊ )および同第 版
( ËÅßÁÎ )に準拠していないとして,Á
ß½¼に準
拠した新たなたばこ »ニコチン依存スクリーニング法
の開発を行った.彼らはその結果,½¼項目の質問票
を開発した(表 ¿ )
.これによれば , ÖÓÒ
のアル
ファは ¼º ないし ¼º ½で , ÌÉ や ÌÆ に比べれ
ばずっと大きかった.また ,Á
ß½¼ , ËÅßÁÁÁßÊ
や ËÅßÁÎ の診断とよく一致し ,呼気中一酸化炭
素濃度, ½ 日あたり喫煙量およびこれまでの喫煙年
数とよく相関した( 基準関連妥当性の確認)¿ µ .
また,ある企業の従業員に健康危険度評価(
¿ .たばこ依存度スクリーニング( Ì Ë )質問票の
ÀÊ
質問票を配布して ,
ÀÊ
)
の判定結果を各従業員に
開発
返送して禁煙を勧めたところ,喫煙継続者に比べて
川上憲人らは ,
禁煙者では
ÌÉ が ÁÒØ ÖÒ Ø ÓÒ Ð ËØ Ø ×Ø ¹
Ð Ð ×× ¬ Ø ÓÒ Ó × × × Ò Ê Ð Ø À ÐØ
表¾
¼µ .また ,
男性医師集団にこれを適用し ,前喫煙者では現喫煙
Ö×ØÖÓÑ ニコチン依存度調査票( ÌÆ :
表¿
Ì Ë 得点が有意に低かった
Ö×ØÖÓÑ Ì ×Ø ÓÖ Æ ÓØ Ò
たばこ依存度スクリーニング( Ì Ë )質問票
Ô Ò Ò )
½
ニコチン依存尺度の発展
者よりも
Ì Ë 得点が低いことを確認した( 予測的
妥当性の確認)½µ .これらの際,彼女らは質問項目
½ が禁煙の成否に直接影響していることに注目し ,
½
項目 Ì Ë を使っている.
このように Ì Ë は ,当初より計量心理学的検討
が行われており , ÌÉ よりは優れているように思
質問項目 を除いた
われる.
.ニコチン依存度チェック法
½½年に厚生省保健医療局によって実施された
平成
「喫煙と健康問題に関する実態調査」においては ,調
¿ 項目の依存度チェッ
).これらの ¿ 項目はい
査項目数を少なくするために
ク法が用いられた ¾µ( 表
ずれも簡便で妥当なような印象を受けるが ,今後実
際の調査データに基づいて計量心理学的な妥当性や
信頼性を確認するための研究が望まれる.
考
¾
健康増進法第
に関する研究で用いられており ,有用であることが
確かめられている.しかし ,
ÌÉ はその開発の過程
において計量心理学的手法が使われたわけではない
¾
Ö×ØÖÓÑ Ì ×Ø ÓÖ Æ ÓØ Ò
ので ,計量心理学的検討がなされ , 項目が削除さ
れて
項目とされ ,
ÔÒ Ò
(
ÌÆ
)と命名された.
この流れとは独立に,川上憲人らは,ÁÒØ ÖÒ Ø ÓÒ Ð
ËØ Ø ×Ø Ð Ð ×× ¬ Ø ÓÒ Ó × × × Ò Ê Ð Ø
À ÐØ ÈÖÓ Ð Ñ× ,½¼Ø Ê Ú × ÓÒ( Á ß½¼ )に準
拠した新たなたばこ »ニコチン依存スクリーニング法
( Ì Ë )の開発を行ない ,½¼項目の質問票を開発し
た .これによれば , ÖÓÒ
のアルファは ¼º な
いし ¼º ½で , ÌÉ や ÌÆ に比べればずっと大き
かった .また ,Á
ß½¼ , ËÅßÁÁÁßÊ や ËÅßÁÎ
の診断とよく一致し ,呼気中一酸化炭素濃度, ½ 日
あたり喫煙量およびこれまでの喫煙年数とよく相関
察
ÏÀÇ たばこ規制枠組条約 ,
条,
し ,基準関連妥当性が確認された.このように
Á ß½¼に準拠しながら ,当初より計量心理学
ÌÉ よりは優れているよ
は,
ニコチン依存治療の健康保険適用の方針などを背景
的検討が行われており ,
として ,禁煙支援の方法に関心が高まっている.こ
うに思われる
の禁煙成功率を予測するにはニコチン依存の程度を
測定する必要があるので ,ニコチン依存の測定法を
Ì Ë
½½年に厚生省保健医療局によって実施された
平成
「喫煙と健康問題に関する実態調査」においては ,調
齢が低く,禁煙教育に参加せず ,喫煙本数が少なく,
¿ 項目の依存度チェッ
¿ 項目はいずれも簡便
で妥当なような印象を受けるが , ¿ 項目の質問で計
禁煙経験があり,禁煙期間が長く,喫煙代替物を配布
量心理学的な妥当性や信頼性が測定できているのか
されたこと ,禁煙は簡単と考えていること ,喫煙は
ど うかについての確認を ,今後行われる調査データ
大変有害であると考えていること ,健康状態が良好
に基づき研究されることが望まれる.
