平成13年神審第117号 漁船彦丸台船KT-18衝突事件(簡易) 言渡年

平成13年神審第117号
漁船彦丸台船KT-18衝突事件(簡易)
言渡年月日 平成14年3月12日
審 判 庁 神戸地方海難審判庁(黒田 均)
理 事 官 釜谷奬一
損
害
彦 丸・・・・船首部を圧壊、
甲板員が左股関節脱臼骨折
KT-18・・右舷船尾部外板に擦過傷
原
因
彦 丸・・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守
裁決主文
本件衝突は、彦丸が、見張り不十分で、前路で錨泊中のKT-18を避けなかったこと
によって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適
条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
裁決理由の要旨
(事 実)
船舶の要目
船 種 船 名 漁船彦丸
総 ト ン 数 4.9トン
登 録 長 11.07メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出
力 404キロワット
受 審 人 A
職
名 彦丸船長
海 技 免 状 一級小型船舶操縦士
船 種 船 名 台船KT-18
全
長 53.5メートル
幅
13.0メートル
深
さ 4.1メートル
事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年4月26日02時45分
福井県敦賀港常宮湾
事実の経過
彦丸は、船体中央部に操舵室を有し、はえ縄漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人
が甲板員と2人で乗り組み、船首0.5メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、え
さを取る目的で、平成13年4月26日02時30分福井県敦賀港第5区を発し、同港第
3区の常宮湾に向かった。
A受審人は、甲板員を操舵室後部で休ませ、1人で操舵と見張りに当たって少し沖出し
し、02時34分敦賀港防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から350度(真方位、
以下同じ。
)4.0海里の地点で、針路を175度に定め、機関を半速力前進にかけ16.
0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
02時43分少し前A受審人は、小埼沖合に至り、防波堤灯台から343度1.6海里
の地点で、針路を常宮湾湾奥に向かう252度に転じたとき、正船首方1,040メート
ルのところに、KT-18が表示した白色灯火を視認することができる状況であったが、
一瞥しただけで、前路に航行の支障となる船舶はいないものと思い、船首方の見張りを十
分に行わなかったので、KT-18の存在に気付かなかった。
その後、A受審人は、KT-18に向首したまま接近していることに気付かなかったの
で、錨泊中の同船を避けずに続航中、02時45分防波堤灯台から323度1.7海里の
地点において、彦丸は、原針路原速力のまま、その船首部が、KT-18の右舷船尾部に、
直角に衝突した。
当時、天候は曇で風力2の北風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
また、KT-18は、非自航型鋼製台船で、B株式会社名古屋支店に用船され、敦賀港
第1区での海洋工事に従事していたところ、作業が一時中断されたため、空倉のまま、船
首尾1.50メートルの等喫水をもって、同年2月14日16時00分押航されて同区を
発し、その夕刻、前示衝突地点に至り、船首錨を投下して錨鎖3節半を延出し、工事再開
予定の同年6月まで錨泊待機した。
KT-18は、船首尾に乾電池による自動点消灯式白色全周灯各1個を点灯し、無人の
まま342度に向首して錨泊中、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、彦丸は、船首部を圧壊し、KT-18は、右舷船尾部外板に擦過傷を生じ
た。また、彦丸甲板員が左股関節脱臼骨折などを負った。
(原 因)
本件衝突は、夜間、福井県敦賀港の常宮湾において、湾奥に向け西進中の彦丸が、見張
り不十分で、
前路で錨泊中のKT-18を避けなかったことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、福井県敦賀港の常宮湾を湾奥に向け西進する場合、前路のKT-1
8を見落とさないよう、船首方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、
同人は、一瞥しただけで、前路に航行の支障となる船舶はいないものと思い、船首方の見
張りを十分に行わなかった職務上の過失により、KT-18の存在に気付かず、錨泊中の
同船を避けないまま進行して衝突を招き、彦丸の船首部を圧壊させ、KT-18の右舷船
尾部外板に擦過傷を生じさせ、彦丸甲板員に左股関節脱臼骨折などを負わせるに至った。