粉末成形ダイスへの粉末充填法の開発 (その 低周波振動板の応用) 1

粉末成形ダイスへの粉末充填法の開発
(その 1 低周波振動板の応用)
指導者:
研究者:
齊藤 誠 助 教授
M99009 石 島 毅 久
M99082 橘
伸也
研 究目 的
近 年 , 粉 末 成 形 プ レ ス に よ り 製 造 さ れ る 電機 部 品 の 小 形 化 が 進 ん で い る . こ れ と同
時 に ダ イ ス へ の 粉 末 充 填 時 の 定 量 性 の 向 上 が課 題 と な っ て い る . こ こ で 本 研 究 で は,
ダ イ ス へ の 定 量 粉 末 充 填 装 置 の 開 発 を 目 的 とし た . 現 在 の 成 形 プ レ ス で は , 底 の 開い
た 粉 末 の 入 っ た 容 器 を ダ イ ス 上 で 往 復 運 動 させ て 粉 末 を 充 填 し て い る . こ れ に 対 して
本 研究 で は ,容 器 に 振動 板を 取 付 け, そ の 振動 効 果に よ り 充填 する 方 法 を試 み た .
1.
実 験装 置 と 供給 原 理
目的とする充填装置は,充填容器に加
電圧計
振動板
ホッパー
アンプ
振部を一体化するものであるが,本実験
振幅センサー
周波数計
装置では加振部として振動フィーダの振
動 台を 利 用 した . 図 1 に 実験 装 置 の構 成
を示す.供給装置は,粉体を貯えておく
振動台
タイマー
充填容器に相当するホッパー,振動台,
ダイス
電子天秤
定振幅コントローラ
ガイド
振 動板 で 構 成さ れ て いる .
振動板は,振動台から突出たアームに
図 1 実験装置の構成
固定され,水平方向の高さ,位置を調整
振動板
できるようになっており,これを振動さ
せることによりダイスに粉体を供給す
る.また,ダイスとしてはアクリルの角
ブリッジ
棒 に孔 を 縦 列に 3 つ 開 け たも の と した .
充填はタイマーにより一定時間行い,電
子天秤で充填量を測定する.振幅は定振
加振時
静止時
幅コントローラで調整され,負荷変動の
影 響を 受 け ない よ う にし てい る .
図 2 充填の原理
図 2 に 充 填時 の 粉体 の 動き を 示 す. 静
止時では孔付近にブリッジが形成され粉
体がダイスに充填されない.ここで,振
0.4
動板を加振すると,孔付近の粉体が流動
化することにより,形成されたブリッジ
0.3
が 崩さ れ 粉 体は ダ イ スに 充填 さ れ る.
0.2
実 験 で は ホ ワ イ ト モ ラ ン ダ ム #800 を
センタ
用いて振動板の位置と充填量,充填時間
0.1
オフセット
と充填量,振幅と充填量,空気孔有無と
0
充 填量 ,孔 径 と 充填 密 度に つ い て調 べ た .
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
これらの結果から充填に最適な条件を見
振動板の高さ [mm]
出 す .ダ イス 孔 径 は 3[ mm ],5[ mm ] ,7
図 3 振動板の位置と充填量(3mm)
[ mm ] の 3 種 類 とし た.
充填量 [g]
2.
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充填量 [g]
1.2
1
0.8
0.6
オフセット(0.160mm)
0.4
センタ(0.160mm)
0.2
0
0
1
2
3
4
5
6
7
時間 [s]
充填時間と充填量(3mm)
1.2
1.1
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0.15 0.18 0.21 0.24
振幅 [mm]
センタ
平均充填量 [g]
平均充填量 [g]
図4
図5
1.2
1.1
1
0.9
0.8
0.7
2s
0.6
3s
0.5
4s
0.4
5s
0.3
6s
0.2
0.1
0
0.15 0.18 0.21 0.24
振幅 [mm]
オフセット
振幅と充填量(5mm)
1.5
密度 [g/cm3]
3. 結 果 及び 考察
図 3 は 振 動板 の 高さ と 充填 量 の 関係 で
ある.ここで,振動板の水平方向位置は
振動板をダイスの孔の中心に合わせた場
合ををセンタとし,ダイスの孔の手前に
した場合をオフセットとする.水平方向
位置で比較すると,オフセットの方が多
く充填された.これは,孔に対してオフ
セットの方がダイス上部に板が無いこと
及びダイス上部で粉体の流動化が発生す
ることによると思われる.振動板の高さ
では,高さが増すに従い充填量が減少し
た.板がダイスに近いほど充填に対する
効果が大きく得られることが分かる.
図 4 は 充 填時 間 と平 均 充填 量 の 関係 で
あ る . 充 填 量 は セ ン タ の 時 は 4[ s] で ほ
ぼ飽和するが,オフセット時は充填量は
さ らに 増 加 して い る .
図 5 は振幅と平均充填量の関係であ
る.オフセット時は各振幅で充填量の違
いは余り見られず一定以上の振幅があれ
ば 充填 で き るこ と が わる .
図 6 は 孔 径と 充 填密 度 の関 係 で ある .
充填密度は孔径が大きくなるほど密度が
増す傾向を示すことが分かる.一方,充
填時間で見ると,充填時間が増すほど孔
径 によ る 変 化が 小 さ く, 4 [ s ] と 6 [ s ]
で は ほ ぼ 同 様 で あ る の に 対 し て 2[ s]
で は大 き く 変化 す る こと が分 か る .
1.2
0.9
充填時間
0.6
2s
4. 結 論
4s
0.3
( 1 ) 振動 板 の 位 置
6s
水平方向においては,手前側にオフセ
0
3
5
7
ットし,高さを低くするほど充填性が向
孔直径 [mm]
上 する こ と がわ か っ た.
( 2 ) 充填 時 間
図 6 孔径と充填密度
4[ s] 以 上 で 充 填 量 が 飽 和 す る こ と か
ら 5 [ s ] 程 度の 充 填 時 間で 良い こ と がわ か っ た.
( 3) 振 動 板の 振 幅
充填 量 に 大き な 影 響を 与え ず ,0.2[ mm ]以 上 の振 幅 があ れ ば 良い こと が わ かっ た .
( 4 ) 孔径 に 対 す る充 填密 度
充 填 時 間 が 短 い 場 合 ほ ど 孔 径 の 影 響 を 受 け る が , 充 填 時 間 が 4[ s] 以 上 で は 大 き
な 変化 が 見 られ ず , 5mm 以 上 で 飽 和傾 向 に なる こと が わ かっ た .
今 後の 課 題
今 回 の 実 験 で は , 縦 列 の ダ イ ス 孔 3 つ の 先端 ( 孔 番 号 1 ) の 孔 が 一 番 多 く 充 填 され
た . こ の 原 因 に つ い て の 粉 体 の 挙 動 と 充 填 量に つ い て 明 ら か に し , よ り 定 量 的 な 充填
法 を検 討 す る必 要 が ある .
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