妥当性と信頼性の観点からレビューした( 表
).
どのような人が禁煙に成功するかについては ,年
でなく自覚症状があること ,既往症があることなど
が指摘されている.上級の給与所得者で ,学歴が高
く,解雇されたことが少なくて ,アルコールやコー
ヒーの飲用が少ないことも指摘されている ½¿ ½ µ .
Ö×ØÖÓÑ はこれらの観察結果をもとにしてニコ
査項目数を少なくするために
ク法が用いられた.これらの
以上に述べてきたように ,現在の趨勢ではたばこ
依存の尺度として
ÌÆ
が使われることが多いが ,
Ì Ë も優れた計量心理学的特性を持っていることか
ら ,もっと広く使われることが望まれる(表
た ,厚生省の調査で使われた
).ま
¿ 項目の依存度チェッ
チン依存とはどのようなものであるかを想定し , 項
ク法も簡便であり,見捨てがたく,計量心理学的検
目の
討が望まれる.同時に ,これらの関係や得失につい
Ö×ØÖÓÑ ÌÓÐ Ö Ò ÉÙ ×Ø ÓÒÒ Ö ( ÌÉ )
を作成した .その後,妥当性や信頼性の検討が行な
ての研究にも期待が寄せられる.
われ ,それらが確認された .実際,多くの禁煙支援
表
簡単なニコチン依存度チェック法
½
三 徳 和 子
表
ま と
つの方法の項目数と検討された妥当性および信頼性
目の依存度チェック法の比較を行った .現在の趨勢
ÌÆ が使われるこ
Ì Ë も優れた計量心理学的特性を持っ
ている.また厚生省調査で使われた ¿ 項目も簡便で
め
ではたばこ依存の尺度として
禁煙成功率を予測するにはニコチン 依存の程度
とが多いが ,
Ö×ØÖÓÑ ÌÓÐ Ö Ò
ÉÙ ×Ø ÓÒÒ Ö ( ÌÉ ), Ö×ØÖÓÑ Ì ×Ø ÓÖ Æ Ó¹
Ø Ò Ô Ò Ò ( ÌÆ ),たばこ»ニコチン依存
スクリーニング法( Ì Ë )および厚生省による ¿ 項
を測定する必要があるので ,
あり,今後の計量心理学的検討が望まれる.さらに
これらの尺度の関係やそれらの得失についての研究
が期待される.
文 献
½ )厚生省編:喫煙と健康:喫煙と健康問題に関する報告書,東京,健康・体力づくり事業財団,½
.
¾ )厚生省編:喫煙と健康 喫煙と健康問題に関する報告書 第 ¾ 版,健康・体力づくり事業財団,東京,½
¿.
¿ )厚生省編・新版:喫煙と健康 喫煙と健康問題に関する報告書,保健同人社,東京,¾¼¼¾ .
)清水弘之,深尾彰,久道茂,菅原伸之:医師が行う禁煙個別指導の効果に関する研究,日本公衛誌,¿¾ ,
ß ¼¾ ,½
.
)赤羽恵一,穴田喜美子,有埜みや子,小野彰子,朝長まり子,中林美奈子,西田美佐,山川直子,吉次美智子,志毛ただ
子,大井照,徳留修身,簑輪眞澄,母里啓子,丹後俊郎,藤田利治,上畑鐡之丞:保健所における禁煙個別指導の効果に
関する研究,日本公衆衛生雑誌,¿ ,½
ß¾¼ ,½
¾.
)小川浩,田島和雄,黒石哲生:医療現場における禁煙指導の効果,癌の臨床,¿ , ¿ ß
¼ , ½ß¾
,½
)徳留修身,星旦二:禁煙教育
保健所における実践,公衆衛生,
)小川浩,宮崎恭一,林高春:
日間禁煙講習会の成績,日本公衛誌,¿ , ¼ß
½ ,½ ¿ .
.
,½
.
