別科紀要最終号に寄せて

別科紀要最終号 に寄せて
別 科長
本 学 で は 、本 年4月
石
川
恵
子
よ り、 留 学 生 の 受 け入 れ機 関 と して 日本 語 ・日本
文化 教 育 セ ン ター が 本 格 的 に始 動 す る。 別 科 は私 費 留 学 生 の 予 備 教 育 課
程 と して 引 き続 き この セ ンタ ー の 一
一
角 を担 うが 、1976年 以来 、別 科学 則
に よ り予備 課 程 として私 費 留 学生 の受 け入 れ た(日 本 語 研修 課程)、 また 、
交換 留学 生 へ の 日本 語 教 育 の プ ロ グ ラム の 提 供 を行 っ て きた(日 本 語 特
別 課 程)と
して の 別 科 の 役 割 は 、今 年 度 を も って 終 了 す る。 併 せ て この
別 科 の紀 要 も本 号 で 最 終 号 とな る。 今 日 まで 支 えて くだ さ った 方 々 に心
か らの感 謝 を 申 し上 げ る。
特 に創 立 者 池 田大 作 先 生 に は、 開設 当初 よ り今 日 ま で 、 留 学 生 教 育 へ
の深 い ご理 解 とひ とか た な らぬ ご配 慮 を 、 また 日々 留 学 生 に は細 や か な
温 か な御 激 励 を頂 戴 して き た。 創 立 者 の 存 在 な く して 、 この 別 科 の35年
間 は な か っ た の だ と、 衷 心 よ りの御 礼 を こ こ に記 し留 め た く思 う。
35年 間 、 国 境 を越 え 別 科 に学 ん だ留 学 生 は、1800人 余 を数 え る。 修 了
生 の総 数 か ら見 れ ば 多 い とは言 え な い が 、 受 け入 れ 地 域 や 交 流 校 の 数 は
他 に比 して も実 に 多彩 で あ ろ う。 そ して 、世 界 平 和 に貢 献 す る多 くの 人
材 を送 り出 して き た。 別 科 は 、 留 学 生 同士 が 日本 語 の 学 習 を通 し人 間 教
育 を学 び、 友 情 の絆 を は ぐ くみ 、 とも に地 球 市 民 と して 生 き よ う とす る
人 間 力 を は ぐ くむ場 で もあ っ た 。
その 歴 史 に つ い て は 、2001年 に発 刊 した 「
創 価 大 学 別 科 日本 語研 修 課
1
程1976-2001」
に 、 草 創 か ら25年
は 、 そ れ 以 降 の ほ ぼ10年
間 の歩 み を ま とめて い るの で、 本 稿 で
にわ た る別 科 の 各 課 程 で の 日本 語教 育の 概 要 と
そ の 課 題 に つ い て 述 べ 、 こ こ に 携 わ っ て くだ さ っ た 方 々 へ の 長 年 の ご尽
力 に 報 い た い と思 う 。
2003年 は、 留学 生 受 け入 れ10万 人 の計 画 の達 成 の年 で あ っ た。 本 学 に
お い て も、 この10年 、 留 学 生 の 受 け入 れ は 、 多様 化 の一 途 を た ど って き
た。 そ れ は 、 留 学 形 態 、 受 け入 れ 地 域 、 留 学 口的 や 日本 語 学 習 の ニ ー ズ
に も大 きな 変 化 を もた ら して き た。
本 学 で は こ う した 多様 な留 学 生 の受 け 入 れ に対 して 、 別 科 に は本 年 度
ま で 別 科 専 任 の 教 員 と して7名
の配 置 が あ り、 留 学 生 の 日本 語 教 育 に 当
た る こ とが 出 来 きた こ と、 ま た 国 際部 を は じめ と して 各 部署 で の教 職 一
体 の留 学 生 支援 が 得 られ た こ とは、 本 学 な らで はの特 筆 すべ き こ とで あっ
た。 感謝 の 思 いで 一 杯 で あ る。
本 年 度 まで の 日本 語 研 修 課 程 と 日本 語 特 別 課 程 それ ぞ れ の概 要 を 、表
1・IIに 示 す 。
表1.日
教科 目
日本語
本 語 研 修 課 程(Jコ
科 目名
日 本 語(1,II)A
聴解
1単 位
1単 位
文字 ・語 彙
2単 位
2単 位
日本 語(1,IDD
作 文 ・表現
3単 位
3単 位
総合演習
漢字
人文科学
社会科学
1単 位
1単 位
晴 報 ・技術剰
情軸 生命・
聯
2単 位
躰 事情(躰 語 躰 文化剰
日本文化
2単 位
日本事情 日 本 事情(人 文 系)
日本 事情(社 会系)
日本事情
外 国語
数学
春 学 期[ 秋学期 選択 ・必修
5単 位 5単 位
必修
日本 語(1,II)C
初級漢字
』
授業内容
文 法 ・読 解
日 本 語(1,II)B
日本語演 習(1,ID
一
ー ス)
