PDF版、591kバイト - 日立製作所

u VALUE
の
タネ
21
●
消費電力最大 %削減へ
データセンタ省電力化
プロジェクトクールセンター
かつてIT は、生産活動や物流の効率化、
資源消費の削減など、省エネルギーや環境保
ト上を流れる情報量の増加にともない、IT
なり始めたのだ。動画情報などインターネッ
ダーが省電力化へ乗り出した。
を受ける形でデータセンター関連の各ベン
力化の必要性を強く示唆した。そして、これ
タ省電力化プロジェクトクールセンター
そ の 活 動 の 中 心 に 位 置 し て い る の が、
2007年9月より推進しているデータセン
もちろん、日立としても積極的なデータセ
ンター省電力化への取り組みを重ねている。
機器全体の消費電力は今後ますます増加して
いくことが予想されている。
省エネルギーや環境保護に対するプラス要
因であったITは、いまやマイナス要因に転
じ て し ま っ た。 そ の タ ー ニ ン グ ポ イ ン ト と
なったのは2007年と言われている。
ある。2008年度から2012年度までの
︶で
同年の8月、アメリカの環境保護庁が﹁サー
バとデータセンターの電力効率に関する報告
5年間で、データセンター全体の消費電力を
︵ 以 下 、プロジェク ト クー ル セ ン タ ー
それが現在、状況は一変している。データ
センターを中心として爆発的に増加していく
書﹂を米議会に提出し、データセンター省電
護に大きな貢献を果たす存在であった。
実用化に向けて歩み始めたこの IT 設備連係制御技術への取り組みについて、日立製作所 中
央研究所 グリーンコンピューティング研究部 主任研究員の野尻 徹が語った。
IT機器が消費する電力が大きな社会問題と
% 削 減 す る こ と を 同 プロジェクト は
することをめざすのだ。
の消費電力を2007年度比で最大 %削減
によって相殺し、データセンター全体として
に よ って増加していく電力をこの取り組み
目 標 と している。I T の 高 度 化 や 利 用 拡 大
最大
50
進し、着実な成果を上げています﹂
らゆるレイヤーの設備について技術開発を推
、インバータ制御
Supply無停電電源装置︶
の空調機まで、データセンターを構成するあ
ジュール、UPS︵ Uninterruptible Power
機器やコンポーネントから、高効率の電源モ
﹁日立では、データセンターの消費電力削
減を図るため、サーバやストレージなどのIT
語る。
部の主任研究員である野尻徹は、次のように
そ こ で の 取 り 組 み の 状 況 を、 日 立 製 作 所
中央研究所 グリーンコンピューティング研究
50
ユニークなところでは、本誌 号で紹介し
All Rights Reserved,Copyright ©2011,Hitachi,Ltd.
50
20
1
文=小山健治 写真=吉江好樹
2
データセンターの
さらなる省電力化へ。
日立 IT設備連係制御技術
50
CO2排出量抑制や電力コストの削減、そして継続的な電力不足に対処するために一層の節
電が求められている昨今、ITシステム運用の拠点インフラであるデータセンターにおいて、
IT機器のみならず空調機なども含めた総合的な省電力化が急がれている。そうした中で日
立が注力しているのが、IT 設備連係制御技術だ。ITを対象とした制御システムと設備管理
を対象とした制御システム、この二つの制御システム間で相互に情報を交換・連係することで、
データセンター全体としての省電力運用を実現するものである。実証実験を経て、いよいよ
株式会社 日立製作所 中央研究所
グリーンコンピューティング研究部 主任研究員
野尻 徹
50
50
■日立 IT 設備連係制御技術の概要と特徴
して、外気を活用することでデータセンター
組みもある。気温や湿度の低い冬季を中心と
た自然外気冷房型空調システムのような取り
デ ータセンターの電力使用効率が高いと見
以 外 が 占 め る 電 力 消 費 の 割 合 が 小 さ く な り、
や 電 力 設 備、 照 明、 監 視 装 置 な ど I T 機 器
現したいと考えました﹂
とで、データセンター全体の省電力運用を実
システム間で相互に情報を交換・連係するこ
ム﹂の3つのシステムで構成される。そして、
力管理システム﹂
、
﹁空調機最適化制御システ
具 体 的 に 日 立 の 考 え るI T 設 備 連 係 制 御
技術は、
﹁IT負荷最適化制御システム﹂
、
﹁電
られるわけだ。
れは正しいアプローチである。
各ベンダーは、このPUEの相対値を下げ
ることに苦心してきた。そしてもちろん、こ
の省電力化を図るというものだ。
も っ と も、 こ れ ら の 技 術 を そ の ま ま 実 際
