高度計測センターニュース Vol.4 No.2(2011) (財)神奈川科学技術アカデミー Kanagawa Academy of Science and Technology 高度計測センタ 高度計測センター NEWS 第8号 2011年 10月1日 技術の解説、技術支援の事例 低加速SEM-EDS分析の紹介 ~概要~ SEM-EDS は SEM( 走 査 電 子 顕 微 鏡 ) に 特 性 X 線 を検出するためのEDS(エネルギー分散型分光器) を搭載した装置です。 特性X線は加速した電子を試料に照射した際に 発生し、各元素毎に固有のエネルギーを持つため、 これを検出することにより、元素分析が可能となり ま す 。 そ の た め 、 SEM-EDS で は SEM で 観 察 を 行 い、EDSに よ り観察部位の元素情報を得ることが できます。 しかし、特性X線の発生領域は電子線の照射領 域よりも大きくなるため、分析時に一般的に利用さ れる10~20kVの加速電圧ではSEM観察領域≠分 析領域となります(図1)。また、有機物等の熱に弱 い材料に関しては電子線を照射した際の温度上昇 やチャージアップにより、分析が行えない場合もあ ります。 これを解消しSEM観察領域≒分析領域とするた めの手段として低加速電圧での分析が挙げられま す。低加速電圧による分析は試料中において、特 性X線の発生領域が小さくなるため(図1)、分析の 空間分解能が向上し、数百nmオーダーの分析を SEMで行うことが可能となります。 今 回 は 当 セ ン タ ー で 実 施 し た 低 加 速 電 圧 に よ る 図2 分析事例を紹介します。 3kV 15kV 試料:Si 形状:バルク 1µm 図1 加速電圧による特性X線の発生領域の比較 加速電圧3kVでは15kVと比較して特性X線の発 生領域が小さくなっています。 試料変形→ スキャン跡 ↓ スキャン跡 跡 ↓ 5µm 5µm 15kVで30分間分析後 図3 3kVで180分間分析後 1.フィラー含有フィルムの分析 有機フィルム中に分散するフィラーの分析を行い ました。分析条件の検討を兼ねて15kVで30 分間 分析を行ったところ、電子線ダメージにより、試料 が著しく変形してしまいました(図2)。一方、加速電 圧 を 3kV に 下 げ て 分 析 を 行 っ た と こ ろ 、 電 子 線 ダ メージは軽減され(図3)、フィルム中のSiOx、TiOx の分布を得ることができました(図4(a)、(b))。 このように低加速電圧での分析は有機物の分析 には大変有効となります。 1µm 赤:Ti 緑:Si 黄:C ※Oは全面から検出 1µm (a) (b) 図4 分析領域(a)、面分析結果(b) 高度計測センターニュース Vol.4 No.2 (財)神奈川科学技術アカデミー 高度計測センターURL http://www.newkast.or.jp 平成23年10月発行 〒213-0012 川崎市高津区坂戸3-2-1KSP東棟1F TEL044-819-2105(技術相談受付) FAX044-819-2108 技術支援の事例 異物の解析事例 2.多結晶Si太陽電池の基板/Ag配線界面の解析 多結晶Si太陽電池の電極には基板との密着性等の向上のため、一般的にはバインダーとしてO、 Si、Pbを含むガラス粉末が使用されています。 FIBにより、配線の断面加工を行った後、基板/配線付近のSEM観察を行ったところ、基板上と バインダー中に存在するAgを明瞭に観察することができました(図5)。次に図5(b)の視野でEDS 分析を4kVで行ったところ、バインダー構成元素とAgの他に反射防止膜(SiN)の成分であるNが検 出されました(図6)。 今回、低加速SEM-EDS分析により、バインダー中のAgの分布に加え、Agが基板に接している 箇所では反射防止膜(SiN)が不連続となっている様子も確認することができました。 (b) (a) Ag配線→ ↓ 界面→ ↑ 基板→ Acc:1kV ↑ 4µm 界面にはAg(矢印)が分布 反射電子像 Acc:1kV 反射電子像 500nm 図5 基板/配線付近のSEM像(a)、界面の拡大(b) 500nm O 500nm Si Pb 500nm スペクトル抽出 反射防止膜(SiN)が不連続 500nm Ag Si 500nm N Pb+Ag+N 500nm (a) 図6 EDS分析結果(a)、円内の抽出スペクトル(b) 問合せ先 N 微細構造解析グループ O 矢矧束穂(やはぎつかほ) C (E-mail:[email protected]) (b) (複製を希望する場合は当高度計測センターにご連絡ください)
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