英 語(1,II)
数 学(1,II)
1単 位
1単 位
2単 位
2単 位
2単 位
2単 位
1単 位
1単 位
2単 位
2単 位
1単 位
1単 位
必修 必修
必修
必修
選択
選択必修
選択必修
選択必修
選択必修
選択
選択
備考
日本 語 レベ ル に応
じて ク ラス 分 け を
行 い、 レベ ル に 準
じ た授 業 を 行 い ま
す。
各 科 目 と も複 数 開
講 の 予定 で す 。 各
学 期2科 目ず つ選
択 す る必 要 が あ り
ます 。
※春 学 期 につ い ては 、 日本 事情 科 目を 日本 語 科 目 に振 り替 え て行 う場 合 が あ る。
2
別科 紀要 最終号 に寄 せ て
表Il.日
本語特 別課程
初 級後 期(N4レ
ベ ル)E4
科
口
単位
4
日本語201
文 型 ・文 法
1 読解
口本語202
必 日本語203 1 聴解
修 日本 語204 1 文 字 ・語 彙
科
1 会話
目 日本語205
1 作文
日本語206
1 演習
口本語207
中 級 前期(N3レ
ベ ル)E3
科
目
単位
日本 語301
J 文 法 ・読 解
必 日本 語303 1 聴解
日本語304
1 文 字 ・語 彙
修皿
科 日本 語305 1 口頭表現
目 日本 語306 1 文章表現
1 演習
日本 語307
中級 後 期(N2レ
ベ ル)E2
科
目
単位
必1日 本 語4015文
法 ・読 解
E級 前 期A(NIレ
科
目
日本 吾501
必 日本 語503
修 日本 語504
科
目 日本 吾506
日本 語507
ベ ル)El
単位
1
1
講読
聴解
文字語彙
1
上級文章表現
1
演習
1
ヒ級 前期A(Nlレ
科
目
必 日本 語501
修
科
目 日本 語504
日本 語507
上級前凱(NIレ
科
ベル>EX3
単位
1 講読
1 文字語彙
1 演習
ベル EX2※60*秋 生60*春生
単位
必 日本語601/501 1 講 読
修[体
口
語603〆503 1
聴解
※EX2の 秋 学 期 生 は601∼607
春 学 期 生 は501∼507
10春Eコ
科
ー ス カ リキ ュ ラム
目
1
初 級 漢 字II
1
中級漢字
特別演習1
1
1
1
特 別 演 習II
特 別 演 習III 1
特 別 演 習IV 1
選
日本語601'501
特殊講 義511
日本 語303
択 日本 語403
特殊講 義513
科
日本語603〆503
日本 語404
日本 語305
目 日本 語405
日本 語505
日本 語406
日本 語506
日本 語307
日本 語407
内
単位
初級漢字1
1
1
1
1
1
1
ヱ
1
1
1
1
1
1
1
日本語606,506
1
日本語607%507
1
容
レベル
担晋
無
水]f
松井
法貴
倉光
山本
倉光
山本
鈴井
須山
伊東
倉光
倉光
伊東
水上
松井
法貴
秋田
松井
松井
鈴井
秋田
クラ ス例
300字 ※春 無
1
E5
2
E4
600字
3
E3
800字
日能2級(学 部)※ 春無 3-4 E3-E2
文 型 ・文 法 の 運 用 練 習 3-4 E3-E2
総 合中級 日本語 演習(院) 4-5 E2-E1
5 E1-EX3
日能1級(学
部)
6
EX2
評 論文 を読む ※EX2必 修
5 E1-EX3
速読
3
E3
自然 な 日本 語 を 聞 く
ニ ュー ス ・映画 で学 ぶ 日本 語 4
E2
ニ ュー ス で 学 ぶ 日本 語
5 E1-EX3
EX2
教養番組で学ぶ日本語 ※EX?必
修 6
アカ デ ミックな語彙 入門
4
E2
3
E3
劇 と プ レゼ ン テ ー シ ョ ン
4
E2
イ ンタ ビ ュー プ ロジ ェ ク ト等
ス ピー チ とデ ィベ ー ト
5
E1-EX3
4
E2
中級文章表現
上級文章表現 ※El必修 5 E1-EX3
3
E3
身 近 な トピ ッ クを 読 む
4
E2
現代 日本社会 を読む
6
EX2
アカデミック・ライティング(学部)
EX21鈴
新書 ・文庫 を読 む(学 部) 6
井
※ 日本 語404/406は3rd前 半 の 「
漢字 ・語 彙 」/「 発展 と応 用」 を含 む
※ 初級 漢 字1と 特 別演 習1は 学 期 に よって 開講 が 異 な る
選 日本文化体験2日
択 日本文化体験2日
本 伝 統 文 化 を学 ぶ4-6E2-EX品
本 伝 統 文 化 を学 ぶ1-3E3-E5品
1
発表の方法
1
アカデミ・ク・ライテ・ガ
日本 語DI
1
鰭
ロシ疇 通訳灘E
1
1
日能1級(特 別演 習IV)
日本 語 ロシア語表 現比較
日本 語BI
湊日本 語CI
亭蓬
日本 語EI
組
・
文庫を読む 旧 本語60ioO.)