のデータセンターに適用すれば、狙いどおり
の省電力化を達成できるわけではない。野尻
ターで急がれているのは、電力使用効率もさ
これ らの 実 用 化︵ 製 品 化 ︶を め ざ し、 次 の よ
﹁成果を上げてきたのは、あくまでも要素
技術としての話です。これらの技術を多様か
ることながら、絶対値としての総消費電力量
まずステップ1では、電力管理システムと
空調機最適化制御システムを組み合わせた
は一方で、次のようにも語る。
つ複雑な条件・環境下にある実際のデータセ
の削減に他ならない。先に野尻が語った﹁乗
﹁空調運転最適制御システム﹂を構築し、リ
をもとに、空調機の省エネ運転を実現する。
アルタイムなIT機器の温度情報・電力情報
ンのシナリオが描かれている。
うな2つのステップによるインテグレーショ
ンターでいかにインテグレーションし、運用
り越えなければならない壁﹂の一つが、そこ
ただ、本当に電力使用効率を追求するだけ
で十分と言えるだろうか。今日のデータセン
していくのか。お客さまに提供するソリュー
にある。
そうした中で日立が新たな技術開発のテー
マとして注力しているのが、IT 設備連係制
ションとして実用化︵事業化︶するまでには、
乗り越えなくてはならない壁がまだたくさん
残っています﹂
﹁データセンターでは通常、IT を対象と
した制御システムと設備管理を対象とした制
IT 設備連係制御技術とはいかなるもの
なのか、野尻はこのように説明する。
機器と空調機双方の省エネ運転を実現する。
報によるムダのない空調機運転により、IT
スとしたIT機器の負荷最適配置による不要
続くステップ2では、ステップ1による空
調運転最適制御システムにIT負荷最適化制
御システムがそれぞれの機器の稼働状態を見
これがすなわち、 IT 設備連係制御技術の
御技術である。
える化し、最適な制御を行っています。しか
ゴールである。
なIT機器の電源オフと、CPU負荷予測情
御システムを組み合わせ、仮想化技術をベー
一般にデータセンターの省電力化︵エネル
ギー利用の効率化︶の度合いを示す数値とし
し、省電力化の観点で見た場合、IT側では
日立IT設備連係制御技術の
実用化に向けた2つのステップ
て、PUE︵ Power Usage Effectiveness
︶と
いう指標が用いられている。
サーバやストレージの稼働率が低かったり、
とはいえ、
IT系の制御と設備系の制御は、
もともと違った﹁思想﹂や﹁体系﹂のもとで
機 器 の 消 費 電 力 が 占 め て い る こ と に な る。
データセンター全体の消費電力の半分をIT
で あ る。 例 え ば P U E が 2・0 で あ る 場 合、
所や日立プラントテクノロジーの松戸研究所
た。我々はそこに着目し、これら二つの制御
込んだ対策は行われていないのが現状でし
あります。わかっていながら、そこまで踏み
と、明らかにムダな運用をしているケースが
と呼ばれる技術もその一つだ。
献 が あ っ た。 例 え ば、
﹁温度感度テーブル﹂
﹁日立グループには、横浜研究所や中央研
究所といったIT系の研究所の他、日立研究
うほど簡単なことではない。
発展してきた技術であり、その連係は口で言
設備側では空調機が過剰に運転していたり
PUEの値が小さければ小さいほど、空調機
といった設備系の研究開発拠点があり、プロ
していこうと結集しました。そして始まった
ため、各研究所が持つ技術やノウハウを融合
度や稼働台数を制御する仕組みを基本とし
た 予 測 消 費 電 力 を 空 調 機 側 に 伝 え、 給 気 温
先に述べたように、IT 設備連係制御技術
で は、 各 I T 機 器 の 稼 働 履 歴 か ら 割 り 出 し
の目標を達成する
のが、今回のIT 設備連係制御技術への取り
ている。
ジェクトクールセンター
組みというわけです。IT系制御と設備系制
しかし、その時々のデータセンター内の温
度を予測し、より効率のよい制御条件を算出
御の両方を手掛ける世界でもまれな企業グ
ループである日立だからこそ、実現可能な課
するには、三次元熱流体解析と呼ばれる高速
制御可能なインバータ型の電算室用空冷パッ
し た こ と が、 解 析 処 理 の 大 幅 な ス ピ ー ド 化
調機の給還気温度の関係をデータベース化
し た の で あ る。 I T 機 器 の 入 排 気 温 度 と 空
稼働台数を効率よく制御することを可能と
ア ル タ イ ム に 実 行 し、 空 調 機 の 給 気 温 度 と
温度感度テーブルはその限界に一歩踏み
込 み、 シ ミ ュ レ ー タ ー に よ る 解 析 処 理 を リ
を使っていたのが実情だ。