)大原健士郎,宮原勝政:ニコチン依存症,ÁÒ:五島雄一郎監修,目でみる喫煙のリスクと禁煙指導法,朝日ホームド ク
ター社,東京, ¾ß ¿ ,½
½¼ )Ï Ò Ö
À ,Ë Ó Ò
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Ñ Â ÈÖ Ú Å
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, ,¾
ß¾
,
¼.
½½ )星旦二:地域住民を対象にした禁煙教育,ÁÒ:厚生科学研究費補助金(特別研究事業)による「喫煙と健康に関する指
導方法の確立とその効果に関する研究」
(班長:簑輪眞澄)昭和 ¿年度報告書,¾½ß
,½
.
½¾ )簑輪眞澄,徳留修身:保健所における一般の喫煙者を対象とした禁煙指導用マニュアル,ÁÒ:厚生科学研究費補助金(特
別研究事業)による「喫煙と健康に関する指導方法の確立とその効果に関する研究」
(班長:簑輪眞澄)昭和 ¿年度報告
ß½ ¾ ,½
書,
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½
ニコチン依存尺度の発展
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Ò Ê ÒÒ Ö ËÁ:ËÑÓ Ò
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ÛÓÖ ÔÐ
: Ú ÐÙ Ø ÓÒ
¼.
¾¼ )島尾忠男,五島雄一郎,青木正和,淺野牧茂,籏野脩一,林高春,森亨,大久保千代次,富永祐民:禁煙補助剤ニコチン・レジ
ン複合体の臨床第 Á 相試験(第 ½ 報)健常人における単回投与試験成績・喫煙との関係,臨床医薬, ,½¼
ß½½½¾ ,½
¼.
¾½ )宮里勝政,彦坂亮一,今川淳子,星野良一,大原浩一,小林一弘,大橋裕,大原健士郎:ニコチン依存に対するニコチ
ン・レジン複合体の喫煙抑制効果,臨床医薬, ,½
ß½ ½ ,½
¼.
¾¾ )島尾忠男,五島雄一郎,青木正和,淺野牧茂,籏野脩一,林高春,森亨,大久保千代次,富永祐民:禁煙補助剤ニコチン・レジ
ン複合体の臨床第 Á 相試験(第 ¾ 報)健常人における単回投与試験成績・喫煙との比較,臨床医薬, ,½
ß½ ¼½ ,½
¼.
¾¿ )中村正和,宮本真由美,松下紀代美,遠藤幸子,斎藤順子,大島明:禁煙補助剤ニコチン・レジン複合体の有効性の検
集団禁煙プログラムでの比較試験,臨床医薬, ,¾¿
討
ß¾¿ ¿ ,½
¼.
¾ )島尾忠男,五島雄一郎,並木正義,吉峯徳,林高春,森亨:喫煙関連疾患を有する喫煙者に対する禁煙補助剤ニコチン・
レジン複合体の臨床―多施設共同後期第 ÁÁ 相オープン試験,臨床医薬,
,¾ ¼ ß¾ ¾¼ ,½
¼.
¾ )島尾忠男,五島雄一郎,並木正義,林高春,吉峯徳,森亨,中島光好:喫煙者に対する禁煙補助剤ニコチン・レジン複合
体の臨床評価
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¿½ )小川浩,宮里勝政:たばこ依存症の臨床,からだの科学,½ ¿ , ¿ß
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¿¾ )斉藤麗子:たばこがやめられる やめたい,やめさせたいときの禁煙サポート ,女子栄養大学出版部,東京,¾¼¼¼ .
¿¿ )簑輪眞澄:喫煙,ÁÒ:大野良之編,公衆衛生・予防医学,南山堂, ½ ß ¾ ,½
¿ )簑輪眞澄:喫煙の健康影響,降圧ガス,¿ ,¿½ ß¿½ ,½
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¿ )島尾忠男監修:ËÑÓ Ò
ÓÒØÖÓÐ その現況と今後の目標,株式会社トーレラザールマッキャンヘルケアワールド ワイ
ド ,東京,¾¼¼½ .
¿ )高橋裕子:禁煙指導の本,東京,保健同人社,½
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¿ )高橋裕子:禁煙指導ハンドブック,東京,じほう,¾¼¼¼ .
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¼ )川上憲人,高塚直能,稲葉静代,清水弘之:タバコ依存症スクリーニング質問票と禁煙成功との関連性,日本衛生学雑
誌,
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½ )加納美緒, 健治,岩下拓司,川上憲人,清水弘之:医師の喫煙とタバコ依存性,日本公衆衛生雑誌, ,
¾ )厚生省保健医療局:平成½¼年度喫煙と健康問題に関する実態調査報告書,½
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(平成½ 年½¾月 日受理)
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三 徳 和 子
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