5-6
6
6
5
5-6
E4
E3
E2
E1
EX3
江口
級 漢 字II
級 漢 字
401,403,404,405,406,407,特
演
501,503,504,505,506,507,特
演,特
EX3 501,504,505,特
演,特 講
EX2 601/501,603/503,606/506,607!507,特
組
法貴
秋田
鈴井
倉光
学部
学部
学部
学部
学部
履修科 目例(選択科 目変更可)
E4 201∼207,初
E3 301∼307,中
E2
E1
旧 語1165161
沢
沢一
必 修 授 業 時 間(90分)
10
10
5
5
3
講
二
演,特
講
選択(90分)
1
1
7
4
3
EX2
z
0
総コマ
35
16
51
計
(45分) 102
※ ヒ記選択 時問 は学部代 替時間&日 本 文化 を除 く
3
日本 語研 修 課 程 は 、 私 費 留 学 生 を 中心 とす る学 部 ・大 学 院 へ の予 備 課
程 で あ り、 開 講 科 目 、修 了 要 件 等 は学 則 に定 め られ て い る。 別 科 で の名
称 はJコ ー ス で あ る。 定 員 は35名 、初 級 か ら上 級 まで 習 熟 度 に よ り3ク
ラス を設 置 して い る。 開 講 は 毎 年4月 か らの1年 で 、 各 ク ラ ス に専 任 教
員 が コー デ ィネ ー タ ー と して 各 授 業 間 の シ ラバ ス や進 度 の調 整 を は じめ 、
別 科 生 の修 了 まで の 一一年 間 の 日本 語 教 育 、 進 路 指 導 、 出 席 管 理 、 生 活 指
導 等 の 全 て に 当 っ て きた 。
予 備 課 程 と して アカ デ ミ ッ ク 日本 語 の 教 授 を 目的 とす るが 、 進 学 が 目
的 で な い 一年 間 の 日本 語 学 習 を希 望 す る者 も入 学 す る。 併 せ て 、 その 出
身 地 も ア ジ ア だ け で な く北 南 米 、 欧 州 等 と多 岐 に わ た り、 言 語 背 景 も、
外 国 語 と して、 母 語 と して 、 あ るい は 継 承 言 語 と して 、 日本 語 の 習 熟 レ
ベ ル も様 々 で 、 各 コー デ ィネ ー タ ー が 、 授 業 外 で も個 別 に きめ 細 や か な
対 応 に 当 た って き た 。
明 年 度 か らは進 学 を 目的 としな い学 生 の た め に特 別履 修 生 と して の コー
ス の提 供 し、 予 備 課 程 と は募 集 も分 け る よ うで 、 新 た な教 育 が期 待 で き
よ う。
近 年 は入 学 試 験 対 策 と して 、 秋 学 期 に集 中 的 に 日本 留 学 試 験 受 験 の準
備 の 期 間 を 設 け、 初 級 か ら学 ん だ 学 生 も好 成 績 を収 めて い る。
ま た、 秋 学 期 の 日本 事 情 科 目で は 、進 学 先 の 各 学 部 の教 員 が別 科 の授
業 を担 当 し、 別 科 生 の学 部 へ の 基 礎 力 養 成 等 に 当 た って い る。 この段 階
で は、 初 級 ス ター トの学 生 に と って は、 基 礎 教 育 とい って も、 そ の 日本
語 力 か らは 、 ほ ん の 一一
部 を 垣 間 見 る に す ぎ な い か も しれ な いが 、 学 部 進
学 後 の 教 育 との 連 携 、 継 続 を 可 能 にす る と もに 、 学 部 教 員 に とっ て も、
この 段 階 か ら留 学 生 の 学 習状 況 を 知 る よ い機 会 とな っ て いた 。 学 部 の 先
生 方 に は 毎年 ご苦 労 を お か け した が 、 こ う した 日本 事 情 科 目 の あ り方 は、
大 学 付 置 の 別 科 と して の 特 色 を 発 揮 で き た 一つ で あ る。 本 学 へ の 進 学 希
4
別 科紀要 最終 号 に寄せ て