か ど う か を 判 断 す る た め に シ ミュレ ータ ー
下 で 空 調 機 を 制 御 し、 そ の 設 定 温 度 が 妥 当
する。そこで経験的に設定された一定の条件
シミュレーターを用いても長い処理時間を要
題であると自負しています﹂と野尻は語る。
実験室内の模擬システムで
大幅な省電力化に手応え
こ う し た チ ャ レ ン ジ の も と、I T 設 備 連
係制御技術の実用化をめざす実証実験が、中
央研究所において始まった。2009年夏の
ことである。
ブレードサーバの消費電力や発熱を模擬す
る 台のダミーサーバならびに、空調能力を
ケージエアコン2台を実験室に設置。この空
につながった。
システムによる﹁制御なし﹂と﹁制御あり﹂
データセンター内で発生している気流は、
そのほとんどが空調機から吹き出される風に
で省エネ効果にどの程度の差があらわれるか
人の動きなどによる自然対流はほぼ無視して
よって起こされるもので、外気の吹き込みや
﹁その結果、空調の最適制御を行うことで
かまわない。したがって、IT機器の温度上
比較を行ったのである。
%∼ %という非常に大きな省エネ効果を
語る。背景には、さまざまな新技術による貢
見込めることが確認できたのです﹂と野尻は
法によって近似的に導き出すことができる。
昇と空調機の給気温度の関係は、統計的な手
34
無停電電源
配電盤
空調機
設備機器
50
調機2台分の消費電力を、空調機最適化制御
20
18
運転状態管理
稼働情報
交換
ジョブスケジュール管理
運転制御
温度・電力
稼働状態
ジョブ制御
IT 機器
ネットワーク
ストレージ
サーバ
空調運転最適化制御
IT 負荷配置最適化制御
オンタイム
シミュレーション
④運転パターン生成
⑤室温環境予測
連係
①負荷変動予測
②負荷集約案生成
③負荷配置最適化
オンタイム
シミュレーション
設備管理・制御システム
IT 管理・制御システム
3
4
これは、データセンター全体の消費電力を
サーバなどのIT機器の消費電力で割った値
オンタイムシミュレーションによる最適化制御で、機器の省電力稼働を実現
稼働情報を交換し連係動作することで、更に効率のよい省電力制御が可能
■日立 IT 設備連係制御技術実証設備(横浜第 3 センタ)の概要
そ こ に 着 目 し た の が、 す な わ ち 温 度 感 度
テーブルというわけだ。
中央研究所では、サーバや空調機のスペッ
ク、レイアウトなどを三次元熱流体解析によ
ってあらかじめシミュレーションした温度
感度テーブルに加え、空調機そのものの冷房
パッケージ型空調機
台数:2 台
台数:1 台
例えば、企業に要請されている節電の重み
そのものが、以前と現在では大きく変わって
いることも考慮しなければならない。
これまで多くの企業が省電力化を推進する
先にあったのは、CO 2排出量抑制に代表され
る地球環境保護や電力コストの抑制といった
課題の解決であった。そこでの前提は、IT
システム上で運用しているさまざまなアプリ
ケーションのレスポンスやサービスレベルを
落とさないことであり、業務に支障をきたさ
ない範囲内で省電力化をめざせばよかった。
冷却能力:30kW
昇値に対し、空調電力を最小化する最適化計
く、消費電力を大幅に低減させられることを
ケ ー シ ョンの運用に悪影響を及ぼすことな
そして、その先にいよいよ見えてくるのが、
IT 設備連係制御技術の実用化だ。
せて実証を行っているという。
自然外気冷房による連係効果についてもあわ
現在、横浜第3センタのラボスペースには
自然外気冷房用の空調機も併設され、ITと
も力がこもる。
実証することができました﹂と野尻の言葉に
算を短時間で行えるようにしたのである。
横浜第 3センタへ場を移し
実用化を見据えた実証実験へ
月に実証実験の場を環境配慮型データ
10
IT 設備連係制御技術は、
いよいよ実用化に
向けた第二段階を迎えたのである。
50
横浜第3センタ内に用意された約 ㎡のラ
ボスペースに、サーバラック 台 、パッケージ
み合っており、
〝必要最小限〟というモデル
﹁我々がこれまで開発してきたさまざまな
要素技術をパッケージ化して提供することは
型 空 調 機2 台 で 構 成 さ れ た 実 証 設 備 を 導 入 。
ているシステム環境を構築し、実際の業務と
可能ですが、実際のデータセンターに適用す
を導き出すこと自体が非常に難しい。
同じような負荷をかけ、稼働履歴を収集・分
るためには、ITインフラの再構築や大幅な
やメールシステムなど、
一般企業で広く使われ
析するといった形で実証実験は進められた。
ます。理想と現実の間にあるギャップをどう
ト、すなわちデータセンター全体としての消
テムエンジニアの役割となります。裏を返せ
を提供していくのか。それは人間であるシス
カスタマイズが必要となるケースも出てき
﹁この実証設備
そして2011年3 月末、
において﹂という注釈は付くものの、プロジェ
やって埋めながら、より良いソリューション
費電力を2007年度比で最大 %削減する
クトクールセンター
によるコミットメン
この基盤の上にERP︵基幹業務パッケージ︶
では、さまざまな業務やその要件が複雑に絡
も述べたように、実際の企業のデータセンター
小 限 の 電 力で 動 かすこ とに あ る。た だ、先 に
IT 設備連係制御技術の最終形は、必要最
セ ンターである横浜第3 センタへ移管した。
小限のIT 機器や空調などの設備を、必要最
年
ンターにより近い環境で検証すべく、2010
さらに日立では、こうした実験室レベルで
効率と電力量を示す﹁空調機特性テーブル﹂
獲得してきた成果や技術を、実際のデータセ
冷却能力:56kW
空調機(自然外気冷房用)
16
も作っておくことで、IT機器の予測温度上
3.5m
台数:16 台
企業の業務や事情を熟知した
省電力化ソリューションを提供
サーバラック
しかしながら、継続的な電力不足に対処す
るために節電が求められている現在、企業は
という目標を達成するに至ったのである。
う整えていくのかが、IT 設備連係制御技術
ば、そうしたフィールドサポートの体制をど
の 省 電 力 化 の 相 乗 効 果 に よ り、 業 務 ア プ リ
ょう﹂と野尻は今後を見据えている。
蓄積した稼働履歴を読み取ってそうしたパ
といったように、企業それぞれの業種や業務
﹁状況によっては、各アプリケーションの
レスポンスを多少犠牲にしてでも、サービス
ターンを分析することで、ITシステムの負
いうメリハリをつけた運用の〝最適解〟を導
プリケーションの重要度にも差があり、どう
御できるかが求められるのです。当然、各ア
ないまでも状況に即した制御を行うことが可
ソースに引き当てることで、理想的とは言え
力の上限値から逆算された利用可能な物理リ
﹁我々はキャッピングと呼んでいるのです
が、ITシステムの 負 荷 変 化 を 先 読 み し、 電
の特性に応じたパターンが表れる。長期的に
の継続を優先しなければならないケースも出
荷変化を事前に予測するのである。
いていくのか、ユーザーの業務や事情を熟知
能となります 。 例え ば 、 電力の 上限値 が
提供する、データセンター最適化のための多
そ の 意 味 で は I T 設 備 連 係 制 御 技 術 は、
フィールドの最前線でシステムエンジニアが
ることができます。いずれにしても、まずは
分散させるのかといった運用方針を策定す
らを何台の物理サーバに対して、どのように
kWに抑えられている中で1000個の仮想
様なソリューションを体系的にインテグレー
データセンター内で稼働しているシステム
サーバを動かさなければならない場合、それ
ションし、効率的に運用していくための〝フ
の 挙 動 を 正 し く 把 握・ 分 析 す る こ と が 第 一
歩となります。また、その前提が整ってこそ
そこでの背骨となる役割を果
た す の が、 過 去 の 稼 働 履 歴 を も
ンターの省電力化を実現することができる
可 能 と な り、 複 雑 な 要 求 に 応 え る デ ー タ セ
空調機をはじめとする設備の的確な制御も
と に 今 後 のI T シ ス テ ム の 負 荷
の で す。 I T 設 備 連 係 制 御 技 術 は、 そ う し
たソリューションの発展を支えていきます﹂
る。 あ る い は、 四 半 期 の 決 算 時
に変化するピークの波が存在す
初めと月末といった時間ととも
いくのである。
までにない価値を発揮しつつ、進化を遂げて
て い く 中 で、 I T 設 備 連 係 制 御 技 術 は こ れ
実証実験から実用化への段階を迎え、フィー
ルドでの基盤テクノロジーとして活用され
と野尻。
に突出したアクセスが発生する
一般にIT システムの負荷は、
昼 間 と 夜 間、 週 初 め と 週 末、 月
術である。
変 化 を〝 見 え る 化 〟 す る 予 測 技
もできる。
レームワーク〟として見ること
ことができません﹂と野尻は語る。
したシステムエンジニアでなくては対応する
IT機器や空調などの設備をいかに的確に制
てきます。決められた電力の上限値の中で、
一層身を削った節電が求められている。
の実用化に向けた最大のポイントになるでし
﹁ 仮 想 化 技 術 を 用 い たI T 機 器 の 片 寄 せ に
よる省電力化と、それに応じた空調最適制御
50
横浜第 3 センタ
室面積:50m2
5
6
80
50
8.5m
7.2m
試験用サーバ室