望 者 の 多 い 別 科 の 特 色 を生 か した 継 続 的 な教 育 の充 実 を望 み た い 。
日本 語 特 別 課 程 で は 、 交流 協 定 を結 ぶ44力 国 ・地 域121大
学 か らの 交
換 留 学 生 に加 え 、 ア メ リカ創 価 大 学 か らの ス タ デ ィア ブ ロ ー ド ・プ ロ グ
ラム の 日本 語研 修 生 、 中国 全 国 青年 連 合 会 等 の 各機 関 か ら の留 学 生 を受
け入れ て い る。 留学 の 目的 は 、 口本 語 専 修 の 留学 生 、 英 語 に よ る授 業(経
済 学 部 が提 供 す るJASプ
ロ グ ラム)を 中 心 に受 講 す る学 生 等 、 多 様 で
あ り、 当然 の こ とな が ら そ の 日本 語 の レベ ル に も幅 が あ る。 そ の た め 、
日本 語 の学 習 歴 の な い 学 生 か ら、 日本 語 能 力 試 験Nlレ
学 生 の た め に 、 各 学 期5ク
ベ ル に相 当 す る
ラ ス か ら7ク ラ スの 幅 広 い レベ ル の ク ラス を
提供 して きた。 各 ク ラ ス ご とにJコ ー ス と同様 に専 任 の 教 員 が コー デ ィ
ネー ター と して そ の 任 に 当 た り、 上 級 ク ラ スで は交 換 留 学 生 の専 攻 に 応
じた学 部 の授 業 の特 別 履 修 の相 談 、 指 導 に も応 じて い る。
Eコ ー ス で は 、 日本 語 ス タ ン ダ ー ドを 視 野 に入 れ 、CEFRに
準拠 し
た 「Eコ ー ス 日本 語 基 準 」 を作 成 し、 今 日 まで 積 み 上 げた 経 験 を 生 か し
て 各 ク ラス の教 育 内 容 の 改 善 に努 め て きた 。 交 換 留 学 生 の 中 に は 、 自国
の 大学 との 単位 々換 を必 要 とす る 日本 語 を 専 修 の 学 生 と、 単 位 互換 を 必
要 と しな い学 生 が お り、 口本 語 学 習 へ の 動 機 や 意 欲 も さ ま ざ ま だ が 、 日
本 で の留 学 を 実 り多 い もの とす るた め 、 毎 学 期 の授 業 内 容 に工 夫 を 凝 ら
して きた。 その 成 果 は、 修 ∫の成 績 だ け で な く、2005年 か ら開 催 して き
た各 学 期 末 の 交換 留 学 生 に よ る学 習 発 表 会 に も大 き く反 映 され て い る。
発表 は 、個 人 また ク ラス の 単 位 で、 ス ピー チ 、 研 究 発 表 、 寸 劇 な ど 日本
語 の表 現 方 法 も内容 も多 岐 に わ た り、 日本 語 学 習 や 日本 留 学 の成 果 を 発
信 す る場 とな っ て きて い た 。
両 課 程 と も今 日に 至 る まで 留 学 生 へ の年 々 変 化 す る 多様 な ニ ー ズ へ の
5
適 切 な対 応 を 目指 して 尽 力 して きた 。 口本 語 は 留 学 生 に とって その 留 学
の 質 を左 右 す る重 要 な要 素 の ・
つ で あ る。 留 学 受 け入 れ の 人 り口 とも な
る別 科 で の 日本 語 教 育 が 、 幾 多 の 留 学 生 の成 長 の 助 と なれ た な ら、 大
きな 喜 びで あ る。
現 在 の 留 学 生30万 人 計 画 の 推 進 は、 これ まで 以1この 多 様 な 留学 形 態 で
の留 学 生 の受 け入 れ とな るだ ろ う。 そ う した 中で のセ ン ター へ の 移行 は 、
今 後 の 大 学 教 育 の 国 際 化 へ の 転 換 の ひ とつ の き っ か け に もな るは ず だ 。
と、 同 時 に受 け 入 れ た 留 学 生 の育 成 ・教 育 の 重 点 を ど こに 置 くの か も改
め て問 わ れ る だ ろ う。 今 後 の 日本 語 ・日本 文化 教 育 セ ン ター の 教 育 の 充
実 と発 展 を心 よ り期 待 した い。